目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話はフラン視点です


紅魔の次女と山の四天王

「遂に来たわね、異変解決者」

「そうだね、お姉様」

 

 紅霧異変の解決者がいつでも来て良い様に気を抜かず、お姉様と一緒に時計塔の頂上で待ち始めてから体感的に結構な時間が経った頃、殆んど同時にやって来た3人の妖怪たちと相対していた。

 

 凄い妖気を放つ鬼とか言う大妖怪、いつぞや謀略で紅魔館に攻めていた鴉天狗、完全初対面な人形を操る種族としての魔法使い、全員が全員とてつもない実力の持ち主だと分かる。

 

(どんな戦いがあったんだろう?)

 

 ただ、その内の鴉天狗と魔法使いに関しては、ここに来る前に誰かと壮絶な弾幕ごっこをしてきたらしく、結構疲れているのが目に見えている。美鈴に咲夜、パチュリーにリーシェの内誰かは全然分からないけど、かなり助かったと言えた。

 

 勿論、だからと言って油断したり気を緩めたりすれば裏をかかれ、かなり痛い目に合ってしまう可能性も大いにある。仮に、相手が私やお姉様よりも遥かに弱い妖精であろうとも、それは同様だ。

 

「フラン。私はあの鴉天狗と人形師の2人と戦うから、貴女はあの鬼と戦ってくれる?」

「えっ……良いけど、大丈夫なの?」

「大丈夫よ。心配いらないわ」

 

 やって来た3人を見ながらそんな事を思っていると、お姉様から鬼と戦って欲しいとお願いされたため、頷いて了承してから彼女の方へと近づく。

 

(お姉様、頑張って。私も頑張るから)

 

 正直、いくら残りの2人が疲れているからとは言え、1対2の数的不利な状況でお姉様が戦う事に一抹の不安を覚えずにはいられない。

 ただ、最善の選択だと判断したのはお姉様自身だから、その意思は尊重するべきだろう。と言う訳で、その辺については考えるのを止めた上で、私は私に出来る事をしようと決めた。

 

「私の相手はあんたかい。やり合った事はないけど、当主と同じくとんでもない力を持った白翼の吸血鬼の血縁……こりゃ、異変解決云々を抜きにしても楽しみだ」

「そっか。でも、スペルカードルールがなかったあの時の()()と、美しさ重視の弾幕ごっこはかなり違うけど良いの?」

「勿論さ。どちらにせよ、勝負事は好きだからね」

 

 その後は相対する相手である鬼とお互いに決意表明をしたり、使うスペルカードの枚数を4枚にするなどの、弾幕ごっこについての話し合いを行った。まあ、そう呼べる程に長く会話を交わした訳ではないが。

 

 にしても、紅魔館に攻め入った時に対峙したらしいリーシェの印象が、余程強かったらしい。血縁関係にあるとは言え本人ではない私に対して、楽しい弾幕ごっこを期待するかの様な言葉をかけ、視線を向けてきている。

 

(うーん……まあ良いや)

 

 でも、あの時のリーシェは紫が封印を自分から持ちかけてくる程に危険な、根源の力による暴走状態だっただけである。自分の意思で扱えていないどころか命が危なかった以上、本人の実力とは言い難い。

 

 だけど、状況からして今露にすると面倒な展開になりそうな事実であるので、その他細かい事柄も含めて説明するなら紅霧異変が落ち着いた後、お姉様に許可を得た上でリーシェの居ない場所でとなるだろう。

 万が一、話しているのを聞かれて酷く思い悩ませたりとかすれば、何であれ精神的に傷つけた事になる訳だから、当然の流れだ。

 

「さて……山の四天王、伊吹萃香! あんたを倒して、異変解決に近づかせてもらおう! 萃符『戸隠山投げ』」

 

 弾幕ごっこ前のやり取りが済んだ後は、目の前の鬼……伊吹萃香が口上を述べてから初手でスペルを宣言したのをきっかけとして、戦闘が始まった。

 

(小手調べかな……? いや、違うか)

 

 最初に発動したのは、どこからともなく石の塊が宙に浮かんで出現、掲げられた右の掌へ結構な速度と密度を誇って向かっていくスペルの様だ。特性上、萃香の方を向いてた場合は背後から飛んでくる事になるため、後ろに気を使う必要性が高くて面倒だと言える。

 

 加えて、集まる石の塊が徐々に大きくなっていくのを見るに、十中八九都合の良いタイミングで投げつけてくるだろう。

 まともに受ければ、私が吸血鬼かつこれが弾幕ごっこだとしても結構なダメージを受ける可能性があるから、避けるために集中力を1段階高めた。

 

「あんたは白翼の血縁で、吸血()。だったら、特段デカい奴を食らいな!」

「ふふっ、お断りだよ! 負けたくないもん!」

 

 案の定、投擲態勢を取った萃香は巨大な岩の塊と化したそれを私に向け、かなりの速度を持たせて投げてきたため、しっかりと見据えながら上に回避した。軌道がほぼ直線的なので、視界に入っていさえすればそれ程難しくはない。

 

 ただ、このタイミングで掲げられた左の掌に、同様に集まり始めた石の塊にも気をつけなければならなくなったため、決して油断ならないものと私にまざまざと見せつけてきている。

 

(流石はここまでたどり着いた異変解決者……だけど!)

