目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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想定以上に話が長くなってしまいそうなので、前編後編で分ける事に決めました


白翼の吸血鬼(前編)

 巡回中、紅魔館にやって来た異変解決者の内2人がパチュリーとこあを倒し、地下へ侵入してきた事を確認した私は、妖精さんたちがカバーしきれないエリアに存在し、かつほぼ確実に通る事になる場所(ちょっとした広間)で待ち構えていた。

 

 本来であれば、地下への侵入を感知した時点で即座に駆けつけ、弾幕ごっこを仕掛けるのが最適解だと思ってはいる。そもそもの話、レミリア姉様からは待ち構えるのではなく、()()()()()を頼まれているので尚更だ。

 

 ただ、序盤からいきなり私が出張った場合は勝つにせよ負けるにせよ、やる気に満ち溢れた黄髪の妖精さんたちと異変解決者との弾幕ごっこの機会を余計に奪いかねない上、何より廊下だと色々な面で戦いにくいところまで考慮すると、最適解が確実に通るこの場で待ち構えるとなるから致し方ないだろう。

 

(妖精さん……!)

 

 しかし、解決者2人の実力は妖精さんたちと比べたら案の定酷な程に高く、割りと短時間で突破されているのが能力と使い魔の鳥さんで視た現状である。

 それ故に、今すぐにでもその場に向かって守ってあげたい衝動に駆られながらも、何とか気合いで耐えている状況だった。

 

「うーむ、今度の相手は白翼の吸血鬼でしたか。あの神がかり的な回避力……きっと、弾幕ごっこでも牙を向くでしょうねぇ」

「えっ……この子って吸血鬼なの? でも、それならこの威圧感も納得ね」

 

 なんて事を考えながら待っていると、使い魔の鳥さんが私の目先にある通路から飛んできて肩に留まり、それから20秒程で解決者2人……黒い翼の妖怪さんと人形使いの魔法使いさんが続いて現れた。

 

 鳥さん越しでずっと見てはいたけれど、目の前に現れると隠しきれていない強者の圧力をこの身で体感し、ルール内で持てる力を全て発揮して対峙しなければと決意を固める。

 

(私、黒い翼の妖怪さんと会った事って……なかったよね?)

 

 ただ、こちらを視界に入れた時の黒い翼の妖怪さんが、私と既に会っていたどころか戦った事すらあると匂わせる発言をしたのには、かなりの違和感を感じ得ない。

 

 能力で探知した反応も全く身に覚えがなく、いくら思い出そうとしても記憶の断片すら出てこないから、何かとんでもない勘違いをしているか、動揺を誘うために嘘をついているかのどちらかと言う可能性が大きい。勿論、それ以外の可能性もない訳ではないが。

 

「初めまして、異変解決者のお二方。私、スカーレット家末妹のリーシェと申します。こんな容姿ですけど、れっきとした吸血鬼です」

「ええ、初めまして。私はアリス・マーガトロイド、人形師で魔法使いよ」

「……あ、初めまして。鴉天狗の射命丸文です」

 

 ある程度思考を巡らせた後、今は考えていても仕方ないと思ったのでひとまずその件については置いておくと決め、解決者2人との自己紹介やこれから始まる弾幕ごっこについての話し合いを始めた。

 

(うん。まあ、こんなものかな)

 

 1分後、話し合いの結果は状況からして1対2、魔法使いアリスさんの操る人形たちも合わせれば1対多数の戦闘になると確定はしたものの、その分私が1人で6枚のスペルカードを使えると決まったので、特に文句はない。

 

 紅魔館の中でも上位に入る実力者のこあやパチュリー、黄髪の妖精さんたちを倒した相手である以上、1対多数の戦闘の経験がそれなりにあるとは言え、決して一瞬たりとも気は抜けない。気を抜いた瞬間、それ即ち解決者2人にとっては絶好のチャンスにしかならないのだから。

 

「さてと……貴女たちの目的が異変解決である以上は、弾幕ごっこで負けていった館の家族たち、姉様2人のためにも絶対に通す訳にはいきません。ここで倒させて頂きましょう!」

 

 そうして戦う前のやり取りを終えた後は、妖精さんたちに多少なりとも怪我を負わせられた事実に対しての思いがこもった口上を述べた。

 

 勿論、その件に関しては事が事なだけに致し方なく、苛立つのはどう見繕おうが間違っていると重々承知してはいるけど、どうにも止められなかった。

 

 けど、露骨な表現を口にしたり実力行使を一切行ったりしないだけ、まだマシな方だとは思う。自分で自分に言い訳をするなんて、何とも滑稽な話ではあるけども。

 

(おぉ……凄い弾幕)

