目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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妖精に感じる面影

「ごめんなさい、リーシェさま!」

 

 とある日、自分の部屋でより一層快適に過ごすために食堂へと訪れ、担当の妖精さんに頼んで作ってもらったお菓子を受け取っていた時、ある事が起こったせいで困惑していた。

 その内容としては、何故か冷や汗たらたらの物凄く焦った妖精さんが声をかけてきたと思ったら、いきなり謝られたと言うものである。

 

 何もしていないのに謝るなんて事は絶対にないから、彼女が誰も見ていないところで、私が知ったら何か不快に思う事をしてしまったのはすぐに分かる。

 しかし、肝心の彼女がしてしまった事の内容が全く分からない以上、声かけも含めた一切の行動を起こせない。これでは事態が進展せず、困るばかりとなってしまう。

 

「えっと……妖精さん、大丈夫? ゆっくりで良いから、何をしちゃったのか説明してくれるかな?」

「う、うん。実は……」

 

 と言う訳で、出来るだけ穏やかを心がけつつ優しく言葉をかけたりして、話が普通に出来るまで落ち着かせてから何をしてしまったのか説明を求めたところ、その全容が判明した。

 

 曰く、5人の妖精さんと一緒に私の部屋を掃除中、彼女がカップに入っていた紅茶をうっかりこぼし、側に置いてあった絵を汚してしまったらしい。

 加えて、それを見てまずいと焦った別の妖精さんがティーポットまでひっくり返して蓋が外れ、絵や机はもとよりソファーや床まで悲惨な状態になったとの事。

 

 ちなみに、これらの後始末は全力を出して行われた結果既に大半が済まされている様で、すぐにでも使おうと思えば使えるらしい。流石、優れた清掃技術と根気を持つ妖精さんたちだ。

 

 それと、本当ならポットをひっくり返した方の妖精さんも一緒に連れてくる予定だったらしい。しかし、綺麗にしようと張り切っていたのもある分、堰を切ったかの様に大泣きし出してここに来るどころではなくなったらしいので、他3人の妖精さんに任せて自分1人で先に謝りに来た様だ。

 

「そっか……うん、大丈夫。そもそも私のせいって部分が大半だから、最初から怒るつもりなんてない」

「えっと……えっ、本当?」

「うん。むしろ、こっちが謝るべきだと思ってるし……本当に、ごめんね」

 

 話を全て聞き終えた後、私は半ば反射的に妖精さんの頭を撫でたり、抱きしめたり、繰り返し優しく言葉をかけたりした。

 これらの行為は、掃除が行われる時間帯にも関わらず、何の対策もせずにお菓子を作ってもらうまでの間部屋を空けてしまったせいで、強い精神的な負担を与えて申し訳ないと思ったとの理由から来ている。

 

 もし、私がお菓子を取りに行く前にカップの紅茶を全部飲み干し、ティーポットを専用の棚に一時的にしまってからお菓子を取りに行けば、こんな出来事は起こらずに済んだ。

 そうでなくてもせめて、描いている途中だった絵を魔法研究開発用に使っている机の上に置いておきさえすれば、紅茶をこぼされても絵が汚れる事はなく、惨事は増えなかっただろう。

 

 故に、この程度の事ならアフターケアとしては()()()()()()()と言えるだろう。と言うか、今回は自分に大きく非があるのだから、近い内にもう少し追加で何かするべきなのかも知れない。

 

「あ、あの! リーシェさま。部屋に行った時にその子に対して、あまり厳しく怒らないであげて。レミリアさまに連れてこられたばかりの新人さんだし、わざとじゃないし、それに……もうあんな思いをするのは嫌だって言いながら泣いててかなり辛そうだから、お願い!」

 

 頭の中でアフターケアについて考えつつ妖精さんから離れ、一旦机の上に置いたお菓子入りのバスケットを手に持ち自室に向かおうとしたのだけど、数歩歩いただけで再び呼び止められた。

 

 何でも、盛大にやらかしたせいで大泣きして辛そうな新人の妖精さんにあまり怒らないであげて欲しいとの事だけど、無論そんなつもりなどない。

 なので、私は彼女のお願いに対して分かったと言って頷き、お詫びとして好きなお菓子をあげてから食堂を後にした。

 

