「うーん……これはどうしたものかなぁ」
レミリア姉様に連れてこられ、
内容は、咲夜の身体や戦闘スタイルを一切阻害する事なく、万が一敵が襲って来た時にも出来るだけ怪我を負わないで居られる様、しっかりサポートする魔道具の製作についてである。
勿論、悩んでいる要因に付与しようとしている術式の内容やその構築の難しさもあるものの、既に咲夜が理想的かつ
加えて、黒色のロングコートや同色のブーツにグローブも同様、咲夜専用に作られている特殊かつ強力な魔道具だったと調べたりした結果判明したのだから、私の行為は正直必要なのかと余計に悩ましくてたまらない。
(そもそも……あっ)
しかし、懐中時計は能力使用による負担軽減が主な効果であり、回避や防御にも効果はあるけど、それはあくまでも副次的な範疇に収まると咲夜は言っていた。つまり、場合によっては効果がないに等しくなるかも知れない訳だ。
更に、着る物が少ないと困るはずだとレミリア姉様が言い、気遣いで青髪の妖精さんに依頼して作ってもらった、特注メイド服や各種小物一式を咲夜が色々な意味で気に入っていた。
結果、自然と身につける頻度が激減していったあの装いはクローゼットに入れられている時間が大幅に増え、1年経った今は日の目を見ない状態となっている。
当然、
ならばと言って着替えようにも、緊急時にそんな事をする暇なんて殆んどないから、大半はそのまま戦う事になる。
(やっぱり、作るべきかなぁ……)
そんな時、咲夜を紅魔館最強のメイドたらしめる1つである時を操る能力を、懐中時計が負担の補助になってくれているとは言え過剰に使わせ、肝心な時に使えなくなる事態に陥るなどあってはならない。
もし、それで最悪の事態を招こうものなら発狂しないで居られる自信は全くないし、咲夜を非常に気に入っているレミリア姉様は確実に修羅と化して、紅魔館内の雰囲気がしばらく悲惨な事となるのは安易に想像が可能だ。
(よし、やっぱり作るべきだよね。出来る限り早く、かつ丁寧に心を込めて!)
やはり、回避と防御をあの格好と同等程度までに補助してくれる魔道具の製作は余程の事がない限り、絶対に行うべきだろう。幸いにも、付与する術式は既存の魔法が土台になってくれそうなので、作るだけなら美鈴に作って渡した魔道具よりは短時間でどうにかなりそうだ。
けど、早く作って渡してあげたいがために焦り、滅茶苦茶になった挙げ句かえって咲夜の身を傷つける羽目になってはならないので、そこは気を付けていこう。
「ひあっ! 誰が翼……!? ひっ、根元は止め……降参、降参するから止めてぇぇ……!!」
などと、机に突っ伏しながら思考を巡らせていたある時、不意に私の翼が誰かに触れられたせいで驚き、思わず変な声を出してしまった。
それだけで済めば良かったのだけど、私の翼に触れている誰かはくすぐるつもりでいるらしい。しかも、妙に上手いせいですぐに込み上げてくる笑いに耐えきれなくなり、普段出さない大きな笑い声をあげざるを得なくなってしまう。
妖精さんが悪戯心を抱いて仕掛けてきたのか、レミリア姉様やフラン姉様が同様の理由でくすぐり攻撃をしてきているのかは不明だけど、このまま続くと参ってしまいそうだ。
「相変わらず、可愛らしい反応を見せてくれるのね。リーシェ」
「ふぅ……えっと、レミリア姉様。いつの間に居たの? 何でいきなりくすぐったり……?」
「さっきからずっと居たわ。それと、くすぐった理由は何回も呼び掛けたのに、返事してくれなくて困ったからよ」
すると、30秒程経った頃に翼へのくすぐり攻撃が止むと同時にこれを仕掛けてきたのがレミリア姉様である事、会話の中でこれが致し方ない理由から来る行動との事実が明らかとなった。
多少は私の笑う姿が見たかったとの私利私欲もあったらしいけど、レミリア姉様から何度も繰り返し呼ばれているのに気づかなかった方が悪いから、何も言えない。まあ、余程酷い目に合わない限りは、その訳が何であれとやかく言うつもりはないけども。
「そっか、本当にごめんね……うん。それはそうと、こうまでしてきたって事は、それなりに重要な何かがあったりするの?」
「重要って程でもないけど、聞きたい事があってね。その、リーシェは最近妙な……誰も居ないのに、自分を監視する様な誰かの視線を感じたりした経験はあるかしら?」
ひとまずそれは置いておき、結果的に無視してしまった事に対して一言謝罪を述べてから、私に何か伝えたい事でもあって来たのかと聞いてみたところ、された話が私にも心当たりがある事象についての質問だった。
1週間前位に館の誰とも違う気配が周囲からして、見回してみても誰もおらず、能力もその後使ってみたけど、謎の気配の主と思わしき反応は館内には一切なかった。これが、私の身に起こった事象の1回目である。
で、2回目に背後から視線を感じた上で不気味な気配がした時に即能力を使い、強大な何かが居るはずだと探知して確信した上で振り向いてみても誰も居なくて、見えないだけでそこに居ると言う訳でもなかったと、探知箇所の空間に触れてみて理解出来た時は本当に頭を悩ませた。
けど、館内は至って平穏で侵入者が居る雰囲気ではなかったし、それ以降は一切そんな経験もしなかったから、今は当時の私がおかしくなっていたと考え始めていた。
しかし、レミリア姉様もそんな経験をしていたのであれば、正体不明かつ目的不明の何者かが存在し、私たちに知り得ない手段で度々館に侵入した上で最低でも私や姉様を監視していたのは純然たる事実である。実害なしではあっても、何とも気味が悪い。
「2回あるよ。1回は能力でも姉様以上の存在の反応を捉えたから、ほぼ確実に誰かが居たんだと思う」
「そう。他の皆からの話に加えて、リーシェが能力で捉えたのならもう確定ね。後、咲夜が空間云々言っていたのは気になるけど……取り敢えず、今のところ実害もないから一定の警戒はしつつも、正体の調査とかは片手間でやっておく事にするわ」
「うん、了解」
そして、レミリア姉様からの問いに頷いて肯定した後、能力でも探知した事があるのも併せて伝えるべきと判断して伝えたところ、ある程度の警戒はしつつも
確かに、正体不明な上に館の皆への実害が極めて小さなものでも出ていない以上、これは妥当な選択だと思っている。
ただ、ここまでの話に加えて咲夜がしていたらしい発言を鑑みるに、空間に作用する能力か未知の魔法の持ち主であると確定したも同然であり、気味の悪さが増大したのは言うまでもない。
(私の今使える魔法で、万が一の時に通用するのだろうか……?)
にしても、誰なのかは知らないけど……もう2度とこんな事はしないで欲しい。私自身面倒だからとの理由もない訳ではないけど、そんなのよりも今この状況でレミリア姉様の心労と仕事を、多かれ少なかれ増やされた事が実に不愉快で仕方ないためである。
だからもし、いずれ会う機会が出来たならば、例えまともに聞いてくれなくても文句の1つや2つを言ってやろうと、そう誓った。
「さて……時間を取ってくれてありがとう、リーシェ。魔道具の作成も良いけど、無理をしっかり休憩と食事は取りなさい。今の貴女なら大丈夫とは思ってるけど、心配だから一応ね」
「勿論、肝に命じてる。レミリア姉様の方こそ、身体を労って」
こうして、レミリア姉様の1つの質問から始まったそこそこ長く続いたやり取りは、お互いに無理をしない様気を遣ってと改めて言い合い、終わりを告げた。
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