目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話は咲夜視点かつ、平均の約2倍の文字数の話となっています


瀟洒なメイドと博麗の巫女

「霊夢、アイツからただならぬ気配を感じるぞ」

「言われなくても分かってるわ。しかし、妖怪の館に人間が居るとは予想外ね」

 

 異変解決者がいつ目の前に現れても問題ない様に、警戒をしながら館の地上部分を巡回していた際、私から見て突き当たりの右からやって来た人間2人に、気をより強く引き締めていた。お嬢様方と対峙した時に勝るとも劣らない、強者のオーラを感じたためである。

 

 特に、霊夢と呼ばれた紅白の巫女の方に至っては放つオーラ(威圧感)だけでも、もはや人間のカテゴリーに当てはめるべきか迷う程に強いと理解でき、何をどうしたらそうなるのかと私の中に疑問が生まれてきていた。

 

 まあ、それを口に出した場合は主にお嬢様方から、貴女も似た様なものと盛大な突っ込みを受けそうな気がするし、自分からそう口に出すのはやめておこう。それより、今はともかく目の前の2人と対峙する事だけを考えるべき時だ。

 

「魔理沙。この人間は私が相手しておくから、先に進んでて」

「了解。ただ、気を付けろよ。いくら強い霊夢でも、気を抜いて良い相手じゃないだろうしな」

「当然、ここで気を抜く程馬鹿じゃないわよ。それより、あんたも気をつけなさい」

 

 すると、霊夢が魔理沙と呼ぶ人間の白黒魔法使いを先に進ませ、1人で私の相手をする構えを取り始めた。2人同時に相手する事になると思っていたけど、彼女たちの実力的には何らおかしくはない選択だと言える。

 

 ただ、2人のオーラから推測した実力や強い信頼関係から来るやり取りを見て、レミリアお嬢様やフランお嬢様と相対した場合に相当な驚異になると、安易に想像出来てしまった。

 ここで出会い、かつ魔理沙が先に進む流れになった以上、目の前の相手(霊夢)だけでも倒しておかなければならない。

 

「さてと、紅い霧を出す迷惑千万この上ない主犯をとっちめに行かなきゃいけないから、手早くあんたを倒して進ませてもらうわ」

「お断りよ。紅魔館のメイド長十六夜咲夜として、むしろ貴女の方が私に倒されてもらわなければ困るもの」

 

 と思いつつ、霊夢の発言に強気な態度を取って言葉を返してからは、お互いに使うスペルカードの枚数を5枚にする事を含め、簡単なやり取りを交わした。

 

 面倒そうな表情を見せながらも微塵も油断や驕りを感じず、こちらを見据える瞳から異変解決にかける意思の強さを先程よりもハッキリと伝えてくる事から、弾幕ごっこながら激しい戦闘となるだろうと理解した。

 

 だが、私はその程度では圧されない。紅魔館にメイドとして来る前の吸血鬼狩り時代、メイドとして住む事となってから起きた最大級の戦いの際にあった経験、それらに比べたらなんて事などないからだ。勿論、だからと言って気を抜いたりは決してしないけど。

 

「さあ、始めましょうか!」

 

 そして、私がクナイ弾や懐に仕舞ったナイフをばらまいたのが鍵となり、霊夢との弾幕ごっこが始められた。

 なお、今のそれなりの密度を誇る先制攻撃は、あまり苦もなく避けられるか弾幕で相殺されるかしたため、一切届く事なく終わる。

 

 当然、これだけでどうにかなる相手だとは考えていなかったから、多少の驚きはあれど支障を来す程の動揺などはしていない。

 加えて、技術や能力込みで似た様な回避・防御行動を取るレミリアお嬢様やリーシェお嬢様、純粋な反応速度で弾幕を捉えて動くフランお嬢様との手合わせの経験もあるから、尚更そうだと断言出来る。

 

(くっ……)

 

