姉妹の人里巡り
「フラン、人里に遊びに行くわよ」
博麗神社での大宴会が終わり、本格的に何もない平和な一時が訪れてから1週間、部屋で本を読んだりしていた私はお姉様から突拍子もない話を持ちかけられていた。
確かに、異変が終われば紅魔館の住人全員の外出を認める話自体は既に異変前から出ているし、別におかしなものではない。私だって、幻想郷の本格的な探索に興味はある。
「別に良いけど……ってお姉様、準備万端じゃん」
が、それにしたって話が急すぎる。何も相談せずに突発的な行動を起こしては、館の皆を振り回す節のあるお姉様なら全く不思議ではないにせよ、真昼間の外出を即決するとは流石だと言えるだろう。
まあ、真昼間云々に関しては本を読んだりして過ごしていて、かつお姉様からの誘いを断ろうと一切思わなかった以上、似た様なものではありそうだけど。
「当然よ。単に面白そうって思ってるのもあるけど、何せ1番はリーシェも誘いに乗ってくれたんだもの」
「リーシェも行くの? へぇ……じゃあ、尚更行かなきゃ!」
色々と考えつつ、まさかのリーシェも一緒にお出かけしてくれるとの一言に、ただでさえ高揚してた気分が更に高揚したところで、急いで準備をし始めた。一応お姉様に聞いたら、起きてたリーシェの体調も全く問題無さそうだったみたいなので、安心して楽しめそうである。
「レミリア姉様、フラン姉様。準備出来たよ」
「あら、想定よりは時間かからなかったわね……にしても、本当に大丈夫? 流石の私も心配になるわ」
「うん。暑いのには慣れてるし、対策もしてあるから」
と、手早く用意と部屋の片付けを済ませたタイミングで、準備万端リーシェが部屋を訪ねてきたため、立て掛けてた日傘を持って人里へと出発した。
日光対策からか、普段の格好と日傘に加え白い手袋に遮光タイツまで装備する重装ぶりだけど、この暑さで良く耐えられるものだ。後、何故か使い魔の鳥さんまで連れているのが気になるが、放つ雰囲気が警戒時のそれではなかったため、単なる本人の気分と言う事で何も聞かないでおこう。
「リーシェちゃーん! こっちだよー!」
「今日は姉妹全員楽しませてあげるからなー! 人里の案内ならあたいに任せとけー!」
館を発ってから体感で2分、人里らしき町が見えてからすぐ、入り口にある小さめの門の側から私たちに呼びかける声が聞こえてきた。見てみると、
十中八九、リーシェが呼んだのだろうと思って一応聞いたら案の定その通りで、使い魔の鳥さん経由で友人全員に連絡を入れ、偶然暇で時間が余っていた2人に案内役を依頼したとの事。準備に時間がかかったのも、これが原因と言っていた。
(幻想郷の友達……魔理沙以外に、私も何人か作ろうかな?)
ちなみに、依頼した理由はいくつかあるみたいだけど、1番は人里の人間に過度な警戒心を抱かせ、まともに遊べなくなる事態を防ぐためらしい。
相談しないで勝手に呼んでごめんと謝られたけど、理由が納得出来るものな上、絶対に3人だけで行くとはお姉様も私も伝えていないから、謝る必要は一切ない。まあ、個人的には姉妹水入らずのお出かけ時間が欲しかった思いが、少しだけあったけど。
「2人共、今日はよろしく頼むわ」
「よろしくね。頼りにしてるよ」
と言う理由から、人里巡りにチルノと大妖精を加える流れになったため、軽く挨拶を交わして門番の人にも笑みを浮かべた後、5人で中に入っていく。
(まあ、そりゃそうか)
チルノと大妖精曰く、上白沢慧音……確か、人里の住人の保護関連で会った経験がある妖怪も住んでいて、訪れる人外も極端に少ない訳ではないものの、それでも私たち3姉妹の存在は『紅霧異変の主犯格』として、一昨日文が発行して配り歩いた新聞でかなり認知されているとの事。
「異変の主犯、吸血鬼の少女たちか。真昼間に堂々と出張って来るとは、とんでもない奴らだ」
「ええ。でも、寺子屋通いの妖精と仲良くする姿を見てたら、彼女たちが妖怪ってのを除けば近所の子供たちと何ら変わらないとしか思えません」
「ああ、全くだ。おまけに、妖怪に拐われた人里の住人を奴らの館で保護してくれたって話もある……例の地獄の時、襲い来た吸血鬼と同族とは思えんよ」
ならば、私たちに人里の住人たちから視線が大量に向けられるのも納得出来る。落ち着きを保つのも大変だけど、予想していたよりも負の感情を向けられていないだけ、十分ありがたい。
けど、幻想郷全体を揺るがしかねない『
もうこの世に居ないが、間接的にリーシェを殺しかけたアイツらのせいだと思うと、何だか腹が立ってくる。
「ん? ここって……あっ! 良く私たちに送ってくれるお菓子の包装に書かれてたお店だよね!」
「そうです! 今まで送ったお菓子以外にも、沢山美味しいお菓子があるんですよ!」
と思いつつ、せっかくのお出かけに考え過ぎるのは止めておこうと思考を変えようとした時、風情ある和菓子屋『和ノ雲』の建物の前で案内をするチルノと大妖精の足が止まった。どうやら、最初はここに寄る予定らしい。
