「出来るだけ早く向かうって言っておいて、結構待たせちゃってごめん」
姉様たちと別れた後、一緒に宴会を楽しむ約束をしたチルノたちの下へと向かった私は、開口一番謝罪の言葉を口にした。催促される程に長い間、待たせてしまったからだ。
付き合いの長い親しい友人の輪の中にせっかく誘ってくれて、それを受け入れ早く向かう約束をしたにも関わらずこの様なので、何をしているんだ馬鹿と、自分を責めたくなった。
無論、実に酷く下らない理由で待たせてしまった訳ではないものの、私の中の事情などチルノたちには知った事ではないはずだし、そうでなくとも謝罪は当然の行いだと言える。まあ、優しい2人なら普通に笑顔で許してくれるとは思うけど。
「分かった。だから、もう気にしなくても良いぞ!」
「うん。それよりも、リーシェちゃんにお友達を紹介するね」
案の定、予想していた通りの振る舞いで許してもらった後は、大妖精が自身の隣に居た3人の妖怪さんを紹介し始めたため、一字一句聞き逃さない様に態勢を整えた。
(……)
紹介前の僅かな時間、私よりも先に行っていた5人の妖精さんと話していた様子を見た時も思ったけど、彼女たち3人は『妖精』寄りの気質を持つ傾向があるらしい。大妖精が話している際に私を見る時の目、チルノにしていた質問の内容がそう結論を出すに至った根拠である。
流石にチルノや大妖精と比べれば劣るものの、これらの要素があれば彼女たち3人とは比較的良好な関係を築けそうと言って良いだろう。勿論、私がそれ相応の立ち振舞いを心がけた上での話ではあるが。
「ルーミアにミスティアにリグル……うん、よろしく。えっと、私はリーシェ・スカーレット。こんな見た目の吸血鬼だけど、仲良くしてくれると嬉しい」
私の名前や簡単な性格などは既に耳にしていたとの事らしいが、紹介が終わった後は出来る限り普段通りを心がけ、自己紹介を行った。
いつもの初対面の人妖さんに対する挨拶でも問題ないとは思うが、これでは仲良くしたい意思を伝えるのは難しいし、彼女たちの気質からしてそれは好ましくない。
「勿論、仲良くしようなー」
「当然だよ、よろしくね!」
「言われなくても、仲良くしよう!」
結果、金髪に不思議な髪飾りをつけた『ルーミア』、羽根の形状をした飾り付き帽子を身につけている『ミスティア・ローレライ』、頭に触角が2つ生えた『リグル・ナイトバグ』、彼女たち3人は私の言葉に肯定の意を示してくれた。
そして更に、チルノや大妖精も安心した様子を見せ、館の妖精さんたちも喜んではしゃぎ始めたため、私の存在自体が皆の和をあまり乱さない事も確認出来た。挨拶自体も好感触だった様だから、何とも嬉しい限りである。
「ねえ、チルノから聞いてたんだけどさ。リーシェってこう言う騒がしい場所が嫌いな性格らしいじゃん」
「あっ、私も大ちゃんから同じ事聞いた! リィちゃん、大丈夫なの?」
何事もなく初顔合わせが終わり、座って料理やお酒を含んだ飲み物を味わい、会話を楽しみ始めた訳だけど、ある時唐突にリグルから宴会に来た事を心配された。ある程度の時を過ごして親しくなった友人や自身の家族を気遣う、そんな感じの目だった。
まだ1時間経っていないにも関わらず、ここまでの気遣いを受けるとは考えてなかったから驚いた。こんな性格であるなら、本当にそうなる日が来るのも長くはないだろう。
「……優しいんだね。確かにそうだけど、館の家族とか友達が沢山居れば、他人だらけの騒がしい場所でも割りと過ごせるから問題ないかな」
「ふーん。じゃあ、普段は自分の部屋とかの静かな場所で過ごしてる感じ?」
「うん。部屋で魔法の研究開発をしたり、本を読んだり絵を描いたりしてる事が殆んど。後は、館の家族たちと一緒に過ごす位」
館の家族以外では別格とも呼べる居心地の良さを感じながら問いかけに答えた後は、更なる問いかけに応じて答えた普段の館での過ごし方などの私自身の事に加え、館の家族について可能な限り語った。
本当ならもっと色々語りたいけれど、私1人が喋ってばかりいるのは良くないし、あまり家族以外に話したくない内容に踏み込む事になってしまうから、ここまでにしておこう。
自分だけ被害を被るならまだしも、姉様2人や妖精さんたちに恥ずかしい思いをさせた挙げ句、
「わはは、そうなのかー。よっぽど愛情を注がれてるんだなー」
「うん! だから、わたしはリーシェさまの事が大好きなんだけど……恥ずかしくて面と向かって言えてないどころか、えっと……いつも素っ気ない態度ばかり取っちゃうの。その内、愛想尽かされたりとかしないかな……?」
なんて事を考えていると、顔がにやける位に嬉しい内容の話を、クレイナ似の妖精さんとルーミアが楽しそうにしているのが唐突に耳に入ってきたため、考えるよりも先に目が向いた。ミスティアやリグルと過ごしている内にいつの間にか、意気投合していたらしい。
更に、少し時間をおいてチルノや大妖精もその2人の空間に加わったらしく、私や紅魔館についての話で盛り上がり始めた。
普段、妖精さんとしてはかなり大人しく口数も少な目な気質の彼女が妖精さんらしく、元気に喋ってはしゃぐ様子は心の癒しと言える……いや、そうとしか言えない。
(ふふっ、可愛いなぁ……)
愛想を尽かされないかとても心配に思っているらしいけど、素っ気ない態度を取られ続けた程度で尽きる程、私の家族に対する想いは弱くない……と言うか、最悪かつ非常に特殊なケース以外では減少すらしない。
