目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話は美鈴視点です

※アンケートについては、紅霧異変の章が終わるまで続ける予定でいます

※サブタイトルを間違えていたため、修正しました


山の四天王

「あの時以来だね。本当に、済まなかったと思ってるよ」

「いえ、大丈夫です。状況が状況でしたし、仕方ありませんから」

 

 リーシェお嬢様とパチュリーさんが紅霧の展開を行うと同時に始まった紅霧異変、平常時と変わらず門番として解決者を迎え撃つ役目を受け持ったのだけど、やって来た5人の内私と対峙する事となった相手に、自然と気が引き締まっていくのを感じていた。

 

 忘れもしないおよそ1年前、本気の戦いで持ちこたえるのが精一杯だった2本角の大妖怪……鬼の萃香さんが相手であったと言うのが理由だ。

 

 無論、今回はスペルカードルール下での決闘なので、あの時感じた様な命の危機すら覚える気の圧力は感じないものの、彼女は私が1度は負けた格上の相手である。決して油断せず、全力で向かっていこう。

 

(ふぅ……)

 

 にしても、館の中に入っていった紅白の巫女や白黒の魔法使い、超絶技巧の人形師に風纏う鴉天狗と言った他の解決者たちも、同様にかなりの量と質を誇る気を秘めていたのは、やはり気になる。

 特に、あの紅白の巫女に関しては、私にも何をどうしたらそこまで優れた領域に到達するのかが一切理解出来ない程に、全身の気の流れが清らかかつ非常に激しかった。

 

 究極の鍛錬を積み重ねたからなのか、はたまた努力を嘲笑う程の優れた才能に恵まれたからなのかは不明なものの、何にせよあの人間は別格である事だけは間違いない。レミリアお嬢様たちの強さは分かっているけれど、正直言えばとても心配に思えてならなかった。

 

 ただし、今はそれを心配していてもどうにもならない。とにかく今は、目の前に居る萃香さんと弾幕ごっこで戦う事を第一に考えるべきだろう。勿論、無理をし過ぎるなとの命令が最優先ではあるが。

 

「さてと……私は紅魔館の門番、紅美鈴! レミリアお嬢様の命を受けている以上、例え誰であろうとここを通す訳にはいきません!」

「だろうねぇ。しかし、ここに来た以上はおめおめ帰る訳にもいかない。だから、あんたを倒して通らせてもらうよ!」

 

 と言う訳で、私は早速スペルカードを3枚萃香さんに向けて掲示しつつ声をあげ、彼女も同様の行為をし終えたのを確認したところで、館の皆と練習のためにやった以外では初めての弾幕ごっこが始まる事となった。

 

(やはり、萃香さんは強い……)

 

 最初から分かってはいた事だけど、弾幕の速度や密度は私にとって脅威の一言で、ほんの一瞬でも判断遅れが生じると当たってしまいそうになる。

 

 加えて、彼女自身が荒々しい気を纏って体当たりしてきたり、格闘を仕掛けてくるなどの近接戦闘も織り交ぜてくるため、リズムを崩され、回避が遅れて鼻先を拳が通り抜けるなんて事もそこそこあった。ルール下での決闘でも、脅威的な戦闘力は健在だと分かる一幕だ。

 

「そいつは……白翼の吸血鬼が見せてくれたあの動きを取り入れているみたいだね。使う主が違えど、その厄介さは健在か」

「分かりましたか。まあ、萃香さんはあの状態のリーシェお嬢様とやり合った身、何らおかしくはないですけど」

 

 だけど、身近に居る皆との弾幕ごっこの経験は言わずもがな、リーシェお嬢様が教えてくれた立ち振舞いが、私を更に上の領域へと引き上げてくれている。

 

 現に、リーシェお嬢様の回避を重点に置いた身のこなしを元に、私の今までの動きと合わせたこの構えのお陰で、萃香さんの攻撃がある程度は避けやすくなっている。

 

 同時に、攻撃に使える時間も増えてきている訳ではあるが、今のところは当たらずに避けられている。まあ、相手が相手だからそう簡単に行かない事など百も承知だし、あまり慌てたりせずに落ち着いて対処していこう。

 

(やはり……そうもなるか!)

 

 しかし、この構えは今までの構えよりも負担が大きいせいか、いつもよりも少し疲労が溜まるのが早い様に感じた。それに、萃香さんは1度暴走状態のリーシェお嬢様と対峙し、本物の動きをその身に受けていたのを思い出す。

 

 元から技術以外の色々な面で格上なのも相まって、回避や受け流しの難易度が徐々に上がり始めてきているのは、至極当然の流れと言えるだろう。

 

 レミリアお嬢様方に練習に付き合ってもらったり、1人の時でも出来る事をしっかりしていたとは言え、まだ不完全なのだと実感せざるを得ない。

 

「ふぅ……では、行きます! 華符『セラギネラ9』!」

 

 そう思いつつ、この状況をあまり長く維持するのは良くないと考え、私は早速1つ目のスペルを宣言した。

 

 放ってから1秒程で方向を変えて交差する黄色弾、相手を狙いつつ四方八方に一定の間隔で放つ赤色弾、これらを他に用意しているスペル同様、制限時間終了か相手の弾幕に一定回数被弾するまで放ち続けるものだ。

 

「こいつは中々手応えのある弾幕……おっと、少し気が抜けていたのか? そんなつもりはなかったんだけどねぇ」

 