 

 口上を述べ終わり、使い魔の鳥さんをこの場から避難させて弾幕ごっこを始めた瞬間、文さんとアリスさんからかなりの密度を誇る弾幕が、不可思議な軌道を描きながら飛んできた。館の家族たちとの練習では見なかったタイプの弾幕である。

 

 触れ合って爆発するかしないかギリギリのところで、互いの弾幕が干渉し合わない様にしっかりと考えられていて手強いけど、序盤のこれで当たる訳にもいかない。能力と併用して弾幕の軌道を読み、空を駆けて回避し続けた。

 

「即席の連携攻撃とは言え、こうもあっさりと避けられるものなの……?」

「私からしてみれば、彼女の厄介極まりないこの動きは特段驚くものでもないですね。あれこれ考える前にとにかく、全力で戦うべきかと」

 

 練習していなければ困難だったであろうこの弾幕の嵐だけど、レミリア姉様やフラン姉様との弾幕ごっこの成果は凄まじく、危なげない回避に成功している。

 

 同時に、黄髪の妖精さんたちはもとよりパチュリーやこあが負けてしまう程に高い実力の一端を、嫌と言う位には実感してしまっていた。

 しかも、2人同時に相手する流れである以上、大図書館で見せなかった新技を繰り出してくる可能性も大いにある。他人との初めての弾幕ごっこがこれとは、何とも言い難い。

 

「そろそろでしょうか……深淵(しんえん)『封じた天源(てんげん)』」

 

 そんなこんなで弾幕を避け続け、直感的にそうするべきだと判断した私は、躊躇せずに1つ目のスペルを宣言した。雷の魔力が込められた、時間を置いて不規則な軌道を描く多数の小さな雷弾に分裂する大玉弾を放ち続けると言うものだ。

 

 弾幕ごっこが始まって大して時間も経っていないのに、相手よりも先に宣言する選択が正しいか否かは、正直言って分からない。もしかしたら、判断を間違えたと思う時が来る可能性もある。

 

「彼女のスペルを相手に、通常弾幕では2人がかりでも焼け石に水……アリスさん!」

「ええ、言われなくてもやるつもりだったわ……操符『乙女文楽』」

 

 ただ、発動してから割りとすぐに2人の不可思議な軌道の弾幕の密度を上回り、攻撃よりも回避を強制させたのに加えてアリスさんにスペル宣言をさせたので、今の状況下では少なくとも間違いではないとは言えた。

 

 にしても、アリスさんの自律していると見紛うレベルで人形を操っておきながら、自身もあそこまで魔法を使いこなせる程の力や技術、状況判断能力の高さは凄まじいの一言に尽きる。確実にかなりの長期間、研究や訓練に費やした結果の賜物だろう。

 

(……)

 

 けどまあ、そのお陰で有利に傾いていた情勢がほぼ互角となり、私の下まで飛来してくる弾幕量が増えてきたから、そう言った意味では望ましくない展開だけど仕方ない。パチュリーやこあを負かした異変解決者が弱いなど、絶対にあり得ないのだから。

 

「いやはや、アリスさんのスペルが加わってもほぼ膠着状態とは……仕方ありません。風神『二百十日』!」

 

 すると、この状況を打破したい文さんまでもがスペルを宣言し、弾幕の密度を増やしてきたため、本格的に情勢が不利になってきた。

 ルールの都合上絶対に使えないけど、思わず本気の戦闘時に使用する防御・迎撃魔法を使いたくなってしまう程の飛来弾幕量である。

 

 軌道を読み続けて回避していく最中、それでも頭上や顔の横を攻撃が通り抜ける感覚は、やはり何度経験しようと慣れるものではない。それは、命を取り合う本気の戦闘とはほぼ真逆である、ルールに縛られた弾幕ごっこであっても同様だった。

 

「おっと……この状況で時間切れですか。彼女たちは実力者な上に2人、安全を取ります。護界(ごかい)『フェーズドアレイ』」

 

 そんな中、2人のスペルによる弾幕密度が最高潮に達したタイミングで、私のスペルが時間切れにより解除される間の悪さを発揮してしまったため、すぐさま2つ目の防御寄りスペルを宣言した。

 

 交差する弾幕を周囲に展開しつつ、私の周りを回る遠距離特殊攻撃防御効果のある4つの正八角形魔法陣より、対象狙いの大玉弾を放射状に放つこれを上手い事利用しなければ、危険と判断したためである。

 

「あやややや……上手い事対応されてしまいましたねぇ」

「防御寄りのスペルみたいね。とは言え、攻撃面も決して舐めてかかれないから、何とか集中して今のスペルが時間切れになるまで耐えるわよ」

 

