目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話はパチュリー視点です


大図書館での弾幕ごっこ

 レミィの指示によってこあと一緒に大図書館へと向かった私は、いつもの様に本の整理などをしながら、異変解決者との戦闘に向けて備えていた。

 

 幻想郷外に居る時から今に至るまで行っていた純粋な命の奪い合いではなく、それとほぼ対極に位置する弾幕ごっこで行われる戦闘なので、緊張感は比較的マシな方である。

 

 妖精メイドたちに至っては、初めての試み故の緊張感はもっているものの、紅霧異変をド派手かつ楽しそうな遊戯だと認識している程だ。実際、その認識自体は当たらずとも遠からずではあるが。

 

 とは言え、強いはずの異変解決者たちの名前や姿形はおろか、数すら全く分からない状態で相対する訳だから、油断してはならない。

 

「パチュリー様。私、どんな相手でも頑張ります!」

 

 なんて事を考えながら居ると、こあがそんな言葉を投げかけてきた。声色は元気そうだけど、表情を見れば何となく別の感情が滲み出ているのが分かる。

 フランやリィから励まされたとは言え、館の主力勢と比べて力不足な事による不安感が完全には拭えないのだろう。

 

(大丈夫、心配はいらないわ。こあ)

 

 確かに、魔力量を含めた基礎能力()()ならそう言わざるを得ない。しかし、それ以外での分野……魔法を扱う技術や知識量はその限りではない上、記憶力には目を見張るものがある。

 

 そもそも、館の住人全体に話を広げて比べてみた場合では、悪魔の中でも弱い方な要素を加味しても、総合的には一概に力不足だとは言えない。

 弾幕ごっこであれば、レミィと同程度の相手でも勝てるかどうかは条件にもよるが、戦闘は成立すると断言しよう。

 

「魔導書に絵本、小説も含めた色々な書籍がこんなにびっしりだなんて驚いたわ。読み切るのに、一体何年かかるのかしら?」

「これは、かなり良いネタになりそうですねぇ。まあ、今はそれどころではありませんが」

 

 こあにそう言おうと思った刹那、侵入者を感知する魔法陣の反応と、数秒後に誰かの話し声とこちらへ向かってくる足音が耳に入ってくる。音が殆んどない場所なだけに、僅かな音ですら私とこあの居場所を知る手がかりになったと思われた。

 

 しかも、1人は完全に知らない人物の声だけど、もう1人は知っている人物云々どころか咲夜と一緒に、吸血鬼異変の際に戦ったあの鴉天狗()の声だと数秒考えてから気づく。よりによって、面倒な相手がやって来たものだ。

 

 でもまあ、異変解決者ならこの位の相手がやって来てもおかしくはないと予想していたし、驚きはさほどない。と言うか、相手が誰だろうと私に出来るのは、精一杯戦う事だけだ。

 

「あの……一応聞きますけど、すんなり通らせてくれたりとかは無理です?」

「当然よ。レミィ(館の主)に通すなと言われている相手から通してくれと言われただけで、本当にすんなり通す馬鹿が紅魔館に居ると思う?」

「あはは、そんな事は分かってますよ。ちょっとした冗談です」

 

 そう決意を固めながら顔を合わせた結果、簡単な会話を交わした後に見覚えのあり過ぎる相手と弾幕ごっこをすると決まった。お互いに、使うスペルカードの枚数は4枚である。

 なお、もう1人の()()使()()とは、流れでこあが戦うと決まる。どこからどう見てもかなり格上の相手だけど、先程までとまるで違う表情を見れば、心配しなくても大丈夫だと見た。

 

「さて、行きますか!」

 

 そして、文が風を纏う弾幕をかなりの密度で放ってきたのに対し、私も同程度の火を纏う弾幕で打ち返す事で弾幕ごっこが開始された。

 

 あの時もそうだったけど、彼女の空中機動力の高さは相も変わらず驚異的で、弾かれたり相殺されて数が大きく減った私の弾幕程度では有効打とはなり得ていない。

 加えて、更に火炎弾を放ってみても上手く軌道を逸らされ、多少鬱陶しく思わせる以上に効果が上がらなかった。

 

(相変わらずの速度ね。レミィたちと練習しておいて良かったわ)

 