初めてここの和菓子を食べた時は、こんなものもあるのかと感銘を受けたけど、この分なら棚に置かれている見た事のないお菓子も、口に合いさえすればまた食べたくなる程に美味しいのだろう。
「いらっしゃ……チルノ、大妖精。その子らとは友達なのかい?」
そんなこんなでお店に入ると、中で掃除をしていた店員さんらしきおじいちゃんが私たちを見て目を見開くも、すぐに何事もなかったかの様にチルノや大妖精への対応を始めた。
2人がここの常連さんなのは何となく分かってはいたけど、売り物のお饅頭を1つずつ
「さてと、吸血鬼のお嬢ちゃんたち。改めていらっしゃい。わしとばあちゃんが腕によりをかけた和菓子の数々、是非とも吟味していってくれ」
「はーい!」
「ええ、ゆっくり選ばせてもらうわ」
「勿論です」
そして、2人への対応を終わらせた後の彼と一言二言交わしてから、5人で棚に並べられた和菓子のどれを買おうか吟味し始めた。既に食べた事のあるものも含め、どれも全て美味しそうである。
ただ、各種1個だけとは言え全部買うとなると紫から初回特典としてもらったお金では、当たり前だけど到底足りない。このお店しか寄らないなら話は別だけどそうではない訳だし、せっかくの幸せをむざむざ捨てる馬鹿な行為を、分かっているのにしたくなかった。
「これにするわ。お会計よろしくね」
「はいよ! 今後とも贔屓にしてくれたら嬉しいぞ」
なので、初めて食べた醤油味のお煎餅を含めて4種類の味のものが入った箱3つ、すぐ食べる用の『たい焼き』と硬めのお煎餅を1人2つ、ここでは買う事をお姉様やリーシェと相談して決めた。比較的安く、箱の方は大きさも中程度なので、持ち歩きもさほど苦にはならないのは良い。
ちなみに、チルノと大妖精の2人はそれぞれ追加のお饅頭と『八ツ橋』を買い、備え付けられていた椅子に座ってすぐに食べていた。1番のお気に入りとの事なので、当然の欲求だと言える。
「流石は代々続く老舗、最近始めたばかりのこれも美味しいわ」
「たい焼き、あたいも良く買って食べるけど、癖になる味だよな!」
「だよね! でも、裏のおばあちゃん含めても2人だけみたいだし、大丈夫かな? 私たちの後にお客さんが結構来たし、大変そう」
「案外、あれが生き甲斐って奴なのかも。私で言ったら、姉様2人や館の家族との一時みたいな」
「あー、そう言うパターンね。確かに納得だわ」
「うん、私もリーシェちゃんと同意見」
入店してから20分、持ち帰る用も含めたお菓子を買い終えたため、談笑していたチルノと大妖精の下へ3人で向かい、その輪に加わりながら買ったお菓子を味わった。お姉様はもとより、リーシェが割と楽しそうにしていて私はとっても幸せである。
(……)
そんな中、3日前先行版として届いた『文々。新聞』で、リーシェが凄まじい雷を操れる者と紹介されていたお陰なのか、ちらほら『雷の申し子』や『雷の化身』と呼ぶ声が耳に入ってきた。
一瞬目を遣ると、全員ではないものの子供や一部の大人は純粋な興味関心を、店のおじいちゃんと同年代らしき大人の一部は、畏怖や怒りなどの感情比率が多めだなと実感出来た。私やお姉様への声も存在しているものの、容姿も相まって最も注目を集めている。
「あわわ……何だか騒がしくなってきたね。リーシェちゃんが凄い注目浴びてるよ」
「そりゃあ、大きな『
「うん、違いない。私の容姿も格好も大分異質だから、当然の反応」
しかし、当の本人はその視線をチルノや大妖精との話を弾ませるネタとして使い、とても楽しそうな様子を見せてくれていた。それならば、私やお姉様がとやかく考える事でもない訳だし、思考から追い出して今はこの時を楽しんでおこう。
「お? 何だかやけに賑やかだって思ってたら、お前らの仕業だったのか」
「まさか、あんたたちが理由とは思わなかったわ。随分と満喫している様ね」
なんて事を思っていると、更に増えていた人を避ける様にしてお店に入ってきた霊夢と魔理沙に、何だか微笑ましいものを見る目をされながら声をかけられた。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
第10章の登場人物解説はまだ出来ていないので、投稿は後になります。
幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?
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1人
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2人
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3人
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追加しない方が望ましい