目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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不安定な雷天使

「ごめんね……妖精さん、ごめんね……」

 

 現実逃避をしたくなる程に悲惨な現場と化してしまった食堂へ向かった後、瓦礫の撤去や多重防御結界の展開、怪我をした他の妖精さんたちの応急処置を後から追ってきたレミリア姉様たちと何とか行い終えた私は、今の状況に精神的に堪えきれなくなっていた。

 

 これは、普段どんな時でも元気で笑顔な彼女たちが、程度の差こそあれ怪我や友人の喪失で悲しみ苦しむ光景を見たからなのも大きかったけど、寸前で持ちこたえられてはいた。

 

 が、作業途中に5人分のボロボロになったメイド服や各種小物類()()が瓦礫の下や食堂の床から見つかり、改めてこれが現実であると突きつけられると元々限界近かっただけに、爆発したが如く溢れてくる混ざりあった感情を抑えるのは、到底無理だった。

 

 幸いなのは、その惨状故に本人たちが長く苦しまず1回休みになった事だけど、正直気休めにすらならない。どのみち、苦しみ自体は味わってしまった……いや、味あわせてしまったと表現した方が正しいか。それが理由である。

 

「リーシェさま。悲しかったのは確かだけど、わたしたちなら大丈夫。本当に大丈夫だから……その、泣かないで」

「そーだよ! 1回休みになったあの子たちも、リーシェさまが自分たちのためにずっと泣いてたって後で知ったら、きっと気に病んじゃうし!」

「うん……うん!」

 

 すると、周りに居た妖精さんたちがいつも通りの笑顔を見せ、寄り添ったり私の手を取って語りかけたりして慰め始めてくれた。

 自分たちだって辛いだろうに、色々と気遣ってくれるなんて感動と感謝でしかないし、妖精さんたちにこう言われれば泣いてばかりはいられない。

 

 後は、レミリア姉様たちにもこれ以上心配かける訳にも当然いかないから、何度も深呼吸を繰り返すなどして何とか自責思考と悲しみの感情を抑えた。頭痛と恐怖感は完全には抑えられなかったけど、耐えられる程度にはなってくれたからひとまず良しとしよう。

 

「ねえ、レミリア姉様。私からのわがまま聞いてくれる?」

「何かしら、リーシェ?」

「アイツら、私の手で落としても良い? この惨状の誘発者たち……存在自体がもう、赦せないから」

 

 で、それらをほぼ完全ないしある程度抑えたかと思えば、今も何故か紅魔館の上空に留まって空戦している吸血鬼さんたちや謎の存在に対する、怒りや憎しみと言った負の感情が煮えたぎるお湯の如く、代わりに湧き出してきた。

 なので、色々と詳しい説明を出来る限り客観的にレミリア姉様に伝えた上で、全員まとめて撃墜する許可を求めた。

 

 勿論、能力で得た情報から謎の存在が直接攻撃を仕掛けてきた訳ではなく、何か仕出かした可能性が濃厚な吸血鬼さんたちを狙って外した魔法が、たまたま運悪く飛来してきただけなのは分かっている。

 

 ただ、結果的に何の罪もない5人の妖精さんを理不尽に苦しめて1回休みへと追い込んだ相手に対して、寛容な態度など取れるはずもない。

 けれど、せめて短時間で立ち去ってくれれば相手が相手なだけに、百歩譲って後で探してから諸々の事情を考慮した上で文句を述べ、館の皆に対する謝罪と一定の対価の要求程度で終わっていただろう。レミリア姉様だって、恐らく似た感じの行動を取っていたと思う。

 

 しかし、現実は未だに立ち去らず吸血鬼さんたちと比較的低空でやり合い、パチュリーが急いで再展開した結界がなければ危ない威力の魔法を無遠慮に撒き散らしまくっている。

 こうなれば当然、流れ魔法が都合良く館を避けてくれるはずもなく、現に何度も結界に命中した時の音が聞こえてきていた。

 

(どうして、わざわざ紅魔館の近くでやりたがるの……!?)

