目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今日もパチュリー視点の話です


暴走せし雷天使

(これは……相当凄まじい事になりそうね)

 

 優れた探知能力によってこの場に現れたリィと、大図書館へと侵入してきた黒翼の妖怪たちの対峙する様子を少し離れたところから伺いつつも、中々動き出せずにいた。

 あまりにもリィの発する魔力が強いのに加え、底冷えする威圧感と感情の乏しい振る舞いに気圧されていたためである。

 

 後ろに居たこあやクレイナ似の妖精メイドも私と同じ感じであり、リィを殺すと息巻いていた黒翼の妖怪たちに至っては直接対峙して意識を向けられているため、圧倒的な強者の威圧感にやられて言葉を失い、敵対感情よりも恐怖心が勝った無意識に後ずさりする者まで出る始末となっている。

 

 何とも情けない状況に陥ってはいるものの、彼らも決して弱くはない。もし弱かったとしたらここまで侵入出来るはずなどないし、仮に運良く侵入出来ただけだとしても、私の先制攻撃魔法で消し飛んでいるはずだ。

 

「貴様か……! よくも、よくもあ奴らと結託して我々の隊長――」

「もう1度言います。今すぐ無条件で紅魔館より撤退して下さい」

「おい、話を聞け――」

「貴殿方はあくまでも侵略者ですので、話を聞く義理などありません。それよりも、返答をお聞かせ願えますか?」

「だから貴様――」

 

 体感的にかなり長めの時間が経過した後、ようやく威圧感や恐怖をを乗り越えて侵入者たちが敵意を剥き出し始めたものの、案の定リィは意に介していなかった。彼らが何か話す度に腰を折り、淡々と撤退せよと呼びかけている事から、それは明らかだ。

 

 しかし、何故そこまで繰り返して撤退を呼びかけているのだろう。普段のリィからはまるで想像出来ない振る舞いであり、私には到底理解出来ないものではあった。

 まあ、今回と状況が違うとは言え1回目の暴走でも性格が大きくねじ曲がった事を鑑みれば、理解出来なくてもしょうがないと言えるか。

 

「はぁ……無論、撤退などせん! 貴様も含め、我々の脅威となり得る面々を討伐するまでな!」

「……」

 

 そして、憎む対象となっているリィに10回近くも話の腰を折られ続けた侵入者たちは、苛立ちが最高潮へと達したらしい。静寂に支配されていた大図書館に響くやかましい大声で叫びつつ、撤退などしないと啖呵を切った。

 

 急激と表現するに相応しい程の勢いで妖気を高め、並の吸血鬼や悪魔では脅威としか言えない威圧感を醸し出し始めたのを見れば、紅魔館の主力陣を討伐しようとの意志は固いだろう。怯えていた先程とは違い、相応の実力者の風格が備わっていると分かる一幕だ。

 

 ただ、普段でもそうなのは変わらないものの、今のリィにその発言をすると言う事は、自滅の道を突き進む愚かな行為としか言えない。

 

「させません。これ以上、家族に危害を加えられる光景は見たくありません……もう、あんな思いは嫌なんです」

「何て……がっ!?」

「だから、貴方の仲間全員……苦しみ、死んで、死に絶えて下さい!」

 

 案の定、その発言を聞いたリィは憂いを帯びて光の灯っていない瞳で私やこあ、クレイナ似の妖精メイドを数秒見つめた後、少し震え気味に言葉を紡ぎながら発言者の真下よりどす黒いオーラを纏う稲妻の柱を立ち上らせた。

 

 何気なく放たれたこの魔法ではあったがその威力は絶大で、中心地に居た黒翼の妖怪が跡形もなく消し飛び、直接当たらなかった黒翼の妖怪も空間に伝播した闇と雷属性の波動のみで洒落にならないダメージを負う程である。

 

 防御魔法で強力に保護した近場の本棚幾つかも、防御魔法ごとその根本から吹き飛ばされて悲惨な状態になったのは、もうこの際気にしてはいられない。

 まだ本そのものが色々な要因が重なって目測8割現存しているだけマシだし、そもそもこの事態は訳の分からない侵略者共が全面的に悪いのだから、その怒りをぶつけるなら奴らにするべきだと考えた。

 

 なお、私たちの方にも両属性の力が含まれた波動は伝播してきたものの、寸前でリィによって展開された同属性の防御結界で相殺されたため、一切の傷なく済んでいる。

 

