※第9章の登場人物解説については、編集が今話投稿時までに間に合いそうにもなかったため、次話の投稿と同時に、今話の前への挿入投稿に予定を変更しました
始まりの紅霧異変
「紅霧異変、遂に始まるのね。何だか緊張してきたわ」
「うん、そうだね。レミリア姉様」
幻想郷へと移住してからおよそ1年が経った今日の朝9時、紅霧の展開術式の完成と同時にレミリア姉様へ報告した私は、他の館の家族たちと同様に、咲夜の能力で空間拡張と魔改造された時計塔の頂上へと即座に集められていた。
間もなく始められる事となった紅霧異変に向けて、各々の役割分担の説明と緊張感緩和のための声かけを行うためである。
紅魔館は外の敷地を除いた館内だけでも相応に広く、弾幕ごっこの訓練を行った100人を超える数のメイド妖精さんたちをもってしても、敵による攻撃から守るのは容易ではない上に、館の主力陣に至っては私を除いてもたったの6人しか居ない。
故に、しっかりと各々の役割を決めておかないと、確実にやって来る博麗の巫女やその他異変解決者たちに容易に突破され、紅魔館が弱すぎると思われ笑われるかも知れない。妖怪の立場からしてみたら、それはあまり好ましいとは言えないし、役割分担は必要不可欠だろう。
「私も、お嬢様方と同じです。スペルカードルールに乗っ取った、純粋な命の取り合いではない決闘とは言え、初めての経験なので。後、相手の情報も殆んどありませんし」
「咲夜さんと同じです。しかし、相手がどれだけ強大であろうとも、紅魔館の門番として侵入者は通さない気概は変わりません!」
「ええ。レミィたちの下にたどり着く前に、何とか止めなければね」
更に言えば、今から行われるのはお互いに命を取り合う本気の争いではなく、一定のルールの下で行われる
しかし、だからと言って緊張し過ぎると実力を十分に発揮出来ないし、何より全て終わった後に体調を崩しかねない。頑張ってくれるのは嬉しいし凄いとは思うけど、そこまでは求めていないから、危ないと思ったら逃げてくれても私としては構わない。
「皆さんみたいに役に立てるでしょうか? 弾幕ごっことは言え、少し心配になってきました」
「何言ってるの、こあ。練習の時もあれだけ出来てたんだし、きっと大丈夫」
「そうだよ! だから、あまり思い詰めたりしないでね!」
なんて事を思っていたら、こあが少し不安そうにしていたのを見かけたので、フラン姉様と一緒に励ましてあげた。確かに、咲夜も美鈴もパチュリーも、私たち3姉妹もこあと比べれば強いのは事実だから、その気持ち自体は理解出来る。
けれど、仮に弾幕ごっこで全力で戦った結果あっさり負けてしまったとしても、労いこそすれ責める様な人はこの館には居ないし、たかがその程度で役立たず認定し、冷遇すると言った事も絶対にあり得ない。何故なら、彼女は大切な家族の一員なのだから。
「レミリアさまー! 寝てた子と食堂に居た子もみんな連れてきました! なので、これで最後です!」
「ご苦労様。じゃあ、そろそろ始めましょうか……リーシェ、パチェ。紅霧の展開、よろしくお願いね」
「「了解!」」
そして、とあるメイド妖精さんが9人の妖精さんを連れ、元気良く頂上へとやって来たのを確認したレミリア姉様より指示が下ったため、私とパチュリーは早速紅霧展開のための作業を始めた。
(ふぅ……)
幻想郷移住時に使った空間移動魔法に比べれば、使用魔力量も術式の複雑さも遥かにマシなものではあるけど、広範囲に影響を及ぼす魔法なだけに、使用魔力量そのものを軽く見る事は不可能であった。
とは言え、大規模な魔法を使う以上は最初から私もパチュリーも軽く見ておらず、魔力を溜め込む魔道具などの対策も念のためにしてはいたけど。
「よしっ! 私の方の魔法陣構築は終わったよ、パチュリー!」
「ええ! じゃあ……陽を遮る紅霧よ、この空を覆い尽くせ!!」
そんなこんなで、私が担当している部分の魔法陣を構築を終わらせてパチュリーにバトンを渡し、最後の一言だけの詠唱をしてもらった瞬間、魔法陣の模様が強く紅い光を放ち始める現象が発生した。
同時に、時計塔の周りを飛ばせていた使い魔の鳥さんを通し、屋根に現れた魔法陣から紅い霧がかなりの勢いで空に立ち上っていく光景が確認出来たため、これにて1番重要な段階は問題なく済んだと見て良いはずだ。
「出来たわよ、レミィ。滞りなく進めば、20分もしない内に幻想郷上空を紅霧が覆い尽くす計算ね」
