「はぁ……本当、よりによって紅魔館の上空でやり合うとかふざけてるわ。あの吸血鬼一家、絶対に悪意をもってやったでしょうね」
妖精メイド5人が他人同士の戦闘による流れ弾で1回休みとなる、紅魔館史上最大の直接的被害を被った事件があってから18時間、私は何ともやるせない思いに苛まれていた。
理由としては、リィの首飾りが実質的に用を成さなくなった上に、後1つ何かがあれば大規模な暴走を引き起こしかねない領域にまで、精神が崩されたと言うものが大きい。
顔を歪める程に強い頭痛、呼びかけに対する反応の鈍化、過剰なまでに抱いた警戒と恐怖心……他にも、見てて痛々しい精神・身体的不調はかなりの数に上る。
当然、こんな様子ではレミィとフランがクレイナ似の妖精メイドと他数人を専属としてつけていないと、とてもではないが自分たちが様子を見れない時に安心出来ないと言うのも納得でしかない。
今日みたく、召喚悪魔を十数名を引き連れて幻想郷の調査に行く時なんかは、言わすもがなである。
「そうですね、私も同じだと考えます。吸血鬼の方は例の一家との事ですし、恐らく紅魔館を厄介事に巻き込んでやろうとの魂胆でしょう。どうにかしたいですが、私ではどうにもならないのがもどかしいです」
思わず心の内を声に出しながら、首飾りの超強化や術式改良のための作業を行っていると、コーヒー片手にこあが隣の椅子に座ってきた。私の独り言を聞いていたらしく、リィに消された吸血鬼が紅魔館上空でわざわざ戦った理由について、自分なりの推測を述べて伝えてきてくれた。
非常に悔しそうな表情を見せていたけど、私も同じ様な思いを抱いているだけに、こあの心内が痛い程理解出来た。
しかし、どうにもならないからと言って何もしていない訳では当然なく、妖精メイドたちに混じってリィと遊んだり、少しでも解決の糸口が見えてくれる様に本で調べものをしたりなど、出来る限りの事はしている。
館の住人になら例外なく誰にでも優しく思いやりがあり、かつ何らかの失敗をしたとしても怒る事などないリィを、こあが慕うのも当然の摂理と言えるだろう。その分、例外はあれど他人に対する冷淡な態度、館の住人を害する者への冷酷無比な振る舞いが強く印象に残る訳だけど。
「なるほど」
「はい。後、謎の存在についての情報が全くないので断定は厳しいですが、もしかしたらそれ関連で想像以上の厄介事に発展していく可能性が高いかと」
「確かにまあ、謎の存在とやらが1人だけとは限らないか。けど、そうなると事と次第によっては大規模な戦いが発生するだろうし……」
で、その後も作業を行いながら謎の存在についての話を含め、何とも有意義な議論の時間を過ごした。可能ならば大した事が起こらずに終わって欲しいと考えてはいるけど、こあの言葉にはかなりの説得力が備わっているだけに、とんでもない何かが起きるとしか思えない。
まあ何にせよ、これですら聖教会や吸血鬼狩り組織の連合軍との相対を選んだ場合よりは
「それにしても、レミィたち帰ってくるのが遅い――っ!?」
いつもよりは気を張る感じで過ごしつつ、本来であれば帰ってくるはずのレミィが帰ってきていない事に思考を向け始めた瞬間、万が一を考えて起動していた大図書館の探知魔法陣が未知なる何者かの侵入があったと示す際に放つ魔力の波動を、この身で捉えた。
紅魔館の住人は言わずもがな、付き合いのある友人や召喚悪魔たちでは反応しない様な仕組みであるため、自ずと侵入者の選択肢は限られてくるだろう。
「パチュリー様、これって……」
「ええ! レミィとフランが居ない時に侵入者とか、どう考えてもやられたわね!」
加えて紅魔館を守る結界には異常が見られず、地下の大図書館に侵入者と言う事は、美鈴と門番妖精メイドたちの守りが正面から突破された訳である。
