「レミリアさま、フランさま。どうかお願いします。見せたいものがあるので、今すぐ私たちのお部屋に来てくれませんか? 勿論、嫌なのであれば嫌で構わないですけど……」
仕事の量が多過ぎて面倒になりかけていた事もあり、気分転換がてらフランの部屋で過ごしていた今日、私とフランはここに訪れた青髪の妖精を含めた3人のメイド妖精たちから、見せたいものがあるから部屋に来てくれないかとお願いをされていた。
あくまでも私やフランの意思を尊重するとの事だけど、その仕草などから何がなんでも来て欲しいと思っているのはすぐに分かった。
しかし、そうまでして彼女たち自身の部屋に私やフランを是が非でも呼びたい理由が理解出来ない。考えられるとしたら、見せたいものが他の誰かには見せたくない何かである位だろう。まあ、その何かはまるで予想出来ない訳だけど。
「お姉様さえ良ければ私、妖精さんたちが見せたい物って言うのが気になってるから行くつもりだけど」
「フランが良いなら私もそれで構わないわ。そこまでして見せたい物が何か、結構気になるからね」
「分かった! と言う訳で、私とお姉様は妖精さんたちの部屋に行くよ」
「えっと、ありがとうございます!」
などと考えていた時、フランが私さえ良ければ行ってみたいなと答えたのを耳にした。どうやら、3人がここまでして見せたい物が一体何なのか、私と同様に気になっているらしかった。
ともなれば、あれこれ考える余地はない。私は彼女たちの部屋にあると言う是が非でも見せたいものの正体を知るため、頼みを聞き入れると伝えてからフランと一緒についていった。
(あの子たち、本当に何を見せたいのかしら……?)
連れていかれる道中、妙な笑みを浮かべながら私やフランの方をチラチラと見てきたり、殆んど聞こえない位の声で何か話し合っている3人を見て、本当に何を見せたいんだと改めて気になった。
どうしたのかと試しに尋ねてみても、行ってみてのお楽しみですと言われてはぐらかされしまうけれど、これらの事象を鑑みるに相当な衝撃を受けるものである事だけは確かだろう。
「あら……やはり、フランもレミィも連れてこられたのね」
「ええ。この様子だと、パチェたちも同じ様ね。リーシェが居ないのが気になるけど……」
そんな思考を巡らせながらメイド妖精たちの部屋の前まで連れられて行くと、パチェとこあ、美鈴の3人が私やフランと同じ様に部屋の前へ連れてこられていたのを目にした。これを見るに、予想に反して対象は私たちだけではなかったらしい。
ただ、そうなるとこの面々にリーシェが入っていないのが尚更不思議でならなかった。魔法の研究か何かで疲れて寝ていたから、起こすのは忍びないとでも思ったのだろうか。
「さてと……リーシェさま! 皆さん集まりましたけど、入ってもらっても大丈夫ですか?」
「うん、良いよ……」
と考えていると、青髪の妖精が閉まっていた部屋の扉を開け、リーシェに対してここに呼ばれた全員が入っても良いかどうかの許可を求め始めた。この様子から、妖精たちが是が非でも見せたいものにはリーシェが関係している事が判明する。
しかも、許可を求めてきた青髪の妖精に対して許可を出す時の声が、妙に恥ずかしがっている様に聞こえたのが不思議に思えてならない。
と言うか今気づいたけど、私たちを連れてきた妖精やパチェたちを連れてきたで妖精は、全員がうちの洋服担当である。もしかしたら、リーシェが
「「「……」」」
頭でそう予想を立てながら、先に来ていたパチェたちが許可が出たために部屋の中に入っていったんだけど、どう言う訳か急に黙り込んだらしく、声が全く聞こえなくなっていた。
まあ、さっきのリーシェの声を聞くに、3人の見たものがかなりの衝撃的なものであったのだろう事は想像に容易い。やはり、私の推測は正しかったと確信を得た。
