「美鈴。最近の仕事、どんな感じ?」
「門番の仕事ですか? 最近は来客も極めて少ないので、その点ではかなり暇を持て余していますね。でも、太極拳の練習や立ち寝、妖精メイドの方々と一緒に庭のお手入れをするなど、結構やる事はあるので楽しいです」
「そっか。結構満喫してるんだね」
空に浮かぶ星が綺麗な真夜中、いつもみたいに自分の部屋で魔法の研究や開発・改良などを行っていた私は、良いアイデアが思い浮かばない事から気分転換も兼ねて美鈴の下へと訪れ、最近の門番の仕事についてなどの会話を交わしていた。
この時間は、普段であればパチュリーの図書館に行って適当に本を借りて読んだり、レミリア姉様やフラン姉様と何かする訳でもなく、ただ単に幸せな時間を過ごすなど、館内でも出来る事で済ませていた。
けれど、今日に限っては外に出て一緒に持ってきたお菓子でも食べながら、美鈴と話でもしようかと何故か思い立ち、実行に移していたと言う訳だ。
平常時は殆んどやる事がなくて暇な時間が多い門番の仕事だけど、美鈴は結構満喫しているみたいで本当に良かったと思う。何もない時はのんびりしながらも、気を使う能力などによっていざと言う時の対処が早い彼女だからこそ、これ程までに門番を楽しめているのだろう。
「はい。それはそうと、リーシェお嬢様が真夜中にここへ来るなんて珍しいですね。レミリアお嬢様やフランお嬢様には言いづらい何かがあるとか……?」
頭の中で考えを巡らせながら会話を交わし続けていた時、美鈴からレミリア姉様やフラン姉様には言いづらい何かがあるのかと、少し心配そうに聞かれた。どうやら、私がこの時間に話しかけに来たのが珍しすぎて、そう言った心配がよぎったらしい。
「ううん、何か悩んでるとか辛い事があったとかみたいな、大きな理由はないよ。自分で言うのもなんだけど、珍しくそんな気分になっただけだから」
「なるほど、気が向いただけでしたか。それなら良かったです!」
これも、姉様2人が遊びとかに良く誘ってくれる様になってから籠る頻度が減ってきたとは言え、それでも普段の生活で部屋に籠る事が多く、中庭に出る頻度が更に少ない故の印象な訳である。
まあ、今回ら真夜中にここへ来た理由を正直に言って安心してもらえたけれど、今後は変に心配させないために自室から出る頻度を増やすべきなのかも知れない。
「リーシェお嬢様、会話の途中ですみません。向こうの空からこちらへ近づいてくる妖怪らしき人が居るみたいです」
「本当だ……うん。あの
そんな感じで、門番の仕事についてなどの色々な内容の話を楽しくしていた時、のんびりモードだった美鈴が空から近づいてくる吸血鬼の存在に気づいたらしい。会話を中断して仕事モードになり、私にその吸血鬼さんの居る方を教えてくれた。
なのでその方角を向き、吸血鬼さんを視界に入れつつ能力を使って調べてみたところ、初めて紅魔館へと来たお客さんであると判明する。レイブン家の使い魔の人や傘下の吸血鬼さん、敵対中のコルベルシア家やその傘下たちとは微妙に違う魔力の質である事から、別勢力に属しているのだと思われる。
一応、敵対的ではない事だけは発せられる魔力などから分かったため、このまま何もせずに来るのを待つ事には決めたけど、何故か胸騒ぎがしてならない。本当は戦闘準備を整えておきたいのだけど、その程度では
「あの、えっと、すみません。少しよろしいでしょうか……?」
「はい。私は大丈夫ですが、リーシェお嬢様は……」
「美鈴、私は大丈夫だから続けさせて」
「と言う事なので、続けて下さい」
「ありがとうございます。実は……」
で、何故か近づくにつれて極端に飛行速度が遅くなり、こっちに来たら来たで視線が泳いでいる事を不思議に思いつつも、緊張しながら話してくる彼に耳を傾けた。
話によるとこの吸血鬼さんは、脇に抱えている丁寧に包装されたこの箱に入っているプレゼントを、レミリア姉様へと渡すためにここへと訪れたらしい。目的は、スカーレット家の庇護下に入って、他の攻撃的な輩から自分たちを守るための様だ。
ここまで聞けば別に珍しい話でもない。私が魔法の研究や開発・改良などで部屋に籠っている間にも、時々そう言った来客が来ると言うのをレミリア姉様から聞いた事があるし、レイブン家や他の中位以上の吸血鬼一家に居る傘下も、例外はあれどもそんな感じで増えていく事が殆んどであるからだ。
「なるほど。レミリア姉様からの返答は、今すぐの方が良い?」
「いえ、今すぐでなくて構いません。私共の使い魔を呼び出す方法が書かれた紙をお渡ししますので、返答が決まり次第これを使用して呼び出して頂ければと……」
「そう? 分かった」
そして、脇に抱えられたプレゼント入りの箱に、これに対する返答は今すぐでなくても良いと、何故か聞き取り難い位の小さな声で言いつつ、使い魔を呼び出す方法が描かれていると渡してきた紙を私が受け取ると、吸血鬼さんは来た時とはうって変わって音速に近い速度でこの場を去っていった。
「それにしても、随分と緊張し過ぎてた吸血鬼さんで……!?」
それにしても、単に傘下に入れてくれと言うだけにも関わらず、緊張し過ぎている吸血鬼さんはかなり珍しい。どうしてそこまで緊張していたのだろうかと不思議に思いながら、ふと呼び出し方法が書かれた紙を見てみた瞬間、私はその内容に驚愕する事となった。
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