(はぁ……もうすぐ1年か……やっぱり辛いなぁ)
父様から地獄のような宣告を受けてから、今日で7年もの月日が経った。不定期と言われていたから、1週間ごとの面会ではなくなる事は覚悟していたし、1ヵ月位間隔が空くとは予想していたけど、まさか半年~1年半の間隔になるとは思わない。流石にこれは、引きこもりの私ですら辛かった。
だからなのか、1年前に姉様2人が来てくれた時はあまりの嬉しさから勝手に涙が溢れだして、これまた勝手に身体が動いて姉様2人に抱きつき、胸に顔を埋めてしばらく堪能した。その後、姉様たちがしてくれたしょうもない話で心地よくなったり、私が年単位でかけた魔法を褒めてくれたり……そんな記憶がまるで昨日の事のように、私の頭を埋め尽くしていた。
良く考えてみたら、7年と言う時間は長いはずなのに、蓋を開けてみればあっという間だった。姉様2人やメイドさんと会話が年単位で出来ない寂しさから、より一層魔法の開発に力を注ぐようになったからなのか。何もしていない時間に、あの時の想像でもしていたからだろうか。
(今日も来てくれなかった……また明日なら、来てくれるかな……?)
そんな考えを巡らせつつも明日、姉様たちは来てくれるかなと淡い期待を抱きながら、ベッドに横になってうつらうつらとしていると……
「リーシェ、起きてるー?」
「うーん……あっ、お姉様。リーシェ、ベッドに横になってるよ。こんな時間だし、寝てるかも……」
今、1番聞きたかった姉様たちの話す声が聞こえてきた。さっきまで、このまま眠ってしまいたい位には眠気が凄かったけれど、せっかく会いに来てくれた機会を逃すなんてとんでもない。そう思うと、自然と眠気など最初からなかったかのように消え去った。
「姉様ー! やっと会えて、嬉しい!」
「あらあら、起きてたのね。リーシェ」
「眠かったけど、姉様たちの声を聞いたら目が覚めたの!」
そして、気づいた時には既に私はレミリア姉様に抱きついていた。1年もの間溜め込んでいた欲を解放して胸元に顔を埋めたり、頭を撫でてもらったり、ぐるぐる回してもらったりして、とっても心地よかった。
すると、フラン姉様が羨ましそうにこっちを見てくるから、レミリア姉様と同じように抱きつく。頭を撫でてきたり、強めのハグや頬へのキスなどをされるがままにされたりもしたけど、私にとっても幸せな一時であるから、抵抗はせずに全てを受け入れている。
「あ、そうそう。リーシェに紹介したい人が居るのよ。ちょっと時間を取るけど、大丈夫かしら?」
「姉様が、私に紹介? なら、大丈夫だよ」
「ありがとうね、リーシェ。さて……入ってきて良いわよ、美鈴」
フラン姉様からのスキンシップが一旦落ち着いた後、レミリア姉様が私に紹介したい人が居て、少し時間を取るけど大丈夫かと聞かれた。わざわざいつもの1時間を使ってまで紹介する人なら、きっと新しく住む人なのだろうなと思いながら大丈夫だと言ったら、姉様が『メイリン』と扉の方に呼び掛けた。
「人間さんじゃないんだね。えっと……私はリーシェ。レミリア姉様とフラン姉様の妹だよ。何で私が今幽閉されてるか、聞いた?」
「よろしくお願いします、リーシェお嬢様。幽閉されている理由であれば、レミリアお嬢様やフランお嬢様から聞きましたので、既に存じてます」
すると、入ってきたのはを華人服とチャイナドレスを足して2で割ったような不思議な服を着た、赤い髪の女性であった。その立ち振舞いから相当な武術の手慣れであり、更に人からは感じる事のない妖気を感じたので、妖怪である事も明らかである。
それに、私の事はレミリア姉様やフラン姉様から詳しく聞いてきたらしい。吸血鬼らしくない容姿を父様に忌み嫌われ、あらゆる吸血鬼が集まった亡き母様のお葬式に姿を見せたせいで幽閉生活を送っている事も、全て知っていると答えた。
「えっと……メイリンさん。私のこの容姿、どう思う?」
「私の事は、呼び捨てで良いですよ。えっと……率直に言えば、リーシェお嬢様の姿は『綺麗』ですね。吸血鬼らしくないとかどうとか言う方も居るみたいですけど、私は特に気にはしません」
ならば、メイリンは私の容姿についてどう思っているのかが気になったので、単刀直入に聞いてみた。貶されてもどうって事はないやと思いつつ、答えを待っていると……この容姿を綺麗だと言ってきたので、なんて答えれば良いのか分からずに固まってしまった。
今まで容姿を貶されこそすれ、褒められた事はなかった私にとって、綺麗と言う答えが衝撃であったからだ。
「私の姿を綺麗って言うメイリンみたいな人、初めてでビックリしたよ。でも、嬉しかった。ありがとう」
「あはは……恐縮です」
この姿を見て貶す事がないメイリンとは、いつかきっと仲の良い家族になれそうだと、私は心からそう思えた。ただ、面と向かって話せるのは、いつ終わるか分からない幽閉生活が終わってからだろうけど。
「さて、美鈴の紹介は終わった事だし……リーシェ。お話ししましょ?」
「うん! 勿論だよ、レミリア姉様!」
そうして自己紹介が終わってからは、恒例の姉様たちとの至福の一時を過ごした。1年前から今まで起こった出来事や新しく覚えた魔法や技の披露、鬼ごっこのような遊びやメイリンからの外の世界を旅した話を聞いたりなど、新しい家族が加わった事でより一層楽しい思い出となった。
「姉様……何だか凄く眠くなってきた……」
「あら、そうなの? 残念だけど、仕方ないわね」
「まあ、私とお姉様が来るまで眠かったみたいだし、そもそも時間的にしょうがないね。じゃあ、最後に2人で子守唄でも歌ってあげるね!」
楽しい1時間が後10分程度と迫ってきた時、姉様たちと一杯楽しんで満足したからかは分からないけど、先程まで消え去ったと思っていた眠気が倍以上になって復活してきたのを感じた。抗い難いその眠気に、残念だけどもう眠る事に決めて、それを伝えた。
「じゃあ、お休みなさい……リーシェ」
「えへへ、ありがとうね! とっても楽しかったよ!」
「私もだよ。レミリア姉様、フラン姉様。それに、メイリンもお話してくれて、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。お休みなさい」
すると、姉様たち2人が私が良く眠る事が出来るように、子守唄を歌ってくれると言ってくれた。最後の10分間、姉様たちの綺麗な声を聞きながら眠りにつくと言うのも、たまには良いだろうと思った。
こうして、私は皆に会いに来てくれたお礼を言った後、レミリア姉様とフラン姉様の綺麗な声で歌われる子守唄を聞きながら、幸せな気分のまま眠りについた。
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