「ふむ。レミリアもフランも、流石だな。今回下っ端とは言え、聖魔騎士団の奴らが出てきた時は不味いと思ったが……俺の出番が全くない程とは、随分と成長しているようだ」
お姉様やお父様と一緒に人間の村へ狩りに向かい、しばらく持つ程の食料を手に入れて館に戻る道中、普段あまり褒める事はないお父様に私とお姉様は褒められていた。人間の住む村に狩りに行った時、乱入してきた『聖魔騎士団』の連中をお父様の手を借りずに排除して、無事に帰路へつく事が出来たからだ。
「ふふっ……光栄だわ」
「お父様、褒めてくれてありがとね!」
そんな事を頭の中で考えつつも、褒めてくれたお父様にお礼をした。けれど、私はお父様よりもリーシェに褒めてもらいたかったから、心からは素直に喜ぶ事が出来なかった。
前に侵入者を始末した時の話をした際に言われた『凄いなぁ、姉様たち』と言うリーシェの言葉と眼差しがとっても心地よかったのと、大好きな妹を
「と言う訳で、お前たち2人に報酬をやろうと思うが……何にする? 何でも良いぞ」
「っ! 今、何でも良いって言った?」
「ああ。やる気を保つためには、報酬が必要だろう?」
「じゃあ、帰ったらリーシェに会わせて!」
褒めてもらったお礼をした後、お父様が『私たちの望む報酬』をやろうと言う言葉を、私たちに向けてきた。何でも良い……まあ、リーシェを解放しろと言う要求は通らないだろうけど、いつもの日以外にリーシェに会わせてくれと言う要求程度であれは通るだろう。そう感じた私は、お父様にそう言ってみた。
「仕方ないな……分かった。ただし、1時間だ。これ以上は譲れんぞ」
「やったぁ! お姉様、リーシェに会えるってよ!」
「ええ! 今から楽しみだわ」
結果は、若干不満げな表情をしていたものの、無事に要求を全て通す事が出来た。お姉様もそれを聞いてこの上ない程喜んでいたから、余程リーシェに会いたい欲求があるのだろう。
(本当なら永久的に解放させたかったけれど……リーシェ、ごめんね。いずれ力をつけて、助け出してあげるから!)
お姉様とのそんな会話を交わしながら、頭の中でリーシェをいつか必ず外に出してあげると決意しつつ、館の庭へと降り立った。
「何だ、この荒れ様は……まさか、侵入者か!?」
そうして、リーシェに会えるのを楽しみに思いながら館の中に入ると、複数の人間や館のメイドさんの護衛たちの死体に金属片、血で汚れきった床や壁をメイドさんたちが掃除していると言う、私たちの予想外の光景が広がっていた。見た感じ、メイドさんたちに犠牲者は居ないみたいだけど。
「あ、皆様お帰りなさいませ! 当主様方ご不在の間、ご覧の通り侵入者が来ましたが、護衛の方々のお陰でメイドの私たちは無事です! 地下の方にも敵が襲来しまして、そこにはお食事運び係のメイド2人も居ましたが、リーシェ様がお怪我をされながらも守り通して下さったため、何ともございませんでした! ちなみに、今は地下のベッドの上でぐっすり眠っておられます!」
「……そうか」
なんて事を考えていると、メイドさんの口からリーシェが侵入者を相手取って痛々しい怪我を負ったと報告をしてきた。一口に怪我と言っても、2~3日程度で治る軽いものから、長期間僅かすら動く事が出来ずに寝込む位の重いものまで色々とある。
だから、どうか軽い方であって欲しいと願いつつ、メイドさんにリーシェの怪我の様子を聞いたら、魔力の使いすぎで倒れはしたものの怪我自体は大した事はなく、少なくとも1週間以内には治るレベルであるらしい。
「大した事なくて良かったぁ……それにしても、初めての実戦で良くメイドさん2人を守りきれたなんて凄いよね! 吸血鬼狩り相手に」
「ええ、初めての実戦にしては凄い成果よ。怪我をしながら何人も相手取ってほぼ全員殺すだけなら、当時の私であっても相手によってはギリギリ何とかなるかもだけど、それに加えてメイド2人を無傷で守りきるなんて……流石に出来ないわ。例え、あの能力を使ってもね」
怪我自体は大した事はない。それを聞いて、私とお姉様はほっと胸を撫で下ろした。魔力の使いすぎで倒れた事については、恐らく1日か2日程度で完全回復とはいかなくても、普通に動ける位にはなると思うから、こちらも心配する事はない。それにしても、複数人を相手取る実戦が初めてのリーシェをここまで強くするなんて、私はとても驚いた。
まあ、リーシェには私やお姉様の攻撃をかなりの確率で避け、死角からの攻撃すらも見えているかのように避ける力……お姉様曰く、制御する際の負担は凄まじいが上手く使えるようになれば、攻撃にも転用する事が可能だと推測出来る気配探知・回避系の能力を持っているらしいから、この結果も約束されたものなのかも知れない。
「リーシェが怪我して倒れてるなら、私たちが行ってもお話とか無理だよね……」
「ええ、そうね。会いに行くのはリーシェが起きて少し経ってからにするとして、一緒に館のお掃除しましょう?」
「うん! それなら地下室をやろうよ。きっと、ここみたいに汚れてるはずだからさ」
「確かに、ここにはメイドたちが一杯居るから必要ないわね。リーシェの寝顔も見れる事だし、地下室に行くわ」
リーシェの能力について考えつつ、私とお姉様は会話しながら何故か険しい顔のお父様を放置し、恐らくエントランスと同じかそれ以上に汚れているだろう地下室へと、掃除をしに向かった。
すると案の定、胴体に大穴が開いていて臓物が飛散していたり、黒焦げになっている人間の死体が転がっていたりするなど、負けず劣らずの悲惨さであった。綺麗にするのは大変そうだけど、ここ最近見れていないリーシェの寝顔が見れると思えば大した事はないと思いながら、掃除を始めた。
汚れが汚れなだけに、随分時間がかかるだろうと思っていたけど、途中からこれ系統の処理に慣れているメイドさんたちが手伝いに来てくれたお陰で、予想よりも遥かに早く終わらせる事が出来た。
(生活魔法って便利だなぁ。今度、私にも教えてくれないか、リーシェのメイドさんにお願いしてみよう!)
そうして、リーシェのメイドさんが使っていた便利そうな生活魔法を今度教えてもらおうかと考えたところで、色々と大変だった1日は幕を閉じた。
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