つまり、妖精メイドたちの身の安全が完全に保証されなくなり、不安定なリィの暴走の引き金となる厄介事が、少し前から既に始まっていたと言う事に他ならない。こあと話した側からこれとは、私の言葉に何か特殊な力でも眠っていたかと錯覚しかねないタイミングだ。
「なっ……
で、その侵入者の排除を試みるために急いで部屋から大図書館へと出ると、よりによって目の前でクレイナ似の妖精メイドが黒い翼の妖怪数名に取り囲まれているのを発見したため、白光を纏うレーザー様の稲妻を咄嗟に相手へと向けて放つ。
本棚の本には
ただ、美鈴や門番妖精メイドの守りを突破してきている以上、生半可な攻撃では通用しない可能性が高い。故に、威力と即応性が良いバランスで両立しているこの属性魔法を選択した。
「ぐすっ、リーシェさまぁ……」
「大丈夫。きっとすぐに来てくれるわ」
不意討ちであったため、クレイナ似の妖精メイドを取り囲んでいた数人の妖怪を薙ぎ払い、出来た隙をついてこあに救出してもらう事には成功した。
見た感じ、取り囲まれた恐怖による過呼吸や多少の怪我はしているみたいだけど、最悪の展開は避けられた形となる。ただし、この状況を確実に能力で探知しているであろうリィを、あの時以上の暴走へと導くきっかけの1つになってしまったのは痛い。
「同胞がまた……ふぅ。これ以上被害を被る前に吸血鬼軍の将の1人……リーシェとやらをさっさと見つけだして討伐し、妖怪の山の惨たらしい侵略吸血鬼共を瓦解させる必要がありますね!」
「レミリアとフランドール、その他のコルベルシア家を名乗る吸血鬼共が残っているはずだが?」
「大天狗様や天魔様方が討伐してくれるでしょう。我々は我々で、任務を遂行する必要があります」
そして、紅魔館内部に侵入出来るのであれば、目の前に居る敵はかなりの強敵であると言う事だ。案の定、まともに浴びた1人を行動不能へと追い込んだ以外は、即応防御体勢を取られたせいで一定のダメージを与えた程度で終わってしまう。
(こいつら……)
と言うか、さっきから訳の分からない発言ばかり耳に入ってきて最悪でしかない。状況と性格からしてレミィたちが侵略者となる訳がないからだ。
更に言えば、レミィの行動原理は館の皆を平穏に過ごさせたいと言うものだ。仮に侵略を試みていたとしても根底にはそれがあるため、それを笑って楽しむはずなどないと分かっているのも理由の1つである。
「おい。これ以上抵抗せずにリーシェとやらの居場所を教えれば、すぐさま全員で立ち去ってやるが」
「舐めた口を聞かないで頂戴。それをする位だったら、最後まで全力で抵抗させてもらうわ!」
「そうですね、パチュリー様!」
「わたしだって、頑張らなきゃ……!」
爆発しそうな位に膨れ上がる怒りを抑えつつ対峙していると、黒翼の妖怪の内1人が私に向かってリィを差し出せなどとふざけた要求をしてきたが、即座に断りを入れた。
これを受け入れれば即座に立ち去ってくれるとは言っていたけど、素人目に見ても分かる猛毒を好んで取り入れるなどあり得ない。だから、図書館の本云々は二の次として全力で猛毒を排除するべく、私は魔法発動の構えを取る。
「警告……今すぐに侵略行為を中断し、紅魔館より撤退して下さい。これが私、リーシェ・スカーレットからの最後通牒と受け取ってもらって構いません」
しかし、それは底冷えする様な圧を感じさせる無機質な声と共に、見るも無惨な状態となった妖怪が彼らの眼前に投げ込まれたために、一時収まる事となった。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?
-
1人
-
2人
-
3人
-
追加しない方が望ましい