 

 とは言え、全体的に厄介なスペルを持つお姉様やリーシェ含め、館の主力たちとの弾幕ごっこを私は数え切れない位に行い、経験を積んでいる。だから、さほど慌てずに避け続けられていた。

 

「よし! じゃあ、今度は私の番だね。禁忌『クランベリートラップ』」

 

 そして、萃香の1つ目のスペルを時間切れまで完璧な立ち振舞いで避けきった後、お返しとして私もスペルを宣言した。

 

 私ごと囲う様にして大きく周回する魔法陣を2つ生成し、反時計回りの方は軌道が固定されている紫の弾幕を、もう片方は時計周りで周回させながら対象を狙う青い弾幕を放たせると言った内容である。

 

 割と序盤に使う想定でいるけれど、お姉様やリーシェの様な私と同格かそれ以上の存在とやり合う前提で作り上げたものだから、相手が誰であれそれなりに集中力を使わせる事は可能なはずだ。

 

「うん、こいつは結構……よっと!」

 

 ただ、館の主力陣が守るエリアを突破してきた萃香程の実力者ならこのスペルに対処出来ない道理はなく、炎弾や通常弾幕による迎撃も併せて、それなりに余裕をもって回避行動を取られていた。

 

 でも、この弾幕ごっこは始まったばかりで私自身の体力や集中力もほぼ完全に残っている状態だから、萃香の動向を注視しつつ適切に動いていくまでだ。

 

(普通に攻略されちゃったけど、相手が相手だしね……うん。切り替えて行こう)

 

 そんな風に、頭の中で思考を巡らせながら時間切れまで動き続けた結果、1度も当てられずに相手の攻略成功との形で終わってしまった。

 

 ただし、紅霧異変が始まるまでに私が作ったスペルカードは合計10枚、今の戦いではその中から残り3枚を選んで使用出来る。それ故に、取れる戦術の幅もまだ大きかったから、まだ焦る必要はない。

 

「分かってはいたが、序盤から手応えがあって良いねぇ。鬼気『濛々迷霧』!」

 

 すると、この状況が楽しくなってきたらしい萃香が笑みを見せ、スペル宣言を行ったと同時にこの場から消え、薄い白霧が出現した。気配をほんの少しだけなものの感じているため、これが本人が能力か何かで変化した姿の可能性がかなり高い。

 

 で、すぐに青い低速弾をかなりの数配置しながら薄い白霧が迫り始めてきたので、当たらない様に気を遣いながら空を飛び回り、どうしても難しければ回避の手助けを、通常弾幕や火炎弾を都度放って行う。

 

(この弾幕、空間内にしぶとく残るから動きにくいし……ってうわっ!?)

 

 しかし、低速弾が一定数残って動きがまだかなり制限されている時、突如として萃香が現れて大玉弾を全方位にばらまき、すぐに薄い白霧へと戻っていく光景が目に入る。

 当然、即座に態勢を取った上で必中軌道を辿る弾幕を自分の弾幕で相殺、残りは空中を上手く飛んで回避した。

 

 なお、霧状態の際には攻撃が一切通用せず、大玉弾を出す時には攻撃が普段通り通用すると判明したけどその時間は大して長くなく、半ば耐久スペルと化している。

 

 初めて受けた時、理不尽にすら思えたリーシェの耐久スペルを何度も攻略した経験がなければ、今程上手く対処出来なかっただろう。もしかしたら、強制宣言する羽目になっていたかも知れない。

 

「こいつを涼しげに避け切るとは、やるじゃないか。流石は白翼の血縁だ」

「ありがとう。けど、回避能力だったら私よりも白翼の吸血鬼……リーシェの方が断然凄いと思うよ。常軌を逸してるって言える位にね」

「へぇ、あいつはそんな名前だったのかい。まあ、あの時は確かに1発当てるだけでも相当苦労したから、あんたでも苦労するのは当然か」

 

 そんなこんなで空を駆け続け、最後に回避先にあった低速弾を火炎弾で打ち消し、大玉弾が被弾する寸前に何とか移動したところで、萃香のスペルが時間切れとなった。

 結果としては、大体の場面では危なげなく回避行動を取れていたものの、驚いた影響で少し回避行動が遅れた場面も存在している。

 

 故に、紅霧異変が終わった後も館の皆との練習を欠かさないのは勿論、場合によっては幻想郷の誰かとの弾幕ごっこも取り入れる必要性があるだろう。言うまでもなく、行うなら無理のない範囲でと誓いを立てた上であるけど。

 

「これが私の十八番……禁忌『レーヴァテイン』!」

 

 それからは、数秒の間に色々と考え事をしながら炎でレーヴァテインを形作って再現し、スペル宣言を行ってから萃香に斬りかかった。切れ味や純粋な破壊力が弾幕ごっこ仕様になっている事以外は、本物と相違ない。

