目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話は少し長めとなっています


封印の儀式と根源の力

 暴走の影響による長い気絶から目を覚まし、レミリア姉様やフラン姉様の言いつけによる自室での体調快復に専念し始めてから2週間、何かをする気力を削ぐだるさは相変わらず私の身体にしつこく居座っていた。

 

 勿論、2週間前と比べればその強さ自体は軽減されつつあるし、だるさのない調子良い時間も増えてはきている。これも、館の家族()が自分の時間の一部を私への手厚いサポートに使ってくれているお陰であり、本当に感謝しかなかった。

 

 しかし、私の体調はそれでさえ完全に戻ってくれないと言う、皆に対してキツいとしか思えない状態となっていた。100を完全快復とするならば、今現在は30~50の間を不定期に行き来する形である。

 

(ごめんね、皆。まだまだ快復には時間がかかりそう……)

 

 事が事だったから致し方ないのかも知れないが、もうそろそろ完全とは言わずとも、日常生活にほぼ支障がないところまでは行って欲しい。サポートをしてくれる皆、特に不調の波が強かった時の私を見たフラン姉様の潤んだ瞳を見れば、尚更そう思えてならない。

 

「リーシェ。重要な話があるのだけど、部屋に入っても良いかしら?」

「うん、良いよ。お客さんにも入ってもらって」

 

 メイド妖精さんの持ってきてくれたお菓子を頬張りながら考えていると、扉のノック音がしてからすぐにレミリア姉様の声が聞こえた。どうやら、何か重要な話があるとの事らしい。

 

 その内容は皆目検討はつかないものの、レミリア姉様がそう持ちかけてきたと言うのに断るなどもってのほかである。

 更に、部屋の外から全く覚えのない妖気を放つ何者かの気配が2つ、レミリア姉様やフラン姉様と共に居るのを感じ取った。もしかしなくても、その何者かが重要な相談に絡んでくると見て良いだろう。

 

(この妖怪さんたち、やっぱり強い……)

 

 頭の中でそんな思考をそ巡らせつつ、来客も含めてレミリア姉様とフラン姉様にも私の部屋へと入ってもらったのだけど、初めて見るタイプの妖怪さんなのと、漏れ出ている妖気だけでも強者と理解出来る2人なのも相まって、少しだけ気圧されてしまう。

 

 大きな尻尾が9本の妖怪さんもそうだけど、扇子を持った妖怪さんに至っては私は勿論、姉様2人すら超えてしまっている。今は敵ではなくても、何かの拍子に機嫌を損ねて敵対する羽目になってしまえば危険だ。

 せっかく比較的平和に暮らせるはずだったのに、私のせいで血で血を洗う戦争が始まりましたなんて事になったら、この存在自体が罪と化す。

 

(やるのは久しぶりだけど、上手く行けるかな……?)

 

 だから、流石の私でも他人と相対する際にはいくつかの例外を除いて丁寧に振る舞うのは当然として、性格などがある程度分かるまでは気をつけた方が良いと判断を下す。

 

「ようこそ、紅魔館へ。私はスカーレット家の末妹リーシェと申します。以後お見知りおきを」

 

 と言う事で、椅子から立ち上がって帽子の位置を整えた後、背筋は伸ばしたままで右足を斜め後ろの内側に引きつつ左足は軽く曲げ、スカートの裾を軽く持つ、いわゆるカーテシーを妖怪さん2人に向けて行った。

 

「あら、丁寧なご挨拶をどうも。私は八雲紫(やくもゆかり)、幻想郷をこよなく愛す者ですわ。そして、こちらが九尾の狐……」

「紫様の式神、八雲藍(やくもらん)だ。よろしく頼む」

「八雲紫さんに、八雲藍さんですね。はい、よろしくお願いいたします」

 

 全てをこなした後、私の一連の動作は妖怪さんたち……紫さんと藍さんに対して少なくとも強い不快感の類いは与えなかったらしく、微笑みをもって挨拶を返された。側で見ていたレミリア姉様の誇らしげな反応からして、今の私の立ち振舞い自体は合格点であった様である。

 

 とは考えたが、紫さんたちの表情は幻想郷移住以前に社交辞令として良く見たもので、仕草も同様故に内心の推測すら出来ず、実際は何らかの負の影響を与えていた可能性も否定は出来ない。

 まあ、レミリア姉様から叩き込まれた最上級の振る舞い(カーテシー)が駄目ならもはや八方塞がりの状況であり、どうしたら良かったのかとの話になるだろうけど。

 

「さてと、一旦失礼を……レミリア姉様。重要な話って何? 内容をお願い」

「分かったわ。紫、私から先に説明しても問題ないかしら?」

「ええ。信頼関係が皆無なこちらが先に説明するよりもレミリアが先に説明し、重要な部分は私たちが補足する流れでいた方が、ずっと良いでしょう」

「確かに……じゃあ、しっかり聞いていてね。リーシェ」

 

 で、今はそれよりもレミリア姉様が言っていた重要な話の方が、何よりも優先されるべき時である。なので、一言発してから向き直って尋ねてみたところ、紫さんと藍さんが私の『暴走』を半永久的に起こらなくする手段を講じてくれると言う、何とも衝撃を受ける内容であったと判明した。

 

 曰く、激烈な感情の揺れ動きが鍵となって起こる暴走は私の魂に結びつく『根源の力』が大元となっているらしく、紫さんと藍さんはそれを『封印の儀式』を執り行う事で魂から大半を切り離し、封じ込めて暴走も封じようとの魂胆との事。

 

 なお、封印の儀式と銘打ってはいるものの、相当な手間暇かけて事前研究と準備が行われていたため、時間自体はさほどかからずに終了するとの説明も受けた。

 

(そっか……私の暴走が、どうにかなるんだ)

