目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

200 / 251
今話もフラン視点で、かつ文字数が平均の倍程となっています


侵略者撃滅戦(後編)

 迷路の攻略中、全く想定していなかった形で幽香と合流した私やお姉様たちは、彼女によって引きずられてきた吸血鬼も一緒に連れて先へと進んでいた。幽香曰く、彼が居れば迷路攻略が大幅に楽になるからとの事である。

 

 随分と自信ありげに言い切っていたのには当然確固たる理由が存在していて、それは彼がコルベルシア夫人に割りと近い吸血鬼故に、迷路の設計にかなり深く関わっていると、命乞いをされた後の()()()()をした結果、本人の口から述べてくれたからの様だ。

 

(よりによってこんな奴と……はぁ)

 

 経緯は話を聞いて理解したけど、コルベルシア夫人に割りと近いと言うのなら、側近ではなくてもそれに類する存在な訳である。なのに、攻略を早く安全に進めるために頼らざるを得ないのは何とも複雑で、本来なら今すぐにでもきゅっとしてやりたい位だ。

 

 しかし、現に襲い来る敵や魔法罠の巧妙化を筆頭とした数々の妨害による、偵察蝙蝠(こうもり)による偵察すらやりにくくなる要素までが増えてきているはずの迷路後半でさえ、彼の誘導によって前半と同等以上に早く楽に進んでいる。

 

 懸念していた騙し討ちなども幽香の話し合いが功を奏していて、かつ全く怪しい素振りすらなく役には立っている訳だから、仕方なく目を瞑ろう。

 

(えぇ……幽香は話し合いって言ってたけど、本当に何したのさ……?)

 

 ちなみに、その話し合いの際に何をしたのかについて尋ねようとも一瞬考えたけど、彼の猛烈な怯え様を見るにとんでもない文言が飛んできそうな気がするし、遠慮しておく。

 

「ねえ、遠目に見えるあれが迷路突破の目印で間違いはない?」

「ひっ……も、勿論でございます! 風見様に誓って、一切の嘘はついておりません!」

「……だそうよ、2人共。さっさと突破して当主を叩き潰しましょう」

 

 巡回中の敵や仕掛けられている魔法罠を誘導の下回避、それが不可能なら対峙して()()しながら迷路を進んでいくと、ようやく攻略達成の目印となる『当主の石像』と『魔法の燭台』が突き当たりに鎮座しているのを発見した。

 

 幽香と合流する前も合わせるとかなり長かったけど、これでやっと面倒な迷路の攻略が終わると思うと、僅かとは言え気が緩む。

 しかし、それが終わったと言う事はすなわちコルベルシア夫人やその側近、僅かでも油断し気を緩めれば私やお姉様たちが殺られる方に回りかねない強敵との戦いが近い訳だ。

 

(リーシェ、待っててね。貴女が安心して過ごせる時を作りあげてみせるから)

 

 なので、今も紅魔館の自室で眠りについているであろうリーシェの顔を頭に浮かべつつ、心の中で安心して過ごせる時を作ると誓いを立て、僅かに緩んでいた気を再び引き締めた。

 無論、その誓いの達成には私が生きて笑顔で帰って来るだけではなく、お姉様が生きて笑顔で帰って来る事も絶対条件として含まれている。

 

 ただでさえ、家族同然のメイド妖精さんが傷ついたり、一時的に居なくなったりしてしまったあの事件で精神的にボロボロなのである。

 考えたくはないけど、仮に私やお姉様が死んでしまうかそれも同然の大怪我を負ってしまおうものなら、リーシェがどうなるか想像に難くない。

 そして、その段階まで達してしまえばどう転ぼうとも、遅かれ早かれ紅魔館の崩壊へと行き着いてしまう。それだけは、何としてでも回避しなければならない。

 

「では、私めはここで待機しております故……脱出時に他に手段がなく、迷路を通る場合に希望ならばお声掛けを」

「ええ、分かったわ。大丈夫とは思うけど、一応2人付けとくわね」

 

 なお、迷路攻略の立役者となった吸血鬼は攻略を達成した瞬間、声を震わせながらこの場で待機すると申し出てきたため、ここで別れる事となった。

 

 万が一を想定し、護衛を兼ねた監視役として召喚悪魔さん2人も一緒に待機させるとお姉様が決めていたけど、幽香が立ち去り際に満面の笑みで『逃げたらどうなるかしらね』と威圧をかけたから、多分大丈夫だろう。

 

(よっと、それ!)

