目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話もフラン視点で、かつ文字数が長めとなっています


侵略者撃滅戦(中編)

 最初の関門と呼んで申し分のないロフルスやサティーたちとの戦いを勝利で終え、僅かながらの休息を済ませた私やお姉様たちは、強い警戒態勢を保ったまま進軍を再開していた。

 

 城内へ通ずる門の突破前もそうだけど、突破してすぐにこれ程の規模を誇る戦いが発生したと言う事実は、全員にかなりのプレッシャーを与えてきている。

 

 まあ、コルベルシア夫人やその側近たちが控える場所やその近辺に、質の高めな厄介な敵が最低でも同等の数が鎮座している可能性が出てきた訳で、そうなるのも当然であった。

 

「分かってはいたけど、この城ちょっと広すぎ……ってもう、また罠!?」

「くそっ、視界が歪んで思う様に動けん!」

「あの妖精共ですか……厄介ですね。個々は弱くとも、集まれば我々にも届き得る刃となる様で」

 

 加えて、城内が外観に違わぬ広さを誇っていたのもさる事ながら、通路にある分かれ道の多さや割と強力な魔法弾を放ってくるトラップ、巧妙に偽装された罠扉や幻惑系魔法を主に使う妖精の集団など、進軍を阻害してくる要素がこれでもかと散りばめられている。

 

 事前にかけてあった防御魔法のお陰でいくつかの支障となる事柄はほぼ防げて、他の事柄も対処は可能なものが全てではあるけど、流石に連続で来られれば気が立つのも無理はない。

 私やお姉様たちが感情を持つ存在な以上、どんな時も感情に揺れ動かされないなんて絶対に不可能なのだから。

 

(何かがおかしい……妖精って、こんな種族だっけ?)

 

 しかし、それにしても襲いかかって来る敵の妖精たちが何故かほぼ例外なく、種族特有の生気と感情が希薄なのは気になる。生気に関しては個人差は大きいものの、感情の方は大体が豊富なものを見せてくれる種族だから尚更だ。

 考えたくないが、奴らが何らかの魔法による抑制効果、もしくは拷問などの精神を崩す手法により、意思を奪うか破壊している可能性が高い。

 

 だとすれば、うちもメイドとして妖精さんたちを沢山雇い、色々と仲良くしたり仲間同士で楽しそうにしている彼女たちを見ている分、多少なりとも同情の念は芽生えてきた。

 無論、それを確認して助けたりする暇も義理もないし、何であれ私やお姉様たちの敵として立ち塞がる以上、倒して進むつもりなのは決して変わる事はないけど。

 

「フラン!」

「えっ……うわぁ!」

 

 元々抱いていた、コルベルシア夫人やその側近たちに対する負の感情が増大しつつも、冷静に戦闘を続けて少し開けた空間に立ち入ったところで、あらゆる方向から雷と風の魔法弾がそれなりの速度で、私を狙って飛んできた。

 

 視認が遅れたせいでギリギリの回避となり、約半数が戦闘前に展開した結界に被弾する羽目になってしまったものの、多少傷を付けられた程度で弾き返せた。

 

 お姉様たちにも飛んできていたらしいけど、容易に回避するか一部を結界で弾き返すかして無傷で済んでいるのを見るに、さほど脅威でないと見て良い。だからと言って、生身で食らっても良いとは全く思わないが。

 

「今の攻撃、何だかトラップな感じがしないけど……お姉様はどう思う?」

「うーん、そうかも知れないわ。僅かばかりに何かが潜む気配がするし」

 

 しかし、ここに立ち入るまで何も居ない様に私やお姉様たちを欺き、立ち入ってからも集中しなければ読めない程に気配を小さくした上に居場所が全く分からないなど、厄介でしかない。

 攻撃の威力から推測では、潜んでいる相手はあまり強くなさそうであり、無視してもさほど影響はないかも知れないが、私たちがそう思わされている可能性は高い。同格の相手が潜んでいると想定し、警戒した方が良いだろう。

 

「だよね。リーシェだったらきっと……んぇ!?」

 

 こんな時、私にもリーシェの様に異常な程高い危機回避・探知能力があれば、苦労などせずすぐに見つけられてたのかもと思った刹那、思わず数秒混乱してしまう位に衝撃的な出来事が発生した。

 

