目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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気遣いのための嘘

「あれ? そう言えば私、あの時以降何してたっけ……?」

 

 窓から外を覗けば、夜空に浮かぶ三日月や数多もの星々が織りなす光景を最高に楽しめる天気となった今日、寝起き後の目覚ましに読書をしていた私は、ふと感じた数々の違和感に混乱をきたしていた。

 

 その中でも最大なのは、メイド妖精さんたちを傷つけ、その内の5人が1回休みへと追いやられたあの瞬間以降から現在に至るまでの記憶が、完全に消え去っていたと言うものである。

 

 更に付け加えると、あの時以前……幻想郷に来てからの記憶もまるで濃い霧が立ち込めているかの様に、僅かのみ思い出す事すら困難となっていて、混乱に拍車をかけていた。

 何なら、あの瞬間の記憶も()()()()()()としか認識が出来なくなっている。例えるなら、じっくり時間をかけて読んで内容を覚えたはずの本が、唐突にタイトルしか思い出せなくなると言ったところか。

 

(不幸中の幸い……なのかな?)

 

 なお、幸いにも幻想郷移住以前の記憶には殆んど影響はなく、記憶以外だと強いだるさを感じる不調しかなかった。

 ただ、普段なら寝起きの眠気が酷い際の眠気覚まし行為を合わせたとしても、1時間もあれば終わる身だしなみの整えが、今日は目覚めてから40分経っても始められてすらいない。

 

 つまり、たった1つの不調が日常生活に早速支障をきたしている訳であり、不調自体はこれだけでもかなりよろしくない事態と見て良い。一部記憶喪失の件も含め、早急に誰かに話すべきであろう。

 

「うぇっ!? あわわわ……」

「どしたの? 急に慌てたりして……え?」

 

 なんて事を考えつつ、だるさのせいもあってベッドに寝転がりながらの読書が中々止められないでいると、扉の開く音と同時に妖精さんが何かで慌てているとしか思えない声が耳に入ってきた。

 

 状況は全く理解出来ないし、まだもう少しこのままで居たい気持ちは強かったけど、流石に困っていると思われる妖精さんが居ると気づいたにも関わらず無視するなど不可能だ。

 物理的に全く動けない訳でもなく、自室の中での出来事な訳だから、起き上がって妖精さんに声をかけに行く。

 

「おはよう、妖精さん。何かあった――」

「リーシェさまが起きてるよ!!」

「うん! 早くレミリアさまたちにお知らせしなきゃ!」

 

 すると、何故かただ起きているだけで妖精さん2人に驚かれ、どうしてそんなに驚くのかと聞く間もなく部屋をすぐさま立ち去られてしまった。

 

 悪戯かとも思ったけど、表情や声の抑揚、その慌て様がとても作ったものとは考えられないものだったのを見れば、私が起きているだけで驚くに足る何かがあったのだと分かる。最も、心当たりとしては『暴走』位しかないが。

 

(……)

 

 だとすれば、記憶の喪失も抗うのが難しい程に強い気だるさも合点がいく。私自身、暴走時にどんな立ち振舞いをしているのかが記憶にないけど、パチュリーや姉様2人から聞いた1回目の暴走時の話から推測すると、今回も相当酷かったのだろう。

 加えて、暴走が鎮まった後に相当長く眠りについていたのも妖精さん2人の反応から理解出来たけど、一体どれだけ眠っていたのだろうか。眠っていた間、姉様たちは一体どんな思いで居たのだろうか。

 

 何より、1番怖いのが知らぬ間に私がレミリア姉様やフラン姉様、パチュリーに美鈴にこあ、咲夜やメイド妖精さんたちの誰かをこの手で物理的に傷つけていた可能性が排除出来ない事である。願わくは、それが私の妄想で終わって欲しい。

 

「良かったわ……無事に目を覚ましてくれて、本当に嬉しい……!」

「うん、うん! 本当に良かったね、お姉様!!」

 

 なんて考え事をしつつ、せっかく立ち上がったついでに身だしなみを整えようとクローゼットに手を掛けた瞬間、今までにない位に大泣きしている姉様2人が、部屋の中に入ってきたのを目にした。

 レミリア姉様に至っては、私を見るなり反射的に駆け寄って強く抱きしめてくると、所々聞き取り難い位に声を震わせ始めている。

 

 これだけでも異常事態なのに、良く見れば腕や脚などに魔法の包帯が巻かれ、呼吸すれば微かに血の匂いが鼻を抜けてきてしまっていた。案の定それなりに痛むのか、フラン姉様はしきりに包帯の巻かれた箇所を気にしている様だ。

 

「レミリア姉様、フラン姉様。えっと、その……色々とごめんね」

 

 心当たりの全くない姉様2人の痛々しい複数の怪我……もしかして、本当に記憶のない間に暴走した私が負わせた怪我なのかも知れないと思い、一挙に心苦しくなってくると同時に謝罪の言葉が口から出てきた。

 

「謝らないで。リーシェの事だから、私とフランの怪我が自分のせいだと思ってるんだろうけど、それは断じて違うものよ」

「お姉様の言う通りだよ、リーシェ!」

 

