「さてと、どうしたものかしら」
コルベルシア家勢力の謀により妖怪の山の強者と紅魔館が不幸にも激突、互いに少なくない損害を出したあの戦いから5日、完全ではないものの、紅魔館は普段の雰囲気を徐々に取り戻しつつあった。
巻き添えなどで怪我をした妖精メイド5人は全快、重傷を負っていた美鈴もパチェの魔法治療の助けを借りて順調に快復、戦闘による館内や中庭の破損箇所も応急措置を完了させる事が出来ている。本来であれば、心から喜べるはずなのだ。
(はぁ……幻想郷に来てから、待ってましたと言わんばかりに災厄が襲って来てて頭が痛いわ)
だが、リーシェとも比較的仲が良かった3人の妖精メイドが1回休みへと追い込まれ、気を失っているリーシェは時々
身代わりになれるのであれば、全てを予測し最善の行動を取り続けられる力があれば、悪夢を消し去れる能力があればと思わざるを得ないけど、当然そんな事は不可能だ。
だから、時間を作っては側に寄り添い声をかけ続けるなどして、せめて少しでも和らいでくれる様に願っている。
「お嬢様、すみません。いつもの紅茶と洋菓子をお持ちしましたが……」
そんな風に悩みを抱きつつ仕事を半ば惰性で続けていると、不意に紅茶と洋菓子を嗜むかと問いかける咲夜の声が隣から聞こえてきた。時計を見たら、いつの間にかお菓子や紅茶を嗜みつつゆっくり過ごす休息の時間を少し過ぎていた事に気づく。
「いつの間に居たのね……ええ、勿論よ」
「分かりました。では、どうぞ」
正直、色々と考えていたせいで食欲はあまりない状態ではあったけど、これ以上咲夜に心配をかける訳にもいかないし、無理をしてはフランやリーシェに申し訳がたたなくなってしまうので、ひとまずいつもの様にゆったり嗜むと決めてそう伝えた。
仕事も否応なしに増え、忙しくなっているこの状況下でも咲夜の作る洋菓子や淹れる紅茶の味は一切変わらず、食欲があまりなくとも染み渡る美味しさである。これでいて戦闘能力も高いのだから、メイド長としては完全無欠としか言い表す事は出来ない。
「リーシェお嬢様、夢の中でようやく安息の時を過ごせたみたいですよ」
「ほっ……本当に?」
なんて考えつつ、口の中に洋菓子を入れたちょうどそのタイミングで、咲夜がリーシェが夢で安息の時を過ごせたみたいだと、夢にも思わない一言を唐突に会話の中に入れてきたから、反射的に聞き返してしまった。
ただ、普段の他愛もない話であればともかく、この手の話題で咲夜が私を上げて落とす様な冗談を言う訳がないから、これは本当だだと断言が可能である。心なしか、この話をする咲夜も嬉しそうな表情を見せているから尚更だ。
「はい。大半は良く聞き取れませんでしたが、寝言でレミリアお嬢様やフランお嬢様に対し、お礼を言っていた部分はハッキリと聞き取れたので、そう判断しました」
「そう、そうなの……良かったぁ……! 私のした事で、少しでも苦しみが和らいでくれてたのかしらね……」
「当然でしょう。レミリアお嬢様は、リーシェお嬢様にとって
この目や耳で直接見聞き出来なかったのは残念ではあったものの、リーシェが少しでもあの苦しみから解放され、穏やかで愛らしい寝顔を見せていたのだと考えると、泣かずには居られなかった。
そして、夢の世界でも安息を得られたのならば、もしかしたらそう遠くない内に目を覚ましてくれる可能性が出てきた訳で、そんな時に館内の雰囲気が悪いと精神が逆戻りになってしまいかねない。だから、懸念事項をリーシェが目覚めるまでに大半を潰しておきたいと思っている。
ただ、1回休みとなった妖精メイドたちに関しては、復活する場所もタイミングも自然の成すがまま故にどうにもならないので、そこは何とか耐えてもらうしかないのはもどかしい。
「こんばんは。レミリア、今は都合つくかしら?」
「うわっ!? って、紫……ビックリするし、急に目の前にそれを開いて来ないで欲しいわ。都合はつくけど……と言うか、何故逆さま?」
「単なる気まぐれですから、お気になさらず」
なんて事を考えながら流れた涙をハンカチで拭っていると、目線の高さより少し上の空間に線が入って開き、目玉だらけの不気味な内部から幻想郷の賢者『
普段は並大抵の事では驚かない咲夜も流石にこれは衝撃的だった様で、私と似た感じで驚いていたけどすぐに表情を戻した上で一礼し、この場から能力を使って消えた。
で、彼女が用もないのに能力の一部だと言う『スキマ』を使ってまで紅魔館へと来るはずもないから、来た理由は十中八九コルベルシア家勢力の撃滅戦について伝えるためだろう。
