「フラン姉様、今日も来たよ……?」
今日1日の魔法の研究や開発に使える分の時間を使いきり、やる事がなくなったためにフラン姉様との時間を過ごそうと思った私が自室を訪れると、やたら高級そうな装いの手紙を見ながらフラン姉様が顔をしかめていたのを見た。
角度や距離などの問題で、手紙に書かれている事は全く分からないけど、あの様子からして確実に嬉しいものではないと思われた。嬉しさが一周回って困惑などの感情に超変化した可能性もなくはないけど、だとしても極めて低い確率だろう。
「フラン姉様、遊びに来たよ! それ見て考え込んでたけど、何かあったの?」
「あっ、気づかなくてごめん! 初めてこんな手紙もらって、ちょっと困惑しててさ」
頭の中で思考を巡らせながら、困惑していて私に気づいていない様子のフラン姉様の側に寄ってからもう1度呼びかけると、今度はすぐに気づいてもらえた。やはり、何となく察してはいたけど、最初に呼びかけに応じなかったのは手紙の内容が衝撃的で、周りからの音が一瞬入ってこなかったからみたいだ。
「そっか。フラン姉様が困惑するだなんてよっぽどだね」
「うん……もし良ければ、リーシェも見てみて」
「えっ、良いの? 私への手紙じゃないのに」
「勿論だよ! 多分、リーシェもビックリすると思うなぁ」
すると、フラン姉様が不意に手に持っていた手紙を私に差し出し、そこに書かれている内容を見てみて欲しいと言ってきた。私への手紙ではないのに見ても良いのかと思ったけれど、本人が良いなら別に問題ないか。
(貴女を下さい……えっ、えっ!? つまり……そう言う事……だよね?)
なので、差し出された手紙を受け取って内容を隅から隅まで見たところ、これがフラン姉様へ宛てた恋文としか思えない手紙であると言う事が判明し、頭を思い切り殴られたかと思う位の衝撃を受けた。
確かに、これなら私がビックリすると思っても不思議ではないし、初めてこんな手紙をもらった時に困惑するのは仕方ないと言えるだろう。しかし、もらった
いや、フラン姉様が紅魔館の住人ですらない赤の他人に取られる
「アハハ! やっぱりそうなるよね!」
「そりゃあもう……ね。フラン姉様、一応聞くけど……返事はどうするの?」
「ふふっ……言わずもがな、お断りだよ。2回軽い挨拶を交わした程度だし、そもそもリーシェの容姿とか性格が気持ち悪いとかぬかしてたのを聞いた事があるからね。当時は何とか耐えたけど、耳に入れた時は反射的にきゅっとしそうになったわ。今も送り主を思い出すだけで……」
「あっ、そう言う手合いの送り主だったんだ」
思わず言葉を詰まらせながら、フラン姉様に返事をどうするかと尋ねると、私ですらゾッとする怒りを見せてから笑みを浮かべ、持っていた手紙を容赦なく一瞬で灰にしてからお断りであると即答してきた。
理由としては、手紙の主との関係は軽い挨拶を2度交わした程度でそもそも知り合いですらないのと、いつぞや私の容姿や性格に対する悪口を言っていたのを偶然聞いたからとの事。
そして、もはや1つ目の理由は単なるおまけと化していて、どちらかと言えば2つ目の理由の方が比べ物にならない位に大きかった様だ。
私自身は、赤の他人が影でなら言わずもがな、例え面と向かってどれだけ度を超えた言葉で罵ったりしてきたとしても他人事だし、反論とかに使う時間がもったいないので
しかし、姉様2人はもとより私を慕ってくれている紅魔館の皆はその限りではない。そうでなくても、誰に向けられたかどうかなど関係なしに度を超えた悪口自体を嫌う人だって当然居る。
だから、偶然聞かれる可能性のある場所で何で私への酷い悪口を言ってしまうのかと、手紙の送り主に少し呆れた。
同時に、心の中を徐々に侵食していく冷たい恐怖がたった一言で一瞬の内に消し飛び、とても暖かく幸せな何かで満たされていくのを実感したこの事から、改めて私はフラン姉様に支えられているんだなと再確認した。
「リーシェ、何だかとっても嬉しそうに見えるね」
「うん。だって、この世でたった2人の愛しの家族、その内の1人であるフラン姉様が赤の他人に取られて、今まで通り一緒に過ごせなくなるって考えると、凄く怖いし死んじゃう位に辛く苦しくて……その相手が、
で、そんな感じで幸せな気分に満たされていれば自然と表情や仕草に出てしまう様で、フラン姉様から嬉しそうに見えるねと指摘される。事実、嬉しいのは否定出来ないしするつもりもさらさらなかったから、それを認めた上で今までの話を聞いて抱いた気持ちをついでに暴露した。
この行為には、私が今どれだけフラン姉様の事を愛しく思ってるかを伝えて姉妹同士の仲を深め、強制させずに赤の他人に気を向ける確率を抑えたいとの強い意図があった。勿論、だとしても万が一……いや、億が一気が向いて取られてしまう可能性もあるけど、そこまではどうしようもないし、今考えるのは止めにしておこう。
「そっか。私ってそんな風に想われてるんだ……ふふっ、えいっ!」
「わっ! んぅ……」
「えへへ、私も同じだからね! 何て言っても、リーシェは愛しの妹だもの!」
そして、私の心の内を包み隠さず全て話し終えてからフラン姉様が今日1番の笑顔を見せてくれた次の瞬間、思い切り抱き寄せてくると同時に頬ずりしてきたり、頭を撫でるなどと言ったスキンシップを行ってきた。
その際に、私が姉様2人に抱いている感情と同じ様な感情を抱いていると知り、心を満たしていた暖かく幸せな何かが溢れ出てくる感覚を覚えたけど、落ち着いて考えてみたらフラン姉様が誰かに取られるなど、今までの様子から見てあり得ない。
要するに、衝撃のあまりその事が頭から抜けていた私が、あの手紙を見て1人で勝手に不安がっていただけである。過ぎた事を考えても仕方ないものの、恥ずかしいとしか言えない。
「フラン、居るかし……あら、リーシェも居たのね。良いところだったみたいで、ごめんなさい」
「ううん、大丈夫だよ! それより、お姉様も一緒においで!」
「私も大丈夫だから、レミリア姉様も来て」
「良いの? じゃあ、遠慮なく……」
ふれあいにはならない程度に色々とされるがままになってから10分、部屋に用事か何かで訪れたレミリア姉様をフラン姉様が誘ったため、今から3人での時間を過ごすと決まった。
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