目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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満ち足りた心

 しっかりと忠告を守りつつ不調の際にお世話してくれた皆への贈り物用意、完全快復の暁に再開した魔法の研究開発に改良を行っていた私は、休憩時に気まぐれに立ち寄った妖精さんたちの部屋で放心状態へと陥っていた。

 

 理由としては、何らかの事象によって悲しくも1回休みへ追い込まれた合計8人の妖精さんがいつの間にか復活し、記憶と相違ない立ち振舞いを見せ、元気にはしゃいで遊ぶ光景を目撃したからである。

 

 言わずもがな、部屋に居た他のメイド妖精さんたちも仲の良かった友達が戻ってきて嬉しい様で、枕を投げたり大声で叫んだり、追いかけあって遊んだりなどして楽しんでいた。

 とは言え、こんなに大騒ぎをすれば案の定、色々と中が滅茶苦茶になっていて片付けも大変そうになっている。本来なら、ここで声をかけて止めるべきなのだろう。

 

(良かった……皆、凄く幸せそうで……)

 

 しかし、今の私にとって幾千もの宝物ですら比べ物にならない価値があるこの光景を、正直言ってしまえば止めずにまだ見ていたい。

 無論、その選択をした事による対価はしっかりと支払い、場合によっては騒いでいる妖精さんたちの分まで肩代わりするつもりではある。

 

「あっ、リーシェさま……わたしのハンカチ、涙拭うのに使う?」

 

 何かこう例え難いものの、幸せではある感覚を味わいながら妖精さんたちの騒ぐ様を見ていると、私に気づいて近寄ってきていた復活妖精さんの内1人から、ハンカチを差し出された。

 指摘されるまで全く気づかなかったのは不思議だけど、恐らくそれはこの光景を見た事による充足感のお陰なのだろう。

 

(……)

 

 自分のハンカチは持っていたし、妖精さんの使っていない綺麗な花柄のハンカチを、私の涙で濡らすのはどうなのかと思わなかった訳ではない。ただ、謎の力に突き動かされたお陰で私は差し出されたそれを無言で受け取り、目元や涙が伝っていた頬を拭った。

 

「ぐすっ……ありがとう、妖精さん。結構汚しちゃったけどごめんね」

「ハンカチ位洗えるし、全然いーよ! それよりも、他の皆から聞いたけど……わたしたちが1回休みになった時、凄く心配させちゃったって……」

「謝らないで。元気に復活してくれれば、私はそれだけで十分だよ」

 

 そんなこんなで落ち着いた後、お礼と謝罪をしながらハンカチを返すと、復活妖精さんたちが表情を険しくしたと思ったら1回休みの件について謝ろうとしたので、頭を優しく撫でながら穏やかな声色で語りかけた。

 

 自分たちの行動が招いたのならまだしも、妖精さんたちに対して理不尽に襲いかかった防御・回避不可の事故だと言うのに、ごめんなさいと謝られるのは辛すぎるから当然である。

 

(さて、どうしたものかなぁ)

 

 しかし、ある程度の雰囲気緩和には成功こそすれ、私が来る前までのあの微笑ましい雰囲気かそれに類する雰囲気に持っていく事は出来なかった。

 

 まあ、泣いていた私をレミリア姉様やフラン姉様に、妖精さんたちを私に置き換えて考えてみたら、それも致し方ない事ではあるとは思うけど……それ故に、落ち着くのを目につかない場所で待っていれば良かったなと、今更ながら後悔の念を抱く。

 

「皆、その……はしゃぐだけじゃなくてさ、レミリアさまやフランさまたちに、復活を伝えに行かない? 妖精らしく、元気な感じで」

「「あっ……」」

 

 申し訳ない位にうなだれる妖精さんの頭を撫でながら考えていると、こんな状況下でも比較的落ち着いていたクレイナ似の妖精さんが、至極当然の一言を口にしたのを耳に入れた。

 

 私やここの妖精たちさんだけでなく、姉様2人を筆頭とした館の家族たちも個人で程度の差こそあれ、復活妖精さんたちを憂えていたのだ。何故そこに思い至らなかったのかと、恥ずかしい限りである。

 

「そうだねっ! じゃあ、みんなで行こー!」

「「おぉーー!!」」

 

 と言う訳で、今の一言で私と同じ様な思いを抱いた妖精さんの1人による、妖精特有の有り余る元気さを体現した掛け声と共に、この場に居る全員で1回休みとなった妖精さんの復活報告に私も含めて回る事に決まった。

 

 最初の目的である休憩とはかけ離れた事になりそうではあるけれど、今の私にはそれよりもこちらの方を優先したい気持ちが、圧倒的に強い。仮にここから立ち去って休憩を取ったとしても、精神的に休まらないと思われた。

 

(うぅ……もう駄目……)

 

 こうして、総勢15人もの妖精さんたちと共に1回休みとなった妖精さんの復活報告のため館内巡りを始めると、やはりと言うべきかすれ違った仕事中の妖精さんたちに、笑顔が戻っていくのを何度も繰り返し目にする事となった。

 

 先程の微笑ましい幸せなやり取りによって涙腺が決壊していた私にとっては、普通のやり取りでさえ涙を誘うには十分で、自分のハンカチでいくら拭おうとも少し経てば再び涙が伝ってくる始末である。

 

「咲夜! こっちを向いて!」

「何でしょう……あら、例の妖精メイドたちが復活したんですね。随分と長かったですが、元気そうで安心しました」

「うん、うん!」

 