「「……へっ!?」」
で、黙り込んでしまった3人に続いて私も部屋の中に入ったところ、予想が当たっていたにも関わらず驚いてしまった。一緒に入ったフランも私とほぼ同時に声をあげて驚いたけど、あれ程までに肌を露出する装いを避けているはずのリーシェが、腕どころか肩まで露出している灰色のドレスを身に付けていたともなれば当然としか言えない。
加えて、腰辺りまで伸びる白寄りの銀髪には薄い紅色の花柄髪飾りを、足元は白色のソックスやいつもとは少し違う意匠の凝らされた靴を身に付け、用意されていた椅子に綺麗な姿勢を保って座っているから尚更であった。
そして、妖精たちが是が非でも私とフランをここへ連れて来たがっていた理由も、今なら良く分かる。見事なまでに私たちは、彼女たちの
「皆、その……私の今の格好、どうかな……?」
なんて事を考えていると、椅子から立ち上がってゆっくりと時計回りをしたリーシェから、今の自分の格好についてどう思っているかと聞かれた。慣れない格好によって感じる恥ずかしさもさる事ながら、自分の今の姿に自信があまり持てていないらしかった。
「どうもこうも、良いに決まってるわ。可愛いのもそうだけど、今のリーシェはとっても綺麗に見えるもの」
「うん! これが悪いだなんて、ここに居る全員微塵も思っていないから安心してね!」
しかし、今の格好が良いか悪いかなど聞かれるまでもない。私はすぐに良いに決まっていると答えた上で自信を着けてもらいたいがために、思い浮かぶ限りの褒め言葉をかけた。
それに続き、多少違えど私と同じ様に思いのフランや他の皆も各々、リーシェの格好について思っている事を述べ始める。大体が似た感じの内容の感想ではあったものの、美鈴が『服を作ったのが青髪の妖精の方々であってこその驚きです』と言った時は、確かにその通りだと納得した。
勿論、他の誰かが作った服をどこかから仕入れて着せたとしても綺麗なのだろう。しかし、彼女たちの仕事の性質上私やフランやリーシェの事をメイド妖精の中で最も見てくれているのだから、考えるまでもなかったと思い知る。
「……ありがと」
そうしてこんなやり取りを交わし続けた結果、皆から好意的な反応をもらえた事が余程嬉しかったらしい。ただでさえ、恥ずかしさで顔を赤く染めていたリーシェが更に顔を赤く染め、視線を逸らしてから一言だけ言っていた。
更に、少し経ってから『しばらくこのままで居ようかな』と、普段なら絶対に言わない事を雰囲気に呑まれたからかボソッと言ってたけど、私にも聞き取れる位の距離だから、1番近くに居るフランには聞かれていそうだとしか思えない。
「えっ、それって本当な――」
「ごめん、雰囲気で言っちゃったの。フラン姉様、今の独り言は忘れて……」
「そうなの? 分かった」
案の定、しっかりと聞き取れていたフランから詰め寄られるも、雰囲気で言ってしまっていたらしいリーシェは即座に忘れてくれと、頭を下げてお願いしていた。正直、まだ見れるのかと期待してしまったけれど、本人に無理強いをさせる訳にも行かないから仕方ないだろう。
「あの……もう、いつもの格好に戻りたいんだけど……良いかな?」
「勿論よ。リーシェ、この格好を見せてくれてありがとうね」
すると、流石に恥ずかしさと緊張が限界に近くなってきたリーシェからいつもの格好に戻りたいと言われたため、私を含めた全員がお礼を言ってから部屋を後にした。
そう言えば、折角作ったあの服はどうするのだろうか。着るのが今回限りなのは勿体ない気もするから、特別な時だけでも着たらどうかと勧めてみるのも良いかも知れない。
こうして、驚きを禁じ得なかった短い様で長いこの一時は、幕を閉じる事となった。
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