目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話は美鈴視点です


末妹からの感謝の意

「フラン姉様、美鈴。その……時間大丈夫かな? 勿論、嫌だったり駄目だったりしたら後にするけど」

 

 敵の謀略による、幻想郷の大妖怪との戦闘で負った重傷の治療や身体の調整などを2ヵ月かけて済ませ、満を持して門番の仕事に復帰した今日、長めの休憩時間にフランお嬢様と居たところ、元気そうなリーシェお嬢様から声をかけられていた。

 

 同日に起こった秘めたる絶大な力の暴走で気絶、目を覚ましてからもそれによる強烈なだるさに苦しめられていたのは当然知っていたけども、気の流れの澄み様と私やフランお嬢様に見せる笑顔から鑑みれば、完全に体調は快復したと見て良いらしい。

 

 自分のせいではないにも関わらず、体調が中々戻らない事に対して申し訳なさそうにするリーシェお嬢様を見るのはかなり辛かったから、元気になってくれて本当に嬉しく思う。

 

 にしても、私が圧倒されたあの大妖怪とほぼ互角にやり合った上、大怪我をして離脱した後にそれを更に上回る程の秘めたる力をこうもあっさりと封じてしまったあの紫さんは、頼もしくも恐ろしい。

 何か大きな出来事があり、やり合う日が来ない事を願うばかりである。まあ、レミリアお嬢様方の怨敵(コルベルシア家勢力)みたいな行為を取らなければ、相対する運命にはならないだろうけど。

 

「良いよ! リーシェのお願い事なんだし、断る理由もないからさ! 美鈴もそうでしょ?」

「はい。休憩時間はまだありますし、特に誰かとの約束がある訳でもありませんから」

「そっか。じゃあ、ついてきて」

 

 考え事をしつつ、フランお嬢様と同じく断るべき理由もなかった私はリーシェお嬢様からの誘いを了承し、後についていくと決めた。行き先は彼女自身の部屋の様だけど、私やフランお嬢様を誘って何をするつもりなのだろうか。

 

(あれは……?)

 

 導かれるままに部屋へと入ると、用意されていた机の上に目立つ配色のそこそこ大きめな箱が2つ、丁寧な包装をされた状態で置かれているのが目に入ってくる。

 左側の箱にはフランお嬢様の似顔絵が、右側の箱には私の似顔絵が描かれているのを見るに、リーシェお嬢様がこれを直接渡すために声をかけてきたのだと理解した。

 

「リーシェお嬢様、この箱は一体何でしょう?」

「体調が悪い時にお世話してくれた、フラン姉様と美鈴へのお礼が入ってる箱。お世話をしてくれた他の皆の分よりも先に用意出来たから、早く渡したくて……」

「なるほど、そう言う事だったんですね」

「リーシェらしいなぁ。別にそんなの、ありがとうの一言だけで十分なのに……」

 

 で、緊張しているリーシェお嬢様にあれは何かと尋ねてみたところ、体調が良くない当時にお世話してくれた、フランお嬢様や私に対するお礼が入っているとの返答を得た。

 

 しかも、()()()()()()()と言う事は、同じくレミリアお嬢様や咲夜さん、パチュリーさんやこあさん、お世話をしてくれた妖精の方々にも似た感じで贈り物を贈るつもりでいるのだろう。リーシェお嬢様らしいけど、無理しすぎたりしないかだけが心配である。

 

 なお、フランお嬢様は言葉とは裏腹にとても嬉しそうに翼を揺らし、早く箱を開けて中身を見てみたそうにウズウズしていた。まあ、明らかに普通とは違う贈り物の渡し方をリーシェお嬢様がしてきたのだから、期待が高まるのも当然の摂理と言えるか。

 

「えっとね、これ……頑張って用意した贈り物だからその……開けて見てみて、気に入ってくれると嬉しいな。あっ、フラン姉様が左で美鈴が右の箱でお願い」

「分かった! 何が入ってるのか、凄く楽しみ!」

「分かりました。では、ありがたく頂きますね」

 

 そして、リーシェお嬢様から箱の開封許可が出たところで包装紙を丁寧に外して蓋を開けると、中から出てきたのは肌触りがとても良く暖かそうな手編みのマフラーと、かなりびっしりと文章が書かれた1通の手紙であった。

 

 今はまだ季節柄本格的な防寒対策が必要な時期ではないけれど、冬になったら青髪の妖精さん方のマフラーと1日交代で巻き、門番の仕事に臨むつもりでいる。言わずもがな、その時まで埃を被ったりしない様にちゃんとした場所で保管しておく。

 

(リーシェお嬢様……本当に、ありがとうございます)

 

 次に手紙の方に良く目を通すと、体調が良くなかった当時に私が色々とお世話をした事に対するお礼が、長々とつづられていた。

 無論これだけでも十分に嬉しいのだけど、最後の方にしれっと添えられていた『大好きな家族の美鈴へ』との文言には、特に心を打たれた。

 

 似た様な言葉を直接かけてもらった経験はあるけど、今の雰囲気に加えて手紙で丁寧な言葉遣いと共に述べられた経験はなかったなら、余計に嬉しく思う。

 

「フラン姉様。私ね、フラン姉様の妹吸血鬼としてこの世に生まれる事が出来て、凄く幸せ。改めて言うけど、私の姉様で居てくれてありがとう」

「ぐすっ……うん、うん! 私もね、リーシェが妹で居てくれてとっても幸せだよ!」

 