 無論、私の方にも火炎弾で落とし切れずにいる弾幕が迫ってきているため、最小限の動きで身体を動かして回避した。ここ最近、落ち着いているとは言え持病の喘息が未だあり、純粋な体力や膂力で見た場合文と比べてかなり劣っているから、あまり激しく動くのは好ましくはない。

 

「今更私が言えた義理はないですが、こんな所(図書館)で火はどうかと……岐符『サルタクロス』!」

「心配されずとも、図書館全体に防火防水防塵……各種防護対策はバッチリよ! 火符『アグニシャイン上級』!」

 

 すると、この状況にしびれを切らしたのか、何故か図書館の心配をしながら文が1つ目のスペルを宣言したため、それに答えながら私も1つ目のスペルを宣言し、対抗を試みた。

 かなりの速さでほぼ全方位かつ多重に放たれた上、時間差で跳ね返った後にその弾幕を雨の如く降らせるこれは、集中すればスペル宣言せずとも回避は難しいが可能と見て良い。だから、気合いで避けるべきであったと思い始める。

 

(よし、この調子ね)

 

 ただ、序盤で体力を消耗し過ぎてしまうのを避ける意味合いでは、対抗してスペル宣言を行った選択は間違いではないだろう。現に、慣性で円形に広がっていく私の火炎弾が文の弾幕を打ち消し続け、向かってくる弾幕量が落ちている訳だから。

 

「属性相性的にも弾幕の密度や速度の面でも、中々に厄介でした。では、次行きます! 風神『二百十日』!」

 

 何とか1つ目を乗り切り、私のスペルも時間切れで終わった後、続けざまに文が2つ目のスペルを宣言したので、咄嗟に距離をとった。

 瞬間、複雑な文様を描きながら緑と青色の弾幕が全方位に拡散していくのを見て、ほっと胸を撫で下ろした。

 

(いや、まだ安心は……くっ!)

 

 が、ほんの一瞬だとしてもそう思ったのがいけなかった。拡散した小弾幕が文を守る様にして一時集結し、そこから規則性のないランダムな形で再び放たれた高密度なそれを回避しきれず、大量に掠った上に何発かまともに受けてしまう。

 

 本当なら取っておきたかったのだけど、ルール上一定数被弾してしまった場合はスペル宣言をしなければならない。そのため、私は仕方なく2つ目のスペルを宣言した。

 

「ええい、私とした事が! 火&土符『ラーヴァクロムレク』!」

 

 異なる速度の炎弾を2種類放射状に放った後、続いて黄色の中弾を発射、迫り来る被弾寸前の弾幕を打ち消しつつ、文へと当てにかかる。

 

 弾速はともかく、密度で言えば文のそれを見た感じは上回っているから、もしかしたら上手く行くかもしれないと思っていた。

 

「あやややや、これはとんでもない密度! 二百十日で迎撃しても、凄まじい弾幕の嵐です」

「……これでも捉えきれないなんて、相変わらずの空中機動力ね」

「まあ、これでもスペル宣言してますし、空中は私の領域ですから」

 

 しかし、文もまた自分の弾幕で私の火炎弾を打ち消している上、そもそも空中機動力がレミィたちを超えている存在である。時々掠る寸前までは行っているものの、直撃まではいかなかった。

 

(さて、どうしましょうか)

 

 このままあの空中機動力に対する有効な対策を講じれなければ、恐らく残り2つのスペルでも有効打を与えられる確率が下がるだろう。

 

 ただ、ルール内で講じる事が可能かつ非常に有効な対策は現時点ではなく、今切れるカードでどうにかしなければならない状況であった。

 

 当時と状況がかなり違うけど、流石は咲夜と一緒に戦って互角に持ち込めた相手だと言わざるを得ない。

 

「いやはや、戦う前から分かってはいましたが……貴女は強い。と言う訳で、少し早めに切り札を使う事に決めました」

 

 などと思いながら、文の2つ目のスペルの時間切れまで弾幕を避け続ける事に成功したものの、緊張感はむしろ避けている時よりも増大していた。彼女が真剣な表情で切り札を切ると、そう宣言したからだ。

 

 つまり、これから来る攻撃はスペルカードルール内で可能な範囲内にて、最高に回避難度が高いものとなる訳である。どんなものかは分からないけど、警戒するに越した事はない。