そこへ付け加えると、私は彼女が取る態度を素っ気ない判定していない上、仕草の節々を見れば
「リィちゃん、顔が凄く緩んでるね」
「うん。妖精さんが、凄く楽しそうにしてるのを見てるから」
「あー、うん。なるほど」
本当ならすぐにでも伝えてあげたいのだけど、
まあ、大妖精と一瞬目が合った上、リグルやミスティアと話す傍ら様子を見ている以上、それを突き通せる道理はないが。
「よし! じゃあ、お酒の力も沢山借りてる今、本心をリーシェに直接言ってみよう!」
「えっ、流石に直接は恥ずかし……」
「大丈夫。ほら、早く言ってきた方が良いよ。リーシェちゃんも待ってるから!」
「ふぇ!? あわわわ……」
すると、案の定無理だったらしく、こっちを見て微笑んだ大妖精がチルノと共に妖精さんを焚き付け、背中を押しながら半ば無理やり私の目の前までやって来た。
状況からして当然と言えば当然なのだろうけど、彼女は顔を真っ赤にしながら視線を逸らしたり、その場をくるくる回りながらチルノや大妖精、この集まりに居る他の妖精さんに助けを求めた。
が、チルノと大妖精はニコニコするだけで一切喋ろうとすらしない。他の妖精さんも同調しているのを見るに、このままでは状況が動く事はないだろう。
「ふぅぅ。えっとね、その……わたし、普段はあんなだけど、リーシェさまの事が大好きなの。他の妖精たちと同じ位……いや、それ以上に大好きなんだよ!」
幾ばくかの時間が経った後、周りの態度からそれを感じ取ったらしい。強い決意を固めた妖精さんが普段以上に可愛げのある笑みを浮かべ、本心を打ち明け始めた。内容はついさっき見聞きした通りのもので、いかに私が大好きなのかを述べたものである。
直接聞かずとも嬉しい話の数々だったけれど、やはり面と向かって直接言われるのは大違いで、心が幸せで満たされていくのを強く実感した。普段とのギャップが凄い、クレイナ似の妖精さんだから尚更だ。
「……まだあるの。この際すっきりしたいから、全部聞いて!」
で、あらかた話した後に黙ったのを見て本心の打ち明けが終わったと思いきや、今度は目に涙を浮かべながら私たちが予想すらしていなかった話が始まった。
本心に関連していつからか抱き始めた、私と
「凄いなぁ。あの子にとって、リーシェがどれだけ大きい存在かが分かるよ」
「それだけ、リィちゃんが今まで家族を想って接してきたって事も分かるしね。毎日が楽しそう」
にしても、そこまで強く妖精さんから愛される私は、この世で1番幸せ者ではないだろうか。かなり前から行っていた、主となる自作魔法の改良作業が終わった時は嬉しかったけど、今はその時を遥かに上回る嬉しさを実感している。
ただ、彼女が必死に隠していたからとは言え、時々辛くなる程の強い悩みを微塵も読み取れなかった
宴会に私が行かなければ、妖精さんが体調に支障をきたすまで気づけない可能性が高かったのだから当然だ。今後はもう少し、しっかり時間を割いてでも気を配る事としよう。
「リーシェさま。こんなわたしでも、ずっと家族だと思っていてくれますか?」
「そんなの……当たり前でしょ!」
故に、私は話の最後に投げかけられた一言に対して言葉を返した後、姉様たちにしかやった事のない唇への軽いキスと優し目の抱擁を追加の返答として行った。瞬間、無関係の他人から何らかの視線を向けられている様な気はするが、この際それはどうでも良い。
とは言え、妖精さんが何かされて傷ついたらその限りではなく、何かしてきた他人にその度合いに応じた対処を行った上で、妖精さんへ誠心誠意謝罪を行うつもりではいるが。
「ぐすっ……うぅぁぁぁ……!!」
結果、今まで耐えに耐えてきた反動が相当大きかったからか、クレイナ似の妖精さんは滝の様に涙を流し始め、抱擁し返してきた。姉様たちの様に力は強くないけど、伝わってくる意思の力は同じ位に強く、非常に心地良いものである。
正直、唇への軽いキスはこの場でやるべきではなかったかもと終わってから考えていたものの、当の本人が羽の動きで全力で喜びを表現していたから、あまり気にしない様にしておこう。
「ありがとう、みんな。わたしはもう大丈夫だから、さっきまでみたいにはしゃいで遊ぼ?」
色々考えながらお互いに抱き合う事体感的に数分、感情の波が収まって究極とも呼べる笑みを浮かべた妖精さんが皆に向けて一言述べたため、さっきまでの賑やかな雰囲気の宴会が舞い戻ってくる事となった。
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幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?
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1人
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2人
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3人
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追加しない方が望ましい