「リーシェ、何だか嬉しそうだね」
「うん。だって、皆が皆生き生きしてるから」
レミリア姉様から紹介された、
本来なら例え遠くからでも、紅魔館副当主の立場である私やフラン姉様が仕事ぶりを直接見に行くのは、来たばかりの妖精さんたちに気づかれた場合、プレッシャーになり得ると頭では理解している。
しかし、今日はどうしても教えられながら仕事をする様子を見たい欲求が理性を上回り、後をつけてきたフラン姉様も加えて見に行っていた訳である。言い訳をするならば、楽しくとまではいかずとも
「ねえ。片羽の妖精さんって、調理場担当にもなってるんだよね?」
「うん。何でも出来る様になりたいって、レミリア姉様に言ったって」
「へぇ……理性も好奇心も、特段強い子なのかな?」
「多分。私はそうとしか思えない」
結果は、早さなどはひとまず置いておいて、私の心配は何だったとかと思わせられるレベルで皆が皆、楽しそうに仕事をしている光景を見る事が出来た。
館の他の妖精さんたちよりもお喋りで好奇心旺盛だからか、気が散って時々手が止まっていたものの、片羽の妖精さんが即座に方向修正をかけていたため、総合的には普通に進んでいる。
それ故か、教えている咲夜や咲夜直属の妖精さんたちも比較的温かい目で見守ってくれていて、雰囲気は今のところ良好そうで安心だ。
(頑張れ、妖精さんたち)
この調子で行けば、3ヵ月~半年位の範囲でほぼ完璧に与えられた仕事をこなし、優れたメイドさんになってくれるだろう。私自身は家族に家事能力をあまり求めてはいないが、高ければ高いだけ皆の助けになってもらえるから、十分嬉しい流れだ。
「リーシェー! 今から外に遊びに行かないかー?」
私の心配が杞憂で終わりそうなのを確認し、最後まで気を抜かずにこの場を後にした直後、エントランス方面から冬の装いをしたルーミアたち3人が、こちらへ駆け寄ってくるのが目に入ってきた。わざわざ、私を外遊びに誘おうと来てくれたみたいである。
「外に? どこへ遊びに行くの?」
「人里だぞー。10年以上前だったか、チルノが広めた遊びが元となった祭りなんだよなー」
「なるほど」
更に遊ぶ場所などの詳しい話を聞いてみると、今日はどうやら人里で『人里冬祭り』と呼ばれる、夏祭りの規模を小さくした代わりに開催期間を長くしたみたいなイベントが開かれていて、それを楽しむ予定との事。場合により、人里内の宿か慧音さんの家へのお泊まりも考えている様だ。
ちなみに、本来ならルーミアの言う『夏祭り』も開催される予定だった様だけど、紅霧異変を含めた色々な事情で今年は取り止めになったらしい。いつぞや、チルノたちと人里へ訪れた際に怒り恨みのこもった視線を向けられた理由に、祭りの中止が絡んでる可能性が出てきた。
ただ、数も時間も大した事ではなく、チルノたちに察させずに済む程度には隠されていた上、全てが私に一極集中していたのは幸いだった。このままで済むのなら、好きなだけさせておけば良い。
「そうそう。ここのところあまり遊べてなかったし、リィちゃんが来てくれたら嬉しいな。リグルちゃんも、そう言ってた」
「確かに、みすちーの言った通りではあるけど、断っても別に構わないから」
「そっか。でも、初めての外でのお泊まりは姉様たちと行きたいから、お祭り参加だけなら良いよ」
言わずもがな、友達のルーミアたちと一緒に遊びに行く事自体は全く構わないとは伝えたけど、内容が内容なためお金を多めに持っていく必要があるだろう。ただし、館の妖精さんたち用の魔道具調達資金をお小遣いからも調達しているから、バランスを保つのは悩ましいところだ。
後、お泊まりはなしとは言えど、フラン姉様もしくはレミリア姉様に一応聞いておかないと、自給計画に支障をきたす可能性がないとは言えない上、過剰な心配をかけてしまう。私としてもそうなるのは本意ではないから、しっかりと考えておかなければならない。
「それで――」
「お姉様には伝えとくから、行きたいなら早く用意して行っておいで! お祭りなんだし、自分の分なら遠慮しないで沢山使って良いんだよ!」
「わわっ……うん、ありがとう」
「えへへ! あっ……えっと、貴女たちにとっては結構癖のある子だと思うけど、リーシェの事をこれからもよろしくお願いね!」
「「「はーい!」」」
などと考えながら聞こうとした時、フラン姉様の方から先に許可を出してくれたと同時に、場の雰囲気に構わず頬ずりしてきた後、3人にニコニコで私を任せて去っていった。その様相たるや、まるで吹きすさぶ風の様である。
(……)
なお、間近でこのやり取りを見る事となったルーミアたちは、何か可愛いものを見てほっこりした時みたいな表情をして、私の方をじっと見つめてきた。悪い気はしないし、自分では全くそう思えないけど、見る人によってはフラン姉様と同じ位に見えるのだろうか。
「相変わらずの仲良しだよね。リィちゃんと、フランさんって」
「500年前近く前からずっと一緒だったからね。それと、ちょっと出かける準備に時間がかかりそうなのはごめん。申し訳ないけど、エントランス辺りで待ってて」
「分かった。急に誘ったのは私たちの方だから、のんびり待ってるぞー」
