「リーシェ、そっちの書類はどう? 終わりそう?」
「うーん……沢山あるし、内容が内容なだけにまるで進んでないかな。フラン姉様の方こそどんな感じ?」
「私の方は分身も使ってるから結構進んでるよ。でも、難しいからまだ完全には終わらないの」
「そっか。まあ、今日はいつにも増して量も多いしね」
1人の吸血鬼さんの人生をめちゃくちゃにしてまで、コルベルシア家がレミリア姉様の命を狙っている事を知ってから10年、私はフラン姉様と一緒に当主としての仕事を代わりに行っていた。
あの日以降、レミリア姉様はコルベルシア家とその傘下がそう言う類いの行動を起こさない様、同じく何かと迷惑を被っているレイブン家や傘下の吸血鬼さんなどに呼びかけて連合を組み、武力による威圧を行って抑えていた。
勿論、こちら側のみが恩恵を受けるだけではない。連合を組んでいる吸血鬼さんの内誰かがコルベルシア家関連でどうにもならない程の危機に瀕したと知った場合は救援に駆け付けるか、難しければ保護を求められた場合にのみ、スカーレット家やレイブン家と言った連合内の上位吸血鬼が主となってある程度は館に受け入れると言う取り決めもされている。
今日、私とフラン姉様が仕事を代わりに行っているのも、それ関連での会議にレミリア姉様が出席しているからと言う訳だ。
そう言った事があったために、最近は危険物満載の罠箱を送るなどの暗殺狙いの行為や嫌がらせも止み、気を張らずに過ごせているからありがたい。
まあ、そのお陰で仕事の面で大変な思いをしているのだけど、最悪の出来事を阻止するためならこの程度の忙しさは許容範囲である。
むしろ、レミリア姉様が当主としての責務を果たし、必死になって掴み取ってくれている平和の恩恵を受けているのだから、この程度は許容しなければならないだろう。
「いつ何度見ても、フラン姉様のフォーオブアカインドは凄いなぁ。そんな事まで出来るんだから」
「えへへ……リーシェ、ありがと! この魔法かなりの自信作だから、褒めてもらえると嬉しい!」
フラン姉様も同じ思いを抱いているみたいだけど、フォーオブアカインドまで使って本物同然の分身を増やし、4人でやっていると言う気合いの入り様だった。分身にも関わらずまるで本当に生きているかのような振る舞い、そんな高性能な分身を長く維持する事が可能な魔力の多さに、何度見ても驚きしかない。
「ねえ、リーシェ。お姉様って凄いよね。強くて頭も良いし、これだけの仕事を1人でこなしちゃうんだからさ」
「うん、私も本当にそう思う。同じ事を1人でしろって言われたら、絶対に出来そうにないもの。今だって、何とかこなせてるのは書類仕事だけの上にフラン姉様が手伝ってくれてるからだし」
すると、私とは比べ物にならない早さで書類仕事をこなしているフラン姉様が、唐突にレミリア姉様は凄いと褒め始めたのを聞いた。
まあ、今代わりに2人がかりでやっている書類仕事に加えて、紅魔館とスカーレット家の維持や他の吸血鬼一家当主との付き合いなど、私がやればものの1週間で確実に根をあげたくなる仕事を1人で数多くこなしている訳だし。そう思うのも無理はない。だから私は、その言葉に強く同意を示した。
「2人共、ただいま……あら、あれだけあった仕事がこんなに終わってたのね。フランは分身まで使ってくれてるみたいだし……ありがとう、助かるわ」
「えへへ、どういたしまして!」
「うん、お帰り。大変だけど、レミリア姉様のためならこれ位問題ないよ」
そんな感じで、色々な事を考えたりフラン姉様と一緒に話しながら仕事をやっていると、部屋の扉が開いて中に話し合いから帰って来たレミリア姉様が入ってきた。見た感じ少し疲れている様だけど、味方が居るとは言え大なり小なり、コルベルシア家に関わらざるを得ない訳だから、仕方のない事ではある。
「あっ! 残りの仕事なら私とリーシェでやっておくから、お姉様はゆっくり休んでて!」
「えっ? でも、流石にこれ以上は……」
「気にしないで! 心労が凄そうな会議に行って疲れてる訳だし、お姉様が仕事を丸投げしたって、私もリーシェも怒らないからさ!」
「そう。だから、このまま部屋でぐうたらしたり、妖精さんの作ってくれたおやつを食べたり、パチュリーのところに行ったり、レミリア姉様の自由にしていい」
で、レミリア姉様が私たちにお礼をしてくれてから、まだ残っていた仕事に早速手をつけようとしたその瞬間、フラン姉様がその手を止めて休んでてと言い始めた。どうやら、帰ってきてから見せた疲れ顔を見て、残りは自分たちでやってあげようと思ったらしい。
確かに、最初は帰ってくるまでやっておくと言う約束だったけれど、疲れきったレミリア姉様を見れば仕事を全部やってあげようと思うのも理解出来たし、私も全部やってあげて休ませてあげたいと言う考えであったから、フラン姉様に続いてそう伝えた。
「……ええ。じゃあ、私はのんびり休んでくるから、お言葉に甘えて残りも全部お願いするわ」
「はーい! 頑張って終わらせておくね!」
「うん、任せて」
結果、少し遠慮がちではあったものの、レミリア姉様から残りの仕事をフラン姉様と共に任される事が決まった。
なので、そう言ってレミリア姉様がのんびり休むために部屋を出ていった後、私とフラン姉様はさっきまでやっていた仕事の続きをやり始めた。
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