 

 で、コルベルシア夫人や側近たちが居る場所にかなり近づいてきているのか、敵の質や量、魔法罠の配置や凶悪さも今までで最も高いものへと、迷路を抜けてから変化してきていた。

 流石にここまで来ると私やお姉様も含め、戦い続けてきた疲労感が味方全員に何らかの形で少し現れ始めているため、一層敵が厄介に思えてきてならない。

 

 ただ、その位で手を止める程私たちは弱くない。私やお姉様の命に絶対的な危機が迫る本当にギリギリの状況にまでならない限りは、例えどれだけ辛くても戦い続け、最後にはコルベルシア夫人と側近たちはこの手で始末してみせる気概が、私たちには宿っているのだから。

 

「あっ! そこの開いてる重厚な金属扉の先……奴らだよ、お姉様!」

「ええ、本当に長かった。大切な皆を傷つけてくれた宿敵と、やっとあいまみえる事が出来ると思うと、気が引き締まるわね」

「ふふっ。私の花畑を滅茶苦茶にしてくれた馬鹿共……覚悟しておきなさい!」

 

 色々と考えながらも油断せず、お姉様たちや幽香とも連携をしっかり取りながら先に進んでいると、突き当たりに何故か開いていた如何にもな重厚な金属扉の先に、見間違えようもない人物(コルベルシア夫人たち)が居たのが見えた。

 

 推測だけど、本拠地全体を守る結界を幽香が粉砕し、侵入した私たちの存在が露呈してから何やかんやでここまで来る事を見越し、扉を開け待ち構えていたのだろう。だとしたら、余程私やお姉様たちを相手取って勝利する自信があるらしい。

 

 想定以上に厳しい局面に立たされそうな感じがしてきたけど、厳しく辛い戦となるのは百も承知だ。なので、400年以上も苦楽を共にしてきたレーヴァテインの柄を握りしめ、狂気の啓示を発動させてから先へと進む。

 

「コルベルシア夫人、やっと――」

「やはり来たか。緑髪の狂人も居るようだけど……まあ良い。取り敢えず、まずはスカーレットに死んでもらおう」

 

 そして、全員が大部屋内に入り終えると同時に扉が轟音を立てて閉まり、玉座に座っていた紺色髪の吸血鬼……強烈な威圧感を放つコルベルシア夫人が立ち上がり、凍てつく冷気を纏うロングソードを手に取ると、その姿がぶれた。

 

(……来る!)

 

 垂れ流されている殺気から急所に攻撃を受けると判断、防御と受け流しに優れた構えへと変えたと同時に、心臓の位置に接近してきたコルベルシア夫人が突きを繰り出してくるのを目にする。

 ただ、これについては構え変更が間に合ったため、左への移動を試みつつ勢い良くレーヴァテインで右斜め上に斬り上げる刹那の時間を確保、剣の軌道を急所から大きく逸らしての完全防御に成功した。

 

「防がれたか。まあそうだろうな……『凍界(とうかい)』」

「凄い力……だけど!!」

 

 刹那、このやり取りをきっかけに夫人が全身にまで冷気を纏う程の力を解放、玉座の左右で待機していた側近たち12人、他吸血鬼や悪魔数十人が一斉に全力を解放、敵味方入り乱れた大乱戦が遂に始まる事となった。

 

