(うん、まあ……予想通りと言えば予想通りだけど……)
食事会への招待客が全員訪れたと言う事で当主の吸血鬼さんの案内で館の大食堂へと入り、先に楽しんでいた来客たちと同様に出された料理を味わっていた私は、周りから浴びせられている視線が多過ぎて落ち着けずにいた。
勿論、こうなると全く予想していなかった訳ではない。何かと外出する頻度の多いレミリア姉様やそれに次ぐ頻度のフラン姉様よりは、
しかし、会場の来客の7割から視線を浴びると考えてなかったともなれば、流石の私も嫌でも意識せざるを得ない。それと同時に、外出する頻度の異常な少なさを甘く見ていた事に対して、心の中で後悔の念が渦巻く。
「リーシェ嬢? 表情が険しいのですが、まさかご不満があるのでしょうか……?」
「えっ……」
そんな事を思いながらふと隣を向いた時、気づかない内に表情が険しくなっていたのが原因で、当主と当主夫人の吸血鬼さんやメイド悪魔さんに要らぬ不安感を与えてしまっていた事に気づいた。
勿論、このまま放っておくのは良くない事であり、かつ私の意にも反している状況でもあるため急いで弁明を行い、何とか誤解を解く事に成功する。
が、安心させるためと思って笑顔を見せたのがまずかったらしく、視線がより集まってしまったのが痛い。まあ、これについてはもうないものとして無視し、姉様2人と一緒に出された美味しい料理を堪能する事にしよう。
「ねえ。あそこに居る吸血鬼さんたち、何かこっちの方を凄く恨めしそうに見てるけど、もしかして嫌がらせの相手なのかな?」
メイド悪魔さんからとある焼き菓子のおすすめの食べ方を教わり、レミリア姉様と一緒にその通りに食べて楽しんでいると、フラン姉様がとある方向を指差しながら、当主の吸血鬼さんに話しかけ始めたのが聞こえる。どうやら、こちらを恨めしそうに見る吸血鬼さんたちが居る事に気がついたらしい。
「……はい、彼らがそうです」
「ふーん……」
私とレミリア姉様も気になってその方向を向いてみたところ、確かにそうとしか思えない形相の吸血鬼さんたちを発見した。
視線を追ってみると当主さんの方に行き着いて、かつ当主さん自身もフラン姉様の疑問に対してそうだと認めていたことから推測するに、恨み妬みと言った感情が込められているのだろう。
(大丈夫かな?)
今は何もしないだろうけど、私たちが帰った後に当主さんたちに対して何か地味かつ陰湿な嫌がらせが加速しそうではある。
ただ、レミリア姉様が交わした『悪魔の誓約』からすれば範囲外となるため、その辺までは考えなくても問題はない。今この食事会が終わるまで、スカーレット家とここの当主さんの関係は深いものだとのアピールに付き合えば良い訳なのだから。
「そう言えば
「わ、私ですか? えっと、確か100年位前に当主様に召喚されて契約したんです。とても居心地の良い館で良かったと思ってます」
「へぇ……じゃあ、地下の大図書館の司書やってるうちのこあと一緒だね!」
「図書館の司書さんですか。何だかとても、賢そうですね」
と言う事で、フラン姉様とメイド悪魔さんのこれ見よがしのアピールが始まったのをきっかけとして、私やレミリア姉様も当主さん含めた館の住人たちと同様の事を始めた。
元々付き合いが殆んどないに等しく、故に前から仲の良い体で振る舞うのは非常に難しい事ではあったものの、姉様2人やこの館の住人たちのフォローで何とかボロを出さずに例の嫌がらせ集団にプレッシャーを与え、萎縮させる事に成功する。
(一応、魔力は覚えとこうかな)
そして、この賑やかな食事会の時を姉様たちと共に過ごしつつ、私は一応今まで当主さんへの嫌がらせを敢行していた吸血鬼さんの発する魔力を、頭の中でしっかりと記憶しようと決めている。いくらスカーレット家が抑止となるとは言え、ああ言う手合いはいずれ私たちに何かしてこないとも限らないからだ。
しかし、仲良い関係をアピールするだけで悔しそうにはしても大人しく視線を逸らし、そもそも私たちには恨めしそうな視線を向けていないのを見るに、可能性は限りなく低いと考えても良いだろう。故に、警戒度はコルベルシア家や聖魔騎士団、吸血鬼狩りには劣るけど。
「いやぁ、今日は急な招待を受けて頂いて本当にありがとうございました。目的であるアピールも成功した様ですし、食事会も大成功に終わりましたので……お礼は後日、用意出来得る中で最も良いものを使者に持たせます」
「ええ。こちらこそ、居心地の良さと美味しい料理と紅茶の提供を感謝するわ。それと貴女、今日は1日ありがとうね」
「あっ、はい! レミリア様……」
魔力を覚えるのに数分使った後は、当主さんへの協力をしながら姉様2人との会話や食事を楽しんだり、周りの来客がほぼ一斉に集まる程の光景を見たりなどしながら終わりまで過ごした。
ちなみにその光景と言うのが、酷く酔ったりなどで相手がまともな状態ではなかったハンデがあっても、メイド悪魔さんがたった3撃の近接魔法で、相手である吸血鬼さんを沈黙させた30分前の事である。
経緯としては、面倒なのに私が絡まれそうになった瞬間に助けてくれたと言うものだけど、あの時開けた場所に吸血鬼さんの服の襟元を掴んで連れていく際の彼女の変わり様には、レミリア姉様たちと一緒に大層衝撃を受けた。
計らずも、何か仕出かした時の彼女の恐ろしさがしっかりと、来客たちに示された1日となっただろう。
「私からもお礼を言うね! ありがとう!」
「うん。確かにあれは面倒そうだったし、感謝してるよ」
こうして、この食事会は大きなトラブルも起こらぬまま終了する事となった。
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