目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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移住に向けて

「単刀直入に言うわ。最低でも明日の昼間までに準備を整えて、幻想郷への移住を試みようと思うの」

 

 とある日の夕方、非常に重要な事柄を伝えたいとの理由でレミリア姉様に叩き起こされた私は、身だしなみも程ほどにして会議場へと来ていた。

 

 紅魔館の主力であるフラン姉様やパチュリー、美鈴や咲夜が集められているだけならまだしも、館に住んでいるメイド妖精さんが古参や新参など関係なしに全員が集結しているのを見た時は驚いた。

 けれど、幻想郷への移住を最低でも明日の昼間までに達成したいとあっては、全員が集められているのは至極当然の事と言える。

 

「そう。私としては、空間移動魔法の発動準備を加味しても今日中は可能と見ているけど、どうしてこのタイミングでの幻想郷移住を決断したの?」

「それなら簡単よ、パチェ。明日か遅くとも明後日には聖教会と魔の追放、その他吸血鬼狩り組織の連合軍数千が大挙して押し寄せてくるとの情報が手に入ったからね」

「なるほど、理解したわ」

 

 そうなれば、急に幻想郷への移住を済ませようと決めたのかと疑問が浮かぶも、これについてはパチュリーが質問した事で判明した。

 正直、レミリア姉様がわざわざこんな早い時間に叩き起こしてくる時点で嫌な予感はしていたけど、あまりにも斜め上を行き過ぎている。

 

 これでは神秘の影響力低下がなく、かつ傘下の吸血鬼一家やレイブン家の援軍を加味してもかなりのダメージを負わされるだろう。なのに、今の状況でそんな絶大な戦力と相対すれば、善戦は出来ても()()()後には何も残らない。

 

 かと言って、彼ら彼女らと相対しない上でなりふり構わず生き延びる事だけを考えたとしても、身体や精神への過剰な負担からいずれは何処かで致命的な綻びを生じさせてしまう。

 ならば、早急に幻想郷への移住を済ませるべきと決断に至るしかないと、そう言わざるを得ない。私だって、レミリア姉様と同じ立場だったなら、確実に同じ結論に至っていただろう。

 

(ふぅ……緊張してきたぁ)

 

 どちらにせよ、これからしばらく何も考えずに落ち着ける一時はほぼ取れなくなるものの、それで最悪を回避出来るのなら安いものだ。

 勿論、要所要所で乗り越えるのが容易ではない壁が立ちはだかるとは思うけど、その度に乗り越えてみせる覚悟は出来ている。

 

「と言う訳で、急なのは申し訳ないけど……皆には幻想郷に移住が済むまでは結構な苦労をかける事になるわ。勿論、移住が済んでからもしばらくは苦労をかける事になるとは思うの」

「勿論、そんなの分かってるよ!」

「うん、私もフラン姉様と同じ。だから大丈夫」

 

 故に、レミリア姉様から苦労をかける旨の発言を聞いた時、フラン姉様と私は笑顔で問題ないとの意を込めた発言を返した。今この場で最も苦労しているレミリア姉様に比べれば、私の苦労はまだマシな方なのだし。

 

「苦労する羽目になる? そんなのは、言われずとも分かってるわよ。レミィ」

「ですね。何事も、全てこちらの理想通りに進むとは思っていませんから」

「お嬢様。紅魔館は私も含めた皆の理想郷……それの維持のためであれば、苦労をする程度は厭いません。お任せ下さい」

「……皆、ありがとう。感謝でしかないわ」

 

 で、それに続いてパチュリーに美鈴、咲夜やメイド妖精さんたちも思い思いに望むところだと言わんばかりに、レミリア姉様へと言葉を送った。全員、私やフラン姉様と同等の苦労を迎え撃つ覚悟を決めていると、すぐに理解出来る一幕だ。

 

 しかし、幻想郷に移住を試みている吸血鬼一家は私たちだけではない上、その中に随分と好戦的かつ馬鹿な試みをする一家や個人が、知っている限りでは一定数混じっていた。

 身を守りつつ馴染むための苦労ならある程度は構わないけど、そんな輩の巻き添えを食らい、大規模戦闘をする羽目になるのだけは避けておきたい。

 

「さてと、リィ。レミィもそう言ってる事だし、寝ぼけ眼で辛いところ悪いけど、早速空間移動魔法の発動準備を始めましょう」

「分かった。じゃあ、レミリア姉様。私とパチュリーは先に行って準備してるね」

 

 特に滞りなく10分程度の短めのレミリア姉様の話が終わると、私とパチュリーはすぐさま会議場を後にした。幻想郷への移住の核となる、空間移動魔法を発動させるための大規模な準備を、少しでも早く終わらせるためだ。

 