 私やお姉様の方には夫人含めた5人が仕掛けてきたけど、少しでも下手を打てば一挙に戦況を覆される実力者(コルベルシア夫人)が相手に居る以上、如何なる場合であっても微塵たりとも気を抜けない。

 加えて、側近たちも城内で戦った敵の中でも非常に優れた実力の持ち主であり、こっちが不利な状況に陥っている気概で挑まなければ勝てるとは言えないだろう。

 

「うわっ!? 良かったぁ……お姉様、ありがと!」

「当然よ! それよりも、まだまだ動けるかしら?」

「うん!」

 

 とは言え、アレは気を抜かずに挑むだけで普通に勝てる位に甘く、容易な相手ではない。狂気の啓示で強化されていても対処が容易ではない速度と膂力、私とお姉様を相手取りつつ的確に攻撃を繰り出す判断能力、優れた反射神経を要所要所で見せられ、余計にそう強く感じざるを得ない。

 

 故に、フォーオブアカインドで襲い来る側近を抑えた上でお姉様と互いに補い合い、1対多数で戦う羽目になって立場が逆転しない様に全力を挙げている。

 

「メイド妖精さんたち、美鈴、リーシェが受けた傷や痛みに比べれば、こんな裂傷程度……どうとでもなる!!」

「今までもそうだが、今回は直接間接問わずに随分とやってくれたな……大切な家族を害した貴様は、例えこの身が傷つこうとも私が滅す!」

「ちっ、馬鹿力共め……家族家族と、うるさくてかなわん!」

 

 結果、連携で夫人に与え続けたダメージの回復に魔力を割かせ、これまでにない位の集中力で攻撃を避けるかいなすかし続けて徐々に追い込めていた。

 

 それと同時に、私とお姉様も同様に与えられてしまったダメージの回復、攻撃や防御や回避魔法などによる魔力消費により、少しずつ影響が出始めている。

 特に、私に関しては分身3人の維持に使用している魔力が多く、リーシェの技術の結晶を使う事となった戦いの際の負担が尾を引いている影響も相まって、お姉様よりも状態は酷い。

 

 勿論、酷いと言っても戦闘は続けられる魔力は残っているし、心も夫人や側近たちの存在自体が燃料となっているために、戦意は衰えてはいないけど。

 

(分身の維持、やっぱりキツいなぁ……!?)

 

 すると、戦闘中に下方から見覚えのある極大レーザー迫り来るのを察知したため、牢獄の如く対象を囲って焼く炎を夫人に繰り出しつつ、反射的にお姉様を引っ張って後方へと下がった。

 

 瞬間、私の炎魔法を氷と闇の結界で防いでいた夫人にかなりの熱量を伴うそれが容赦なく襲来、一瞬耐えるも結界の破砕音と共に夫人を飲み込んでいく光景を見届ける。

 

 その後下を見たら、所々に傷を負いながらも側近全員を始末し終えていた幽香が、日傘の先を夫人に向けていたのを目にした。

 このタイミングで狙ったのは、何らかの手段で認識さえ出来ていれば回避自体は難しくはない極大レーザーを、必中させたかったのだろう。

 

 ちなみに、極大レーザーが通過した範囲にお姉様の居た位置は入っていなかったので、無理に引っ張って後退しなくても問題はなかった。けど、万が一の事故を考えればやらぬよりは良かったと思う。

 

「はあっ、はあっ……くそっ! 緑髪の狂人め、肝心なところで邪魔しおって!」

「当然でしょう? こちらとしては、最初から貴女を殺す気で来ている訳だからね」

 

 しかし、流石はコルベルシア家やその勢力を今まで束ねていた実力者と言うべきか、洒落にならない程のダメージを受けつつも今の攻撃を耐えきってしまうも、幽香は至って冷静に状況を見据えている。

 

 まあ、とんでもない破壊力を誇る極大レーザーを繰り返し放てる彼女だから、無傷とかならともかく何とか1発耐えられた程度なら、慌てる程に揺れ動く訳がない。今の夫人は私やお姉様との戦闘でもダメージを負っているし、余計に攻撃が通りやすくなっているから尚更か。

