目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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霧の湖の妖精と末妹

 紫さんのお願いによる、幻想郷内で起こった揉め事の平和的な解決手段(スペルカードルール)の浸透を目的とした、レミリア姉様考案の紅霧異変を起こす事が決まってから、今日でちょうど1ヵ月が経った。

 

 攻撃よりも誰かに魅せる美しさを重視した魔法の研究開発をしたり、異変に必要な上空に極長時間滞留する紅い霧の術式をパチュリーと一緒に組んだり、時には館の主力陣と軽い手合わせをしてみたりなど、少し前と比べてやるべき事が増えてはいる。

 

(……)

 

 しかし、これらの行為が巡りめぐって姉様2人に美鈴、パチュリーにこあ、咲夜にメイド妖精さんたち、全員が忙しくしつつも楽しそうに過ごしている光景の維持に繋がるのなら、この程度は安いものである。場合によっては、自分の趣味に使う時間の9割を削る事すら厭わない。

 

 とは言え、これは精神面での話であって身体面での話ではないから、疲れを感じていなくても適度に休息したり趣味の時間を取る必要は存在している。

 私を慕ってくれている館の家族が、私が辛く苦しい思いをすると悲しんでしまうのだから、当たり前と言えば当たり前だろう。暴走後の不調が解消されるまでの姉様2人の表情なんか、もう見ていられなかったのだから。

 

「うわっ、約束の時間過ぎてる……最悪」

 

 そんなこんなでスペルカードを作っていた時、ふと目にした壁掛け時計が8時20分を指している事に気がつき、大層慌ててしまった。1時間前に、黄髪の妖精さん他3人のメイド妖精さんと約束した時間を、30分も過ぎてしまっていたからである。

 

 よりによって、休日に霧の湖へリラックスのために遊びに行った際、そこで意気投合したと言う妖精さん2人を初めて私に紹介した上で、一緒に遊んだりして過ごすメンバーに加えると言う時に仕出かすなど、全くもって冗談ではない。次はもう少し時計を確認する回数を増やすようにしようと思いつつ、妖精さんたちの部屋へと向かっていく。

 

(嘘でしょ……エルの子供の頃にそっくり……)

 

 そうして、開いていた部屋の扉から中に入り、辺りを見回して黄髪の妖精さんたちや知らない2人の妖精さんの姿を発見したのだけど、その内の1人……薄い水色髪の妖精さんがあまりにも、かなり昔に死んでしまったエルに似ていたものだから、正直驚き過ぎて声が出てこなかった。

 

 聞こえてくる会話や、少し遠くから見える仕草を見る限り性格などはかなり似通っていて、似てないと言い切れるのが背中から生える左右3枚ずつで合計6枚の綺麗な羽、感じる力の強さと質、声と一人称だけであれば驚くなと言う方が無理だ。

 

 で、恐らく親友であろう緑髪の妖精さんの方も力は強く、門番の妖精さんを僅かに上回っていた。力で言えば水色髪の妖精さんの方が上回っているものの、どちらも妖精としては破格の強さを誇っている。

 

 生まれたところの環境が上手いこと作用してここまで強くなったのか、門番の妖精さんみたいに誰かから師事を受けるかして強くなったのか、はたまた私の預かり知らぬ事情があるのかは分からない。まあ、何であれ黄髪の妖精さんたちを笑顔にしてくれる友達であるのなら、私としては何だって良いのだけど。

 

「お待たせ。魔法の研究開発に夢中になってて……本当に遅れてごめんね」

「あっ、リーシェさま! 全然大丈夫だよー! それよりも、こっちの水色の髪の子が『チルノ』ちゃんで、緑色の髪の子が大妖精の『大ちゃん』なんだー!」

 

 色々と考え事をしながらタイミングの良いところで声をかけると、遅れた事を全く気にしていなかった黄髪の妖精さんが、私の方に視線を向けている友達の2人を紹介し始めたので、思考を中断させて話を聞く態勢を整えた。

 

 にしても、至近距離まで近づいてみて気づいたけど、水色髪の妖精さんからは弱めの冷気が常時放たれていた。どうやら、見た目に違わず氷属性であったらしい。

 更に、黄髪の妖精さん曰くこの妖精さんはかなり器用らしく、氷の力を使って剣や矢を作ったり、時間は少しかかるものの彫刻すらかなり高い完成度で作れる程との事。自分の能力を、かなり上手に使いこなせている様だ。

 

 なお、緑髪の妖精さんは瞬間移動が出来るらしく、ある程度仲良くなってきた時に目の前に突然現れた時は大層驚いたと言っていた。そんなに繰り返し、かつ遠くまで出来る訳ではないらしいけど、瞬間移動は出来るだけで十分だと思う。

 

「へぇ。この吸血鬼、本当にあたいたち妖精みたいな見た目してるんだ。レミリアって吸血鬼と見た目が全然違うし、本当に――」

「チルノちゃん! 気持ちは分かるけど、言うならせめてかなりの仲になってからじゃないと駄目だと思うよ。いくら()()()()()()()がこの人は優しいって言ってても、流石に初対面の私たちからそんな事言われたら、怒りたくなるかも知れないし」

