「今日、吸血鬼のお客さんが来るって? へぇ……随分と急ね」
「ああ。それに、息子を2人連れてきてレミリアとフランに会わせたいと言っていたから、準備をしておくように」
紅魔館の新たな住人に美鈴が加わってからあっという間に9年もの月日が過ぎ、いつも通りフランと遊んでいた時、私たちはお父様から急に声をかけられて、とある事を伝えられていた。それは今日、急に吸血鬼のお客さんが自身の息子を2人連れて来訪すると言うものであった。少し前に、眷属の蝙蝠がそう書かれた手紙を寄越して来たらしい。
普通なら、遅くとも数日前までには伝えておき、伝えられた側がその数日の間に客人に対して失礼のないように色々と準備を済ませておく。しかし、今日の客人は突然を承知の上であるらしいので、余程急いでいる用事でもあるのだろう。私たちと息子2人を会わせたい理由は良く分からないけど。
「ええ、分かったわ」
「はーい。それで、吸血鬼のお客さんって誰?」
すると、お父様からそれを聞いたフランが、息子2人を連れてくる吸血鬼とは一体誰なのか、至極最もな疑問を口にした。確かに、私もそれが気になってたから、
「『レイブン家』だ。あそことうちの交流はないに等しかったが、レミリアもフランも名前を聞いた事位はあるだろう?」
「まあね。それにしても、今までそう言う事はなかったのにどうして急に子供まで連れて来ようと思ったのかしら?」
「俺も、そこまでは聞いてないから分からんが……」
フランの疑問に対し、お父様は『レイブン家』の吸血鬼であると答えた。確か、うちと並ぶ程の名家でありながら当主同士の挨拶のみと言う、交流が殆どない吸血鬼一族だと聞いた事があった。そんな彼らが何故急に自身の子供まで連れて、ここにわざわざ訪れようと思ったのかは分からないけど、聞こうにもお父様すら分からないみたいだから、取り敢えずそれは考えない事に決めた。
(……リーシェのところにお忍びで行こうと思ったけれど、今日は無理そうね)
そして、私はお父様から話を聞いて、いつレイブン家の吸血鬼たちが来ても大丈夫なように準備をするため、フランを連れて自分の部屋に一緒に向かった。と言っても、髪の毛がボサボサじゃないかとか、服にシワがないかなどをお互いに見合う位しかやる事がないけれど。
「はぁ……レイブン家だか何だか知らないけど、何でこのタイミングで来るのさ。名家の相手とか絶対に面倒で疲れるだろうし、リーシェのところに行けないじゃん」
「確かに面倒だけど、仕方ないわ。ああ言う付き合いは大事よ、フラン。もし何かあって攻め込まれて、万が一うちのメイドたち……最悪私たちやリーシェに危機が及ぶかも知れないからね」
「あぁ……なるほど。面倒だけど、そう言う事なら仕方ないか。まあ、精々怒られないように気をつけるね」
私の部屋でお互いに身なりのチェックをしていた時、フランがため息をつきながら、レイブン家の吸血鬼がこのタイミングで来た事に対して愚痴をこぼしていた。どうやら、私と同等かそれ以上にリーシェのところへ行きたかったようだ。
確かに、フランの言う通り私も面倒だとは思っている。だけど、こればかりは無難にこなさないと、巡りめぐってリーシェに危機を呼び込む危険性すらある。確率は低いけど、こなさなかった場合に起こるそんな『運命』も僅かに見えたから、不満げなフランを宥めた。その結果、盛大にやらかしてしまって怒られないようには気をつけると言ってくれたので、この件については大丈夫だろう。
「レミリア、フラン。レイブン家の面々が来たぞ。一家勢揃いなのは良いとして、当主の叔父と伯母まで一緒なのは謎だが……」
「あらあら……何か用件でも押し付けに来たのかしら?」
そんな事を考えていると、扉を数回ノックする音が聞こえてから数秒後、お父様が入ってきたのを見た。どうやら、レイブン家の面々が
交流が殆んどなかったレイブン家の面々が突然うちにやって来るだけでも不思議なのに、血縁者総出で来るなんて……まるで、何かを押し付けに来たかのようだ。まあ、そうであっても私やフランにはどうこうする力はまだないから、お父様がどうにかしてくれる事を祈るしかない。
「すみませんねぇ……急に押し掛けたりしてしまって。それにしても、うちの息子に勝るとも劣らない威圧感……流石、スカーレット伯爵の娘、惚れ惚れしますよ」
「うちの娘
色々な事を考えながらお父様に連れられて、エントランスへと向かうと、そこでメイドたちと会話をしながら待っていた闇そのものと言える位真っ黒な髪と深紅色の瞳の吸血鬼が、私とフランを交互に見合わせた後、こちらに近寄ってきて声をかけてきた。お父様の態度から、彼がレイブン家の当主吸血鬼なのだろう。流石、名家の当主だけあって、お父様と双璧をなす威圧感をひしひしと感じる。
「さてと、早速用件を……と言いたいところですが、今まで全くと言って良い程交流してこなかった事ですし、まず最初にお互い自己紹介といきましょう。問題ありませんか?」
「時間は有り余る程あるから問題ないぞ、レイブン殿」
「了解です。では、始めましょうか」
すると、レイブン家当主が今まで交流をして来なかった事から、用件は後回しにして、最初にお互いの自己紹介から始めようかと提案をしてきた。それに対して、確かにその通りだと頷きながら問題ないとお父様が納得した事によって、まずは最初に交流会が始まる事となった。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。