目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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吸血鬼の会合(後編)

「まさか、こんな事が起こるなんて驚いたわ」

「うん、確かに」

 

 ルマナヴァ家の面々が大部屋と来てからすぐ、いたって普通に始まった会合から30分経った今、とある2つの吸血鬼一家の対立と言う事態が発生した影響で暗雲が立ち込めていた。

 

 きっかけとしては、神秘の影響力低下による致命的な事象の回避についての話の際にとある吸血鬼さんが、幻想郷について口にしたのが始まりである。

 結果、圧倒的な武力と冷酷さによる恐怖を与えて支配者となる構想を出した『フリーゼ家』当主に対し、大体の会合参加者が引く位に『ディメルト家』の当主が全力でこき下ろし、時折役を変えてそれが続く無限機関が完成してしまった。

 

 勿論、ルマナヴァ伯爵や夫人もやんわりと宥めてはいたし、親交のあると思われた吸血鬼さんも注意したりしてたけど、どこ吹く風となっていた。余程、お互いに腹に据えかねていると見て良い。

 

「お姉様、私たちは動かなくてもいい? あの2人、何かおっ始めそうなんだけど……」

「ええ、静観で行くわよ。介入すべき運命は見えないから」

 

 で、さっさと帰って姉様2人とののんびり幸せな一時を過ごしたい私からすれば、放置しておけば会合の進行どころか乱闘になりかねないこの状況は非常に望ましくない。ただ、レミリア姉様もフラン姉様も動くつもりはなさそうだから、私も静観と言う選択肢を選ぶ。

 

「レミリア姉様、フラン姉様。もし、姉様2人が同じ様な立場にいたらどうしてる? 私なら即帰ってるけど」

「そうね……一線を超えるまでは耐えて、超えたら最も言いたい事だけ()()()言って帰るわ」

「うーん、私もすぐに帰るかな! 時間が経ったら、リーシェとかお姉様たちを侮辱してくるかもだし!」

 

 にしても、いつまでやっているつもりなのだろうか。個人的には無関係な彼らが今後どうなろうとも構わないけど、喧嘩が悪化かつ飛び火してなし崩し的に当事者になるのは最悪だから、やるなら皆の居ないところで勝手にやってて欲しい。

 今までに出て、自前の魔導書風メモ帳に書き込んだ情報の整理をしたり、姉様2人と話をしたりしながら私はそう思った。

 

(あれ? ルマナヴァ伯爵、アルネビシアに何か言ってる?)

 

 そんな感じで言い争いが始まって10分経った頃、ルマナヴァ伯爵が両家の当主さんに交互に視線を送ってから隣に居たアルネビシアに対して、耳打ちし始めたのを目にした。

 

 あのやり取りから推測するに、恐らく彼女(アルネビシア)にどうにかこの事態の解決をしてもらいたいのだろう。仮にそうなら、パチュリーも一目置く魔力量と魔法技術の高さから考えると、確実ではなくとも可能な範囲と見て良い。

 

 が、本来なら実力差などの要素から、ルマナヴァ伯爵が実力行使すれば即解決するはずのトラブルではある。もしくは、その役目は同等の力を誇る夫人でも問題はないはずだ。

 それなのに、何故わざわざ彼女に解決してもらおうとするのかが理解出来ないけども……まあ、他所の事情に首を突っ込んでも何も良い事はないから、聞かないでおく。

 

 とは言え、パチュリーとは同族のよしみで仲がそれなりに良い彼女が危ない目に合った時、それを見過ごすのは私が苦手なタイプの他人だとしでも、出来る事ならしたくはない。

 なので、ひとまず動向は注視しておき、万が一が起きたら助けられる様にしておくと決めた。

 

「周りの無関係の方は一応距離を取って下さいな。それと、お二人さん。主様の命令なので、この場から排除しますねー」

「「なっ……」」

 

