目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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第9章 紅魔館と幻想郷
襲い来る災厄


「さてと……とうとう始まるのね。幻想郷への移住が」

「うん、凄く緊張してきたよ。私」

 

 幻想郷への移住に必要不可欠である空間移動魔法の魔法陣構築を姉様2人の手伝い込みで終わらせた後、最後の大仕事をこなすために、私を含めた紅魔館の主力全員で時計塔の登り口へ集まっていた。

 

 これからやろうとしている大仕事の内容は、皆の協力の下中核魔法陣に魔力を注ぎ入れた上で魔法を発動させ、紅魔館の移動が完了するまでその場で待つと言うもので、それだけ聞けば難易度自体はさほど高そうには思えないだろう。

 

 けれど、扱う魔力の量が非常に多く、かつ皆の負担を激減させる代わりにそれを私とパチュリーに分配しているので、制御もそれに比例して非常に難しいものとなっている。

 身体への負担も同様なため、適切な場面での負担軽減と安定維持の作業も並行して行う必要があり、見た目以上の難易度の高さに加えて集中力と根気が必須な作業と言えた。

 

 なので、未だ気は休まる事はない。むしろ、より一層緊張感が増してきて、精神的により厳しい環境下へと置かれたのを実感している。

 

「レミリア姉様たちは、今気分はどんな感じ? すぐに行けそう?」

「勿論よ。少し緊張はしてるけど、いつでも行けるわ」

「うん! お姉様とリーシェが居るから緊張感も薄れてるし、大丈夫!」

「問われるまでもなく、大丈夫です」

「私も同様、問題はありません」

 

 で、今から行おうとしてる事の規模や重大さから、レミリア姉様たちも似た感じの精神状態になっていた。まあ、空間移動魔法の失敗すなわち()()()()()()()を歩む運命となる可能性がかなり高くなる訳で、当然だろう。

 

 ただし、フラン姉様だけはそれを理解しつつも、大して緊張している様子は見られない。曰く、レミリア姉様と私の側に居る事によって、強く感じていた精神的負担が大幅に緩和されているらしいけど……私の存在が役に立っているのなら、何とも嬉しい限りだ。

 

「そっか。じゃあ、始めるよ……パチュリーっ!」

「ええ! 皆、私とリィの後ろの小さな魔法陣に立って、後は手はず通りに頼むわ!」

 

 そして、私を含めた皆の心構えが完璧に整ったところで、遂に最後の大仕事が始まった。

 

(ふぅぅ、想像以上に魔力の奔流が凄まじい……けど!)

 

 何年も前から分かりきってはいたし、始まる前までにどれだけ辛く苦しい思いをしようと乗り切る覚悟も当然出来てはいたけど、実際に始まってみると想像以上に制御が辛く、少しではあるけど気持ちが揺らいでいるのを実感した。

 

 ただし、これには大好きな館の皆の運命がかかっているが故に、例えこの身が砕け散っても頑張ろうとの気持ちがすぐにそれを遥かに上回った。歯を食いしばり、隙あらば制御を脱そうとする魔力の奔流を根気と集中力と技術、パチュリーとの協力も加えて抑え込む。

 

「くっ! 確かに凄い魔力消費量だけど、魔道具のお陰でまだまだ余裕があるのは幸いかしら!」

「アハハハ!! まだまだ私は行けるよ!!」

 

 途中、膨大な魔力制御の肩代わりと魔道具の助けもあるお陰か、魔力を提供してくれている姉様2人や美鈴、咲夜も多少の疲労を感じている程度に留まっていると、耳に入る会話から知る事が出来た。

 

 私とパチュリーは流石に皆より影響を大きく受けているものの、魔道具の補助はそれでも絶大な効力を発揮してくれている。そうでなければ、疲労程度では済んでなかったはずだ。

 

「あっ、魔法陣の輝きが……パチュリー!」

「遂に来たわね……よし」

 

 作った魔道具に感謝をしつつ中核魔法陣への魔力供給を続けていると、つい先程まであまり目立たなかった魔法陣の幾何学的な紋様が、一転してその存在を主張するかの様に強く輝き始めた。遂に、発動準備が整ったのを知らせるサインである。

 

 ここまで来れば、後は発動の鍵となる言葉をパチュリーと同時に口に出すのみだ。念のため、紅魔館の敷地外に妖精さんたちが出ていたりしないかを能力で調べると、全員が食堂かメイドさんの部屋固まっていたため、誰かと永久の別れをする心配もなくなった。

 

「「救いの船よ、今ここに幻想郷への道標を辿り向かえ!!」」

 

 と言う事で、パチュリーと合わせて私が発動の鍵となる言葉を口に出した瞬間、光が結界用の魔法陣を展開した箇所へと一瞬にして伸び、10秒も経たない内に窓の外が眩い白光に包まれた。

 

(何この音、頭に響く……!)