 とは言え、攻撃にも回さないといけない上に文さんやアリスさんが強いため、どれだけ上手くしようと完全に防ぎきる事は不可能であった。

 

 それでも、厄介な位置にある弾幕をかき消して回避が容易になり、2人のスペルが時間切れになるまで粘る事が出来たので良しとしよう。

 

(うーん……まあ、そうはなるかなぁ)

 

 ただ、防御寄りのスペルでは攻撃面で若干力不足なために、私への攻撃に力を割きながらも1つ目と比べて楽に時間切れまで回避されてしまったけど、これについては仕方ないと言える。

 

「流石はパチュリーとこあを倒し、ここに来るまで迎え撃つ妖精さんたちを容易く退けた異変解決者、今のではさほど堪えていない様で」

「伊達に知り合いと練習してきた訳じゃないからね。それよりも貴女、私たちに怒ってる? 最初から気になってたのだけど……」

「いえ、別に怒ってなんかいませんよ? 気のせいではないでしょうか?」

「ふーん……」

 

 頭の中でそんな事を考えつつ、避けきった2人に通常弾幕を放ちながら純粋に思った事を口にした瞬間、夢にすら思わない問いかけをされて少し焦ってしまった。どうやら、隠せていたと思っていた弾幕ごっこ前から感じていた苛立ちは、アリスさんにはお見通しだったらしい。

 

 何で分かったのかは不明なものの、仮に私が分かりやす過ぎるのが理由だったなら、早急に改善しなければいずれ館の家族たちに大なり小なり迷惑をかけてしまう。それ()()は、何がなんでも避けるべきだ。

 

「とにかく、3つ目のスペル行きますね……激雷(げきらい)七翼(しちよく)雷導(らいどう)』」

「っ! 貴女、容赦ないわね!」

 

 そう決意を固めつつ、若干気が逸りながらも私は3つ目のスペルを宣言した。フラン姉様のスペルカード(禁忌『カゴメカゴメ』)を許可をもらい、参考にしながら作った自信作の1つである。

 

 同時に、あっさりと攻略されてしまったりして、簡単だとか弱いだとか思われてしまう事だけは避けたいスペルでもあった。

 何故なら、このスペルがそう思われてしまうと、実際はそんな事はないのにも関わらず、フラン姉様まで同じ様に思われている気がしてならないと言う、たった1つの大きな理由があるためだ。

 

 まあ、その点に関しては2人の必死に避けている様子を見れば、杞憂で終わりそうなのはほぼ確実だとは思うし、そもそも発動し始めてからあまり時間が経たない内に、必死に回避行動を取ったアリスさんに1度雷を当てる事に成功している。

 

 自分で言うのは結構抵抗感があるけど、あれだけ真剣に回避に集中した実力者に当てられたスペルについて、少なくとも弱いとは思わないし、相手も弱いとは考えないはずだ。

 

「……うーん、避けきれませんでした。まさか、放たれた雷が空間にばらまかれた弾幕を全てではないにせよ、ある程度伝うとは考えなかったです」

「そうね。それに、雷が伝った後の弾幕変化も面倒な感じだったし……と言うか、随分と術式が凝ってるみたいだから、落ち着いたら是非とも対談してみたいわ」

 

 加えて40秒程が経過した頃、文さんやアリスさんにスペルの強制宣言をさせる程に追加で当てられたのだから、もうそれは確実に杞憂だと言える。

 

(ありがとう、フラン姉様)

 

 そして、ここまで効果的なスペルを生み出せたのには、私自身の努力もあるだろうけど、元はと言えばフラン姉様が自分のスペルの術式(禁忌『カゴメカゴメ』)を惜しげもなく参考にさせてくれたお陰である。

 故に、紅霧異変が終わって落ち着いたら、その事についての報告と何らかの形でお礼をしなければと決心した。

 

「本当はもっと耐えたかったですが、ルール上致し方ないですね……岐符『サルタクロス』」

「ええ、本当にその通りよ! 蒼符『博愛のオルレアン人形』」

 

 そんな思いを抱いていると、文さんとアリスさんが2人同時にスペル宣言をした光景が目に入ってきた。七翼の雷導でスペルの強制宣言の領域に追い込めた故なのは嬉しいけど、その分回避が難しくなるから少し面倒だと言わざるを得ない。

 

「嬉しいやらそうでないやら、複雑ですね……暖心(だんしん)追憶(ついおく)想花樹(そうかじゅ)』」

 

 とは言え、ここまで来たら何であれ全力で頑張るしかないだろう。そう考え、私も4つ目のスペルを宣言して対抗する決断を下した。




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