 すると、気だるそうに両家の当主さんの下へ歩いていったアルネビシアが彼らに何かを渡すと、恐らく独自開発と思われる光の鎖による拘束魔法と、複雑怪奇な術式を誇る空間移動魔法を使用してこの場から消し去ったのを目撃した。

 突然こんな事となったのもそうだけど、扱う難度の高い魔法をまるで自分の手足を動かすが如く扱う彼女に対し、私も皆も驚かざるを得ない。

 

 しかし、これ程までに強力な魔法を一気に使うのは流石に相当な負荷がかかっていた様で、発動からすぐに彼女は大きく息をつきつつ懐から取り出したハンカチで汗を拭っていた。まあ、上位吸血鬼さんですら安易に破れなさそうな光の鎖に加え、小規模でも高負担な空間移動魔法を間隔置かずに使えば、普通なら当たり前か。

 

「良くやったぞ、アルネビシア。一応聞いておくが、フリーゼ伯爵とディメルト伯爵はどうなった?」

「城の地下……最奥の牢番の吸血鬼の方の眼前辺りに縛られた状態で居るはずです! しっかりと指向性を持たせましたから!」

「そうか。後、事後処理は俺がやっておくから気にするなよ」

 

 そして、この場から消し去られてしまった両家の当主さんは、わざとらしく大声で行われたルマナヴァ伯爵と彼女のやり取りから、地下にあるらしい牢屋に放り込まれたと判明した。

 放り込まれた両家の当主さんの扱いについては伯爵自身が上手い事やってくれるみたいだから、さほど大事にならずに終わるだろう。

 

「すまなかった。では、会合を続けようか」

 

 これにより、この問題はアルネビシアの活躍によって素早く解決され、会合はようやく停滞から抜け出せる事となった。

 万が一の時、いつでも私が動ける様にしていたのは無駄に終わった訳だけれど、良く考えたらレミリア姉様が『私たちが介入する運命ではない』とさっき言ってたし、当然の結末だったのかも知れない。

 

 ちなみに、幻想郷について最初に口に出した吸血鬼さんは、図らずも自分がちょっとした騒動の原因になった事に申し訳なさを強く感じているのか、明らかに努力して集めた事が分かる情報を大量に公開し始めていた。

 

 自分の身を削っているとしか思えない行為を見て流石に少しは大丈夫なのかと思ったけど、わざわざ他人の私が出しゃばって止める義理もないし、本人がそうしたいなら良いかと思い直してありがたく有益な部分は仕入れさせてもらった。

 

「ふぅ、終わったわね……リーシェ。色々あったけど、疲れたかしら?」

「うん。でも、フラン姉様がやたら目立ってくれたお陰で、そんなに疲れはしなかったかな」

「あぁ……まあ、確かにあれは目立ってたわね」

「えへへ、役に立てたなら良かった!」

 

 そんなこんなで、先程までの停滞ぶりがまるで夢であったかのように会合が進み、1時間経って終わるまでを乗り切る事が出来た。

 幻想郷の事や聖教会、吸血鬼狩り組織やその他有益な情報の交換はもとより、ある程度他吸血鬼一家との交流も行えたからか、レミリア姉様も満足そうにしている。

 

 私自身には奇跡的に()()()()を振られる事はなかったけど、視線や身の振り方などに気を使ったりして、限りなく目立たなくする努力を怠らなかったお陰だろう。

 後は、姉様2人……特にフラン姉様が交流の時間となった際、『フォーオブアカインド』まで使って目を引いてくれたのも絶対に外せない。

 

 レミリア姉様は少し呆れ、私が内心で心配になる程の目立ち様ではあったけど、あれがなければ数人の吸血鬼さんとの面倒極まるやり取りを交わす羽目になっていた()()()があるのだから、尚更だとしか言えない。

 

「さて。長居する必要もないし、帰るわよ」

「「はーい!!」」

 

 こうして、会合に参加する目的も済んで深月城に滞在する理由もなくなった私や姉様2人は、門番の吸血鬼さんを含めた何人かに軽く挨拶を済ませてから、城を飛び立った。

 




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