 そんなこんなで食堂へと立ち寄ると、紅茶と軽食を嗜んで休憩していた咲夜を見かけたので、大声で呼びかけた後に報告を始めた。

 本人はもとより、直属のメイド妖精さんの中にも仲の良い復活妖精さんが居たからか、かなり柔らかい表情で祝福してくれたのは嬉しかった。

 

 なお、頭を撫でられたり笑顔で話しかけられたりした復活妖精さんは、何とも例え難い位に尊い表情を見せている。他の妖精さんと比べると、随分咲夜に懐いている様だ。

 

 何故そこまで差があるのかは全くもって不明だけど、逆方向に差がある訳でもないし、その訳を私なりに推測するならば、偶々咲夜とその妖精さんの相性がかなり良かったと言ったところだろう。

 

「リーシェさま、大丈夫? 辛かったら休んで!」

「ううん、大丈夫。辛いどころか、とっても幸せだから!」

 

 本当はもう少し居たかったけど、忙しい仕事の合間に取れたせっかくの休憩時間を必要以上に使わせるのは申し訳ないので、やり取りを交わすのはここまでにして食堂を出ると、私があまりにも涙を流しているせいで変に辛そうだと思われてしまった。

 勿論、実際は単に涙腺が決壊したせいで涙もろくなっているだけであり、何ならとても幸せな気分であるため、それを即座に否定する。

 

 ただし、その間も涙を拭ったせいで本当に大丈夫なのか疑われてしまう訳だけど、事実体調には全く問題はない。だから、本当に無理だったら無理だと言った上で部屋に戻ると誓い、何とか同行を許してもらった。

 

「レミリア姉様、フラン姉様! あの妖精さんたち、元気に復活してくれたんだよ!」

 

 色々と考え事をしつつ、復活妖精さんとすれ違うメイド妖精さんとのやり取りを眺めながら歩いていると、今度は楽しそうに話しながら歩く姉様2人を見つけたので、咲夜の時と同様に大声で呼びかけた。

 

 自分で言うのも何か変だけど、私の性格と普段の立ち振舞いから大きく逸脱した行動により驚かせてしまったものの、側に居た復活妖精さんを見てすぐに納得してくれた。

 それからすぐに、何か体調や記憶面で変わった事はないかと尋ねつつ、何もないと分かると表情を暖かみのあるものへと変え、お帰りなさいと穏やかな口調で言うのを見て、心の奥底では常に気にしていたのだと再確認する。

 

「しかし、妖精にしては復活まで随分長かったわね。元気そうで居てくれてはいるけど、正直驚いたわ」

「確かに。でも何であれ、無事に復活してくれただけで感謝だね、お姉様!」

 

 その際、復活までの期間が長かった事実に対して驚きつつ、復活してくれた事に改めて感謝していたけど、私も同感でしかない。

 紅魔館の妖精さんたちはほぼ全員が他の同族よりも平均して強く、一部の妖精さんに至っては種族の枠組みから逸脱しかける領域に居るのだから。

 

(あっ、もう少し抑えれば良かった……)

 

 姉様2人と別れた後、今度はパチュリーとこあに報告をすべく地下の大図書館へと向かい、同じ様に大声で呼びかけた。

 

 ただ、ここは出入りする人数が極めて少ない上に、騒ぐ妖精さんも殆んど居なくなる場所である。更に、妖精さんたちですら静かになったのにも関わらず、私が今までと同じ声量で呼びかけてしまった結果、相対的にかなりやかましくなってしまったものの、もはや後の祭りだ。

 

「叫ばなくても聞こえているわよ、リィ。まあ、側に居る妖精を見れば、気分が高ぶるのも理解出来るけどね」

「ですね。リーシェ様、紅魔館の住人であればほぼ平等に愛す方ですから」

 

 案の定、もう少し声量を抑えてと言いたげな表情をしたパチュリーとこあに話しかけられたけど、単にうるさくした訳ではないと理解自体はしてくれたので良かったとは思う。

 

 その後は私や他の妖精さん、姉様2人程目立った振る舞いはしなかったけど、控えめに1回休みとなった妖精さんの復活を祝ってくれたから、それだけで十分だ。当の妖精さんたちも、自分たちが必要とされている嬉しさからか、満面の笑みを浮かべているから尚更そう思えている。

 

「どうかしまし……なるほど、ようやく復活したんですね。リーシェお嬢様も、かなり嬉しそうで……」

「うん。もう、嬉しすぎてより一層疲れる位にはしゃいだし、泣いたよ。美鈴にも報告し終えたから、後は部屋に戻って眠るだけ」

「そうですか。確かに、もう限界そうですものね」

 

 感情の赴くまま泣いたり、妖精さんたちの様にはしゃいたりなどし続け、疲労と眠気を強く感じ始めてきたため、若干急いで門前の美鈴のところへと駆けて行き、声をかけて話を始めた。

 

 元々、魔法の研究開発・改良や贈り物用意で疲労していただけに、流石の私も序盤のテンションを維持し続ける事は不可能ではあったけど、一方で妖精さんたちは未だに最初の頃のテンションを維持し続けている。

 

 私から見れば凄いとしか言えないけど、まあそこは普段から元気で自由奔放な大半の妖精さんたちと、姉様2人と過ごす時でさえ今日程騒ぐのは稀な自分との違いだと言えるか。

 

「ふぁぁ……じゃあ、そろそろ部屋に戻って休むね」

 

 10分程度美鈴とのやり取りを交わした後は、限界に刻一刻と近づく疲労と眠気を解消するため、この場を立ち去って自分の部屋へと戻っていった。




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