目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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企みと歓迎の意

「まさか、全員で来て頂けるなんて……誠に感謝です」

「ようこそ、我が館へ。スカーレット家の方々」

「ええ。こちらこそ、招待感謝するわ」

 

 暑くも寒くもなく快適な真夜中、いつもの様に自室で魔導書を読み耽っていた私は姉様2人からのお願いで、一緒に傘下の吸血鬼一家の館へと訪れていた。

 

 ここに来る前に、急遽開催される食事会への招待だとレミリア姉様の話で聞いていたから、他の来客が居るであろう食堂かパーティー会場に相当する場所に案内されるのかと思っていたけど、今私たちが実際にメイド悪魔さんに案内された場所は会議室らしき部屋である。

 

 彼らの意図は全くの不明ではあるものの、急遽開催される食事会と言う事で、もしかしたら使者を紅魔館へと送った後のタイミングで何らかのトラブルが起こり、準備が遅れてしまったのかも知れない。

 

 もしくは、最初から大人数での食事会の予定はなく、館の当主同士のこじんまりとしたものにする予定だった可能性もある。相手の態度からしてその可能性の方が前者よりも大きいと考えられるけど、果たしてどうなのだろうか。

 

「ところで、来客が居ない上にこの部屋には料理が何もないのだけど、今からここに運ばれてくるのかしら?」

「いえ、ここには運ばれては来ません。食事会の食事は大食堂にて用意されていますし、来客もそこに居ます。当然、今からお三方をこの場に案内した訳を説明致しますが……」

 

 ただ、その訳は同じ疑問を抱いていたレミリア姉様が、何だか凄く申し訳なさそうにしている当主の吸血鬼さんに尋ねた事で、食事会への招待に秘められた裏も含めてすぐに明らかになる。

 

 曰く、この食事会に私たちを呼んだ元々の理由が、大食堂に居る来客のとある一家からの嫌がらせがあまりにも酷いので、スカーレット家との関係をアピールして黙らせるためとの事。

 勿論、私たちが何か行動を起こす必要はなく、強いて言うなら当主や夫人、館の住人たちと仲良さそうに会話を交わしてもらえれば嬉しいらしい。

 

 で、他の吸血鬼一家などにも招待状を送ったらしいのだけど、来れないまたは行かないと伝えてきた人を除き、全員がまだ来ていないらしい。私たちを最初にここへ案内したのも、それが理由だと言っていた。

 

「ふーん……そう言う意図があったとはね」

「何も言わずに食事会とだけ言って呼んだ事、これが貴女に対する不遜な態度だとは重々承知しております。しかし、歓迎の意は決して嘘ではありませんし、終わった後の対価もしっかりと用意してあります」

「まあ、なら今回()良いわ。私たちにも得はあっても損はないし、そもそも何か裏があるなって漠然と察した上で来たからね」

 

 色々と説明をされたけれど、要するに私たちを都合良く利用したと言う事であり、普通に考えればあまり良い気はしない。

 しかし、レミリア姉様は全くではないけど殆んど気にしてはおらず、加えてフラン姉様も同じ様に思っているらしく、表情はいつも通りであった。

 ならば、姉様たちが良ければ基本的には良いとのスタンスで居る私がとやかく口を出す道理はない。そう思いながら、悪魔の誓約を交わすレミリア姉様と相手を見守った。

 

「寛大な対応、感謝致します……あっ、もしお望みなら暇潰しのためのちょっとした紅茶や赤ワイン、魔導書などの本をご用意致しますが」

「それなら、私は赤ワインを頂こうかしら。フランとリーシェ、貴女たちはどうする? 暇潰しのためのものが用意されるらしいわよ」

「うーん、じゃあ紅茶で!」

「……私も紅茶かな」

「畏まりました。じゃあ、君。いつもの様に、紅茶をよろしく頼むよ」

 

 そうしてお互いに誓約を交わした後は、当主吸血鬼さんから暇潰しのものは居るかどうかと聞かれたので、姉様2人に続いて紅茶が欲しいと答えた。

 

 良く考えてみたら、いつもの妖精さんが淹れてくれる紅茶以外ではレイブン家のものしか飲んだ記憶がなかった。後ろで控えていた1人のメイド悪魔さんが淹れてくれるらしいから、どんな味なのかは少し楽しみではある。

 

「あの、えっと……お待たせ致しました。それでは、淹れさせて頂きますね」

「うん、お願い」

「お願いね、悪魔さん!」

 

 待つ事10分、ティーポットと2人分のカップを持ってきたメイド悪魔さんに紅茶を淹れてもらい、フラン姉様と一緒に飲んでみたところ、想像の上を行く美味しさにかなり驚いた。正直、これは妖精さんの紅茶淹れの腕前を超えていると言えるだろう。

 

 なので、緊張しているメイド悪魔さんにフラン姉様に続いて美味しかったとしっかり伝えた。紅茶淹れと料理の腕は別物だとは当然分かってはいるけど、この様子なら食事会に出されるであろう料理の数々も、相当美味しいのだろうと思わざるを得ない。

 

(純粋な食事()()を楽しめれば良いけど……)

 

 しかし、私たちが呼ばれた理由が理由なだけに、姉様2人との食事を楽しめるかどうかが唯一の懸念材料である。出来る事なら、他人との会話は招待したこの館の当主と夫人を含めた関係者のみで済んでくれれば嬉しいけど、その辺は始まってみないと分からないか。

 

「失礼します! 招待したお客様の内来れる方々が全員、大食堂へと集まりました! ()()()()も、かなり盛り上がっているご様子です!」

「やっとか……それではスカーレット家の方々、準備が整いましたので大食堂への移動をお願いします」

 

 そんなこんなで暇な時間を過ごす事50分、別のメイド悪魔さんが来れる招待客が全員揃ったと伝えに来たため魔導書を閉じ、当主の吸血鬼さんに促されて会場である大食堂へと全員で向かって行った。




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