目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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人里冬祭り(後編)

 トラブルか何かで長い間待たされつつも、それ以外は特に何も起こらずお店へ入れた私たち4人は、無料で出された『ほうじ茶』を飲みながら、他の人間さんたちと同じく頼んだ『特製すき焼き』が来るのを待っていた。

 

 かなり後ろの方に並んでいたのと、少し前まで尾を引いていた厄介なトラブルの影響で、前に並んでいた人間さんたちよりも待ち時間が長くなってしまうと、さっきの人とは別の店員さんから説明を受けたので、最低でも30分は待つ事となりそうである。

 

「もしかして、ほうじ茶好きな感じ?」

「うん。初めて飲んだけど、私好みの味と香りだって思って」

「へぇ。この様子だとリィちゃん、お茶系の飲み物だったら何でも行けそう」

「あはは……流石に全種類は無理じゃないかな?」

 

 まあ、雪が降り冷風まで吹いている外とは違って店内は暖かいし、紅魔館には劣れど椅子に座ってリラックスしながら、私と仲良くしてくれる友達と楽しく会話が出来ている以上、全く問題ない。待つのが嫌なら、そもそも最初から並んだりしていないのだから。

 

「お待たせいたしました、特製すき焼きでございます」

「「「おおー!」」」

 

 お酒もメニューにあるらしく、祭りの日なのも相まって店内が少しずつ賑やかを通り越しかけてきた頃、男の店員さんが特製すき焼きを持って私たちの方へやって来た。小分けにするためのお皿やお玉などは、後ろに居る女の店員さんが持っている様だ。

 

「……ふふっ」

 

 他の人間さんたちが食べているそれから漂う香りだけでも十分だけど、いざとんでもない大きさの鍋が目の前に置かれると、空腹ではない私でさえ食欲が刺激されてくる訳だ。

 

 言わずもがな、空腹なルーミアたちが耐えきれる道理はなく、テーブルに置かれるや否や、我先にお玉を使って自分の食べたい具材をどんどんお皿へと取っていた。パーティーの時の妖精さんたちを見ている様で、思わず笑みが零れる。

 

「ありがとう。そして、いただきます」

 

 何もせず、ずっと見ていたい位にほのぼのとした光景だけど、モタモタしてると私の食べる分がなくなりそうである。なので、名残り惜しいけどこの辺で食事前の挨拶を済ませ、食べられそうな分だけ取って私も食べ始めた。

 

「リーシェ、味はどう?」

「美味しい。お肉も野菜も、出汁まで全部」

「わはは、それは良かった! 口に合わなかったらどうしようかって思ってたぞ」

「例えすき焼きの味が究極レベルで口に合わなくても、ルーミアたちが笑顔なら問題ないよ」

「相変わらずだな」

 

 食材の用意から調理まで、特製すき焼きに関わった全ての人間さんが、かなり優れた技術の持ち主なのも当然あるだろう。衛生面や内装だって、捨てる事が出来ない要素だ。

 

「……私と友達になってくれてありがとう。これからも、仲良くしてくれると嬉しいな」

「急に畏まっちゃってどうしたの? そんなの当たり前」

「そう。付き合いは1番短いけど、今更リィちゃんの友達辞めるなんて考えられないし」

 

 しかし、こんなに美味しいと感じられている最も大きな理由は、やはりルーミアたちの笑顔があるからだと思う。私1人だったり、友達や家族以外の誰かと一緒だったとしたら、絶対にこんな風には思わない。

 

 勿論、この世界に絶対などある訳ないと理解はしている。ただ、それでも私はルーミアやミスティア、リグルとの友人関係が良好なままずっと続いてくれと、強く願い続ける事としよう。

 

「ご馳走さまでした。さて、次の予定とかある?」

「ないけど、少なくとも食べ物系はもう良いや。結構沢山食べたしさ」

「じゃあ、また氷精のアトリエでも行くかー? 寺子屋とか土産物屋はいつでも行けるし、可能なら冬祭り限定の場所の方が良いじゃん」

「うん。ただ、ルーミアちゃんの案も良いけど、流石に新しい作品が増えるには早いんじゃない?」

 

 言わずもがな、いくら量が多くても4人でかかればすき焼きを早く完食するのは容易な訳だけど、あまりにも早く完食したために、次にやりたい事や行きたい場所が決まっていない。

 

 それならそれで、単に人里内をひたすら散歩するだけでも全く構わないけど、それだけではルーミアたち3人にとって物足りない可能性がある。私も含めた全員が楽しめてこそ、今日が一級品の思い出として後々まで残るのだ。

 

 とは言え、もう飲んだり食べたりする予定もないのに、次に何をするか相談するためだけにこれ以上居座るのは迷惑になる。外を歩きながらでも相談は出来る訳だし、ひとまず支払いを済ませてお店を立ち去ろう。

 