 それに加え、回避行動を取っていた霊夢が弾幕の間を縫い、通常弾幕や私の動きに合わせてくる追尾弾を反撃として放ってきたため、手持ちのナイフを追加で投げながら少し大振りに動き始めた。

 

 追尾弾の弾速はさほど速くなく、追尾性も理不尽な位に強い訳でもないため、咄嗟にした判断で回避には成功し続けられているものの、容易かと問われれば通常弾幕による攻撃も相まって、疑問視せざるを得ない。

 

「流石は今代の博麗の巫女、このままやっても埒が明かないわ……奇術『幻惑ミスディレクション』!」

 

 時折攻守交代しながらのやり取りがかなり長く続いたところで、このままでは埒が明かないと判断した私は、霊夢よりも先に1つ目のスペルを宣言した。

 

 未だに止まぬ弾幕の嵐を回避しつつ数回館の壁や空間に反射するクナイ弾をばらまき、その後に適切な場面でワープして対象狙いでナイフを多数投げ、追い込んでからの強制スペル宣言を狙う。

 

 しかし、戦闘開始時の先制攻撃よりはかなりマシにはなっているものの、それでさえ霊夢を強制スペル宣言させる領域に追い込むまでには至れなかった。

 

 狙って投げたナイフはもとより、反射するクナイ弾の軌道すらもあらかじめそこを通ると知っているかの如く回避、上手く必中軌道を描けたものすらも紙飾り付きの棒で軌道を逸らすか叩き落とされれば、そうもなるだろう。

 

 加えて密度は落ちたものの、私のスペルを上手くすり抜けた追尾弾や通常弾幕を織り交ぜた中~遠距離攻撃も未だ健在であるので、僅かたりとも気を抜く事は許されない。ただひたすら集中し、最適な立ち回りを意識し続けるのみだ。

 

「この館の主ならまだしも、その前の住人ですらこんなにも厄介とはね。今回の元凶退治、一筋縄ではいかなそうだわ」

「ええ。そうでないと、紅魔館のメイド長は勤まらないから」

 

 その様なやり取りを一定時間続けつつ、手心は一切加えずに放ち続けたものの、時間切れとなった時点で結構余力を残される結果となってしまった。

 

 とは言うけれど、霊夢自身に一定の体力や集中力を使わせはして、なおかつ私への警戒心を出会った時以上に引き上げてくれたので、ある程度の効果は認められたのは良かったと思える。

 

「まあ、だからと言ってやる事は変わらないけど。夢境『二重大結界』」

 

 で、1つ目のスペルが時間切れとなってから大した時間も経たない内に、霊夢が宣言し発動した1つ目のスペルの迎撃態勢を整えると、今まで似た経験すらないものだった事で、戸惑ってしまう。

 

 2重に展開された結界らしき防壁の深部に居る彼女から放たれ通過したはずの弾幕、それが何故か1つ目の結界の内側から軌道を狂わせ出現、深部へと戻ったと思えば今度は外側より私の方へと向かってくる振る舞いを見せたからだ。

 

 これが地下室やエントランスの様な広い空間であれば避けやすかったかも知れないが、生憎ここは廊下である。普通の屋敷などと比べれば広いものの、弾幕ごっこを行うには少し狭いため、惑わす要素も相まって余計に避けにくい。

 

「奇っ怪なスペルを使うのね。奇術『エターナルミーク』」

 

 それでも回避にはある程度余裕を持てたものの、惑わす軌道を描くこのスペルを長時間余裕をもって避けるのは案の定難しく、何回か掠ったところで惜しみなく2つ目のスペルを宣言した。

 

 周囲に規則性の皆無な高速弾をひたすらばらまくだけではあるものの、密度や弾幕が描く軌道も刻一刻と変化していくので、私が使えるスペルの中でも難度自体は結構高めな方である。

 

 ただ、霊夢のスペルの難度が並ではない上に彼女と私自身の動きも要素として加わるため、弾幕の相殺を試みても緊張感が高い状態で保たれる程度の密度や軌道で飛んで来る。無論、私の弾幕も彼女の方へ飛んでいってるため、条件はほぼ対等だと言えるだろうけど。

