目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話は咲夜視点です


新たなる妖精メイド

「美鈴、お菓子の味はどう? 口に合う?」

「いやぁ、最高に美味しいですよ。淹れてもらった紅茶も美味しいし、流石ですね」

 

 とある日の午後6時、いつも以上に早くメイド長としてやるべき仕事を終わらせた私は、自室でくつろぐ美鈴の下へ紅茶とお菓子を持って訪ね、小規模のお茶会を開催していた。お互いに仕事の事を考えず、単にのんびりして過ごす時間を作りたいと言うなのが理由だ。

 

 私自身は、優秀な妖精メイドのお陰で休める日数も休憩時間も比較的増えてきているから良いとして、美鈴は妖精メイドを合わせて今2人しか居ない門番の仕事を任されているため、純粋な休日や休憩時間は少なめにならざるを得ない。

 

 ただ、幻想郷に来てから館への来客は殆んどがお嬢様方の友人ないし知り合いな故に、途中で暇潰しにガーデニングや立ったままの睡眠などを行える程度には、時間に余裕が存在している。お陰で移住以前はともかく、今は門番の仕事を比較的リラックスして行えるとの事。

 

 なお、何かあった時にすぐ動ける様に常時気を張り巡らせているので、完全に休んでいる訳ではないらしいが、体調を崩したりした経験は1度もない様だ。

 

「ありがとう。そう言えば、今日と明日と珍しく2日連続で休みなのよね?」

「はい。私としては別に1日でも良かったんですけど、レミリアお嬢様の気遣いで休みが増えました。体調を気にしてくれた様で」

「なるほど。休憩とは別に途中で息抜き出来るとは言え、大分長く仕事してるのだから当然ね」

「あはは……でも、本当にありがたいです。理由はそれだけではありませんが、紅魔館は私の唯一無二の居場所、絶対に壊させませんよ」

 

 なので、小規模なのんびりお茶会程度であれば仕事中でも誘おうと思えば誘えるものの、大なり小なりそちらに気を割かなければならず、完璧にそれだけを楽しめなくなる可能性が高い。下手すれば、もう1人の妖精メイドに負担を押し付ける事にもなりかねない訳だ。

 

 私としてはそれはあまり好ましくない展開なので、リラックスしてもらうためには、美鈴が気張る必要もほぼなく疲れなどもない休日に、誘う必要があった訳だ。

 現に、今の彼女の顔には気張っている時特有の表情が一切見られないし、私も色々気にせずのんびり楽しめている。

 

「それにしても、ここに来た当初とは見違える程に雰囲気が柔らかくなりましたよね」

「そう? でも、色々と地獄でしかなかった吸血鬼狩り時代と比べれば、柔らかくもなるわ。お嬢様方を含めた紅魔館の皆は、本当に優しいもの」

「分かりますよ、その気持ち。私も皆さんの優しさに救われてきた身ですので」

 

 1度大きな出来事があったにせよ、私に日々の安寧と愛情と居場所だけでなく、心を許せる友人を作るきっかけまで与えてくれたレミリアお嬢様には、改めて感謝でしかない。

 人間を辞める気は流石にないけど、何があろうと決して紅魔館のメイド長……レミリアお嬢様の下から最後まで離れて行かない事だけは改めて固く、この身に誓おう。

 

「さてと、時間も時間だからそろそろ行くわ。結構長居してごめんね」

「咲夜さんとの話は楽しかったので、気にしないで下さい。それよりも、都合の良い時にまたお願いします」

「勿論、楽しみにしてて」

 

 で、決意を固めつつふと懐中時計を見た時、体感を超える時間が過ぎていた事に気づいたため、持ってきた紅茶用ポットやお菓子用かごなどを全部回収し、美鈴の部屋を立ち去った。

 もう少し居て良かったかも知れないが、本人の希望ならまだしも私が来たくて来ただけな以上、この辺りで切り上げておくべきだ。

 

(……ふふっ、良かった)

 

 しかし、今日持ってきた洋菓子は色々と考えた結果生まれた、完全新作かつ自信作だったから、次もお願いと要求される程に気に入ってもらえて嬉しい限りである。

 明日か明後日辺りに、お嬢様方にもおやつの時間に作って持っていく予定だけど、果たして気に入ってもらえるだろうか。

 

「あっ! もしかして、あの人がさっきレミリアさまが言ってた……」

「ええ! 十六夜咲夜、全てが完璧で瀟洒な、うちの自慢のメイド長よ!」

「だってよ、皆!」

「「「おぉーー!!」」」

 

 回収したものを片付けるために食堂へと向かい、手早く洗って食器棚などに閉まってから自室へ向かおうとした刹那、見た事のない賑やかな妖精集団とやけに自慢げなお嬢様が目に入り、足が止まる。

 レミリアお嬢様への呼び方を聞くに、十中八九3日前に言っていた妖精が彼女たちなのだろう。自ら頼み込んできたとは聞いたけど、初めてのパターンだ。

 

(妖精の楽園……か。良く言ったものね)

 

 文の新聞や幻想郷縁起、外出好きの妖精メイドやお喋りなリーシェお嬢様の友人、霊夢や魔理沙の2人組から紅魔館についての情報が結構出ている以上、興味を持つ妖精が出てきてもおかしくはない。

 

 とは言え、幻想郷での存在感が高まるにつれ、所々で吸血鬼の館としてだけでなく、妖精の楽園扱いをされ始めているのは果たしてどうなのかと思う。まあ、レミリアお嬢様が何もしないのなら、特段問題ではないのだろうけど。