そんな事を頭の片隅で考えつつ、ひとまず外出の準備を済ませるためルーミアたちに待っててもらい、急ぎ足で自室へと向かった。外出時の冬支度は夏よりも時間がどうしてもかかりがちなので、こちらも可能な限り急がなくてはいけない。
(人間さんたちのお祭りかぁ……)
しかし、急ぐあまりお金や万能魔法傘などの貴重品を持ってき忘れたりなどしてはいけないので、レミリア姉様にもらったショルダーバッグに物が全部入ってるかどうかをちゃんと確認し、髪飾りをつけてからエントランスで待つ3人の下へと急いだ。
「お待たせ。結構時間かけちゃってごめん」
「謝らなくても良いのに。それにしても、夏と殆んど格好変わらないなぁ。マフラーと耳当てだけで大丈夫なのかー?」
「うん、大丈夫。見た目はほぼ一緒だけど、冷気防御機能付きの冬仕様だから」
「なるほど。魔法って便利だなー」
急いではいたものの、案の定用意に時間がかかってしまったため、それについて軽く皆に謝った後は、いつの間にか居た姉様2人に見送られつつ、館を4人で出発した。
雪も多少ではあるものの降っていて、本来なら震える寒さであろう今日でも比較的快適に思えているのは、皆のお陰である。
冬仕様となる装いを作ってくれた青髪の妖精さんたち、術式の構築を主導したパチュリー、類い稀な氷と冷気操作能力でそれの補助をしてくれたチルノ、私は全員に出来るだけ早くお礼を言うべきだろう。
(おぉ……)
時間も経たない内に人里上空に到着、降りて門番役の人間さんへ声をかけてから中に入ると、初めて見る冬の人里の景色と特有の雰囲気が良い具合に混ざり合っていて、少し感動を覚えた。遠目でも十分に綺麗だったけど、やはり近距離で実際に見聞きするに限る。
「リーシェ、もしかして雪景色気に入ってる?」
「どちらかと問われれば、気に入ってるって答えるかな。夏が嫌いって訳じゃないけど、夏よりかは大分ね」
「それは良かった、誘った甲斐があったよ。ねえ、みすちー」
「そうだね、リグルちゃん。ルーミアちゃんは?」
「同じだぞー」
私よりも遥かに長く幻想郷に住んでいて、雪祭り含めた冬の人里に何度も訪れた事があるらしい3人にとっては大したものでもないのか、景色よりも会話の方を楽しんでいる様に見えた。特殊な場合を除けば、そうもなるだろう。
とは考えたけれど、かく言う私も景色よりはルーミアやミスティア、リグルとの会話の方が楽しいし、何なら一緒の時間を過ごしていてくれるだけでも十分だ。
「どうする? どのお店も混んでるぞー」
「お祭りだもんね。リィちゃん、お腹は空いてる?」
「咲夜のご飯を食べてきたばかりで、血も飲んできたから空いてない」
「そうなんだ。じゃあ、食べるのは後にして『氷精のアトリエ』にでも寄ってみる?」
「良いね。私たちも特段お腹が空いてる訳じゃないし、みすちーの案に乗った!」
「3人に任せるよ。時間はたっぷりあるから」
そして、人間さんたちの様子に目を向けてみると祭りの開催期間中なだけあってか、冬仕様の装いをして里内を出歩く人たちがかなり多く、積もった雪を使った色々な遊びを楽しむ子供も所々で見かける。
お店の方も季節柄、温かい食べ物を中心に販売していると言う事を全面に押し出し、お腹が空いている人や寒さで凍えている人たちを誘導、あっという間に満席となるところも出てくる程だ。
(氷精のアトリエ……チルノの事かな?)
更に、道中の話で登場した『氷精のアトリエ』は、恐らくチルノが類い稀なる氷や冷気操作能力を器用に扱い、作ったものを見せる場所の事を指すのだろう。霧の湖に居た小さな他の氷精さんも、もしかしたら居る可能性がある。
「チルノ、本当に妖精なのかって位凄いよね。それこそ、下手な妖怪程度なら返り討ちに出来そう」
「幻想郷縁起に載ってる妖精の中でも、チルノだけは警戒を促す文言があるからなー。季節が冬なら尚更だぞ」
つい最近中庭で、複雑な文様の施された剣や盾などの武具、テーブルや椅子などの家具、ネックレスや指輪などの装飾品を氷で短時間で自慢気に再現してくれた時は本当に驚いた。
元から誘われていたらしい妖精さんたちや美鈴はもとより、たまたま用事で居たパチュリーですら目を見張る程である。冬に行われるイベントとしては、この上ない要素となるのもおかしな話ではない。
「おーい、皆! 良いもの見せてあげるからこっちに来ーい!」
そんなこんなで、4人でチルノについての会話を交わしながら歩いていると、前方から当の本人が大きな声で呼びかけてきている事に気がついたため、私たちは取り敢えずそっちに向かう事にした。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?
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1人
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2人
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3人
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追加しない方が望ましい