リーシェがチルノに誘われこの場から離れてしばらく経った後、私たちは私たちで結構盛り上がって宴会を楽しむ事が出来ていた。
今まで口にした事のない美味しい料理や飲み物、フランや妖精メイドと行うしょうもないふざけ合いの数々、霊夢や魔理沙を筆頭とした
(……ふふっ)
まさか、咲夜以外の人間と居て楽しいと思える日が来るとは思わなかったし、フランも魔理沙とこの短時間で仲良くおしゃべりするに至るとは考えすらしなかった。
まあ、人外染みた強さを秘め良くも悪くも喜怒哀楽がハッキリしている性格の霊夢、霊夢には劣れど人間にしてはかなり強者な上、快活な性格の魔理沙の2人ならあり得る展開か。
「なあ、フラン。リーシェと良好な友人関係を築くにはどうしたら良いんだ?
「うーん……例外はあるけど、基本は接する時にあまりうるさくしつこくしないで、お姉様が説明した性格を理解してあげて、私を含めた館の住人たちに悪意を向けなければ、自ずと仲良くなれるよ!」
「ありがとう。要は、焦らずのんびり行けって事だな」
それに、吸血鬼異変の際に不幸にも対峙してしまった2人も含め、他の皆がリーシェに対して極端な負の感情を抱いていないのが、これから幻想郷で暮らす身としては非常にありがたい。当の本人が全く気にしないと分かっていても、それを見ている私たちの方が参りそうだからだ。
特に、フランはリーシェを溺愛してる上、クレイナ似の妖精がそれに比肩するレベルの好意を抱いていると、先程の微笑ましいやり取りで判明している。
そんな2人に、リーシェが負の感情を向けられるところなど見せたものなら、
「レミリア。毎日が随分と楽しそうね」
「ええ。もし気が向いたら、ふらっと遊びに来てくれても良いわよ。美鈴と門番妖精メイドには、話を通しておくから」
「貴女が良いと言うのなら、是非ともそうさせてもらうわ。あの子とも、1度は話しておきたいし」
すると、各々楽しそうにするフランやリーシェ、妖精メイドたちに視線を向けていた幽香が何となくうちに遊びにきたそうな雰囲気を出していると気づいたので、いつでもどうぞと伝えた。
関係は短いが友人であり、吸血鬼異変の際に共闘した仲間でもある上、運命は不吉な感じを与えてこないので当然の話だと言える。
後は、ある程度幻想郷の実力者との関係を深め、何かあった時に私たち紅魔館の住人が出来る限り困らないための、心強い味方を作っておきたい意図もある。
まあ、現時点でも紫一行が確約してくれているし、主力陣の存在や魔法のエキスパートによる多重防衛網を敷いているにしても、万が一の際の味方は多いに越した事はない。幻想郷移住前にも、味方のお陰で助かった場面が多々あったのだから。
「それにしても、宴会に出てくる料理もお酒もかなり美味しいわね。相当腕の立つ料理人……ひゃうっ!?」
と、数々の出された和食に『ビール』や『日本酒』を味わいながらフランに会話を振ろうとした刹那、首の後ろから背中にかけて冷たい氷が伝う感触がしたせいで変な声が出てしまった。
幸いにも手には何も持っていなかったため、盛大にお酒や料理をこぼしたりする惨事は起こらずに済む。誰がやったかは知らないが、十中八九妖精メイドのイタズラによるものだろう。
(……って、え!?)
しかし、予想に反してこのイタズラを敢行したのは、ビールか日本酒を流れで飲む事となったであろう、随分と酔っぱらって気分が高揚しているリーシェであると後ろを向いて判明した。
で、その更に後ろでチルノや大妖精、クレイナ似の妖精がハイタッチをしていたのを鑑みるに、けしかけた黒幕はあの3人と見て間違いはない。
「ふふっ。レミリア姉様の驚いた時の声、可愛い!」
「あの時とは大違いね。今のレミリア、リーシェと一緒の見た目相応のお子様みたいだったわよ」
「お子様って……まあ、私の年齢からして吸血鬼的には確かにそうだし、否定出来ないわ」
「えへへ、私もレミリア姉様と一緒!」
紅魔館では、普段はもとより突発的に開くパーティーの時ですら、
変な声を出したせいで私への注目も集まってかなり恥ずかしいけど、お酒の力で秘めたる感情が表に出切ってるリーシェの可愛らしい仕草や笑顔が、素晴らしい対価となっているので良しとしよう。
「スッゴい酔ってる……あんなリーシェの姿、初めて見たよ!」
「フランでも初めてなのか。なら、最高のシチュエーションだな」
「まあね! 驚くお姉様も可愛いけど、リーシェのそれには敵わないかな!」
「ははっ。確かにそうだろうけど……何だか、アイツらのイメージが完全に崩れてくなぁ」
それに、私とリーシェのやり取りがフランと魔理沙の仲を深める助けにもなっているらしく、話のネタにして楽しそうにする様子を目に出来ている。
後、これは意識していなかったものの、周りの天狗などの妖怪集団から向けられる警戒心も和らいでいると気づいた。それ自体はありがたいが、そうまでして宴会に来る理由が不思議でしかない。
