目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話はレミリア視点です


人間のお友達

「霊夢、リーシェと遊びにきたわよー!」

「あー、はいはい。いつもみたく、居間でのんびり待ってなさいな」

 

 吸血鬼にとっては良くない天気の今日かつ昼過ぎ、リーシェと一緒に私は博麗神社へと遊びに訪れていた。霊夢とやり取りを交わした経験があまりない状態であるリーシェに、少しでもその機会を持たせたいと今、思い立ったためである。

 

 友達になってくれとは言えないが、幻想郷でも名高い今代博麗の巫女な彼女とは、穏やかに交流を持っておいて欲しい。そうすれば、一定のラインを超えない事を条件に、いざと言う時心強い味方で居てくれると運命が告げているのだ。

 

「全く、どうしてうちの神社には妖怪だの妖精ばっかり集まるのかしら」

「そりゃあ、霊夢が強者で性格が性格だからじゃない? 妖精たちは知らないけど、私も貴女のそれに興味を持ったたちだし」

あんたの妹(リーシェ)はそうじゃなさそうだけど?」

「頼んで来てもらっただけだからね。ちょっと交流を持ってもらいたくて」

「良い迷惑と言うか何と言うか……まあ良いわ」

 

 勿論、交流そのものを酷く面倒がるのであれば流石に切り上げさせるつもりだけど、初対面と夏の人里に姉妹で遊びに行った時の反応を考えれば、そうなる道理はない。現に、その素振りを一切見せていない訳なのだし。

 

 ただ、何故か一見性格が合いそうにない魔理沙と会う機会は多く、結構仲良さそうな雰囲気を醸し出している。所々にフランの介入があるからだと、当の本人がニコニコしながら教えてくれたけども……一体何をしているのだろうか。今のところは、そこまで聞くつもりはないけど。

 

「リーシェ。まあ、せっかく来たんだしゆっくりしてきなさい。あんたの館ほど広さはないけどね」

「広さは問題にはなりませんので、ご安心を。ところで、レミリア姉様だけでなく私の分までお饅頭と緑茶をありがとうございます」

「どういたしまして。和菓子屋『和ノ雲』で買ったのよ、そのお饅頭。緑茶は里の知り合いからもらった奴だけど」

「なるほど、あのお店の商品でしたか。緑茶の方も、これまた美味しくて……私の好みです」

 

 ある程度の時間が経ち、霊夢が一仕事終え和菓子やお茶を持って居間にやって来た後は私の意図を汲んでくれた様で、リーシェに対して積極的に話を振ったりし始めてくれた。

 私がほったらかしにならない様に、会話の要所でさりげなく気を遣ってもくれているのは嬉しい。

 

(うんうん、良い感じね)

 

 私やフランを含めた館の住人、チルノや大妖精を筆頭とした友人たちには劣っているだろう。しかし、リーシェにとって他人の域を出ない人物とのやり取りにしては、微笑みに一切の違和感を感じ取れないので、我慢したりしていないと分かる。

 

 私が仲良くしている友人だからか、しっかり会話してみたら案外気の合う人間だと考えている故か、はたまた他の理由があるのかは不明だ。けど、今のところはほぼ思い通りの展開となっているから、かなり嬉しい。

 

「どう? うちの末妹と面と向かって話してみた感想は」

「良かったと思うわ。それにしても、会話は結構受け身な感じなのね。会う機会があの時以来なかったから、ここまでとは考えてなかったけど」

「あー……確かに、自分でもそう思います。基本、変えるつもりはありませんが」

「それで問題ないんじゃない? 要は、聞き上手って訳だし」

「ふふっ、好意的で何よりね」

 

 そして、霊夢の方もリーシェをある程度好意的に見てくれている様で、喋り方が比較的柔らかい。面倒そうにはしてるけど、半ば押し掛ける形で遊びに来た以上は、まあ仕方ないだろう。

 

 この様子なら、今後も定期的にリーシェも連れて博麗神社に遊びに来ても大丈夫そうだ。時と場合によっては、遊ぶ前に何か手伝いを頼まれる事もあるとは思うけど。

 

「よう、霊夢! 遊びに来てやった……っておお、レミリアか。リーシェも居るなんて初めてだな」

「はぁ……また騒がしいのが1人増えたわ」

「んな事言うなよ。私たち、親友だろ?」

「そうだけど、ちょっとは静かにしなさいって話よ」

「へいへい」

 