遂に、散々な目に合わせてくれた昔からの敵対者に報復する機会がやって来ると思うと気が逸るけど、今すぐ行くと決まってはいないし、落ち着いて話があるまで待つ。
「そんな事より、幻想郷にはこびるコルベルシア家勢力の撃滅戦最終段階は明後日の夜、鴉天狗や白狼天狗や鬼を主とした妖怪の山勢力、それ以外の実力者数名と合同で行うと決めたけれど、問題はある?」
「明後日の夜ね、分かったわ。一応伝えておくと、紅魔館からは私やフラン、召喚悪魔20~30人を戦力として提供可能な限界数よ。館の防衛もあるからね」
「十分です。後は……」
他愛もない挨拶などをして待つ事およそ1分、予想通りコルベルシア家勢力を撃滅する戦を仕掛ける日についての話をし始めたため、一字一句聞き逃さない様に全神経を集中させた。
絶対条件である本拠地への襲撃へ参加や紅魔館の存在保障が可能であれば、最終段階終了後に出るであろう残党の掃討、場合により一定程度負傷者の治療への協力などは断る必要性もない。私としては、かなり理想的な結果を得る事が出来た。
「ああ、そう。レミリアの末妹の事なのだけど……少し、こちらから要望してもよろしいかしら?」
「要望? 内容によるわ」
けど、話が終わった後に紫が場の雰囲気を反転させる意味深な口調で、リーシェについて要望したい事があると言ってきたため、一転して膨大な緊張感がのしかかってきた。
大した要望でなければともかく、
ただ、定期的に監視の目を入れておきたい程度の要望であるならば、あれこれ交渉をした上でそれ自体は受け入れようとは思う。
まあ、本人に直接聞いた訳でも言っていた訳でもないから、どちらでもない可能性は十分にあるけど。
「事が済んだら、彼女の暴走を引き起こす要因の根源となる力、それの大半に絶対の封印を施させてもらいたいとの要望よ。いずれ、抑えきれなくなる前にね」
「絶対の封印……」
「端的に言えば、魂に結び付くと見ている根源の力を封じた際の影響を極小にする『道具』を用意し、私や藍、場合により他の者の助けを借りて封印の儀を行う感じですわ。これで、何かきっかけとなる出来事が起きても、半永久的に暴走は起こる事はなくなるでしょう」
「……」
しかし、紫から出された話はそのどちらでもなく、リーシェの暴走を引き起こす根源となる力に何らかの手段を駆使し、半永久的にあの様な暴走を引き起こさないための強固な封印を施したいとの要望であった。
魂に結び付くとか封じた際の影響だとか、聞いていて不穏でしかない言葉が飛び出してきているけど、いずれ抑えきれなくなる時が来る可能性は、確かに大いにある。
更に、暴走の原因となるそれを封印した場合の影響に人格の消失や激変、普段の力すら発揮が難しくなるか不可能になる程の大幅な弱体化はないと断言していた。
あるとすれば、あくまでも暴走時のあれが殆んど発揮されなくなるのと、既存の性格がある程度強調されてくる位らしい。何とも言い難いけど、暴走されるよりは比べるまでもなく圧倒的にマシである。
「その要望、受け入れるわ。ただし、しっかりとリーシェが目覚めたら一字一句同じ説明をして、あの子自身の意思で了承をもらってくる事。ほぼ確実に了承はしてくれるとは思うけど、これだけは絶対よ」
「了解しましたわ。では、また明後日の夜にお会いしましょう」
と言う訳で、リーシェが目覚めたら一字一句同じ説明をして了承をもらうのを条件に、こちらとしても渡りに船な紫の要望を受け入れると伝えた。
(今の話、フランに伝えに行かないとね。それからはパチェに美鈴、咲夜たちにも伝えないと……)
そして、この話し合いが終わって紫がスキマでこの場を去った後、今の話し合いで出た事を説明するために、恐らくリーシェの部屋に居るであろうフランの下に歩みを進めた。
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幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?
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1人
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2人
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3人
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追加しない方が望ましい