 しかし、レミリア姉様が私を解放してすぐに泣き止んで涙を拭い、笑みを浮かべてそれを否定するフラン姉様の様子を見て、今まで感じていた不安は完全に杞憂だったと思い知った。が、何かしらあって怪我をしてしまったのは事実であるため、心配に思う気持ちはより強くなってきている。

 

「さてと、私たちの事は置いといて……リーシェ。何か身体におかしなところはない? ないなら嬉しいのだけど、あるなら包み隠さず、かつ()調()()()()()()()()()()()()()全て正直に話して欲しいわ」

「絶対だよ! もし黙ってたら本気で怒るからね!」

「分かった。えっと……」

 

 お互いに抱きしめあったりなどのやり取りを交わして落ち着くと、レミリア姉様が今の体調についてを尋ねてきたため、記憶の一部喪失や抗うのが難しい程に強いだるさを感じている事についてを話した。

 

(姉様……)

 

 瞬間、目に見えて姉様2人が落ち込んだ。私が思う以上に、私が辛い思いをしているのが嫌で嫌で仕方がないのだろう。

 何かと辛い経験もしたけれど、見た目がこんな私でも優しく接してくれるレミリア姉様やフラン姉様の妹吸血鬼として、この世に生まれられて本当に幸せだと、改めて強く実感した。

 

「ねえ、レミリア姉様にフラン姉様。私のせいでないのなら、その怪我ってどうしたの? 私が聞いても大丈夫であれば、教えて」

「えっと……ごめんなさい、今は()()教えられないの。ただ、さっきも言ったけれどリーシェのせいじゃないから大丈夫よ」

「本当にごめんね、リーシェ」

 

 そんなやり取りを完全に交わし終えた後、魔法の包帯が必要になる程の怪我を負った理由を尋ねてみたのだけど、申し訳なさそうにしながら教えられないと言われた。

 

 何でなのかはさっぱり分からないけど、レミリア姉様とフラン姉様がそう言うのであれば、これ以上深掘りするのは止めておこう。怪我が私のせいではないと知れただけでも収穫なのだから。

 

「分かった。それと……レミリア姉様。もしかしてだけど、私ってあの後暴走してた?」

「ええ、その通りよ。パチェの首飾りの効力を突破してね」

「そっか。うん、やっぱりかぁ……」

 

 で、何気なしに私の暴走の有無についても聞いてみると、案の定5人のメイド妖精さんが居なくなったあの時以降、すぐにそれとは()()()()()()()によって3人のメイド妖精さんが居なくなったせいで、パチュリー製作の首飾りの効力を突破する程の暴走を引き起こしていたと分かった。

 

 幸いなのは、暴走による姉様2人を含めた館の皆に対する人的被害は皆無で、紅魔館がそこそこ壊れたりした程度で済んでいた事だ。まあ、それでも物的被害を与えたり、皆に心配をかけてしまった()()()()は消えたりはしないが。

 

(ありがとう、姉様)

 

 ちなみに、3人のメイド妖精さんを1回休みに追いやった原因の排除も含め、数々のやるべき仕事は現時点で既に全て済んでいるとの事。私が眠っている間に事を済ませてしまうとは、流石はレミリア姉様とフラン姉様である。

 

「よし! リーシェの無事も確認出来たし、怪我の事もあるから私たちは各々の部屋に戻って休んでるわ。一応念を押しておくけど、貴女も病み上がりだからしばらくは無理は禁物よ。例えば、能力の使用や魔法の研究開発をいつもみたくやったりとかね」

「勿論、館の皆にも出来る限り手厚くサポートしてってすぐに頼んでおくし、怪我が治ったら私たちも遊びに来てあげるから、館内の出歩くのもなるべく我慢してて。お願い!」

 

 色々と感じていた疑問が解決した後は、怪我をしている事もあって部屋を去ろうとした姉様2人から能力の使用やいつもの様に魔法の研究開発を行う事、館内の出歩きもなるべく我慢してとお願いをされた。十中八九、早く快復して欲しいとの思いから来るものだろう。

 

 魔法の研究開発がある程度制限されるのは痛いけど、完全に禁止される訳ではないし、やれる事自体も他に沢山存在している。能力の使用禁止も、体調の早期快復と言う面では納得しかない。

 

 更に、館内の出歩きを控えて欲しいとのお願いも、過去の幽閉経験に加えて元々部屋にこもりがちな私にとっては、あまり苦には思わないものである。むしろ、皆がサポートしてくれる分ある意味楽しめるかも知れない。

 

「うん。だるさも結構強いし、変に無理せずゆっくり部屋で過ごす事にする」

「ありがとう。私たちも、なるべく怪我を早く治してリーシェと憂いなく遊べる様に頑張るわ」

「えへへ……良かった! じゃあ、ゆっくりしててね!」

 

 と言う訳で、これらの要素からお願いを断るなど言語道断と判断、全面的に受け入れると伝えると、安心した姉様2人は自分たちの怪我を治すために私の部屋を去っていった。

 そして、私も未だに眠気とだるさが残っている事も相まり、取り敢えず再びベッドで横になる事に決めた。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

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