 

「『無双風神』」

「っ!?」

 

 お互いに通常弾幕すら放たず、切羽詰まってそうなこあと比較的余力がありそうな魔法使いのやり取りが耳に入り始めてから10秒、文が言葉を紡いだ瞬間に目の前からその姿が消えた。

 

 と言うよりは、私の目に捉えられない超速度で飛行していると表した方が正しいだろう。飛行する姿が赤いレーザーの様に見える程の速さとは、一体どれ程のものなのか。

 

「まずいっ!! 火符『アグニレイディアンス』!」

 

 更に、切り札と銘打っているからには当然それだけではない。緑色の楕円形の小弾幕が同時にとてつもない密度、かつ規則性もなしにばらまかれてくるため、咄嗟の判断で私も3つ目のスペルを宣言した上で回避行動を取った。

 

 宣言せずに回避出来なくもないとは思うけど、今は弾幕ごっこの事以外で色々考える時間が惜しいし、そうする位なら使ってしまった方がまだ良いと思う。

 

(凄まじい切り札ね……)

 

 だが、それをしてさえ凄まじい弾幕の嵐に回避が追い付かなくなり、時間切れになる頃には私のスペルが解除された挙げ句、加えて4つ目のスペルを宣言しなければならなくなるところまで追い込まれてしまった。

 

 30秒にも満たない間だったものの、文が切り札と銘打つに相応しい弾幕だったと思うと同時に、自分も切り札を使っていれば乗り切れたのではないかと後悔の念を抱く。

 

「最後の切り札、受け取りなさい! 火水木金土符『賢者の石』!」

「ええ、受けて立ちましょう!」

 

 無論、そんな事を考えていても仕方ないと言うのは分かっているから、一旦思考を打ち切った上で私も最後かつ切り札である4つ目のスペルを宣言した。

 

 5つの属性の特徴を持った弾幕をそれぞれ展開した魔法陣(射出口)より放ち続けるこれは、スペルカードの中で1番遊びに落とし込むのに随分と苦労した覚えがある。

 

「ぐっ……奇妙な軌道を描きますね、これ!」

 

 それに見合うが如く、文の表情も避け方も今までとはまるで異なっているのに加え、初めて避けきらせずにまともに当てる快挙を達成した。とは言え、4つ目のスペル宣言をさせるところまでは追い込めていないので、引き続き頑張っていく。

 

(まずいわね、もう中盤も過ぎたし……)

 

 状況が変わらずに時間が過ぎて中盤に達す頃になると、流石の私の中にも焦りが生じ始めた。更に1発命中させたものの、そこから中々当てられていないからである。

 

 後もう少しで強制的にスペル宣言させる領域へ到達するだけに、尚更その思いは強くなっていった。

 当然だけど、達成したとしてもその時点で時間切れまで数秒であったとしても意味がないため、仕出かしたりしない様に気を遣いつつも、出来る限り早く達成出来る様に集中力を高める。

 

「ふぅ。結局、最後まで追い込めなかったわ」

「いや、追い込まれはしていましたよ。そのタイミングで貴女のスペルが時間切れになっただけです」

「そう……つまり、ほんの少し力及ばずだった訳ね」

 

 だけど、残酷にも4つ目のスペルを宣言しなければならないところまで追い詰めたところで、私の切り札の時間切れがやって来てしまった結果故に、敗北を喫す事となった。

 

「パチュリー様、すみません。負けてしまいました」

「大丈夫よ、私も力及ばずだったから」

 

 そして、こあも魔法使いとの戦いに負けてしまった様で、かなり落ち込みながら私のところへと来たので、励ますために声をかけた。

 とは言うものの、あっさり負けた訳ではなかったらしく、励ましている時にやって来た相手の魔法使いから()()()()()()()()との一言をもらった。それだけでも、こあの努力は報われたと断言出来る。

 

「あの目立つ扉から先に進めるわ。まあ、精々頑張りなさいな」

「なるほど、ありがとうございます。アリスさん、行きましょう」

「ええ、分かったわ」

 

 こうして、私とこあに勝った2人に先へ進める道を示して見送りつつ、地下で待ち構えているリィに心の中で後の事を託した。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

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