 先程までの弾幕よりも変則的かつ速度や密度も上げているために、萃香さんも回避に力をより多く割いている。

 

 お陰で私に向かう弾幕がかなり少なくなってきたものの、未だに命中弾を出せていない。精々、時折擦る寸前まで私の弾幕を近づける程度であった。

 

「突破しましたか……ならば、幻符『華想夢葛』!」

「2連続かい! なら、受けて立とうじゃないか!」

 

 そして、最後まで当たらずに1つ目のスペルが攻略されてしまったのを見た私は、間髪入れずに2つ目のスペルを宣言し、攻撃態勢を整えた。

 

 自身の周囲に展開した星型の射出口をそれなりの速度で回転させ、青い弾幕をランダムにばらまくものだけど、場合によっては難易度が上下する可能性もある。言うまでもなく、ランダムでもスペルカードルールから逸脱しない様に作ってはいるけど。

 

 なお、レミリアお嬢様やリーシェお嬢様には初見で涼しげに避けられ、フランお嬢様は多少驚かせはしたものの、やはり初見で避けられている。

 

「想像以上に厄介な奴だね……それなら、こっちもこれで迎え撃つ! 萃符『戸隠山投げ』!」

 

 すると、1つ目の時よりも大変そうに避け続けていた萃香さんが高らかにスペル発動の宣言をしたと同時に、どこからともなく周囲の空間に石の塊が出現、彼女が挙げた手の上に集まり始めた。

 

 勿論、石の塊が都合良く私を避けてくれるなんて事はないため、気配を読み取り当たらない様に集中、発動中のスペルによる弾幕が盾となったりしてくれたのもあり、その現象が終わるまで割と余裕をもっての回避に成功する。

 

 しかし、大岩と化した石の塊を見れば、これからまだそれが襲いかかってくるのは明白なので、決して微塵も気を緩めずに待つ。

 

「そら、食らいな!!」

「まあ、そうなりますよね!」

 

 3秒後、案の定萃香さんが通常弾幕を若干上回る速さでそれを投げてきたけれど、警戒を怠らずにいたため安易に避ける事が出来た。

 

(パチュリーさんの結界、何ともなさそうですね)

 

 外れた大岩は館全体を守る結界に激突して粉々に砕けたものの、その様相から威力自体は決して妖怪でも油断出来ないものだと、強く実感する一幕であると言える。

 

「次行くよ! 鬼火『超高密度燐禍術』!」

 

 中盤以降に若干石の塊の量が増え、大岩の大きさが増した以外は基本的に同様の流れを繰り返しつつ、2つ目のスペルの時間切れとなった最後の方も何とか乗り切ると、萃香さんが2つ目のスペルを宣言した。

 

 妙な軌道を描いて飛ぶ、火の玉(よう)の弾幕を名前通りにかなりの密度で放ってきていて、本来ならここでスペル宣言をしたいところではある。

 

 けど、もう既に使えるスペルカードが残り1つしかない以上、ここで使う訳にもいかなくなっているため使わず、攻撃はせずに回避に全力を注ぐ。

 

「さてと、これで最後……『百万鬼夜行』!」

「私も行きます……彩符『彩光乱舞』!」

 

 疲労が辛くなりつつも時間切れまで粘り、萃香さんの2つ目のスペルを攻略してからすぐ、お互いに最後のスペルの発動宣言を行った。

 

 萃香さんの周りを回っている複数の霧弾から楕円形の弾幕を放ちつつ、扇状に大玉弾幕を放ってくると言う最後に相応しい難易度を誇るこのスペルは、元から回避する難易度が高い。

 更に、今までの弾幕ごっこで消費した体力はそこそこ多く、それが回避難度の上昇に拍車をかけていた。

 

 今は自分が発動したスペルの弾幕がある程度相殺、もしくは軌道を逸らしたりしてくれているため、それでも上手い事回避行動を取れている。

 

(うわっ、まずい……!)

 

 とは言っても、中盤に差し掛かってくると打ち損じた相手の弾幕の数が急に増えてきてしまい、加速度的に回避のし辛さが上がっていってしまう。

 

 ただ、レミリアお嬢様方との練習時にも似た流れになった覚えがあるから、どうにもならない状況ではないのが救いだと言えた。

 

「しまっ――」

 

 そうして、終盤まで何とか気合いで掠らせながらも回避し続けていた時、移動した先に大玉弾幕を含めた多数の弾幕があった事に気がついた。

 

 どう足掻こうとも避けられない距離の弾幕に、2つ目のスペル発動の宣言をするタイミングを間違えた事を悟るも、もう既に後の祭りである。そのまま私は多数の弾幕を浴びてしまい、萃香さんより先にスペルが解除された事で、敗北が確定してしまった。

 

「負けてしまいましたね……と言う訳で、萃香さん。通って下さい」

「ああ、通らせてもらうよ。にしても、ここまでギリギリの戦いになるなんて……美鈴。あんた強くなったねぇ」

 

 良いところまで行ったが故の悔しさは多少あるものの、私の力が格上にも通用する領域に来れただけでも、かなりの収穫と言えるだろう。今後も精進あるのみである。

 

 こうして、内心でレミリアお嬢様に負けてしまった事を詫びながら、私に一言残して館の中へと入っていく萃香さんを見送った。




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