目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

171 / 251
留守番の依頼(中編)

「2人共、遊びに来た……訳じゃないけど来たよ」

 

 レイブン家の館へと入り、待っていたらしいメイドさんに一時滞在する部屋へと案内され、行き交う住人たちと挨拶を交わしながら兄弟2人の部屋に、私とフラン姉様はいつもの様に顔を出していた。

 

 今回訪れている目的は留守番、館の安全を守ると言うものである故に、比較的短間隔で能力を使って警戒する必要があった。そのため、無警戒かつ気楽に遊んだり、レイブン兄弟2人と会話を交わしたりする訳にもいかないのがいつもと違うところである。

 

 とは言え、場所が場所なだけに気負い過ぎる必要もない。この館には並の侵入者であれば退けるだけの強さを持つ悪魔さんや吸血鬼さん、種族の分からない妖怪さんが30~40人程居るからだ。

 加えて、用事で今は伯爵と夫人は居ないものの、姉様2人や私とも戦えるだけの強さを持つ兄弟2人が居るのだから尚更だった。

 

「おっ、フランドールに……今日は天使様も居るのか。雷弓に明らかにヤバそうな矢の入った矢筒も携えて来てると。当然、うちの館の皆も強ぇし、ミド兄は言わずもがな……完全無欠だし、こりゃもう敵襲あっても大丈夫だろ」

「うん、ネイビス。確かにそう思うのも無理はないけど、あんまり油断はしない方が良いよ。と言うか、敵襲はない方が良いと思うんだけど」

「まあ、それは違いないな」

 

 なんて事を考えていると、ネイビスがこっちを2度見た後に笑みを浮かべ、少しばかり見えていた警戒感が完全に霧散していくのを私は感じた。

 

 相変わらずの私に対する反応はひとまず置いておいて、ネイビスの館に住み働く住人たちに対する絶対的な信頼感は、見ていていい気分にしてくれる。

 そう言う類いの信頼感を抱く対象ではない他人の私でさえこうなのだから、ここに来るまでにすれ違ったこの館の住人たちの殆んどが心を幸せな気持ちで満たしていて、ネイビスに好意的な態度を取るのも当然の事と言えるだろう。

 

 そして、それは兄であるミドナも同様らしく、ネイビスよりは表し方が控え目ではあるものの皆に対する信頼感を強く抱いていて、すれ違った皆からの態度も殆んど同じであった。

 

「失礼します。えっと……その、フランドール様にリーシェ様。如何お過ごしでしょうか?」

「えっとね、快適だよ!」

「私も、フラン姉様と同じ風に思ってる」

 

 頭の中でそう考えつつ、兄弟2人やフラン姉様と一緒に色々な内容の会話を交わしたりしながら過ごしていた時、部屋の扉をノックする音と共に、副メイド長の吸血鬼さんが入ってくるのが見えた。相変わらず、彼女の一挙一動には風格を感じる。

 

 ただ、私やフラン姉様の知り得ない何かによる問題でも発生しているのか、視線がこちらを微妙に向いていない様な感じがした。

 ちなみに、一緒に居た兄弟2人は彼女の様子から何か起きているのは察したものの、何が起きているかまでは分かっていないらしい。そんなものだから、一体どうしたのかと気になって聞いてみたくなった。

 

 しかし、そうは言っても動きなどを見て彼女の体調が優れない訳でもなさそうで、かつ私やフラン姉様に何か酷い事しようとしている風にも見えない。それに、仲の良い家同士だとしてもあまり無理に館の事に聞くのも良くないだろうし、ひとまず聞かれた問いに対する返事をするのみに留めておこう。

 

「なあ、どうした? いつにも増して変だが、大丈夫か?」

「ふぇ!? えっと、はい! 勿論、大丈夫――」

「そうか。しかし、もう一度言うが、いつにも増して変に見えるぜ。例え、もし何かあっても……責任ならオレが取ってやる。だから、本当に何かあるなら言えよな」

「僕もそう見えるけど、無理にとは……いや、やっぱり()()()()()か。副メイド長、プライベートな事でなければ今すぐに言って。もし、僕とネイビスが怒られても殴られる事になっても構わない」

「……」

 

 そして、私やフラン姉様ですら気になっていた彼女の様子が妙におかしい理由はレイブン兄弟も当然気になっていた様で、怒られようが殴られようが構わないとまで言って聞こうとしていたものの、申し訳なさそうに去ろうとするばかりで答えてくれる事はなかった。

 

 これらの様子から鑑みるに、私やフラン姉様はもとよりレイブン兄弟にすら言えない様な事態が起こっている可能性が大いに出てくる訳だけど、一体何なのだろう。少なくとも、知らぬ内に命の危機が現実味を帯びてきたと言う訳ではなさそうではあるけど……嫌がりそうなのに聞く訳にもいかないし、ひとまず考えるのをやめておこう。

 

「なあ、天使様。能力とかで調べてくれねえか? 何だか、そうした方がいい気がしてな」

「僕からもお願いします。もし何かあった時、責任はネイビスと共に取りますので!」

 

 殆んど聞き取れない独り言を呟きつつ少し急ぎ足で去っていく副メイド長さんを見ながら考えていた時、不意に纏う雰囲気をガラッと変えた兄弟2人から、是非とも能力などで何が起きているのかを調べて欲しいとお願いを受けた。案の定、彼女の一挙一動がどうしても気になっているらしい。

 

 ただ、その一挙一動がプライベートの内容から来るものと言う可能性も否定出来ない以上は、能力を使うべきかと迷わざるを得ない。

 しかし、物々しい雰囲気となったレイブン兄弟から言われたのに加えて、プライベートの内容とは全く関係のないまずい事態が起きている可能性もあり、色々考える前にとにかくやるべきだと思ったのも事実だ。

 

「分かった。とにかく、やってみる」

 

 と言う訳で、全力で周りの様子を探ってみると、美鈴とも普通に戦いが成立する位の力の持ち主が、この館の門前でメイド長さんや門番さんたちと一緒に居るのを突き止めた。

 

 先ほど少し急ぎ足で去っていった副メイド長さんも少し離れたところまで歩き、待機しているのを見るにその力を持つ主たちが関連していると確信は持てた。もしかすれば、この館の皆にとって相当どぎつい何かをされそうな状況と言うのもあり得るだろう。

 

 が、これでは戦闘に必要な情報が高い精度で得られても、音声や映像を確認する事が一切出来ないので、偵察蝙蝠を召喚してどうにかする手段も用いる事にした。

 勿論、探知系の魔法などを警戒して対策を施すのも忘れないし、情報を得ようと躍起になりすぎない様にも気を付けよう。

 

(出来れば、あまり変な事態になってなければ良いなぁ)

 

 頭の中でそんな事を思いながら、副メイド長さんを含めた皆の居る中庭と門前の境目へと、私は偵察蝙蝠を召喚して送り込んだ。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。