もうすぐ夜が明けようとしている時間、遮光カーテンが閉め切られシャンデリアの光が照らす部屋の中で私は、お姉様と一緒に周辺情勢の情報整理を含め、仕事の手伝いをしていた。
15年前のレイブン家の館での出来事以来、自分の力の至らなさによる情報不足を嘆いたお姉様が気合いを入れ、大規模召喚術やリーシェに作ってもらった隠蔽魔法なども駆使し始めた事をきっかけに、紅魔館への驚異となり得る吸血鬼一家や聖教会、吸血鬼狩り関連の新情報は勿論、その他にも有益となる可能性が高い情報がより多く入る様になった。
「今日は結構量が多いなぁ。これをお姉様が1人でやってる時もあるなんて、本当に凄いと思うよ!」
「ふふっ。こちらこそ、フランも含めた皆のお陰で頑張れてる訳だから……ありがとうね」
この状況はとてもありがたいのだけど、情報量が多くなれば有用度を基準として取捨選択する時間も増える。つまり、時と場合によっては当主の仕事と重なるなどの要因によって、終わらせるのが大変になってくる訳だ。
ちなみに、今日はその時と場合に該当しているけど、協力してくれている悪魔さんたちの頑張りに報いるためにも、何より大好きなお姉様やリーシェ、美鈴にパチュリーにこあも含めた館の皆のためにもこれ位はやらなければならない。疲労はまだ耐えられる程だし、自分を守る事にも繋がるから尚更だ。
(ん? 何だろう、これ)
色々と考えたりしながら溜まった情報の精査をしていると、かなり几帳面にまとめられた資料の束の中に、妙に気になる字体で『重要資料』などと書かれているものがある事を発見した。
資料のタイトルや厚みなど、わざわざ目にとまる工夫が随所にちりばめられているのを見るに、かなり重要な情報が記されているのは明らかであったから、詳しく見てみる事に決める。
(こんな情報が……ね)
10分近くかけてその資料に目を通し終えた結果、やっぱりお姉様が情報収集に並々ならぬ気合いを入れたのは正しかったのだと改めて思った。近い内に来るのが確実視されている、急速に進歩し始めている人間の
とは言え、お姉様や私が出向いて入手している訳ではないため仕入れ先が酷かったり、何らかのミスが存在する可能性が少し高くなると言う2つの理由から、無条件で真実だと信用するのはあまり勧められない。
ただ、それでも信頼出来る悪魔さんがもたらしてくれた情報ではある故に、ある程度の信頼性は担保されていると見て良いだろうし、これを元にした精査も想像よりは苦労せずに済むはずだ。まあ、だからと言って余裕を持てる程に楽な訳ではないのだけど。
「ねえ、お姉様。ちょっと見てもらいたいものがあるんだけど、良い?」
「見てもらいたいもの? ええ、良いわよ。それで、一体何なのかしら?」
「えっとね、この資料なんだけど……」
そして、そんな事を考えながら持っていた資料を早く見せる必要を感じた私は、机から汚れては困るものをどかしてティーポットに手を伸ばそうとしていたお姉様に声をかけ、手渡した。
軽く息抜きをしようとしてた時だったから申し訳なく思ったけど、今でなければいつになるか分からなくなりそうだったし、仕方ないと思う事にしよう。
「へぇ、そんな領域が存在するなんてね。減らせる力があるところは減らして情報入手に力を倍増しで入れて良かった……よし、早速動くわ。フラン、協力してもらえるかしら?」
「勿論だよ! それと、この事は他の皆にどう伝えておく?」
「館内のメイドたちには来るべき時、美鈴や門番妖精やパチェ、リーシェには一段落したら伝える感じね。特に、根幹となるパチェとリーシェの2人には負担を強いる事になるだろうから、色々と気を遣ってあげないと」
手渡した資料を真剣に読み始めてから待つ事数分、読み終えたお姉様が鍵付きの引き出しにしまうと、早速動き始めるとこの場で宣言した。
個人的には、本格的に動くならもう少し情報が正しいか否か精査をするべきなのではと思ったのも含めて色々思ったけど、口に出して言わずに飲み込むと決めた。心配の種は多少あれど、お姉様が即決するのであれば大丈夫だろう、そう考えられる信頼も大きいのが理由である。
しかし、情報収集への力の入れ様が今と比べれば結構少なかったのだとしても、あらゆる神秘の影響力で満たされている
それでも推測するとするなら、今までのお姉様の情報収集網が想像以上に貧弱であったからか、前回と今回の情報収集の間に突如出現した話だったためかのどちらかだろう。
ただ、そうなると今になってその情報が出て来始めた理由は何かとの問題を筆頭として、色々な疑問点が噴出してくる。とは言え、これは本格的に動いてく内に分かっていきそうではあったし、特段気にする必要も薄そうだから、ひとまず頭の片隅にでもおいておこう。
「フラン? どうかしたのかしら?」
「えっとね、始めてから結構時間が経ってるでしょ? だから、まだまだ行けそうでもそろそろ終わりにしようと思ったの!」
「なるほど……ええ。確かに、これは止めるべきね」
それなりの時間を使って今の話を一段落させ、止まっていた資料精査の手伝いを再開してからしばらくして、集中している間に想像以上に時間が経っていたと気付いたので、私は手伝いを慌てて止めた。
こんな姿を見せれば案の定、お姉様に不思議がられたものの、私がその理由を説明をしてから時計を見た瞬間に即片付けを始めたので、同じくまずいと思ったのが良く分かる。
まあ、何かと無理をしがちなリーシェに対して何度も注意をした事がある以上、そう思うのは当然と言えるだろう。そして、私もお姉様と同じく無理をしかけていた訳だから、反省して今後はより一層気を付けなければならない。
「フラン。どうせもう朝になってるし、起きててもやる事もあまりなさそうだから一緒に寝ましょう。勿論、リーシェも誘うわよ」
「うん、そうだね! 終わりとなったら何だか眠くなってきたもん!」
頭の中でそう考えながら、既にいつもなら寝ている時間であったのもあり、仕事を終えた私とお姉様は寝るための準備をすぐに始めた。
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