(……)

 

 にしても、まさかティーポットの紅茶をこぼす失敗をした別の妖精さんが、レミリア姉様が1ヵ月前に連れてきた新人の妖精さんであったとは、更に強い心苦しさを抱いた。

 自分が誘発してしまったのもそうだけど、普段は非常に大人しくて自発的に話しかけてくる事も少なく、それでいて昔居たクレイナとの共通点がいくつもあり、付き合いがメイド妖精さんの中でも多い方なのが大きかったからだ。

 

 それと後、勿論だけどティーポットの紅茶をこぼしたのが新人の妖精さん以外、例えば一緒に掃除をしていた妖精さんだとしても、私基準で究極だと思える程のどきつい悪意を自分に向けたが故の行為でなければ、対応は殆んど変えるつもりはない。

 

「妖精さん、大丈夫―」

「リーシェ、さまっ!」

「うわっ! ビックリしたぁ」

 

 などと考えながら自分の部屋の扉を開けて1歩踏み出し、大きめの声で妖精さんに呼びかけようとした瞬間、全力で抱きつかれて尻餅をついてしまった。

 反動で左手に持っていたお菓子入りバスケットを飛ばしてしまうも、蓋のお陰で中身は飛び出なかったので良しとしよう。なお、クッキーが割れていたりする可能性は考えない事とした。

 

「ぐすっ、ごめんなさいっ……! わざとじゃないから、わたしを嫌いにならないで……」

「えっ、何を言ってるの? この位で嫌いになるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないよ。むしろ、私の方こそあんな所に出しっぱなしで……ごめんね。本当に、ごめんねぇ」

 

 すると、抱きついてきた妖精さんが泣いて謝りながら嫌いにならないで欲しいと懇願してきたので、私はそれを即座に全力で否定した上で紅茶入りのカップとティーポットを出しっぱなしにした事を全力で謝罪した。

 来る前に伝えられてはいたけれど、想像以上の追い詰められ様を見て私の抱いていた心苦しさが限界突破し、もらい泣きせざるを得ない。

 

 同時に、掃除が行われる時間帯に部屋を空ける際は、例え時間が短くともティーポットや紅茶入りのカップ、お菓子入りバスケットなどは絶対にこぼされたりしない場所に移しておくか、完食しておくと心に固く誓う。こんな事で、もう泣かせたりしたくはないのだから。

 

「ふぅ。さてと、もうこの事についてはおしまい! それよりも、お菓子食べる? 作りたてホヤホヤの美味しいやつだよ」

「えっ、良いの? わたしが食べたら少なくなっちゃう……」

「うん。それと、他の妖精さんたちも欲しければあげる。私への遠慮はいらないけど、妖精さん同士で喧嘩しないでね」

 

 そんな風に内心で反省と決意を固めつつ新人の妖精さんを慰める事5分、大分落ち着いてくれたところを見計らい、私は自分用に作ってもらったお菓子を彼女に差し出した。これも、迷惑をかけたお詫びの一環である。

 

 で、彼女に好きなお菓子をあげた後は周りに居た他の妖精さんにも欲しければあげると良い、お菓子を差し出した。ある程度は劣れど迷惑はかけた訳だし、何より仲間外れにしてるみたいで嫌だから当然だ。

 

(あっ、綺麗さっぱりになったけど、まあ良いや。それよりも……)

 

 お陰で私が食べる分が綺麗さっぱりなくなってしまったけど、妖精さんたちがお菓子を頬張りながら幸せそうに会話を交わしている光景を見れたので、全く問題ないと断言出来る。

 

 それよりも、このままでは私の部屋でメイドの仕事中にお菓子を頬張っている妖精さんたちが、何の理由もなくサボっているだけであると他の皆に思われてしまう。そうなれば、私としても不本意でしかない。

 

 なので、この場に居る全員に一旦部屋を空けるからゆっくりしててと言ってから、私は他の皆に誤解されないための説明を行うべく、能力を使いながら館の中を回る事を決意した。

 




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