「ちっ、そう上手くは行かないか……!」
「当然だよ! お前たちには、リーシェに指一本たりとも触れさせない!」
聖女2人と親衛隊を含む、聖教会の差し向けた一大勢力との戦闘が始まってから、私はリーシェを始末しようとする多数の聖騎士や聖魔導師を分身3人と共に空中で食い止めていた。
今まで相手した事のある聖魔騎士団の面々と比べ、ありとあらゆる面で上回っているだけあって、普通の聖騎士でさえかなりの強さとなっている。
その上、近衛数人を含めて『
「ほらっ! リーシェに気を取られてる場合かな!?」
「むぅ……ええい! 厄介な奴らめ!」
「聖女様の加護がなければ、とっくに殺られていた。スカーレット家、恐るべし!」
ただ、リーシェがほぼ必中の
加えて、2発も耐えきられてしまったとは言え、聖女が展開する光の聖域に大きなヒビを入れる程のダメージを与えていた。それ以降は放たれる事はなかったけれど、あれは相当な負担がかかるとリーシェも言っていたから仕方のない事ではあった。
他には、紅魔館の一部が攻撃によって破損し、未だに相手方の士気は高い上に力もまだまだ余っていそうな感じだったものの、与えた損害の面では僅かに私たち有利と言ったところだ。まあ、誤差の範囲だと言われればその通りだと言わざるを得ない位ではあるけど。
「お姉様たち大丈夫かな……うわっ!?」
「くっ、避けられたか! 化け物めぇ!」
四方八方から飛んで来る光属性魔法やら破邪の矢やらを、リーシェから教えてもらった魔法を使いながら何とか捌きつつ、一瞬お姉様たちは大丈夫だろうかと考えてた瞬間、視界の端に矢を構えて放つ聖魔導師の姿を捉えた。
ギリギリのところで気づいて避けられたから良いものの、後少し遅ければ死にはせずとも、かなり危ない状況に陥っていた事もあり得ただろう。油断出来ないのは同じだけれど、同族との戦闘の方が幾分か気楽である。
「吸血鬼に対抗出来てる時点で、お前たちも十分化け物だと思うけどね……それ!」
頭の中でそんな事を思いながら、もう1度矢を放とうとする敵に全力で火炎放射を浴びせかけて灰にした後、紅魔館を破壊しようとする敵を見かけたため、能力を使って爆散させた。パチュリーの結界が張られているから大丈夫だと信じてはいるけど、念には念を入れておいても損はないとは思う。
(うーん……)
相変わらず激しい戦いが続く中、数多くの聖魔騎士団の面々に加護を与える行動を起こしているにしても、それ以外は何もしないで光の聖域に籠りきりの聖女2人が気になる。
光の聖域と味方に対する強力な加護の付与に想像以上の負担がのしかかっているのか、何か与り知らない考えがあっての行動なのか、万が一があってはこの軍勢が瓦解してしまう存在だから、味方が全滅するまで動かないのかは私には全然分からなかった。
だとしても、このまま紅魔館へと攻めてくる敵を始末し続け、お姉様やリーシェたちとの平和な時間を過ごせる様に、一生懸命頑張るのは変わらない。そう思いながら戦いを続行していた時、突如として状況が一変してしまう。
「フラン姉様危ない、左に避けてぇ!!」
「なっ……」
何故なら、今まで聞いた事もない大きさの声で、リーシェが私に対して危機が迫っていると呼びかけてきたためだ。勿論、その声が聞こえてすぐに回避行動を取ったのだけど間に合わなかった様で、右肩を槍の穂先が貫く光景を目にしてしまう。
とは言え、リーシェの言う通りに回避行動を取らなければ、貫かれていたのは恐らく胸辺りと思われたから、そう言う意味では間に合ったとは言えるか。
「嘘……こいつ、殆んど堪えてない!?」
「うぁぁぁ……このっ!!」
1秒程置いた後、今まで経験した事のない程の激痛と力抜けが私を襲ってくるものの、ここで動きを止めてしまうのは自殺行為も甚だしい。そのため、振り向き様にレーヴァテインをそのまま全力で振ったところ、何かが砕け散る音と共に苦悶の声が耳に入ってきた。
「間に合いましたね……しかし、この子の槍で貫かれてもなおこの力、フランドールは今まで
「エルラートさん! 大丈――」
「私は問題ありません! そんな事よりも、まずは目の前の敵を優先しなさい!」
すると、苦悶の声の正体は、レーヴァテインを受けても軽い怪我で済んでいる
で、案の定だけど魔法銀の槍で貫かれた時に出来た右肩の傷は、目に見えて回復速度が落ちていた。リーシェやお姉様たちには申し訳ないけど、少しでも回復速度を速めるために分身は消させてもらい、戦闘に集中出来る様に体勢を整えた。
「フランドール! 貴女の存在に脅かされている人間のために、私の槍に貫かれて死になさい!」
「ふっ、そんな頼みは……聞けないねぇ!!」
結果、先程よりはマシな回復速度になったものの、抜けた力まではこの状況下ではどうにもならない。今の私の攻撃で相手にもダメージを与える事は出来ているけど、同様に私もダメージを負っているため、このまま状況が好転しなければまずいかもしれない。
「しまっ……!!」
「エルラートさん、今です!」
「ありがとう、ジア!」
そんな感じで体感的にかなり長く戦闘を続けていた時、一瞬の緩みから左手のレーヴァテインが弾かれてしまうと言う、とんでもないミスを犯してしまった。
今代の聖女が、至近距離で攻撃体勢を整え済みである以上、回避は不可能であると判断した私は咄嗟に防御魔法を全力で発動させた上で目を瞑り、来る痛みに備えたものの、いつまで経ってもそれが来る事はなかった。
「あっ、リーシェ……」
「……」
何でなんだろう。そう不思議に思ってゆっくり目を開けてみると、あの暴走の時と似た青白い稲妻を纏っていたリーシェが、雷の結界で攻撃を受け止めてくれていたからだと分かった。
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