「リーシェ、ごめんなさい。そして、私の思いつきとわがままに付き合ってくれてありがとう」
「うん、私は大丈夫。気にしないで」
幻想郷へと移転するため、欠かす事が絶対に不可能な空間移動魔法の研究開発を始めてから5年も経った今日、私は姉様2人と一緒にルマナヴァ家の『
何故なら、そこで行われる手筈となった吸血鬼一家の会合に、レミリア姉様から誘われて参加しようと決めたからである。
前までであれば、お願いされても1回断りさえすればメリットなどはなくても、面倒としか思っていない会合のために出かけなくても良かった。
しかし、いつもみたいに断った今回は何故かレミリア姉様がすぐには引き下がらず、いくつかの理由を述べると共に一緒に来てくれないかと、少しだけ遠慮がちに再びお願いしてきた。
前回までとは違う状況に正直驚いたけど、再びお願いされてからある程度の時間を使って考え、断って回避する選択肢は取らないでおこうと決めて今に至っている。
「あっ! そう言えばさ、リーシェがこの会合に参加するのって初めてじゃない? 私の記憶通りだったらだけど」
「言われてみれば……確かに。会合に参加させたら、一体どんな反応を示すのかしら? まあ、今日の参加者が
「うん! でも一応は、いつもの外出よりは気を使わないとね!」
それにしても、レミリア姉様もフラン姉様も、私が何か変な事が言われたりやられたりしないかと気を使ってくれてるのは嬉しいけど、必要以上に気張って体調を崩したりしないか心配だ。
しかし、だからと言って気張らないでと声をかけたりはしない。そうしたところで、意味は殆んどないと分かっているためである。
故に、私はその懸念する事態にならないで欲しいと心の中で強く願いつつも、なったらなったでどうにか
(うわっ……流石にお城だけあって建物自体も大きいし、敷地も広いなぁ)
姉様2人とのやり取りや綺麗な夜空を楽しんだりして空を飛ぶ事しばらく、遠目に目的地である城らしき建物が見えてきた。勿論、城と言うだけあって紅魔館はもとよりレイブン家の大きな館よりも大きく、目に見える館外の敷地も広い様だ。
これだけ広大なら恐らく、城内で働くメイド妖精さんや悪魔さんの数だけでも紅魔館の倍を超え、相当優れている戦闘能力を持つ者も加えれば更に多く居るだろう。でもまあ、今のところは敵でもないのにこんな事を考え過ぎても特に意味はないから、ひとまずは止めておくけど。
「ようこそ、スカーレット家のお三方。お待ちしておりました」
「ええ。早速中に向かって良いかしら?」
「勿論です。案内役の吸血鬼は扉をあけてすぐの目につく場所に居ますので、お声がけ下さい」
高度と速度を落としつつ見るからに重厚そうな門の前に降り立った後は、門番吸血鬼さんとの簡単なやり取りを交わしたレミリア姉様に続いて会釈して城内へと入り、メイド吸血鬼さんの案内で会場へと向かった。
城門から入り口までもそうだったけど、城内も外観に違わず非常に広い上に複雑な仕組みになっているせいか、余程関係が良いなどの理由で良く訪れでもしない限りは迷ってしまいそうだと感じた。無策で敵が攻め込んで来た場合、普通に比べて守るに容易くなるだろう。
(吸血鬼一家の会合……)
吸血鬼一家が集まって情報交換を行う場である会合への参加は初めてだけど、一体どんな感じの雰囲気になるのだろうか。特別何かする訳でもない私が場違い過ぎて、変な風にねじ曲がったりしないだろうか。
とは言え、会合が始まったら何らかの発言を促された時以外は黙り、かつ促された時でも余計な事は言わずに短く簡潔にしておけば、雰囲気が場違いなのは変わらずともトラブルに巻き込まれる確率は極めて低くなるはず。後は、細かい仕草にも気をつければほぼ完璧だ。
なお、それでも理不尽にトラブルが襲い来る可能性はあるけれど、それについては如何ともし難いのであまり考えない事としよう。
「リーシェ、やっぱり厳しいと思い始めた? もしそうなら私が居るし、フランと一緒に館に戻ってても良いわよ」
「そうだよ! お姉様も私も、リーシェが帰りたいって言ったからって怒るなんて事はないから!」
こんな感じで真剣に立ち振舞いについて考えていたからなのか、いつの間にか表情や仕草に現れていたらしい。案内役の吸血鬼さんの誘導を受け、今回の会合が行われると言う会場へと入ったタイミングで、姉様2人に帰りたければ帰っても問題ないよと声をかけられた。
「えっ……? あっ、ごめん。単に考え事をしてただけだから、心配いらない。ちゃんと最後まで居るよ」
私の身を案じて尋ねてくれたのは明白なのだけど、実際には自分の会合中の立ち振舞いについてを主とした考え事をしていただけである。当たり前だけど、すぐにレミリア姉様とフラン姉様の誤解を訂正した。
ただ、その際に本当に心配いらないのかと疑いの目を多少向けられている気がするのはまあ、自業自得の面が大きいから致し方ない。
「あっ、レミリア姉様。ルマナヴァ家の伯爵と夫人が来たみたいだし、もうそろそろ始まるのかな?」
「そうね。他の会合参加者たちもほぼ全員集まってきたみたいだし、空いてる席に適当に座っておきましょう。特に座る場所の指定はないみたいだし」
「うん、分かった」
会場の入り口付近で姉様2人と話をしてからおよそ数分、こことは違う入り口の扉からルマナヴァ家の伯爵と夫人が、
便宜上、今回の主役でもある2人とその右腕であるアルネビシアが来たと言う事は、会合の始まりが近いと見て間違いはない。レミリア姉様から聞いた参加者たちも、見渡す限りではほぼ全員が到着しているのだから尚更そうと言える。
(さてと、じっとしてなきゃね)
なので、私はレミリア姉様やフラン姉様と一緒に席を選んで座り、会合が始まるまで静かにして待つ構えを取り始めた。
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