 ちなみに、フランお嬢様は手編みの手袋と感謝の手紙によって歓喜に打ち震え、そこにリーシェお嬢様が抱きしめつつのお礼の一言を加えた事で嬉しさが限界突破、堰を切ったかの様に号泣し始めていたが、無理もない。自身が溺愛している末妹から、最上級の感謝をもらえたのだから。

 

「美鈴。私からの手紙、どうだった? マフラー、不恰好でも頑張って自力で編んだんだけど、気に入ってくれたかな……?」

「はい。それはもう、とっても」

 

 それなりに長く感情を露にし、ようやくフランお嬢様が落ち着いてきたところで私に手紙とマフラーはどうだったかと尋ねてきたけど、言われるまでもなく気に入ったと私は答えた。

 

 あれ程までに心のこもった手紙は言わずもがな、マフラーの方だって長さも巻き心地も込められた思いも素晴らしい、世界でたった1つきりの贈り物な訳だ。気に入らないはずなどない。

 

「フランの大泣きする声が聞こえたから気になって来てみたけど……一応、何があったのか最初から教えてくれるかしら? 途中からしか聞いてなかったし」

 

 すると、部屋の外にまで響いていたフランお嬢様の大泣きを偶々聞き取っていたレミリアお嬢様が、何があったか教えて欲しいと言い部屋に訪れてきた。レミリアお嬢様が来るまで扉は閉めてあったはずなのだけど、相当良く聞こえていた様である。

 

 まあ、心の中に秘めていた感情を全部解放しての号泣だったから、部屋のある廊下程度の範囲であれば聞こえていてもおかしくはない。

 

「えへへ! 実はね、リーシェからとっても嬉しい贈り物と言葉をもらって、凄く幸せな気持ちが溢れて大泣きしちゃったの!」

「私も同じく、このマフラーと手紙をもらいました。体調が良くなかった時に、お世話をしてくれたお礼との事らしいです」

 

 そして、何があったのかとの問いに対してこの上ない程に幸せを実感していたフランお嬢様が、身振り手振りを交えて答え始めたのをきっかけとして、私も今までの経緯を説明し始めた。

 

 あれ程の感情を露にしたフランお嬢様に圧倒されてはいたけれど、私自身()()()()()()()()()価値を持つ贈り物をもらえたのは非常に嬉しく、話をしている内に自然と笑みが溢れていくのを感じている。

 

 大変な状況になる時も多々あったけど、紅魔館に門番として来る事が出来て本当に良かった。これがもし、他のところに行ってたらと思うと……いや、考えるのはやめにしておこう。

 

「なるほど……確かにそれは、フランが嬉し泣きするのも理解出来るわ」

 

 私やフランお嬢様からの説明を終えると、レミリアお嬢様はなるほどと頷きながら納得してくれたものの、聞いたやり取りに相当な羨ましさを感じていると分かる表情を見せてきた。自分がその立場に立ったと仮定して考えてみると、確かに羨ましいと思えた。

 

「そっか……うん、レミリア姉様。心配しなくても、レミリア姉様の妹吸血鬼として生まれてこれた事に、私はとっても幸せを感じてる。だから、これからもずっと私の姉様で居て」

「ふふっ、当然よ。私も、リーシェが妹に居てくれてとっても幸せなのだから!」

 

 そうして私が理解出来たレミリアお嬢様の心情を、当然の如くリーシェお嬢様は理解したらしい。フランお嬢様に対してやっていた様な抱きしめと感謝の一言を述べた結果、フランお嬢様程激しくはなくとも、頬に涙が伝う程には嬉しいと言う感情を抱かせる事に成功した。

 

 途中、贈り物が用意出来ていない事を気にしていたリーシェお嬢様は当たり前と言わんばかりに謝っていたけど、当の本人は全く気にしていないと即答していた。今の一幕が、その贈り物であると言う認識でいるみたいである。

 

 とは言え、リーシェお嬢様より更に贈り物がもらえる事自体は非常に嬉しい様で、翼をはためかせながら満面の笑みを浮かべ、その日が待ち遠しいと弾む様な声で言っていた。

 

「さてと……でも、お世話をしてくれた住人だけでも結構多いわよ。これ程のクオリティを誇る贈り物の用意は大変だと思うけど、本当に大丈夫?」

「大丈夫。自分の意思でやってる事だから」

「なら止めたりはしないわ。ただし、自分の身体にはしっかりと気を遣う事だけは約束しなさい。私もそうだけど、皆リーシェが大切なのだから」

 

 その後は、リーシェお嬢様が贈り物を贈る対象がかなり多い事に触れ、身体にしっかりと気をつける様にと強めの口調で忠告が行われた。

 紅魔館の皆が関わる事柄となると、自分の身が物理的に動かない事態にでもならない限りそちらを優先しがちな性格の持ち主だから、こうでもしなければ不安なのは良く分かる。

 

 けどまあ、今回は事が事だからその忠告が効いてくれるかどうかは不透明に思えて仕方がないので、お嬢様方が見れない時間帯に時間を見つけては、時折様子を見に行こう。

 

「あっ、すみません。もうそろそろ休憩時間が終わりそうなので、仕事に戻りますね」

「ええ、いつもご苦労様」

「美鈴も無理はしないでね! 約束だよ!」

 

 そんな事を思いながらふと壁掛け時計を見ると、長かった休憩時間がもう終わりかけていた事に気づいたため、お嬢様方に声をかけてから私の自室に立ち寄ってもらった贈り物を置き、仕事へと戻っていった。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

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