 

「お嬢様。その妖精たちは、この間言っていた新しい妖精メイドでしょうか?」

「そうよ。まさかの予想外の妖精が増えた事はビックリしたけど、皆良い子たちだから大丈夫」

「そうですか。まあ、部屋の広さ云々は私が居ればどうとでもなりますし、食料や金銭の方は……ん? あらあら」

「全く、随分と妖精らしいじゃないの。1番最初にメイドになってくれた、愉快な5人組の子たちを思い出すわ」

 

 にしても、私とレミリアお嬢様が色々と話している最中にも色々とちょっかいを出してきたりは序の口、たまたま食堂に立ち寄った妖精メイドへ元気良く声をかけに行ったり、果てはイタズラを仕掛けたりなど、彼女たちは結構種族的特徴が強く出ているらしい。

 

 この調子なら紅魔館に馴染むのもかなり早そうだし、やる気も漲っているみたいだから、住人同士での問題の発生はあまり考えなくて良いだろう。

 

 仕事が優秀か否かは実際に教え始めてみないと分からないものの、幸いにもうちには優秀な妖精メイドが多いから、覚えが悪くても時間さえかければ何とかなる。何にせよ、教えがいはありそうだ。

 

「明日から主にメイドの仕事を教える、十六夜咲夜よ。やる事は多いけど、しっかり出来る様に教えるのを頑張るから、貴女たちも頑張ってついて来てね」

「「「はーい!!」」」

 

 と言う事で、軽めの自己紹介を済ませ彼女たちに一声かけてから、私はこの場を後にした。これからしばらくは忙しくなりそうだけども、休日や休憩時間は据え置きで良いと言われていて、内容が至って平和そのものなので何とも思わない。

 

 そう思えて、かつ仕事疲れ由来の体調不良が全くないのも、私が紅魔館の住人となってから当たり前の様に居た妖精メイドたちが、ひとえに優秀かつ頑張ってくれているお陰だと言える。

 

(……ある意味恐ろしいわ)

 

 考えたくはないけど、仮に彼女たちが姿形すら存在しないか、仕事を放棄するどころか増やす様な行いばかりする妖精であったなら、こうは行かなかったはずだ。もしかしたら後始末に追われ続け、今頃体調を崩したりする頻度が激増していた可能性が高い。

 お嬢様方には言わずもがな、私が生まれるよりも遥か昔から紅魔館の環境を整えてくれた全ての人たちにも、改めて感謝しなければ。

 

「咲夜、おはよう。えへへ……」

 

 自室に戻った後、ソファーに座り明日の流れについてを考えたりしながら過ごしていると、見た感じ寝起きにも関わらず妙に嬉しそうなリーシェお嬢様が入ってきて、隣に腰かけてきた。

 フランお嬢様の様に翼をパタパタと動かしたり、長い髪の毛を指で弄って遊んだりしている位なので、相当機嫌が良いと推察出来る。

 

(良い夢でも見たのかしら?)

 

 この仕草自体そんなに多く見せるものではないのに、ほぼ寝起き状態で見せるのはかなり珍しい。一体何があったのか気にはなるが、私には推察すら不可能だ。

 

「おはようございます、リーシェお嬢様。何か嬉しい事でもありましたか?」

「うん。家族になってくれた妖精さんたちについてなんだけど、聞いてくれる?」

「私で良いのなら、どうぞお話し下さい。お付き合いします」

 

 なので、挨拶をした流れで普通に聞いてみたところ、新しく入ったあの妖精メイドたちが機嫌の良さに関係していると判明した。それも、リーシェお嬢様の()()にまで食い込む程のものだ。

 

(あぁ、お嬢様の言っていた予想外の妖精って……)

 

 簡潔に表せば、遥か昔紆余曲折あって幽閉され死にかけていたリーシェお嬢様を、文字通り命をかけて救ったと言う人間のメイドに容姿と種族以外、性格や喋り方などに面影を感じる妖精が1人居たからみたいだ。片羽で、薄い灰色の髪の子との事。

 

 初対面のはずなのに、記憶を保ったままで妖精に生まれ変わった彼女と再会したかの如く話が弾み、思わず当時のお礼を言ってしまう程だったらしい。

 当然、そんな都合の良い展開にはならず、紹介してくれたレミリアお嬢様も含めてただ単に困惑させるだけに終わった様だけども。

 

「それでも、妖精さんがあのメイドさんを引き継いでくれてたみたいで、本当に嬉しかったの。一緒に居た他の妖精さんたちも、スッゴく良い子たちで……」

「ふふっ、良かったですね。ただ、これでしばらくはお互い忙しくなりそうで」

「うん。でも、そんな事はどうでも良い。あの妖精さんが存在しててくれただけで、十分な見返りはもらえてるから」

 

 こんなにもリーシェお嬢様の心を掴む存在が居るとなれば、彼女たちが去る選択を取らない様に、明日から始まるメイドの仕事を教える際、想定よりも気を遣う必要がありそうだ。当然、注意や怒る必要が出てきた際、過剰に手を緩めるつもりはないけど。

 

「……咲夜。もう少しだけ、お話ししてても良いかな?」

「勿論です。私が寝る時間までであれば、お付き合いしますよ」

 

 これからの事について色々と頭の中で考えながら、話し込んでも未だ冷めやらぬリーシェお嬢様の気分が冷めるまで、私は会話に付き合ってあげる事を決めた。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?

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