 いざとなったらこの身を削ってまで守りたい位、大好きな皆の今後を背負う責任重大な(ミスは許されない)仕事だから、過去に2回あった大規模な襲撃と同等の重圧を感じている。言わずもがな、さっきまで残っていた眠気などは、とうに吹き飛んだ。

 

(最初で最後の鬼門だね……)

 

 そして、ちょうど紅魔館の敷地全体の中心にあたる時計塔登り口に向かい、まずは空間移動魔法の中核を担う魔法陣の構築へと取りかかった。最も複雑かつ繊細な部分であり、少しの間違いが致命的な不具合へと繋がりかねないため、逸る気持ちを抑えつつ時間をかけてでも作業を進めていく。

 

「よし、こっちは終わったよ。パチュリー」

「お疲れ様、リィ。でも、館の敷地全体を覆う空間防御結界の補助を担う魔法陣構築と中核魔法陣を繋ぐ作業が残ってるから、まだ気は抜けないわ」

「うん。勿論、どんどん行くつもり」

 

 何とか集中力を保たせながら2時間半、かなりの大きさになる中核魔法陣の構築を一切のミスなく終わらせた後は、移動中に館の敷地全体を覆う結界の範囲指定と展開補助を担う魔法陣の構築作業へとすぐに移った。

 

 時計塔上空と一定深度の地中を含めた6ヵ所と数は多いものの、中核魔法陣に比べれば構造もかなりシンプルであり、万が一の際のカバーも効きやすい。なので、僅かながら感じていた重圧が降りた。

 とは言え、安全に幻想郷への移住を行うには必須の作業なのは変わらないから、気は一切抜かないし、抜くつもりもない。

 

「パチェ、リーシェ。私たちに、何か手伝える事はあるかしら?」

「2人が大変そうにしてるの、見てるばかりじゃ我慢出来なくて……だから、遠慮しないであったら言ってね!」

 

 更に40分経った頃に、時計塔の上空と最も大変な地中への魔法陣構築も空間移動魔法の応用によって終え、比較的楽な残り4ヵ所での作業へと取りかかろうとした時、現れた姉様2人から手伝いの申し出を受けた。

 曰く、大変そうに作業をこなしている私とパチュリーを見て、手伝うべきではないかと考えてくれていたらしい。

 

 けど、今日に至るまで姉様2人は色々と頑張ってきたし、何なら移住関連の事柄で大変だった時間で見るならレミリア姉様が私よりも多く、次点のフラン姉様も同様に多い。だから、そんなのは別に気にしなくても良いのにと思っている。

 

 しかし、せっかく手伝ってくれると言う姉様2人の意を無下にするのは何だかとても忍びないから、パチュリーに了承を得たら手伝ってもらおう。

 魔法技術が高くて知識も豊富なのに加え、その気になれば自作の魔法すら開発出来る能力も持っているから、尚更その思いが強かった。

 

「パチュリー、レミリア姉様もフラン姉様もこう言ってるけどどうする?」

「そうね、せっかくだから手伝ってもらいましょう……2人共、少し待ってて頂戴」

 

 と言う訳で、パチュリーにどうするかと聞いてみたところ、特に考える事もなく手伝ってもらいましょうとの返答をしてきた上でペンを懐から取り出し、魔法陣についての解説をメモ帳へと書き始めた。

 

 共同の魔導書に記してあるものとほぼ同一の解説なのを見るに、姉様2人の魔法技術や知識を高く買ってくれているらしい。

 直接言ってはいないけれど、大好きな姉様2人を暗に褒めてくれているとしか思えず、何だか嬉しくなってくる。

 

「よし。じゃあ、紅魔館門前の魔法陣構築をお願い出来る? 私のメモを見ながら」

「なるほど。ええ、任せなさい。フラン、早速行くわよ!」

「うん……あっ、パチュリー! 終わったら、時計塔の登り口前に向かえば良いの?」

「ええ。後、もし出来なかったりした時は無理してやろうとしないでね」

 

 で、解説が全て記されたメモ帳を手渡した後にやり取りを交わし、レミリア姉様がフラン姉様と一緒に任された場所に駆けていったと同時に、私もパチュリーとの作業を再開した。

 ただ、1番時間も手間もかかる地中の魔法陣構築みたいに特殊な箇所はもうなく、トラブルも特になかったのもあって、担当箇所の作業を25分で素早く終わらせる事に成功した。

 

「リーシェ、パチュリー! こっちはたった今終わったよ!」

「メモ帳を見ながらでも大変だったけど、指示通りの魔法陣は出来上がったわ。後は、主力全員で協力して移住を成功させるだけね!」

 

 そして、門前の魔法陣構築もレミリア姉様とフラン姉様が、ちょうど私とパチュリーが様子見のために門前に来たタイミングで終わり、残りは紅魔館主力陣の協力を得て空間移動魔法を無事に発動させ、幻想郷への移住を済ませるのみとなった。

 




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?

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