「わっ……え?」

「どうした?」

「あー……ごめん。人とぶつかりそうになったから」

「なるほど。まあ、人間沢山居るもんなー」

 

 で、その事をルーミアたちに伝え、やるべき事を済ませてお店を出た瞬間、反射的に足を止めざるを得ない事態が発生した。後1歩でぶつかりそうな程の超至近距離に、不思議な女の子が唐突に現れては、同じく唐突に消えると言うものだ。

 

 普通なら、こんな至近距離に誰かが居れば気づくはずなのに、それまで一瞬たりとも気配すら感じなかったのは、相当強力な隠密系能力や術技の持ち主なのだろう。

 

 ただし、咄嗟に探知能力を指向性なしに使っただけでも、魔法の森方面に去っていく女の子の反応を捉え続けられているのを見るに、私みたいな能力や魔法などを持つ人には効果が弱まるか、実質無効になると思われる。まあ、それに至るまでが高難易度な訳だけど。

 

(……人里で姿を隠す必要なんてあったのかな?)

 

 これで、紅魔館方面に向かう様であれば使い魔の鳥さんとの視界共有、万が一の指向性探知による警戒対象に入れていたが、そうではなさそうなので、今以降気にするのは止めにしておこう。

 

「そう言えば、紅魔館って何人住んでるんだっけ?」

「ついこの間、妖精さんが11人増えたばかりだから、今は私込みで176人だね。食事時にちょうど沢山揃ったりすると、パーティーの時みたいに凄く賑やかになるんだよ」

「えっ……リィちゃん家って、そんなに住んでたんだ」

「うん。ミスティア、びっくりした?」

「そりゃ、176人は予想外だしびっくりするよ。人数だけで見ても1大勢力だもん」

 

 で、その後は祭りの楽しさを味わいながら、色々と自分に関係する話をしながら人里内を歩き回った。普通にお土産屋さんで買い物とかしなくても、単に話して楽しむだけで問題ない様だ。

 

 無論、疲れが出ればどこかで風の結界を張って休憩したり、喉が渇けば温かいお茶を買って飲んだりなど、身体への気遣いは忘れていない。

 

(意外と、ルーミアたちは人気者みたいだ)

 

 後は、里の人間さんに話しかけられれば笑顔で返事したり、ルーミアたちが比較的仲良くしているらしい、数人の寺子屋の子供の悩みを一緒に解決してあげたりなど、合間合間にやって来る出来事への対応も行う。

 

 勿論、何でもかんでも対応する訳ではなく、私たちへの損得に悩み事の規模や解決難度、愛する家族に対する影響の正負、これら全てを考慮に入れた上で解決すべきと判断したものだけに動いている。

 とは言え、断るレベルの厄介事は全く舞い込んで来ず、多少面倒な迷子になった子供の親探しが1回あった程度で、後は即解決するものばかりだったが。

 

「もうすぐ夜だなー。今更だけど、雪も止んできたし」

「うん。結構長く遊んだから、今日は切り上げかな?」

「終わってみれば、あっさり過ぎた1日だったよね。まあ、この4人で居れば当たり前だけどさ」

 

 色々と考えながらも、雰囲気込みでこの一時を楽しみ続けていた時、流石に遊ぶ場所が思いつかなくなってきたらしいルーミアたちが、暗くなってきた空を見ながら切り上げる云々と言い始めた。

 

 咲夜の懐中時計みたいな、持ち運びに便利な大きさの時計は持ってきていないから分からないけど、相当長い時間人里冬祭りを楽しんでいたのは間違いない訳で、引き上げようと思い始めてもおかしくはない。

 

「それで、リーシェはどう? 私たちとの人里冬祭り、良かった?」

「勿論。美味しいもの食べたり飲んだり、凄いもの見たり、皆とお話ししたり、最高に楽しんでこれたもの。時間も時間だし、切り上げても問題ないよ」

「わはは! 確かに、心から笑ってくれてたもんなー」

「だからこそ、里の人と話す時のリィちゃんの微笑みが何かこう……上手く説明つかない違和感があるんだよね。嫌な感じはしないけど」

「あっ、そうなんだ」

 

 途中で今日はどうだったかと聞かれたりもしたが、言われるまでもなく最高に良かったと伝えた。何が1番良かったのかと聞き返されたら、迷った挙げ句に全部だと答えたくなる位には、私の心は幸せに満ちている。

 

 もしも、ルーミアたちが誘ってくれなかったらこんな天気の日に、わざわざ外出しようなどと思わなかっただろう。何なら、人里冬祭りの存在すら知らずに終わっていたか、知ってても興味を持たなかったと思うし、感謝しなければ。

 

「誘ってくれてありがとう。また今度、時間をあけて遊ぼうね」

「はいよ! また何か面白そうな事でも考えとくからなー!」

 

 そうして、私を人里冬祭りに誘ってくれたルーミアたちに心を込めてお礼を言った後は、元気に見送られながら紅魔館へと帰っていった。




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