 

 これが終われば暴走を警戒する必要はほぼなくなり、それ由来の不調も快復速度が上がっていくとの事だけど、内容が内容だけに望まない効果までがついてくる可能性が高いらしい。

 

 とは言っても、影響を極小に抑える道具も用意は済んでいるらしく、推定されるのは私の性格が封印前よりも強く出てくるのと、暴走しないためにその際の絶大な力が半永久的に発揮出来なくなる位との事。

 

 なお、それによって普段通りの力が発揮出来なくなったり、記憶の喪失や日常生活に支障をきたすと言った事は()()()()()と断言していた。

 

 それならば、暴走によって記憶が飛び、館の家族たちを傷つけ、自分が死ぬかそれに類する状態に陥るよりは、遥かにマシな効果であると言える。突拍子もない話だけれど、レミリア姉様とフラン姉様も認めているのなら、信用に値すると見て良い。

 

「紫さん、藍さん。館の家族たちを傷つける可能性がなくなるのであれば、是非ともよろしくお願いいたします」

 

 故に、封印の儀を受けるかどうかを尋ねられる前に自分から頭を下げ、その意思を明確に示した。制御出来ない力の封印を断るなど、私自身が生きる事を放棄している様なものなのだから。

 

「勿論ですわ。ではベッドに横になってもらって……藍! 早速封印の儀の準備を始めるわよ」

「承知いたしました」

 

 結果、最初からそうするつもりでいた紫さんも難なく了承、ベッドに寝かされてから姉様2人に見守られつつ、封印の儀式が始まる事となった。

 ちなみに、場所の移動はしなくて良いのかと間際に尋ねたところ、私の部屋であれば全く問題ないらしい。魔法の研究開発を行う過程で万が一の事故があった時のために、パチュリーの本棚と同様に魔法で保護しているのが功を奏したのだろうか。

 

(あっ……)

 

 などと考えていると、手早く準備を済ませた紫さんが何か言葉を紡ぎ始めるのが聞こえてすぐ、抗えない脱力感と共に私の視界を白い光が一瞬の内に覆い尽くし、周りのありとあらゆる音が全く聞こえなくなってしまう。

 

 眠っているのか、はたまた気絶の様な状態に陥っているのか、私には今の自身がどうなっているのか全く分からない。けど、魂に結びつく根源の力とやらの半永久的な封印を試みられている以上、訳が分からない状態になっていてもおかしくはないか。

 

(……)

 

 とは言え、急速に視界を覆っていた光が開けていくと同時に、目に入ってくる周りの風景が明らかにおかしかったのにはついていけず、もはやただ唖然とするしかなくなった。

 

 私を体現したかの様な色合いの建物内の非常に大きな空間(部屋)、稲妻を纏う鳥が(つがい)で舞う様子が刻印された8つの石柱、その中心の魔法陣にもう1人の私が、地面から突き出しているボロボロの鎖に拘束されているのが目に入ってきたのだから、致し方ないだろう。

 

(なっ……!)

 

 すると、拘束されている方の『私』の瞳が開いた刹那、ボロボロだった鎖が身体より発せられた強烈な雷の波動を受けて跡形もなく消し飛び、自由となったと同時にこちらへと歩いて近づいてきた。

 

 根拠は全くないけれど、今触れ合ってしまえば取り返しのつかない事になりそうでならない。が、どれだけ力を入れても翼はおろか指1本すら動かせず、ただ目の前の光景を黙って見るしかない状況へと追い込まれてしまう。

 

(うっ……眩しい!!)

 

 しかし、10mにも満たない距離まで詰められた際に8本の石柱が突然輝き出したかと思えば、地面から突き出した光り輝く重厚な鎖が歩いていた『私』を魔法陣の中心に引き寄せて拘束、石柱より内側を稲妻の多重結界が覆った事で、懸念していた自体は起こらずに済む。

 

 そして、再び視界全体を眩い白光が覆い尽すと、今度は逆に力が戻ってくる感覚がしてきた。聴覚も徐々に復活してきて、紫さんや藍さんの疲れきったと言わんばかりの声、姉様2人が私に対して心配しつつも嬉しさを隠しきれていない声が、ハッキリではなくとも聞き取れる様になってきた。

 

「んぅ……」

「お目覚めの様ですね。先に結論から申し上げると、根源の力の封印には成功しました。これでもう、半永久的に暴走に悩まされる事はありませんわ」

「そうなんですね……私のために、ありがとうございます!」

「ええ。それと、勝手ながら封印による影響を抑える髪飾りを着けさせていただきました。勿論、生活に不自由とならない仕様になっています」

 

 更に時が経ち、視界が開けていくと同時に身体の自由が普通に利く様になると、紫さんから暴走の原因となる根源の力の封印に成功したと告げられた。これでやっと、私の暴走のせいで皆を悲しませる事がなくなる訳で、嬉しさのあまり柄にもなく大きな声をあげてしまう。

 

 同じ様に余程嬉しかったのか、レミリア姉様もフラン姉様も紫さんたちが居なくなったその瞬間に声を出して泣き出しそうな目をしている。

 今この場には居ないけど、他の館の家族たちが私が暴走する心配が消え去った事を知ったら、同じ様な反応を見せるのだろうか。それとも、案外普通の反応を見せるのだろうか。

 

 まあ何にせよ、身体に残るだるさを完全に除いて快復させた後、サポートしてくれた全員に感謝の意を行動で示す事は変わらないけど。

 

「では、これにて私たちは引き上げます」

「ええ、本当に感謝しているわ。紫」

「うん、じゃあね!」

 

 そんな事を思いながら、おぞましい空間を生み出し入っていく紫さんと藍さんを、私は姉様2人と共に見えなくなるまで見送った。




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