目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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二日酔いの末妹

「んぅぅ……はぁ」

 

 姉様2人や23人のメイド妖精さん、チルノや大妖精を含めた友達5人と何だかんだ楽しんだ宴会から大幅に過ぎた17時、私は自室のベッドで頭痛と共に目を覚ましていた。

 その場の流れで、普段殆んど飲まないお酒を飲んで騒いだりした影響で眠気と酔いが限界突破、レミリア姉様に抱き抱えられてからの記憶が今の私には一切存在せず、残っている間の記憶も、極一部だがハッキリしていない。

 

(……)

 

 若干理性が効きにくくなってはいたけど、館の家族までも悪印象を持たれる程の迷惑はかけず、私自身が1日近く寝込んだ上でそこそこな頭痛、身体の火照りとそれに伴う発汗が発生する程度で済んだのは幸いだろう。

 

 ただ、全てが耐えられる程度とは言えど、4つも揃えば流石に不快なものではあるから、何もない普段は酒類は口にせず、仮に飲んだとしても味見程度にしておくと改めて決めた。

 

 無論、姉様2人の誕生日会レベルの特別なパーティーの際は例外だし、突発的に開催される紅魔館内パーティーの際も、開催頻度によっては例外を設けるつもりでいる。ガッツリ酔っていた私を見る館の家族の表情がとっても微笑ましく、かつ幸せそうだったのだから。

 

「あら……リーシェお嬢様、調子はどの様な感じでしょうか?」

 

 などと考え事をしていると、小さなノック音とほぼ同時に咲夜が部屋に入ってきて、こちらを見るなり体調の良し悪しを尋ねてきた。

 少しホッと感じを見せていたけれど、宴会に行って疲れて酔っ払っただけにしては睡眠時間が長過ぎた訳だし、館の家族なら普通の反応だと言える。

 

「調子なら、正直いまいち。頭痛いし、少しだるい」

「なるほど……典型的な二日酔いですね。水を沢山飲み、軽めの入浴を行うなどして身体を可能な限り休めれば軽減出来ますので、今からそれを行ってはいかがですか? 一応、血液入りの瓶も用意しましたので、飲みたければどうぞ」

 

 で、咲夜の問いかけに対して今の体調を正直に答えたところ、この体調不良……二日酔いを軽減出来る方法を勧められた。なお、水や血液入り小瓶の用意はたった今実質一瞬で行い、お風呂場の清掃や着替えの用意なども既に終了しているとの事。

 

 他にもやる事があるにも関わらず、私が目覚めてすぐそれらを実行出来る様にしているのはありがたいし、心から気遣われているのも伝わって、私は究極の幸せ者だとも実感した。無論、咲夜の提案はされた時点で受ける事を既に決めている。

 

「うん、そうする。ありがとう、咲夜」

「どういたしまして。それと、お洋服が汗や料理の汁、お酒を含む飲み物でかなり汚れていて臭いも結構あったので、寝ている間にお着替えや身体の汗拭きなども行っています」

「あっ、咲夜がやってくれたんだ」

 

 しかも、今の私が宴会で騒いだ割に臭くなくて綺麗なのも、しっかり寝間着に着替えられているのも、全て咲夜が寝ている間にお世話してくれたからだと、会話から判明した。何でも、レミリア姉様に任されたらしい。

 

(……そっか)

 

 私の性格を熟知している咲夜だからこそ、短い間であっても全裸にしてその姿を見てしまった事への強い申し訳なさを感じているみたいだけど、決してそんな必要はないと断言出来る。レミリア姉様に任され、淡々と仕事をこなしただけなのだから当然だ

 

 ただ、心の中でそう思っているだけでは咲夜の気分を晴らす事は出来ない。しっかりと言葉に出して伝えてこそ、不安を激減ないし完全になくす事が可能なので、早速実行に移す。

 

「大丈夫。私のお世話をしてくれただけなんだから、気にしないで。むしろ、色々と不快にさせてごめんね」

「問題ありません。お嬢様方のお世話も、紅魔館のメイド長の役目ですから。とは言え、頻度があまりにも高いと流石に困りますが」

「うん、それは重々承知してる」

 