 

「フラン! 今の内に()()合体魔法、やるわよ!」

「あっ、うん!」

 

 そして、夫人の意識が完全にこちらから逸れている絶好の機会を、お姉様がみすみす見逃すはずなどなく、()()合体魔法をやろうと投げ掛けてきた。

 合体魔法にはいくつかの種類があるけど、()()と強調している様子から、紅血の災禍(スカーレットカラミティ)の事だと推測が出来た。

 

 本来なら、リーシェも含め姉妹3人の魔力を特殊な魔法術式で融合、破滅的な力を内包した魔槍を生成し放って対象を破滅させる魔法ではあるものの、2人でも負担を抑えつつ出来る限り高威力で放てる様に仕様を調整してはある。今回の相手と状況を鑑みれば、この上ない攻撃と言えた。

 

「「すぅ……我がスカーレット家の怒り()、その強さを思い知るがいい!!」」

 

 と言う訳でお姉様は左手を、私は右手を突き出してから息を合わせて鍵となる言葉を紡ぎ、前方に魔法陣を出現させ私やお姉様の魔力ほぼ全てを糧に槍の生成を急速に開始した。

 勿論、側近たちを始末し終えて役目を果たした私の分身もこのタイミングで全員消し、維持のために回していた魔力も注ぎ込む。

 

「しまっ、ならば……『深淵(しんえん)冷門(れいもん)』!!」

 

 当然、幽香に気が向いていた夫人は膨大な魔力の収束に気付くと、生成した巨大な門型の魔法陣へと冷気と魔力の収束を開始、私とお姉様の合体魔法を迎え撃つ構えを取る。

 今までの戦いでボロボロな上にたった1人であれだけの力を見せ、制御までこなしている夫人は、とてつもない脅威だと表さざるを得ない。

 

「「食らえ……『紅血の災禍』!!」」

「くっ……冷気よ、奴らを芯まで凍てつかせよ!!」

 

 しかし、そんなものでは私やお姉様は止まらないし、止まるつもりもない。紅魔館の皆、何より大切な末妹(リーシェ)のためにコイツは絶対に殺してやると意思を固め、生成が完了した『魔槍』をお姉様と一緒に夫人へと放った。

 

(ぐっ! 負担が、凄まじい……!)

 

 結果、文字通り全身全霊をかけて放った魔槍は幽香の極大レーザーを凌ぐ魔力を纏い、夫人の放った青く輝く膨大な冷気と激突、近距離に居た敵の吸血鬼が瀕死になる程の余波が発生する。

 

「「この、消えていなくなれぇぇぇーー!!」」

「なっ、こんな事が――」

 

 そうして数秒程度互いに拮抗した後、現在の残存魔力や心の強さで上回る私とお姉様の魔槍が冷気をかき消し、術者である夫人を貫いて塵と化させ、天井を破壊しながら遥か上空で大爆発を引き起こすと言う形で、最大級の魔法激突の結末を迎えた。

 

「おっと……2人共、お疲れ様。後処理は私と藍に任せなさいな」

「しかし、凄まじいですね。齢500程度の妖怪が、これ程の力を誇るなど……」

「確かに、違いないわね」

 

 同時に、超絶威力の魔法を発動させた反動でお姉様と私は力が抜けて落下してしまうも、絶妙なタイミングで現れた紫が受け止めてくれたため、床に激突する羽目にならずに済んだ。

 本当なら後処理も私たちでやりたかったけど、この体たらくでは紫たちに任せるのも致し方ない。自分たちの身体の方が、それよりも大切なのだから。

 

(ふふっ……リーシェ、ようやく終わったよ!!)

 

 こうして、現時点を以て最大の目的であるコルベルシア家当主と、その側近の始末を達成する事に成功した。

 




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?

  • 1人
  • 2人
  • 3人
  • 追加しない方が望ましい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。