「リーシェ、お疲れ様。見ているこっちが惚れ惚れする位の戦いで本当、私の事の様に誇らしいわ」
「えへへ……そんなに褒めてくれるなんて、凄く嬉しいな」
何だかんだでリーテノン伯爵とケルラノ伯爵との手合わせを終え、お礼の言い合いなどの簡単なやり取りを済ませた後、私は近づいてきたレミリア姉様から思い切り褒められたりしていた。
初対面かつ初めてやった相手とは言え、姉様2人やたまに来る
けれど、大袈裟であってもそうでなくても自分のした事に対して褒めてもらえれば、相手にもよるけど嬉しく思う。だから、今回の様に褒めてくれる相手が大好きなレミリア姉様ならもとより、来客たちの応対をしているフラン姉様なら、何であれ心が幸せで満たされる位には嬉しい。
勿論、その相手が姉様2人以外の館の皆であっても強さこそに若干の差はあれど、同じ思いを抱く事だろう。
「お姉様! あの4人、もうそろそろ帰るって言ってるよ!」
すると、レミリア姉様との幸せな会話を交わしている最中、話が途切れたタイミングを見計らったフラン姉様が、休憩を終えたレイブン伯爵とルーテ夫人を含めた4人が帰ると伝えてきた。
彼らが紅魔館へとやって来てから伯爵2人との手合わせを終える今まで、休憩時間を含めても1時間を少し超える程度である。訪ねてきた理由が理由なだけにもう少し居ると思っていたために、何でなのかと疑問が芽生えた。
「あら、そうなの? 随分と早い帰りね。伯爵2人とリーシェの手合わせも短い時間で終わったけど、どうしてかしら?」
「うん。私もそう思って聞いてみたんだけど、手合わせした2人が元々軽く力を見て感じたいだけだったからってさ」
「なるほど、そう言う事だったのね」
ただ、その疑問はフラン姉様によって彼らが元々軽く戦って終わらせる予定だったからと判明し、解消される事となった。
まあ、そもそも勝ち負けを決めに来たとは言ってなかったし、軽く力を見て感じたいとの理由なら当人のさじ加減で時間も変わる訳で、この短さで帰るのも納得である。
「リーシェさん、本日は彼らの頼みを聞いていただきありがとうございました。感謝しています。レミリアさんもフランさんも、この場への応対をありがとうございます」
「どういたしまして。こっちも良い経験にはなったと思ってる」
「この程度なら構わないわ。リーシェが良かったと言ってるからね」
「私も、右に同じだよ!」
そんな事を頭の片隅で考えながら、私はレミリア姉様やフラン姉様と共に用件を済ませて帰ろうとしている4人と会話を交わしながら門前へと向かい、飛んで行って姿が見えなくなるまで見送りをした。
改めて思うけど、総合的な戦闘力では上位吸血鬼と名乗ってもあながち間違いではない位に強い彼ら2人との戦いは、私にとってかなり良い経験となった。
吸血鬼としての基本的な力ではそれなりに劣っていても、1人目であれば近接戦闘と魔法を組み合わせて戦ったり、2人目なら氷と土属性の魔法を的確に扱ってきたりと、技術力が高かったのだから当然と言えば当然だ。
これで仮に、姉様2人と同等かそれ以上の力を持っていたとしたら非常に辛い戦いとなっていたのが、火を見るよりも明らかだったのだから。
「そう言えばフラン姉様。凄く今更なんだけど、一緒に居た妖精さんたちってどこに行ったの?」
「妖精さんならキッチンに居るはずだよ。リーシェが手合わせをしてた時に、お姉様がおやつを作って欲しいって頼んでたから」
「ええ。手合わせの途中でお願いしておいたからもうすぐ出来上がると思うし、貴女も一緒に食堂に行きましょう?」
「うん、勿論行くよ。妖精さんの作るおやつは美味しいからね」
で、手合わせを終えてから気になっていたけど雰囲気的に言えなかった、始まるまで一緒に居たはずの妖精さんの居場所についてをフラン姉様に尋ねたところ、食堂にある調理場でおやつを作っていると答えてくれた。何でも、途中でレミリア姉様がお願いしていたらしく、もうすぐ完成するだろうとの事らしい。
紅魔館の時計台を見てみると、いつもおやつを食べたりしてのんびりする時間帯であったからなるほどと納得すると同時に、ちょうど私たちが食堂へ向かおうとしているタイミングの時に完成間近となる様に仕組んだのは凄いと思った。
言わずもがな、そんなレミリア姉様のお願いを聞き入れて頑張ってくれているメイド妖精さんたちも十分凄い。彼女たちが居なければ毎日の食事時が退屈な一時と化し、私たちが趣味を堪能出来る時間がかなり減る上に、館内が色々と悲惨な事になってしまう訳だから当たり前の評価だろう。
「あっ、レミリアさま! 今ちょうどお願いされたおやつが完成したので、お届けに行こうと思っていたところなんです!」
「あら、そうなの? 私もそろそろかと思って2人を連れて来たのだけど、ちょうど良いタイミングだったみたいね」
「そうですね! えっと……じゃあ、ここで食べる感じですか?」
「ええ、勿論よ」
「分かりました!」
姉様2人と当たり障りのない会話を交わしながら食堂へ向かい、扉を開けようとしたその瞬間に扉が開き、食欲をそそる匂いを醸し出す焼き菓子の入った小さなバスケットを3つ持ったメイド妖精さんと鉢合わせた。彼女曰く、今から部屋に行って届けに行くつもりだったとの事。
何と言う名前なのかは分からないけれど、見た目も匂いもかなり美味しそうな焼き菓子であるから、どんな味なのか食べる前から楽しみだ。そんな思いを抱きながら、私は姉様2人と一緒に食堂へと入っていった。
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