目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

147 / 251
全力の一撃

「聖女に迫るその輝き、油断大敵だね……!」

「ちっ! 近くで相対するとこれ程までに厄介だとは……」

 

 聖女を始末しようとした時、身を呈して妨害を試みてきた近衛の人との戦闘に入った私であったけど、主に2つの要因で上手い事攻め込めずにいた。

 

 1つ目は、単純に長い時間続いた聖女2人との戦いで消耗し、生成される魔力に任せた空を舞う様な超回避行動と、通常よりも的確な判断かつ強力な攻撃行動、身体を取り巻く稲妻による自動防御が維持出来なくなりつつあるからだ。

 

 戦闘前に付与しておいた防御魔法はしっかり働いているため、今のところは食らってもかすり傷程度ではあるけど、このまま長引く様なら本当に致命的な状況に陥る可能性が否めないから、早急に何とかしたいところだ。

 

 そして2つ目は、そんな状況下で近衛さんが、身体の負担が凄そうな程強力な光属性の力を解放し、聖女の2人に劣れども迫る強さを発揮し始めたからと言う理由があった。

 

 勿論、こうなる前も聖女に劣るとは言え、精鋭である近衛さんを弱いと見なして無視していた訳ではないけど、聖女に迫る勢いに強さまで発揮してくるなどとは予想していなかったから、本当に驚く。聖女の近衛さんに対する警戒が足りなかったと、しみじみ思い知らされた。

 

「なっ、これは……ありがたい!」

「聖女の加護が更に強力に……うあっ!!」

 

 ギリギリのところで持ちこたえているところに、ただでさえ聖女2人のサポートや、地上と空中からの執拗な光属性魔法などによる対空砲火ですら厳しかった。なのに、そこに加えて急激な力の上昇と加護が付与された近衛さんが加えられてしまえば、もう本当に地獄でしかない。

 現に、弾幕がキツすぎて攻撃を回避しきれず、近衛さんに隙を突かれて背中を斬られてしまった。防御魔法の重ねがけがなければ、今頃翼ごと裂かれていた事だろう。

 

「ここまでやって押しきれないとは……対抗出来ていない訳ではないとは言え、レミリアやフランドールたちによる犠牲者も増える一方……覚悟を決めねばならないな」

「貴方、一体何を……まさか」

「そのまさかです! 私が命をかけて時間を稼ぎますので、聖女様方は親衛隊や生き残りを連れてお逃げ下さい!」

 

 更に時が経ち、湧き出てくる力に任せた数々の超行動がほぼ出来なくなり、通常の回避行動と防御魔法を突破した攻撃に時折被弾しながらも戦っていた際、近衛さんが聖女2人を逃がそうと考えたらしく、命を捨てる覚悟で時間稼ぎをすると宣言をした。

 

 当然、私はそれをさせまいと何とか攻撃を仕掛けに行くも、加護に加えて命を燃やしてまで抵抗してくる近衛さんは聖女と同等に手強く、どうしても防戦に頻度が偏らざるを得なくなってしまっている。

 

 レミリア姉様やフラン姉様が援護に来てくれれば、近衛さんを突破した上で聖女2人を始末するのは容易くはなくても可能ではあるのだけど、状況がそれを許してはくれそうになかった。

 目の前の彼と同じ様なオーラを放つ近衛さんが3人居る上、それ以下の強さとは言え多くの敵と戦っているのに、援護のお願いなど出来る訳がない。

 

「そんな……ならば私たちも――」

「なりません! 確かに、人々の敵である吸血鬼を前にして撤退などしたくはないでしょうし、滅すまで戦い続けたい事でしょう。しかし、あやつらの他にも同等の危険度を誇る吸血鬼や悪魔共に対抗可能で、かつ人々の希望となるのは聖女様方しか居ないのです。ここで死んでしまうよりは逃げた方が何倍……いや、何十倍もマシですよ!」

 