 すると、見る者に安心感を与える笑みを彼女は浮かべてくれた。感じていた不安などを、私の言葉が解消に成功した様だ。

 

 沢山の妖精さんたちをまとめる力、レミリア姉様やフラン姉様が手放しに褒める程の高い戦闘能力、どれだけ忙しくとも私たちを気遣う心の暖かさ、これ程凄い人間さんが館の家族になってくれた事、感謝してもしきれない。

 

 だからこそ、私はこれからも愛する館の家族の身体と心を守り抜いていくため、出来る限り自分の命にも気を遣いながら、果てなき努力を続けていくつもりだ。

 

「さて、リーシェお嬢様。私はこれにて失礼します」

 

 そして、咲夜が水の入った大きめのティーポットとカップ、血液入り小瓶を置いて出ていった後は、軽く身だしなみを整えてから勧められた通りにし始めた。

 

(入浴が終わったら……何しよう?)

 

 けど、昨日の高ぶる気分が残っているせいかは不明なものの、何だか妙に落ち着かない。かと言ってもう一度寝ようにも、変に寝すぎたお陰で眠気は完全になくなっている。

 

 魔法研究や開発をすると言う手もあるが、体調が良くない時にやって取り返しのないミスを犯す危険がある上、そんな時に無断でやった事が姉様2人に知られたら確定で怒られ……いや、無理をするつもりかと泣かれてしまうので、到底出来る訳がない。

 

 ともなれば、起きてて比較的暇な館の家族とゆったりお茶会、単なる会話や軽めのお遊びをする選択肢が、頭痛やだるさも紛れて幸せな気持ちになれる最善手と言える。

 

「ご馳走さま」

 

 1人で考え事をしながら、用意された水とやけに美味しかった血を飲み終えた後は、用意されたお風呂上がり用の着替えやタオル類、水分補給用に残しておいた水を持って、お風呂場へと向かった。

 

(誰もいない……まあ、当たり前か)

 

 当然ながら、こんな時間に入浴する館の家族が居る訳もなく、脱衣所には私以外誰もいなかった。服を脱ぐところ(猛烈に恥ずかしい光景)を見られずに済む点で言えば、これはとてもありがたい。

 

「うん、今日も最高のお湯加減」

 

 持ってきた荷物を棚に置き、脱いだ服や下着を洗濯かごに入れお風呂場に入ったら、軽くお湯を数度浴びた後に手早くかつ丁寧に身体を洗う。

 

 二日酔いもそこそこな上、咲夜のお陰で想定よりも汚くないのでもう少し軽くしようかとも考えたけど、当然これ以降館の家族も入る訳である。想像しただけで申し訳なさが湧き出てきたため、いつも通りと決めた。

 

(ふぁぁ……夏でも冬でもやっぱり気持ちいい)

 

 髪の毛まで洗い終え、タオルを上手く頭に巻いてからは1人で入るには広すぎる浴槽に入って、最高の心地よさを味わった。頭痛やだるさがある分長湯はかえって逆効果だろうし無理だけど、短時間でも入浴効果は大きいから問題はない。現に、起きた直後よりは体調が良くなってきている。

 

(よし、もうそろそろかな)

 

 体感的に15分程お湯に浸かってゆったりした後は、名残惜しくも上がり、身体拭きや水分補給などお風呂上がりに必ずすべき事を行った。

 

 若干残っていた汗ばみの不快感も完全に消え、髪の毛もサラサラになって快適になり、頭痛やだるさも心なしか軽減されていて、流石はお風呂だ。相当な癒しの力を持っていると言える。

 

「お風呂場でしたか。リーシェお嬢様、風見幽香と名乗る妖怪が訪ねてきていますが、どうします? 是非とも直接渡したいものがあるとの事みたいですよ」

 

 弱めの風属性魔法を応用し、熱で火照った身体を涼めてから脱衣所の扉を開けた瞬間、目の前に居た美鈴から声をかけられた。どうやら、宴会の時に居た幽香さんが私を訪ねてきたみたいだ。

 

(あー……)

 

 正直に言ってしまえば、今すぐ手の空いている館の家族とのんびり幸せな一時を過ごしたいから、贈り物は受け取って置いておいて欲しい。

 