 

 だからもう、私の中では事情など関係なく排除すべき敵としてしか思えなくなった。故に、レミリア姉様から撃墜許可さえもらえたら、すぐにでも実行に移す腹積もりであるけど。

 

「勿論よ。ただし、無理は絶対にしないと約束して」

「リーシェ、絶対だよ! 約束破ったら本気で怒るからね!」

「うん、ありがとう」

 

 数秒考える素振りを見せた後、絶対に無理はしないと約束するなら落としても良いと許可を無事にもらったため、魔導矢筒に入れたサジタリウスの烈矢4本と雷弓を携え、中庭へと向かった。

 

(今は紅魔館上空かつ高度300m~700mを行ったり来たり、飛行速度は変わらず亜音速、吸血鬼さんは上位寄りの中位で謎の存在が上位推定、妨害魔法などは今のところなし……うん)

 

 能力で探知してみた限りでは今の備えで全員落とす事は可能だろうけど、何か1つで状況がまるっきり変わる可能性は十分あり得る。油断せず、姉様2人と同じかそれ以上の相手と相対している心持ちで行こう。

 

「もう、これまで……さようなら!!」

 

 そして、謎の存在が1人吸血鬼さんを叩き落としたタイミングで魔導矢筒から出してつがえていた矢を狙っていた敵へと放ち、残り3本も数秒間隔で順次狙い目の敵へと放った。

 

 結果、()()()()()残っていた全員を問題なく紅魔館外に追いやった上での撃墜に成功し、使った魔力も魔道具に残っていた魔力のお陰で負担も実質軽減され、レミリア姉様やフラン姉様との約束も守れた。

 

 更に、追加で念のために行った探知で館に向かってくる何者かが居ない事も確認出来たから、一時の安寧は確保されたと見て問題はないだろう。勿論、しばらくは起きている間に定期的に能力での探知を行うのも忘れたりはしないし、場合によっては寝る間も惜しむ覚悟だってある。

 

(……)

 

 しかし、あの謎の存在がサジタリウスの烈矢を1発、音速の2倍で逃げれるだけの力を残して耐えてきたのには心底驚いた。すぐさま作った1発を叩き込んで落とせはしたけど、仮にあんなのが大挙して押し寄せてきたらと思うと恐ろしい。

 

「何回見ても凄い魔法ね。それで、リーシェ。一応聞くけど、目的は果たせたのかしら?」

「勿論、全員落としたよ。ただ、ちょっと心配事が出来ちゃって……」

「……詳しく聞かせてくれる?」

 

 心の中でそう思いながら館の中に戻ろうと後ろを振り向くと、途中から私を見守ってくれていたレミリア姉様から目的は達成出来たのかと聞かれたので、出来たと答えた上で謎の存在についての報告も同時に行った。

 

 途中、これまでで1番強烈な頭痛と恐怖感に加えて視界の霞みまでもが襲って来る不調に陥ったけど、同じく見守ってくれていたフラン姉様に支えられたお陰で何とか済ませられた。これで、少しは今後の行動の助けになってくれるとは思う。

 

 ただ、私が体調を崩して苦しむ様子を見せてしまい、姉様2人に酷く心配をかけてしまったのだけは心残りだ。魔力自体はしっかり残してせっかく約束を守ったかと思ったら、結果的に無理をしたみたいになるなんて不本意だけども、なってしまったものは致し方ない。

 

「ごめん……」

「大丈夫。私が絶対に、誰も欠けさせる事なく守り抜いてみせるわ……だから、今は自室で休みなさい。フラン、リーシェをよろしく頼むわよ」

「はーい! リーシェ、私がついててあげるから安心してお部屋で休んでね!」

「うん、そうする……」

 

 なので、何だか泣きそうな表情をしたレミリア姉様と、泣くまいといつもの様な満面の笑みを浮かべたフラン姉様の言いつけ通りに休むと決めた。

 まあ、そもそも立っているのがやっとの状態で寝る間を惜しんだりすれば本格的に不味い事になるから、ゆっくり休む以外の選択肢はないし、言われなくても寝て休むつもりではあったけど。

 

(あっ、何だか急に……)

 

 なんて事を考えながらフラン姉様にそのまま抱き抱えられた私は、その瞬間に半減した不調の影響で急激な眠気に襲われ、10秒も経たない内に眠りへと誘われた。

 




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