 

「これも簡単に攻略されるとは、何とも言えない気分ね」

「いや、少なくとも簡単ではなかったわよ。今までやった相手の中でも、結構上位と言えるし」

 

 でも、結局は霊夢のスペルが時間切れとなるまで余裕で乗り切られ、そうなった後私のスペルが時間切れとなるまでの間も、相変わらずの超反応でかわされるか手持ちの棒で受け流されてしまい、1発たりとも捉えられずに終わってしまった。

 

 にしても、見た目が単なる紙飾り付きの木製棒にしか思えなかったそれが、一瞬感じ取った妙な力を内包する魔道具の様な物だと理解した時は、妙に腑に落ちた。

 まあ、紙飾り付き木製棒が一切傷付かず、ナイフや弾幕を叩き落としたり受け流したり出来る時点で、魔道具の類いであるとは明らかなのだが。

 

「難しくなかったとも取れる気が……まあ良いわ。幻幽『ジャック・ザ・ルドビレ』」

 

 弾幕ごっこにほぼ関係ない事を思いつつ、言葉とは裏腹にさほど堪えていなさそうな霊夢に3つ目のスペルを宣言した。

 

 大玉弾をばらまいた後、能力を使って数秒時を止めている間にナイフを配置、完了したら再び動かす流れを繰り返す切り札に等しいこれは、私の能力を何度も目にしているお嬢様方ですら2回驚かせられた実績を誇っている。

 

「あんた、いつの間にそれ程のナイフを……ちっ!」

「私、種無しの手品が得意なもので」

 

 結果、先2つに宣言したもの(スペル)と比べて弾幕がより側を掠めたためか、霊夢が初めて表情を少し歪ませた。やはり、時を止める能力を取り入れたのは正解だったと実感する一幕である。

 

 でも、逆に言えばこうでもしないと彼女をここまで追い込めないと言う、実力の高さが浮き彫りにされた一幕でもある。もしかすると、レミリアお嬢様みたいな予知能力の類いを使えるのかも知れない。

 

「種無し手品? なら、この異変が解決した後に人里とかで披露したらどう? きっと盛り上がる……っ! 霊符『夢想封印 寂』」

 

 余計な事を考えながらも弾幕を放ち続け、もうすぐ強制スペル宣言まで行けるかと思い始めたところで、霊夢が自発的に宣言した。そこまでに至った道は想定とは違うものの、思惑通りの展開まで持っていけたのは良しと表しても問題ないはずだ。

 

「宣言せずに避け切るか受け流す、出来なくもないけど……幻世『ザ・ワールド』」

 

 とは言うものの、放たれてから徐々に速度が落ちていく多種多様な種類の弾幕は厄介極まりなく、3つ目のスペルが時間切れとなってから即座に4つ目のスペル宣言を行う判断を下した。

 

 この瞬間に宣言可能なスペルが残り1つしかなくなったけど、決して後悔はしていない。通常弾幕やナイフのみでの対処だと、回避が追い付かなくなっての被弾が濃厚だろうと直感したからだ。

 

 能力を使えばどうとでもなるけど、多用は負担が厳しい上にスペルカードでの使用以外では、ルール上限りなく黒に近いと3ヵ月前に様子を見に来た紫より言われ、使えないのがそう直感した理由である。

 

「くっ……面倒な能力を使うのね!」

「そうよ。と言うか、面倒と愚痴っておきながら対処出来てる貴女は相当だと思うけど」

 

 そんなこんなで中盤に差し掛かった頃、頑張っていたのが功を奏したのか方向を変えたナイフを避けている際に、別の方向から迫っていた対象狙いの炎弾が2発、しっかりと当たった光景を目にした。

 

 強制宣言をさせるところまでは行っていないが、凄まじい体運びを見せる相手に初めて当てられたのは、かなり進歩したと言える。無論、これに驕って気を抜くつもりなど一切ないけども。