 

 更に、剣が通ったところに火属性の力が込められた緋色の弾幕を一定間隔で配置、少し時間を置いて動かす要素も存在しているので、単純に回避するだけでは被弾する確率が上がる様になっている。

 

「火の剣が通ったところに弾幕が配置、中々に厄介な……鬼火『超高密度燐禍術』」

 

 だからか、ある程度の時間私が振るったレーヴァテインを避け続けられはしたけど、中盤と終盤の境目を過ぎた辺りで萃香にスペル宣言を、強制ではなく自分の意思でさせる成果を上げる事が出来た。

 

 その分と言ってはあれだけど、他の私のスペルと比べて相手との距離が近いため、反撃として放たれた妙な軌道の火炎弾の影響を受けやすい状態である。

 

 だとしても、あくまで遊びの範疇を出ない()()()の弾幕なら、当たってもダメージはほぼないと言う意味では安心だ。勿論、当たり過ぎると敗北してしまうので、回避は絶対不可欠なのだけど。

 

「残り1枚とは参ったね。でも、まだ諦めちゃいないさ!」

「ふふっ……私だって、絶対に油断しないからね! 貴女は強いもの!」

 

 再現したレーヴァテインが時間切れにより消失、萃香のスペルがその後に時間切れとなるまで反撃として放たれた弾幕を避け続け、今現在1枚多く私が切り札を残した状態となった。

 

 相対している相手から鑑みれば、展開的には決して悪くない感じであるものの、欲を言えばこの後確実に相手する事になる博麗の巫女との弾幕ごっこに備えて、もう少し体力を残しておきたかったと思わざるを得ない。

 

「それじゃあ、3つ目行くよ! 禁忌『フォーオブアカインド』!」

 

 それら含め、色々な要素から早期に勝負を仕掛ける必要性が高いと判断、私が使える耐久スペル(秘弾『そして誰もいなくなるか?』)以外では最も強力な切り札、本体()同然の分身3人と共に弾幕をばらまき続けるこのスペルの使用を決意し、宣言を行った。

 

 内容的に耐久スペルを除いた他のスペルよりも負担が大きいが、選択した事に後悔は一切ない。昔に編み出してから、何度も繰り返し使って得た技術や経験が弾幕ごっこでもほぼ全て活かせるだけでも、十分大きな理由だろう。

 

「力量は本体と同等、なおかつ完全自律の分身術をこうも巧みに……!? こいつは避けきれないか……『百万鬼夜行』!」

「おっ、凄い弾幕密度……遂に切り札を切ってきたね!」

 

 すると、中盤付近でこちらの弾幕によって必中かつ迎撃不可能な領域に捉えられたからか、萃香が最後のスペル宣言を行ってきた。

 

 彼女の周囲を回る霧弾より楕円形の弾幕を放ち、ほぼ同時に大玉弾を波紋状に放つ性質上密度は凄まじい。分身による迎撃をすり抜けて私の方に向かってくる弾幕が結構出てくる程であり、まさに切り札と呼べる。

 

(あっ、分身が……)

 

 そうしてフォーオブアカインドの時間切れが近くなって来た時、迎撃を抜けてきた弾幕に分身の1人が巻き込まれて消滅、手数が4分の1減少してしまった。私の攻撃への対応に高いレベルで慣れ始めているらしく、萃香の本気度が伺い知れる一幕である。

 

 とは言え、分身が2人居れば攻撃面ではまだ問題なく遂行可能なため、さっきよりも警戒心を高めて集中力を維持する方面で行けば、影響は小さく済む事だろう。無論、その辺は絶対だと言い切れはしないけども。

 

「うん、見事だったとしか言い様がないね。えっと……」

「私の名前なら、フランドール。呼び方はまあ、変なのじゃなければ好きにして大丈夫」

「フランドール……分かった。だったら、フランって呼んでも構わないかい?」

「良いよ! 大体の人からそう呼ばれて、慣れてるから」

 

 そんなこんなで何とか残りの分身たちと共に時間切れまで乗り切り、時間差で萃香のスペルが時間切れとなるまで一切当たらずに回避し続ける事に成功、この瞬間に私の勝利が確定した。

 

 なお、お姉様の方はとっくに勝利を飾れていた様で、私と萃香の勝負が終わって簡単な会話のやり取りを済ませてからすぐ、勝ったわよと言いながら笑顔で私の方に近づいてきた。

 

 戦う前から既に例の2人が疲れてはいたとは言っても、私よりも1人相手が多かったにも関わらず、見た感じ随分と余裕を保てているのは凄い。流石はお姉様だと言える。

 

「さてと、本当なら一息つきたいところではあるけど……どうやら無理みたいね。体力はまだ大丈夫かしら? フラン」

「うん! ちょっと疲れはしたけど、まだまだ全然戦えるよ!」

 

 そんな感じの軽いやり取りを続けていると、時計塔の頂上に強そうな人間が2人やって来ていた事に気づいたため、戦闘態勢を維持したままお姉様と一緒に彼女たちの下へと近づいていった。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

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