でも、見る限り文と同族みたいだし、何らかの意図があって上司命令が下され連れてこられたと見るのが自然か。
「あの、折り入ってご相談があるのですが……よろしいですか?」
他人の目も憚らず翼まで使い、私を包み込む形で抱きつき甘えてくるリーシェへの対応をしながら考えていると、何か頼み事が出来たらしい文から声をかけられた。宴会の雰囲気から浮く真剣な態度、さぞかし重要度が高いのだろう。
「構わないわ。望む返答をあげられるかどうかは、内容を聞いてからだけど」
「ありがとうございます。えっと……」
断る気分でもなく理由も存在しないので、ひとまず話を聞く事に同意したところ、私たち姉妹についての記事を文が出している『文々。新聞』の一面に掲載する許可を求めてきた。河童が作ったらしい、高性能魔導カメラで撮った写真付きとの事。
可能なら、私たち以外の館の住人にも後日取材を行い、同新聞に写真付きで掲載して幻想郷の各地に配り歩きたいみたいだ。当然強制ではなく、許可をもらえた暁には相応のお礼をもらえる様である。
(うーん……取り敢えず、問題はなさそうね)
なお、私たち姉妹について新聞に掲載したい理由は、既存の購読者を満足させつつあわよくば新規の購読者を増やし、暇潰しと生活の足しに出来そうだと判断したからとの事。
利用価値があると宣言されたも同然な訳だけど、運命も悪くはならなそうだし、お礼をもらえるともなればこちらとしては得の方が断然大きい。何なら、いざと言う時の後ろ楯になる可能性だってある。
「ふーん。まあ、損はなさそうだし良いと思うよ!」
「変な記事を書くのではないのなら、どうぞ好きにして下さい」
更に、このやり取りを聞いていたフランが興味なさげにしながらも嫌がらず、若干眠たそうにしつつ文の方を向いて語りかけるリーシェも、自身の新聞掲載を嫌がっていない。
いつの間にか写真を撮られていたのは正直驚いたが、とんでもない様子が撮られた訳ではない上、妹2人が実質了承しているのであれば、既に問いかけに対する返答は決まっている。
「そう言う訳だから、私たち姉妹については特に問題ないわ。館の皆については帰ったら話しておくし、数日後にまた来て」
「いやはや、本当にありがとうございます。出来上がり次第、本記事は無料で真っ先にお届けしましょう! いくつ要ります?」
「一応3つでお願い」
「了解しました!」
と言う事で了承する旨の返答をしたところ、明らかに機嫌が良くなりやる気に満ち溢れる様子を見せ始めた。余程私たちを記事にしたくて仕方なかった様だ。
ちなみに、この話の後に『文々。新聞』の日常について尋ねたら、普段は幻想郷内で起きた興味を惹く出来事について書いたり、人里などで行われる大きな行事の告知、依頼者から頼まれたものを宣伝する広告などを出したりしているらしい。
他にも細かなお役立ち情報とかを仕入れ次第載せるみたいだし、定期購読の契約を結ぶのも良いかも知れない。勿論、幻想郷で通じる金銭などを得て、かつ無料でもらえる新聞を見てから最終的な判断をするけど。
「あの……レミリアさん。リーシェちゃんだけ、お家に帰してあげてくれませんか?」
そんな風に考えていた時、眠りにつく寸前のリーシェをおんぶした大妖精がリーシェを家に帰してあげてと、ふらつきながら声をかけてきた。自分で歩かずこちらを見ても全く話さない様子から、宴会による疲れと酔いが限界を突破しかけている様だ。
経った時間はさほど長くはなく、私やフランにとってはまだ体力や気力が余裕でも、相性が悪い普段とは真逆の環境に身を置いていたと考えれば、例え短時間だろうと限界近くなるのも至極当然の話である。
ともなれば、これ以上この場に居させるべきではなく、落ち着ける
「確かにそうね。フラン、一旦リーシェを紅魔館に送り届けに戻るわ」
「うん、分かった!」
「大妖精、ありがとう。色々ある子だけど、これからも仲良くしてあげて」
「勿論です! 優しいし、一緒に居て楽しいので!」
と言う訳で、側に居るフランや連れてきてくれた大妖精に一声かけた後、私はリーシェを抱き抱え紅魔館へと一旦戻っていく。かなり酔っているため、出来るだけ揺らしたりしない飛び方を心がける。
「お帰り……ではなさそうですね。リーシェお嬢様ですか?」
「ええ。咲夜、一息ついている時に悪いけど、リーシェの事を頼めるかしら?」
「分かりました。お任せ下さい」
そうして、私が抱き抱えてから即眠りについたリーシェを気遣いながら紅魔館に到着した後は、美鈴と談笑しながら一息ついている咲夜に後を託し、すぐさま宴会会場へと引き返した。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?
-
1人
-
2人
-
3人
-
追加しない方が望ましい