「パチュリー。これ以上魔力消費を抑えるの、安全性と対妨害性を保ったままだと厳しいよね」
「ええ。私も、既にその領域に達していると考えてるわ」
聖教会や民間の吸血鬼狩り組織の活性化に加え、神秘の影響力低下による現象が少しずつ幅を利かせ始めてきたこの頃、図書館で空間移動魔法の研究開発をしていた私は、パチュリーと一緒に悩みのあまり頭を抱えていた。
理由としては、館ごとの空間移動による絶大な魔力消費の負担が大きすぎて、検証実験以上……つまり、想定通りに使えば私とパチュリーの魔力のみでは命の危機が視野に入り、姉様2人の魔力や美鈴の気を考慮に入れても移動後しばらくは行動不能になる可能性が出てきたためだ。
当然、負担を減らすために術式の見直しや改良などの努力をしていない訳ではない。むしろ、どうにかしようと奮闘しているのだけどどうにもならないと言うのが現状だ。
であるならばとやり直しを一時考えてみたものの、現時点で研究開発の開始から30年も経過している上、負担諸々を考慮しなければ
「あっ、でも魔力が足りないだけだし……特殊術式の追加とか、あらかじめ魔力を貯めておける道具を製作すれば何とかなるかも?」
「選択肢がその2つなら、私的には確実に魔道具製作を選ぶわね。勿論、それに進むとしても関連の術式云々含めて、大変困難な道のりなのは理解した上よ」
そんなこんなで更に数分悩んでいた時、不意に魔力を貯めておける魔道具の製作をする事を思い付いたので言ってみると、パチュリーは即座に同意してくれた。
曰く、最も肝心な安全性と対妨害性の2つが理想通りとなっている以上、魔力消費を抑えるためだけに余計な事態を招く可能性がある行為はしたくないとの事だけど、まさにその通りだ。
今現在、絶妙なバランスで維持されている空間移動魔法の術式を大きく崩し、万が一悪い方に不可逆的な変化を与えてしまえば目も当てられないのだから。
「だよね。じゃあ、早速魔道具の製作について話――」
「おお……やっと、やっとタイミングが合いましたね! パチュリーさんから聞いていた
そんな感じで、空間移動魔法の想定通りの発動による魔力枯渇でほぼ確実に起こる、行動不能や命の危機を防ぐための魔道具製作についての話をしようとしたものの、それが始まる事はなかった。
何故なら、大図書館に続く扉が豪快に開けられると同時に、大抵の紅魔館のメイド妖精さんたちと遜色ないテンションのアルネビシアが登場してきたためだ。
静かで心地よかった空間が一瞬で賑やかで疲れそうな空間へと塗り替えられ、正直言って疲れそうで面倒としか思えない。メイド妖精さんとかフラン姉様にほぼ同じテンションで来られた時は微塵もそうは思わなかったけど、大好きな家族なのだから考えるまでもなく当然と言える。
しかし、そうは言ってもルマナヴァ家の来客である上にパチュリーとの仲が比較的良い彼女に対して、館の誰も
「リィ、本当にごめんなさいね。それと、アルネビシア。今3人で会話したいのなら出来る限り静かに、テンションを控えめにお願いするわ。私はともかく、リィはあまり賑やか過ぎるのは苦手なの」
「あっ……えっと、ごめんなさい! もしも不快に思ったのであれば、私の事は気にせず行動して頂いても大丈夫です!」
「別に大丈夫。それよりも、お話がしたいのなら早くしよう?」
「……はい!」
で、パチュリーの一言のお陰で頑張れば耐えられる位にテンションが控えられたアルネビシアの全力謝罪を受け入れながらも、私はすぐに本題へと入ってくれる様に促した。
少し申し訳ないとは思うけど、絶対に本題が長くなるのが明らかだと言うのに、前段階の謝罪やら何やらで更に長引かせたくないので致し方ない。
(パチュリーがそれなりにアルネビシアと仲良くやってる理由、分かる気がするなぁ……)
こうして、アルネビシアを加えた3人でのお話が始まった訳だけど、その際の振る舞いや発する言葉の1つ1つをしっかり直に見て聞いて、彼女に対して抱いていた印象が少し良い方へ変わった。
更に、流れでしても差し障りのない普段の生活の話になった時に、姉様2人を含めた館の住人たちについて純粋に褒めたりしてくれたのも大きかった。私も褒められたりしたけど、そんなのとは比べ物にならない位、遥かに嬉しく誇らしい。
正直、始まってからずっといつ部屋に戻ろうかと考えていたけど、今日はそうせず満足してくれるまで居ようかとの考えも浮かび始めた位には、印象が良くなってきている。
ただし、ほぼ途切れる事なく会話が続く上に時々抑えが効かず、テンションが元に戻ってしまうので、館に来る度に会って話をしたいかと聞かれれば、今の来館頻度からして遠慮したいと答えるつもりではあるけど。
なお、性格からしてやってこないとは思うものの、不意打ちで1人で居る時に突撃してきた場合については、何とか部屋から出ていってもらうか自分が逃げるかの2択で行こう。
「さてと……リーシェさん。もう1度だけ言わせて下さい。貴女は凄い吸血鬼なんですね。魔法技術もさる事ながら、魔法にかける思いも何と言うかその……感動ものです! また今度、よろしくお願いします!」
「うん。まあ、たまになら」
「分かりました! それと、パチュリーさんも今日はありがとうございました!」
「ええ、また今度ね」
何だかんだ言って雰囲気良く話が続く事約3時間、流石に普段と違う会話量とテンションに疲れが限界近くなってきた頃、アルネビシア本人がこの話を切り上げる流れに持ってきてくれた事で、この一時は終わりを告げた。
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