目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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不思議な現象

「美鈴、今って暇……」

 

 想定を超える人数で行った人里巡りから2週間経ったとある日の10時過ぎ、休日で部屋でゆっくりしている美鈴を訪ねに部屋へ行ったところ、予想の斜め上を行く光景に視線が釘付けとなってしまっていた。

 

 館の家族が何をしていても並大抵の事では気にしないつもりだったけど、頭にバナナの皮を乗っけた上で椅子に腰掛け昼寝をしている光景は、流石に気になって仕方がない。そんな趣味を持っている素振りを微塵も見せなかったから、尚更である。

 

(妖精さんのイタズラかな?)

 

 ともなれば、館の妖精さんが面白がってした行為の可能性が大きい。多少匂いがつき、髪の毛がベタついたりして汚れる以外の被害がない、私がやられたとしたら思わず笑いそうなとっても可愛らしいイタズラだ。

 

「どうも、リーシェお嬢様……え?」

 

 などと思っていると、私に気づいた美鈴が頭を下げた瞬間目の前に落ちてきたバナナの皮を見て、何でこんなものがと思ってそうな表情をしながら首を傾げていた。

 

 自分で乗っけて昼寝をしてたのならこんな反応を見せるはずがないので、イタズラを仕掛けた犯人は妖精さんだと、これでほぼ決まった様なものだろう。これで妖精さんじゃなかったら、それこそ驚いてしまうレベルだ。

 

「一体誰の悪戯でしょうね、これ」

「あはは! 本当にそうだね、こんなイタズラするのって」

 

 で、美鈴も私と同じでやった犯人が妖精さんだと考えているからなのか、拾ったバナナの皮をゴミ箱に捨てて髪の毛の汚れを気にしつつも、どこか微笑ましいものを見た時の表情をしている。

 

 無論、この程度のイタズラであったから笑えるのであって、あまりにも逸脱した内容であったならば、例え相手が館の誰かだとしても落ち込んだり、口を利きたくなくなる程に強い怒りを抱く場合もあるだろう。

 

(……)

 

 なお、私なら自分がどれだけ惨い『扱い(イタズラ)』を受けようと、それ以外にどんな地獄が襲い来ようと、館の家族に対しては後に引きずる強い負の感情(恨みや怒り)を向けるなど、万に一つもあり得ない。

 

 皆から現在進行形で貰い続けている愛情は、どぎつい悪感情が束になろうと敵わない程の質と量を誇っているし、何より家族の幸せが私の存在意義かつ命綱なため、それで家族が幸せなら本望と考えているからだ。

 

 勿論、それはそれとして辛く悲しい気持ちを全く抱かないかと言えば嘘になるから、未来永劫今の幸せな一時が続いて欲しいとは祈っているが。

 

「さて、この際なので早めの入浴をしに行ってきますね。リーシェお嬢様が私に何かあるならそっちを優先しますけど」

「大丈夫。単に美鈴とのんびりしようかと思って来ただけだから、気にせず自由にして」

「分かりました」

 

 この何気ない一時を噛み締めつつ、イタズラがきっかけの入浴の準備を手早く済ませる美鈴を後目に、私は部屋を立ち去った。つい1時間前にお風呂から上がったばかりで、一緒に入って話を楽しむ選択を取れないのは少し残念だが仕方ない。

 

(ん? 何かバナナの匂い……ぶっ!?)

 

 美鈴との一時が今日以降にお預けとなり、だったら自室に戻って魔法研究の続きでもしようかと歩きながら考え始めたが、すぐに思考は途切れる事となった。

 

 何故なら、突如として()()()()()()()()()()()が出現してそこそこな速度で飛来、完全に気を抜いていて対応出来ず全部当たってしまったからだ。命を刈り取る様な凶悪な攻撃ではなかったのも、避けられなかった1つの理由でもあるだろう。

 

 このイタズラを妖精さんがやった上で、それを私が受けたと考えれば笑えるが、お陰様でお風呂に入ったばかりなのにまた入らなければならない位に汚れてしまったのは、正直面倒で仕方ない。

 

「咲夜、ごめん! このバナナの皮を片付けてくれないかな? 私、またお風呂に入ってきたいから」

「こんなにありましたっけ……? 分かりました。とにかく、ここの掃除はお任せ下さい」

 

 それに、床に散らばったバナナの皮を片付けなければいけないけど、その点に関しては通りがかった咲夜にお願いしたため解決した。お風呂から上がったら、そのお礼として何かしてあげよう。

 

 ただ、咲夜もボソッと言っていた様に、ここ数ヵ月間紅魔館では加工未加工問わずバナナの消費が少ない。諸事情により、紫さんや藍さんから提供される食物の中に入っているバナナの量が、大きく減少している。

 

 加えて、料理で出た生ゴミはこまめに適切な処理をしているので、本来ならあっても数個位なはずである。見た目も匂いも悪くないため、この時に備えてこっそり食料庫で溜め込んでいたのかも知れない。

 

(尚更不思議なんだよね)

 

 いや、そんな事をすれば倉庫の管理を任されている妖精さんが、烈火のごとく怒りを露にするはずなので違うだろう。

 元から整理整頓好きではあったけど、本人がとても好いてるレミリア姉様に直接褒められてから、微塵も汚してなるものかと気合いを入れているのだから。

 

「いやぁぁぁ……腰が抜けた誰か助けてぇ!!」

 