 

 それだけなら余裕を持てたから良かったけど、例え様のない音と共に耳障りな高音も響いているせいで実に不愉快極まりない。姉様2人や美鈴、咲夜も不快だと言いたげな表情をしながら耳を押さえている。

 

「……止んだ?」

「確かに止んだわね。取り敢えず、この様子だと成功と見て良い感じよ」

「うん、そうみたい」

 

 しかし、窓から入ってくる白光と耳障りな高音は大して時間も経たない内に止んだため、長時間は苦しまずに済んだ。同時に、眼前にあった魔法陣が輝きを急速に失い、光の粒子となって跡形もなく消失する現象が発生した。

 

 これのみであれば失敗した可能性も外せないが、魔法発動前と比べて身体を巡る力が明らかに倍増しされた感じがしているのを鑑みれば、幻想郷への移住は成功と断じて良いだろう。

 

「力も漲るし、何より外の景色がまるで違う……来たのね、幻想郷に! ありがとう……皆。今日ほど嬉しい日は早々ないわ!」

 

 それにしても、窓から外の景色を見ていたレミリア姉様が全身で喜びを表現しているのを見てると、私の想像を超えて身体的にも精神的にもずっと苦労していたんだなと、今理解した。

 まあ、私が館の皆を大切な護りたい家族だと思っている様に、レミリア姉様もそう思ってくれているのだから、想像など簡単に超えてくるのは必然か。

 

「とは言え、幻想郷の今現在の詳しい内情、同じく移住してきている可能性が高い吸血鬼一家の動向が分からない以上は喜んでばかりはいられないから、しばらくは警戒しておきましょう」

「そうだね、お姉様!」

「私も、レミィに同意ね。他にも不確定要素があるかも知れないし」

 

 すると、存分にはしゃいでいたレミリア姉様が急に真剣な面持ちへと戻り、数々の理由を述べた上でしばらくは警戒しておこうと言ってきた。

 

 色々調べた上で移住してきてはいても、何事にも悪い方の想定外が発生する可能性はつきものである。勿論、そんなのはない方が良いのだけど、ある程度幻想郷の住民たちと馴染むまではレミリア姉様の言う通り、警戒はしておこうと誓う。

 

「あぁ……嘘でしょ……?」

 

 心に誓ったその流れで能力を使用し、館に迫り来る何かが現れたりしないか早速調べようとしたその時、とんでもない恐怖が私の全身を駆け巡った。

 何故なら、迎撃や防御が不可能となる距離にまで高速で接近していた魔法攻撃が食堂近辺の壁を直撃し消滅、そこに居た妖精さんの一部……5人の反応も同様の末路を辿()()()()()()()からだ。

 

 比較的外からの音が通りにくい時計塔の登り口にすら爆発音が少しだけど聞こえたので、能力がおかしくなっただけとの一抹の望みも断たれた形となる。

 空間防御結界も中核魔法陣と同時に消失、通常時に館を守る結界の再展開が行われようとしたこの時にこんな事が起こるとは、間が悪すぎるとしか言い様がない。

 

「今の音……って、リーシェ!?」

「ちぃ! 早速不確定要素って奴なのかしら!?」

 

 けど仮に、幻想郷到着と同時に能力を使っていたら、妖精さんたちが居る場所に別途で結界を張っていたら、最も頑丈な地下室へ念のために避難させていたら、こうはならなかっただろう。

 

 極僅かの特殊な例外を除けば、種族特性の『1回休み』で一時的に消えて居なくなるだけで、永遠に会えなくなる訳ではないのは分かっていても辛い。良いも悪いも含めて復活時の記憶継承は行われるし、状況の如何によっては側で見ていた他の妖精さんたちの精神的負担も大きいと思われるからだ。

 

(早く、早く行かなきゃ……皆が、ぐっ!)

 

 しかし、よりによって覚えのある一家の吸血鬼さん(思い出したくもない奴ら)が数人、それに対して無誘導の魔法弾を乱射しながら追いかける謎の存在が館に亜音速で接近しつつある事を能力で捉えている。

 このまま行けば15秒もしない内に上空へと到達してしまうので、後悔などしている暇など無論今はなかった。

 

 故に、頭に走る痛みと溢れ出そうな程に激しい感情を理性で抑えつつ、これ以上絶望的な状況へと追い込ませないために、私は食堂へと急いで向かった。

 




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?

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