 

「まさか、油断したり手を抜いた(遊んでいた)訳ではないのに……元凶に取っておきたかったけど、致し方ないわ。神技『八方龍殺陣』!」

「っ!」

 

 攻撃と、こちらに襲い来る弾幕の回避や相殺を並行し、更に追加で当てた上で何とかスペルが時間切れとなるまで耐え抜いた瞬間、霊夢が3つ目のスペルを宣言すると同時に、より強くなった威圧感に襲われてたじろいでしまった。

 

 まるで、ここに至るまでがお遊びだったと思ってしまう位に強大化したけれど、本人曰くそうではなかったらしい。

 本当なのかと一瞬思ってしまうも、良く考えたらレミリアお嬢様やフランお嬢様を相手取る必要が出てくる以上、ここで体力消費を考えない振る舞いはご法度である。

 つまり、今までもずっと()()()出さなかったものの、()()()出していた訳だ。

 

(高密度弾幕と配置の嫌らしさで動きが制限される、厄介ね!)

 

 体力消費が激しいであろう霊夢の全力は文字通り地獄そのもので、スペルの厄介さも相まって回避に力を多く注がざるを得ない状況へと追い込まれてしまう。

 

 今は何とか自身のスペルの助けもあるので保てているけど、これがなくなった時が鬼門となるのはまず間違いない。体力も結構厳しくなっているものの、集中力を途切れさせる訳にはいかないと、しっかり相手を見据えながら回避し続ける。

 

「ぐっ! 後がないけど、どのみちこの状況でスペル宣言以外に選択肢はないか……メイド秘技『殺人ドール』!」

 

 しかし、4つ目のスペルが時間切れとなってしまった後、鬼門と分かっていたのにも関わらずうっかり犯してしまったミスにより、数秒後回避しきれなかった弾幕に多数被弾したため、私は最後のスペルを宣言した。

 

 2種のナイフを時間差で多数ばらまいた後に時を止め、一部のナイフの軌道を変えてから時を動かし、数秒後に再び時を止めてから更に一部のナイフの軌道を変える、現在の体力的にもかなり厳しめの内容となっている。

 

(まさか、逆に決めにかかられている!?)

 

 本当なら勝負を決めにかかれる程の切り札でもあるはずなのだけど、想定よりも手応えがない。むしろ、離れている距離を少しずつ詰められ始めていた。

 

 勿論手をこまねいているだけでなく、体力を絞り出す勢いで動き続け、多数のナイフでしっかり捉え続けようと努力はしている。ただ、私の時止めに適応している節のある霊夢を捉え切る事が、どうしても出来なかった。

 

 もう既に1人を通してしまっている以上、彼女まで通してしまえば、レミリアお嬢様やフランお嬢様にとってとてつもない脅威となるのは明白である。故に、動きを止めようとは微塵も思わなかった。

 

「なっ――」

「ようやく捉えた! 終わりよ、霊符『夢想封印』!」

 

 ただ、私の動きを制限していた弾幕の密度が一瞬急激に落ちたと思った刹那、霊夢のスペル宣言と共に4つの光弾が至近距離に迫って来るのが見えた。どう見ても、防御や回避が不可能な距離だった。

 

(申し訳ありません。レミリアお嬢様、フランお嬢様……後はお任せいたします)

 

 もう使えるスペルカードがないので、光弾をその身に受けたこの瞬間に負けが確定したのだけど、全く戦果がなかった訳ではない。

 だから、そう言う意味では良かったと言えるものの、それはそれとして心の中でレミリアお嬢様とフランお嬢様への謝罪を行ってから、私の後を託した。

 

「さてと……十六夜咲夜だっけ? あんたのその名前、取り敢えず覚えとくわ」

 

 そして、去り際に一言残していった霊夢の姿が見えなくなるまで見送った後は、決闘場となった廊下に散らばった物凄い数のナイフの回収作業を、近くにあった部屋である程度休んでから行うと決めた。




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