「ええ。パチェにリーシェ、2人ともありがとう。さてと……」
紅霧の展開が始まった後は、レミリア姉様が集まっていたメイド妖精さんたちに分かりやすく簡潔な指示を出しつつも、1回休みとならない様に気を付けてとの一言も付け加えた。
あくまでも、大規模な遊びの範疇を得ない弾幕ごっこを行うと言っても、本気で命を取り合う戦いの時程ではないにせよ、そうなる可能性はないとは言えない。
だから、本来なら咲夜の率いる精鋭妖精さんや門番の妖精さん、愉快な5人組の妖精さんも含め、正直私は戦って欲しくはないと思っている。
(まあ、考えても仕方ないか)
しかし、そうすると人数がまるで足りない物理的な問題がついて回る事となるし、何より妖精さんたちが全員やる気に満ち溢れている。にも関わらずそれを止めるなど、そんな愚かな行為は出来なかった。
だから、異変がどの様な形であれ終わりを迎えるまで、妖精さんたちがあまり酷い目に合わずに居てくれる事を願うばかりだ。
「そして……リーシェ。私とフランはこの場所で待ち構えているから、貴女には地下の巡回を任せるわ。侵入者が来たら、ルール内で出せる全力を以て対峙しなさい。勿論、身体の事を考えて、無理しては駄目よ」
「その通り。後、何か体調が悪くなったりとかしたら途中でも自分を優先して休む事。私やお姉様との約束だからね、リーシェ」
「勿論、それは分かってる」
レミリア姉様が妖精さんたちへの指示を終え、館の主力陣への指示や話し合いも済ませると、最後に私に対しての指示と耳が痛い忠告を、フラン姉様と一緒に真剣な表情でしてきたため、即座に頷いた。
流石の私も、館の家族に命の危機が迫る様な事態とかであればまだしも、今回はルールに縛られた遊びの領域を出ない
ただ、少しずつマシになってきていても、未だ反射的にやらかしてしまう時が出ている以上は、本当に気を付けなければならない。そう頭で考えながら、私は地下担当の黄髪の妖精さんたち40人と一緒に、時計塔を下っていった。
「リーシェさま、何か作戦とかってあるー?」
「ないよ。黄髪の妖精さん、期待してもらったのにごめんね」
「ううん、大丈夫だよ! じゃあ、わたしたちはわたしたちで気負い過ぎない様に行こー!」
「「「おー!!」」」
で、少し急ぎ目で飛びながら地下に着いた時に、黄髪の妖精さんから作戦があるかどうか聞かれたのだけど、正直言ってそんなものはなかったため、頭を下げて謝罪した。
正確に言えば、私的に成功確率が低めのものしか思いつかないだけであるが、言わなければどっちでも一緒だろう。こんな時、短時間で比較的有効作戦を考えられる、レミリア姉様の能力の高さが羨ましくなる。
(ん? この強い反応は……遂に来たね、解決者)
私もスカーレット家の末妹と言う立場上、今までよりももう少しそんな類いの力を鍛えておこうかと思いつつ、能力を使って状況の確認をした瞬間、紅魔館へと向かってくる反応を5つ捉えた。十中八九、異変解決者たちだろう。
弾幕ごっこは人に魅せる美しさも重要な要素となっているし、その他にも色々なルールが存在する以上一概には表せないけど、全員が全員純粋な力量が私や姉様2人にも迫るか、あるいは同等の存在だと言うのが何とも恐ろしい。
あり得ない仮定ではあるけど、あの5人とスペルカードルールではなく、本気での命の取り合いをする事にならなくて本当に良かった。勝てる勝てない以前に、館の家族と金輪際会えなくなる事態が来ずに済む訳だから当然だ。
(ふぅ……さてと、その時に備えて動きますか)
そんな暗い事を考えながら、担当する地下に侵入者が出た時に備えて、私なりに姉様2人の役に立てる様に動こうと決意を固めた。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?
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1人
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2人
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3人
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追加しない方が望ましい