 しかし、幽香さんは何を思って私へ贈り物を用意したのかは分からないものの、わざわざ直接渡すと明言してきている以上、相当手間暇がかかっているものだろう。何が渡されるのかは知らないけど、手が空いている以上私も相応の対応を取らなければならない。

 

「そっか。他に用件とか言ってなかった?」

「えっと……あっ、確か『可能なら、お話をしてみたい』とは言ってました」

「うん。美鈴、対応ありがとう。行ってくるね」

「分かりました。ただ、無理は駄目ですよ」

 

 なので、軽いやり取りを交わしてからそれを了承、美鈴にお礼をしてから部屋へ日傘を取りに行き、門の前へと急ぎ足で向かっていった。幸いにも、頭痛やだるさが酷くなる兆候は見られないので、場合によってはお話も済ませてしまおう。

 

「こんにちは。わざわざありがとう」

「ようこそ、紅魔館へ。幽香さん」

 

 日傘を差し、門番妖精さんと話している幽香さんの下へ駆けつけ、軽い挨拶を交わしてからは、すぐに中庭のお茶会スペースへと案内した。お菓子や紅茶を用意出来たら良かったかも知れないが、何分急な話なため、勘弁して欲しい。

 

「ところで、私に贈り物があると聞きましたが……そのカゴの中に?」

「ええ、是非気に入ってもらえると良いのだけど」

 

 そして、本題である私への贈り物についてを尋ねると、幽香さんは手に持っていた大きめのカゴの蓋を開け、中に入っていた植木鉢に植えられた綺麗な白い花(ユリ)と解説書を見せてきた。花や葉や茎見える部分全てが生き生きとしていて、かなり大切に扱われてきたと良く分かる。

 

 それ程のものを何で私にくれるのかは謎だけど、これなら直接渡したいと言う幽香さんの気持ちは理解出来る。同時に、その振る舞いから花に対してかなり強い愛着を抱いている妖怪さんだと、彼女を認識した。

 

(うーん……どうしようかな、これ)

 

 私自身、部屋の中に花を植えた鉢を置く程度には花が好きなため、今回の贈り物は他人からのものでも嬉しい部類に入る。

 が、植木鉢込みでの大きさと解説書に記されたユリの性質上、部屋で唯一適した場所が狭すぎて、置きたくても置けない問題が発生した。

 

 故に、工作大好きかつ大得意な妖精さんたちや咲夜にお願いし、改装が終わるまでは別の適した置き場を用意しておく必要があるだろう。

 

「ありがとうございます。えっと、こんなに凄いものを幽香さんはどうして、私に贈ろうと考えたのでしょうか?」

「宴会の時に、リーシェを見てより強く興味を持ったからよ。それにしても、確かに貴女の姉2人が自慢するだけあるわね。是非とも1度、やり合ってみたいわ」

「あはは……」

 

 にしても、幽香さんは内に秘める妖気が絶大な大妖怪さんなのは分かっていたけど、まさかスペルカードルールではない、純粋な力と力をぶつけ合う勝負が好きな性格とまでは読めなかった。

 館の家族に害を成す敵ではないのは分かるが、花関係以外でのお付き合いは可能な限り控えたいところだ。いくつか例外はあるものの、基本戦う事があまり好きではないのが理由である。

 

 勿論、何であれ関わりを持つ以上は嫌でもすべき時は出てくるとは思うが、今は絶対に違う。姉様2人と同等かそれ以上の猛者と本調子でないのに戦うなど、愚かでしかないのだから。

 

「さてと、今日はこれで失礼するわ。もう少しお話してたかったけど、見た感じ本調子でなさそうだから」

 

 すると、私が本調子ではないと見透かしたらしく、幽香さんが10分程度会話したタイミングで帰ると言ってきた。途中で少しぶり返してきたのを出来るだけ表に出さない様に意識はしていたものの、やはり身体は正直者みたいだ。

 

「そうですか……お気遣いありがとうございます。後、本日贈られたユリの花、大切にしますね」

 

 で、来客である彼女がそう言ってくれているのに、私がこれ以上頑張る道理はない。と言う訳で、幽香さんにお礼をしつつ贈り物が入っていたカゴごと上手い事受け取り、見えなくなるまで見送った後、館内へと戻っていった。

 




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