 それは、僅かたりとも前兆となる現象を現す事もなく、こんなところに()()()()()()()()()()()が私たちの前に姿を表したからである。

 

(こんな杜撰な偽物で、騙される訳ないでしょ! けど……)

 

 当然、今の状況や発している妖気の質の変化と劣化を筆頭とした他多数の要素から、アレはすぐに何者かが化けたか再現した偽物、もしくは幻の類いであり、本物ではないと看過出来た。が、良いように道具として使われている感じが拭えず、全くもって腹立たしい。

 

 ただ、容姿や一部の仕草、手に持つ雷弓やその構え方は紛れもなくリーシェそのもので、その点に限れば言いたくはないし認めたくはないけれど……良く出来ている。

 

 そして、この狙いはほぼ確実に私たちの動揺と混乱を誘発し、あわよくば仕留めようとのものだろう。現に、私たちは動揺と混乱の渦中に居る訳で、悔しいけど奴らの術中に嵌まっているとしか言えない。

 

「禁忌を超えてくれたわね……ふぅ。コルベルシア家は元からだけど、これの術者も絶対に許さないから」

「……!!」

 

 私でさえこれなのだから、最も怒りを抱いているお姉様が行動せず居られる道理などなく、すぐさま偽物へと向けて全力でグングニルを投擲していた。

 

 本物のリーシェならともかく、大幅劣化に過ぎない偽物がこれに対処出来る道理はなかった様で、あっさりと貫かれて衝撃波に爆散させられる結果で終わる。

 これだけ見れば何とも愉快痛快な最後だったけど、どうもまだ何かが起こりそうな気がしてならない。

 

「食らって……」

「こいつ、どこまでもリーシェを愚弄するか!!」

 

 すると、案の定周りの背景が空を黒雲が覆う森へと急速に変化していった上、なおかつ爆散したはずの偽物が少し強化された状態で再び現れて雷魔法を使用、更に激昂したお姉様と戦闘を始めてしまう。

 ほぼ同時、目が虚ろな妖精たちの軍団までもが出現し、私やお姉様はは勿論の事召喚悪魔さんたちとも大規模な戦闘が始まってしまった。

 

(こいつら、妖精らしからぬ強さだけど……本当に妖精なの?)

 

 1人1人の強さ自体は今まで出てきた敵より劣るけど、片手間で始末出来るかと問われればそうではないのに加え、倒しても倒しても後から湧き水が如く虚ろな妖精たちが増えてきている。

 それ故に圧倒的な物量差が一向に覆らず、かと言って傷を負う事もなく体力もまだ戦闘状態を保てる余裕はあるため、戦況は良くも悪くも膠着したままだ。

 

 無視出来るものならしたいのはやまやまだけど、何にせよ周りの背景が城でなくなり、どの方向に進めば正解なのかが分からなくなった以上、戦闘以外の選択肢が取ろうにも取れない。どうしたものかと、悩みに悩む。

 

「レミリア様、倒せど倒せど湧いて出てきてキリがありません! このままでは、コルベルシア夫人を殺す前に我々の体力がなくなってしまいます!!」

「分かってるわ! 最悪、切り札を切るしかないのかしらね……」

 

 すると、この状況に業を煮やしたお姉様が事態の解決のため、最終決戦に切るはずの切り札を今切る事を視野に入れ始めた。確かに、扱い方次第で広範囲に驚異的な破壊をもたらす魔法であるそれを使えば、強引にこの事態を解決させられるだろう。

 

 ただそれは、切り札と銘打っている以上かなりの負担をお姉様に強いる、諸刃の剣でもある。使おうと思えば2回は使えるけど、体調などを考えた場合の限度はやはり1回なのだ。

 

「お姉様、だったら私に任せて!」

「フラン? 何か打開策でもあるの?」

「うん! だから、切り札は最後まで取っておいてね!」

 

 だから、この場は私が持っている切り札の3つの内2つ『穢れなき天域』と『自身の能力』を使い、この現象を引き起こしているであろう気配の主を私の瞳で捉え、その『主の目』を引き寄せて潰そうと閃き、実行へと移す。

 

(うっ!? とんでもない量の情報が、頭に……!)