 すると、館の皆が自然と気を遣う程の超怖がりな妖精さんが、とても大きな叫び声をあげ助けを求めてくるのが聞こえた。今までにない位、切羽詰まっていると伝わる程だ。

 

 おまけに、良く分からない不気味な効果音もランダムな間隔で微かに耳へ入ってきている。妖精さんの目の前にある何かも相まり、恐怖心を煽っているが故の怯え方なのだろう。

 

「……何これ?」

 

 そうして、出せる全力を使って駆けつけた私だったけど、そこにあったのはハロウィンのカボチャの様にくりぬかれ、更に謎の光が漏れ出ている()()()()()()()()()()が5つ浮かんでいると言う予想外の光景であった。

 

 私から見れば大したものではないにせよ、造形や蠢く姿が如何せん不気味であり、彼女であれば絶叫するものだと即頷けてしまう。

 

「うわぁぁぁん……ぐすっ、怖かったよリーシェさまぁ……」

「よしよし、怖かったね。私が来たからもう大丈夫だよ」

 

 で、私の腕にしがみつく妖精さんの頭を撫でて落ち着かせつつ、攻撃する前に万が一を想定してまずは能力を使ってみると、この事態を引き起こした犯人が館の家族でも友達でもない、非常に強力な(大妖精以上チルノ以下)妖精さんたちであるとほぼ確定した。

 

 根拠としては、精度と強度は劣っていても異変で戦ったアリスさんが人形を操っていた時と似た感じで、眼前の物体と3人組の妖精さんに妖気の繋がりが存在していたからだ。

 

(幻想郷の妖精さんって、強い子が多いなぁ)

 

 おまけに、居るはずの位置に目を遣っても何故か視界に捉えられず、耳を澄ましてもそこから一切音が聞こえず、対処可能であれどそこそこ厄介な探知妨害が施されているのも判明している。

 

 と言う事は、ついさっき美鈴や私へ行われたイタズラの犯人も見えぬ彼女たちだろうし、もしかすれば他にも館の中で何かしている可能性もあるだろう。

 

「り、リーシェさま……あれ!」

「えっ――」

 

 しかし、ほんの数秒であれど目の前で起こっている怪奇現象から、意識を逸らしてしまったのは失敗である。いつの間にか大きなバナナの皮擬きから増大し漏れ出る閃光をもろに受け、犯人の妖精さんたちが逃げ出す隙を与えてしまったからだ。

 

(むぅぅぅ……!!)

 

 私自身純粋に眩いだけの光に一定の耐性があり、今もなお3人組の妖精さんの位置を能力で捉え続けている以上追いかける事は出来るが、妖精さんはそうではない。なので、この現象が収まるまで彼女を抱きしめてあげよう。

 

「妖精さん、大丈夫? 眩しくなかった?」

「うん……えへへ」

「なら良かった。もう不安とかはない?」

「バナナのお化けも居なくなったし、リーシェさまが慰めてくれたから、もう平気。ありがと」

「そっか。じゃあ、私はもう行くね」

 

 そして、10秒程度で発光が収まった後は完全に落ち着きを取り戻した妖精さんを解放し、一生懸命紅魔館から逃げ出そうとしているイタズラの犯人(3人組の妖精さん)を捕まえて謝らせるため、動き始めた。

 

 能力で捕捉出来ている以上、普通に後ろから走って追いかけても目的を達成可能だと一瞬思ったものの、これ程の事が可能な妖精さんが相手な以上、その考えは愚かだ。

 むしろ、これ以上探知妨害が強力になる可能性や、私や美鈴みたいな探知能力や術技を使用している可能性も考え、対策を取るべきだろう。

 

(うん、まあそうなるだろうね)

 

 と言う流れで、即座に探知能力を3人組の妖精さんへの特化(集中)させ、私と同等以上の探知能力・術技持ち対策として開発した魔法を使用し、使い魔の鳥さんとの連携を取り始めると、目に見えて動きが乱れる。

 

 まあ、動きが乱れ遅くなったのはほんの2~3秒程度であり、すぐさま立て直されたけども、紅魔館に侵入する勇気と技術があるのなら別におかしな話ではない。

 

「えっと……色々お話聞きたいし、出てきてくれる? そうでないと、無理矢理捕まえなくちゃいけなくなるから……お願い」

 

 色々と考えを巡らせ、出来る限り他の家族たちに迷惑をかけない様に気を遣いつつ動き、上手く使い魔の鳥さんとの挟み撃ちに成功してからは、見えない彼女たちへ優しく呼びかけを行った。

 

 我ながら、愛しい家族を泣かせた相手への対応が甘い様な気もするが、どうにも妖精さん相手だと赤の他人だとしても、強く出る気になりにくい。愛する家族に沢山の妖精さんが居て、友達にも妖精さんが2人居るからだろうか。

 

(……)

 

 無論、そうでなければ何の感慨もなく対処出来るし、例えそうだったとしても限度を超えたイタズラなどで傷つければ、同様に対処するつもりだ。と言うか、冗談抜きでそうしなければならない。

 

「はぁ……見事なまでに私たちの能力が通用しない相手とは思わなかったわ。ねえ、サニー。ルナ」

「そうね。でも、久しぶりに上手く行った方のイタズラだから結構スッキリしたわ!」

「……でもまあ、肝心なところで失敗してるけど」

 

 そうして、過度に怯えさせない様に気を遣いつつ呼びかけを行うと、私のお願いは通じたらしい。ほんの少し沈黙の一時が間に入ってから、とても仲睦まじい様子を見せつつ出てきてくれた。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

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