 で、逃げろとの言葉を聞いてもなお戦おうとする今代の聖女な訳だけど、彼が強い意思を込めてそれを否定した後に、声を震わせながら逃げた方が良い理由を力説し始めた。

 相手の立場からすれば、これが撤退をする理由としてはこの上ない程理解出来るものとなるだろう。案の定、何か言いたげにしつつも戦場を不可思議な力で飛び回り、撤退の準備を聖女2人が始めていた事から、そうであると分かる。

 

「……」

 

 このまま戦闘を長引かせてしまえば、むざむざ聖女2人とその親衛隊たちを逃した挙げ句、命を燃やす覚悟を決めた近衛さんに私だけがやられてしまうと言う、何とも救えない展開となりかねない。

 故に私は、今現在持てる魔力のほぼ全てを収束させた雷天の矢弾で、せめて聖女を1人でも始末しようと考えた。

 

 ただし、それを実行に移すにはそれなりの時間が必要であるため、魔力を収束させる間はその他の攻撃を全て中止し、近衛さんやその他の聖魔騎士団からの攻撃の回避に専念すると決意して、実行に移す。

 

(やはり、聖女の命を狙うともなればそうなるか……っ!!)

 

 当然と言えば当然だけど、私の狙いにすぐに気づいた近衛さんからの攻撃の鋭さはより一層増してきていた。

 かなりの長時間戦闘を続けてきて限界が近づいてきているのと、最高の一撃を当てるために最初から発動している防御魔法以外が使えないため、近接攻撃に加えて時折放たれる音速の光弾の回避が非常に厳しいものとなっている。

 

「っ! これが、光に焼かれる感覚……脚の感覚が鈍くなっていくのが痛い……」

「ようやく通ったが、それ程傷は深くない様だな……化け物めぇ!」

 

 で、もう少しで魔力収束の準備が整うと言ったところで遂に、回避しきれなかった相手の全力の光弾が防御魔法を突破し、脚を聖なる光で焼きながら貫通させられてしまった。

 戦闘序盤、フラン姉様が聖女の槍で右肩を貫かれた時も凄く痛そうだったけれど、今ならその気持ちが嫌と言う程私は理解出来てしまっている。2度とこんな経験はしたくないものだ。

 しかし、だからと言ってこの手を緩める訳には行かないため、神の目(ゴッドアイ)を解除してその分の魔力を傷の治癒へと回し、痛みに耐えながら準備を続けていく。

 

「来たっ! 当たれぇぇーー!!」

 

 そして、1分経った頃にようやく魔力収束が終わり、聖女へと放てる備えが出来た。なので私は、回避を続けながら最高のタイミングが来るまで待ち、30秒後に対象である次代の聖女へと矢を放った。

 

(よし、当たっ……えっ!?)

 

 しかし、私の矢は聖女へと当たるその刹那、一部の聖魔騎士団を除いた聖女2人を含む敵たちと同時に魔法か何かで転移したため、効果の有無が不明のままで終わる事となってしまった。

 逃げたと同時に攻撃が消えたと言う事は、逃げた先で爆発を起こしたはずであり、全く効果がない訳ない……とは思っておこう。

 

「はあっ、はあっ、はあっ……一歩、遅かった……」

「っ!! 奴から感じる圧が急減した、今がその時ぃーー!」

「くっ……!!」

 

 同時に、魔力の大半を使ってしまった事によって身体が動かしづらくなり、魔力を媒介に発動していた防御魔法も強制解除されてしまい、反射回避も上手く発動しなくなってしまった。

 結果、同じ様に限界が近そうな近衛さんが最後の特攻に反応しきれず、ほぼ直撃コースへとなってしまう。

 

「貴方で終わりよ……グングニル!!」

 

 だから、これは相当な身体へのダメージを覚悟しなければと思ったけれど、いつの間にか下の敵を全員始末していたらしいボロボロのレミリア姉様が、紅い稲妻を纏いながら飛翔するグングニルで粉微塵に吹き飛ばしてくれた事によって、その事態にはならずに済んだ。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。