 

 瞬間、開けた空間に立ち入ってから起こっている数々の現象を引き起こす、気配の主であろう存在も含めた私の周囲に居る皆の情報が雪崩れ込み、展開された魔法陣からの火炎放射や火炎弾による自動迎撃が始まった。

 

 ただ、これでは慣れない負担によって目的どころではなくなってしまうため、最低限の機能と情報以外はカットし、この魔法を使ってさえ探知がし辛い反応の方へと近づいていく。

 

(見えたっ……えっ?)

 

 そうして、およそ10mの距離まで近づいたところで例の存在……今まで感じていた気配を強く放つ、妖精か妖怪か判断しかねる彼女が驚愕の表情をしながら姿を見せると、その『目』がハッキリと捉えられる様になった。

 

 勿論、会話などしている暇も義理もないためすぐにそれを右手に引き寄せ、握り潰そうと力を入れるも予想以上に硬く、一瞬驚いて手を緩めてしまう。

 

「させ、ない!!」

「そっか……なら、これでどう!?」

 

 そのせいで中途半端に苦しませ、反撃をさせる隙を与えて実際にされてしまうものの、それは左手のレーヴァテインで何とか弾き返した。次は間髪入れず、落ち着いて狂気の啓示を発動した全力状態となり、再び右手に力を入れて『目』を粉々に砕く。

 

(ん……? まずい!)

 

 結果、目の前に居た敵の始末自体には成功したものの、同時に凄まじい閃光や爆風、高威力の衝撃波が敵を中心として放射状に広がり始める現象が発生、それに巻き込まれてしまった。

 元々秘められた魔力が暴走したのか、はたまた自爆の魔法が発動したのかは不明なものの、こうなる事を全く予想していなかったのは失態である。

 

(げほっ、ごぼっ……ふぅ、何とか無事に済んで良かった。にしても……)

 

 当然、咄嗟に穢れなき天域を解除してから追加の結界を張ったと言えど、これ程の現象を無傷で乗り切れる訳もなく、裂傷や飛んできたものによる刺傷などの怪我を負ってしまった。

 

 加えて、強力な切り札2つの使用による負担も合わさり、コルベルシア夫人や側近たちとの戦闘前に残したかった力が一定程度失われるも、戦闘を行うのに問題はさほどない程度で諦めるなど論外である。

 

 怪我の方も吸血鬼の再生能力が追い付く程のもので、お姉様たちへの影響も見た感じ大してなさそうな上、周りの背景が元へと戻って先に進める様になったのだから、当たり前だろう。

 

 ちなみに、残っていたはずの敵は今の現象が発生してから終わりを告げるまでの間に、全員跡形もなく消滅していた。戦闘中から、何となく虚ろな妖精軍団の際限なき出現も始末した彼女の仕業と思ってはいたけれど、その通りだった様だ。

 

 終わった今になって思ったけど、小細工を呈さずに襲いかかってきた方が、力のある彼女はもっと厄介な存在になっていたかも知れない。理由は分からないけど、この戦い方に拘ってくれて良かったと思う。

 

「フラン、良くやったわね! 流石よ!」

「えへへ……それよりも、早く先に進んで事を終わらせよう! もし途中でリーシェが目を覚ましてたら、不安にさせちゃうからさ!」

「ええ。まだ最大の仕事が残ってるものね」

 

 一時は膠着していた戦闘を切り札2つの使用で終わらせた後は、1回深呼吸をしてお姉様とのやり取りを簡単に交わしてから、城の奥への進軍を再開した。

 けれど、少し進むと廊下の様相が住人でなければ絶対に迷うであろう造りに変化し始めたため、偵察蝙蝠(こうもり)などを使っての偵察を行う必要性が出てきてしまった。

 

 正直言えばもどかしくて辛いけど、敵の本拠地で迷うのはそれ即ち例外なき死を意味するので、絶対に欠かせない。これでさっきみたいに敵までも多ければ地獄であったが、急激に減ってくれたから幸いな方だと言える。

 

「はぁ……ようやく半分突破と言ったところかしら。本当、長いわ」

「うん。敵は少ないけど、やたら道が複雑で罠も多いしね。しょうがないよ」

「そうですよ。急がば回れと言いますし、ここは焦らず落ち着――」

 

 そんな感じで思考を巡らしつつ、時折愚痴を溢しつつ迷路を攻略していると、絶妙なタイミングで少し先を絶大な威力を誇るレーザーが壁をあっさりと破壊しながら横切り、空いた大穴から吸血鬼を1人引きずって幽香が現れたのを目の当たりにした。




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