「大丈夫! あたい、もう怒られ慣れてるから!」

「あはは……チルノちゃん。それ、胸を張って言う事じゃないと思うんだけど」

 

 すると、物珍しそうに私を見ていた水色髪の妖精さんが口を開いて私の容姿について正直な感想を述べようとし、それを緑髪の妖精さんが焦りつつも止めると言うやり取りが、私たちを置き去りにして唐突に始まってしまった。

 

 これを聞いて、他の皆がどう思うかは何とも言えないけど、少なくとも私自身はこの容姿について何か言われる事に慣れすぎて、この程度の発言であればその辺に落ちている石ころ以下にしか思わない。と言うか、水色髪の妖精さんからは一切の悪意を感じず、単に珍しいものに興味を抱いているだけと分かる上、大切な家族の友達なのだから尚更である。

 

「ふふっ。全然気にしてないから、焦らなくて良いよ」

「あっ……本当ですか?」

「うん、本当だよ。と言うかそんな事よりも、自己紹介しないとね。私はリーシェ・スカーレット、こんな見た目だけどれっきとした吸血鬼。まあ、よろしくね」

 

 なので、自由奔放な水色髪の妖精さんに振り回されて困っている緑髪の妖精さんに声をかけてから、さっさと自己紹介を済ませた。

 本当はもう少し詳しく説明をするべきかとも思ったけど、彼女曰くもう黄髪の妖精さんたちから色々と説明を受けたとの事らしいので、取り敢えずしなくても良いか。

 

「よろしくお願いします! えっと、おうちゃんも言ってましたけど、大妖精です!」

「あたいは幻想郷最強のチルノ! よろしく、リーシェ!」

 

 そして、黄髪の妖精さんたちの友達……大妖精とチルノの2人も、私の話が終わってから改めて笑顔で自己紹介してくれたのを見て、これからも仲良く接してくれるし、接す事も出来るだろうと直感した。

 まあ、2人は()()()()()黄髪の妖精さんたちと意気投合した友達であるから、あまり積極的になり過ぎない振る舞いを心がけるつもりである。

 今はこんなにも楽しそうにしている館の家族が、私の積極的過ぎる行動によって心に深く傷を負わせ、悲しんだりさせるなど、それは決して赦されぬ大罪なのだから。

 

「よし、2人の紹介も済んだ訳だけど……黄髪の妖精さん、何して過ごす? 霧の湖とか中庭はもう太陽が出てて駄目だから、それ以外でお願い」

「えっと、ごめんなさい! 実は、考えても何も決まらなくて……」

 

 で、黄髪の妖精さんが紹介したがってた大妖精とチルノとの顔合わせも済み、さて何をするのかと言ったところでその内容が全く決まっていない事が判明してしまう。

 

 まあ、それならそれで今から皆で考えれば良いだけから別に構わないものの、今は夜ではなく晴れの日の朝である。日光が弱点の私が居る事で霧の湖や中庭で何かして遊ぶ選択肢が消えてしまっているため、必然と紅魔館内で出来る事のみとなっているのは痛い。

 

 幸いにも黄髪の妖精さんたちはそれに不満は抱いておらず、大妖精とチルノも紅魔館内のみで出来る過ごし方で構わないと了承してくれてはいるけど、それ故に退屈な思いはさせたくない。無論、そうでなくても退屈な思いはさせるつもりなどないけど。

 

「リーシェさま、ご飯出来たけど……今食べる? 後にしても良いけど……」

「ご飯かぁ……そうだ!」

 

 この場に居る全員で、紅魔館内でも楽しめるものの中で何しようか考えていた時、調理場担当の妖精さんが部屋を訪れ、ご飯が出来たと声をかけてきたのを見て、取り敢えず最初は皆で美味しいものを食べたりして過ごせば良いのではと思いついた。

 

 その間に別の過ごし方を思いつけば良し、思い付かなくてもパーティーの時の様に賑やかで騒がしくしながら、私の眠気が限界近くなるまで過ごせば良い。大妖精とチルノにとっても、食事さえあれば恐らく退屈自体はさせないと思う。

 

 が、食材の残量や調理場担当の妖精さんたちの都合が悪ければ駄目だし、それが良くても優先すべきは大妖精やチルノ含めた妖精さんたちの方であるので、先に皆に聞いておこう。

 

「妖精さん。ここに居る皆の分の料理とか、お菓子とか少し多めに用意したり出来る? 無理だったり嫌だったりしたらそれでも良いけど……」

「出来るよ。尻尾がもふもふの人がおととい、また沢山食材を持ってきてくれて余裕がある上、私たちの元気も一杯だし」

「そっか。他の皆は、取り敢えず最初はそれでも良いかな? 嫌だったら遠慮なく言って」

「うん! リーシェさまの案で良いよー!」

「ご飯にお菓子……人里のお店と違うものが出てくると思うと楽しみです!」

「確かに、あたいもそれは気になるからそれで良いぞ!」

 

 結果、取り敢えず最初は食事をしながら過ごすと言う私の案が受け入れられると決まったため、全員で食堂に向かって行った。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?

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