(うわっ、えげつないわね……)

 

 にしても、もう既に死に体の妖怪を天雷(アマイヅチ)で涙を流し感情の赴くままに止めを刺したり、こうなる前にはカラクリだと例えたくなる位に極めて感情が薄くなったりしていたのを見ていて、今回の暴走は感情の起伏も激しいと理解出来た。

 

 けど、どちらに転ぼうとも館の皆を害する展開にはなり得ないし、()()()()()()()()安心して見ていられる。とは言え、暴走時の過剰な魔力生成などに付随する負担にリィが耐えてくれるかが不安なので、総合的には安心出来ない。

 

「館内の敵は咲夜や召喚悪魔たちによりほぼ掃討完了、しかし中庭の脅威的存在により、美鈴と門番妖精さんが危機的な状態……3分以内に援護開始の絶対的必要性あり」

「ん? えっ、美鈴が――」

「加えて紅魔館北北東方面30㎞先より多数の増援……中庭に存在する脅威と同等の脅威1つ含め、音速飛行でおよそ1分30秒以内に上空到着と判断しました。故に『穢れなき神域(イーマサンクチュアリ)』を展開、持てる全力での迎撃態勢を構築するため、中庭へと向かいます」

「ちょっ、リィ! ああもう……こあ、貴女は妖精メイドを連れて安全な地下室へ避難してて!」

 

 頭の中で警戒しつつも考え事を行っていると、唐突に再び感情を感じさせない無機質な声を発し始めたリィが、唐突に駆け出したため、呆気に取られつつも急いで中庭へと向かう事にした。

 

 止めを刺して棒立ちになってから今までおよそ5秒、たったこれだけの時間で館内と館外の敵の動向を事細かに把握したらしいけど、凄いとしか言い表せない。

 

「パチュリー様、ご無事でしたか!」

「ええ、私は無事よ……それはそうと、中庭に急ぎましょう! リィ曰く、美鈴が危ないらしいから!」

「えっ……えっ!? そんな事が……勿論です!」

「美鈴さんでも危ないなら行っても足手まといで仕方ねぇし、俺らは中に残ってる奴らを始末して回る事にしますわ」

 

 道中、ばったりと出会った咲夜と数人の召喚悪魔にも簡単に事情を説明したところ、館内の掃討に召喚悪魔を残して咲夜だけ一緒に連れていった。

 

 その際に随分と狼狽していたけど、美鈴と咲夜は気の合う友人でもあり、体術の手合わせを良くする関係でもある。普段から美鈴の実力の一端をその身に実感しているから、こうなると想定していなかったのだろう。

 私も、リィの言葉からそれを知った時は心底驚いたから、咲夜の気持ちも良く理解出来た。

 

「咲夜さん、パチュリーさん……すみません。耐え忍ぶのが精一杯で……」

「何言ってるの!? 死なずに耐え忍べてた時点で十分よ!」

「そうね。美鈴、後はリィや私や咲夜に任せて休んでなさい。貴女、美鈴の事は頼んだわよ」

「了解しました!」

 

 多数の黒翼の妖怪が地に伏していた中庭に着き、同じく傷だらけの門番妖精メイドに介抱されていた美鈴に応急処置(回復魔法)を施し、ひとまずは危機を脱したものの、目の前で行われている激しい戦闘を見て、想定を超える恐ろしさを感じる事となった。

 

 2本の角を頭に生やし、これまた恐ろしい程に絶大な妖気を纏った妖怪とリィがほぼ互角でやり合っていれば、そうもなると言いたい。少なくとも、私たちが駆けつけるまでに防戦に専念して耐えきった美鈴は称賛に値する程である。

 

(レミィ、フラン……貴女たちも無事で居て)

 

 にしても、レミィとフランは大丈夫なのだろうか。紅魔館がこんな状態とあってはもっと酷い目にあっていてもおかしくなく、リィがそれについて何も反応を見せていないとは言え、不安で仕方ない。

 

「これは……増援が落としきれずにある程度は来るわね。咲夜、構えなさい!」

「はいっ!」

 

 すると、リィの魔法による迎撃が急速に激しさを増すと同時に、サジタリウスの烈矢による爆発の間隔がより短く、音がはっきりと大きくなって来始めた。

 

 ここまで無事に済んだ妖怪の姿もちらほらと見かける様になってきたため、確実にかなり激しい戦闘が始まると睨み、少しでも被害を小さくするべく私は構えを咲夜と取った。




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