 そんなこんなで3人で話し込んだり、香霖堂で仕入れたらしい『かるた』なるゲームを教えてもらいながら遊んでいると、居間の戸が豪快に開かれ、魔理沙がまるで我が家に帰って来たかのような態度でこたつに入ってくる。

 

 ついさっきまで外に居たお陰か足がかなり冷たく、結構暖まっている私たちにとっては余計に刺激が強く感じた。相手と今の状況から、この程度であれば何とも思わないし、言おうとも考えなかったが。

 

「このお茶美味いな。和ノ雲の向かいの店の奴か?」

「知り合いからの貰い物よ。今度行った時、魔理沙の分も頼んでおく?」

「うーん……私は忘れなかったらで良いぜ」

「そう。レミリアたちは?」

「良い風味だけど、一昨日咲夜に買ってもらったお茶があるから要らないわ」

「緑茶は大好きなので、よろしければお願いします」

「了解、3人分ね」

 

 で、霊夢が調理場から温かい緑茶や『みかん』を持ってきた後は、魔理沙も加えた4人でかるた大会を開いたり、世間話やしょうもない話をしながら遊んだりなど、3人だった時の焼き直しみたいな流れになった。

 けど、波長の合う友人2人に愛する妹であるリーシェがこの場に居るので、決して退屈だとは思っていない。

 

 適度に暖かい居間に居心地の良いこたつなどの環境面、美味しいお饅頭や緑茶を含めれば紅魔館に匹敵する程に素晴らしく、外に出る気力が削がれる位なのだ。仮に多少退屈だったところで、皆も外出しようとは考えないだろう。

 

「あの……魔理沙さん、少し良いですか?」

「おう、改まってどうした?」

 

 すると、こたつの上に出されたみかんを食べていたリーシェが、忘れていた事を思い出したかの様な感じで私との話を遮ると、魔理沙に話しかけた。普段ならキリの良いところまでは遮らないだけに、何とも珍しい展開である。

 

(……もしや?)

 

 しかも、表情や仕草があの子が友達に向けるものとほぼ同一で、かつ気弱な一面が表に出始めている。十中八九、心の中で魔理沙を自身の友達として完璧に認めたと言う事で間違いない。

 

 この短時間でそう決意するに至った要因はまだ不明だけど、今までの仲良さそうに会話する様子を鑑みれば、予想よりもかなり早めではあるものの、おかしな話ではないだろう。

 

「私と、お友達になってくれませんか?」

「ん? すまん、もう一度言ってくれ」

「お友達になって欲しいんです。魔理沙さんに」

「……マジか」

「はい。本気ですよ、私は」

 

 案の定、リーシェの口から出た言葉は魔理沙に対し、友達になって欲しいと求めるものだった。当の本人は、まさかそんな事を言われるとは思っていなかったらしく、反射的に聞き返していた。

 

 唐突に始まったこの展開に霊夢は一瞬面食らうも、ちょうど良かったわと言って食べた物の片付けや、調理場の掃除をしに居間を出て行った。時間がかかりそうと判断したのだろうか。

 

「よっしゃ! フラン、やったぜ!」

「何故、そこでフラン姉様の名前を?」

「あー、まあ気にしないでくれ。で、その話なんだが……こちらこそ、よろしく頼む。魔法の話とか、色々しような」

「はいっ! その……こちらこそ、よろしくね。魔理沙」

 

 そして、パチェと同じく魔法の研究者だからとの理由で、何とか友達になりたがっていた魔理沙がこのお願いを断る道理はなく、笑顔で差し出されたリーシェの手を握り返し、慣れた手つきで頭を撫でた。

 

 余程嬉しかったのか、友達申請を受けてもらえたリーシェの表情は偶然居合わせる事が出来た、親友も同然なチルノや大妖精に褒められた時に迫る可愛さを見せている。

 今まで接する態度が他人仕様だったのに、照れくさそうに接する態度を友達仕様に変える所なんか特に良い。フランが見たら、とっても喜びそうだ。

 

(リーシェを導いてくれてありがとう。運命に感謝を……)

 

 私としても、この子が幸せになってくれるのなら、友達がどんな存在であれ大歓迎だ。とは言うものの、フラン以外にこの子にとっての、()()()()()()()()()を譲る気はさらさらないので、今日は帰ったらふれあいでもしようか。

 

「あら、どうやら事は済んだみたいね。にしても、大分態度が変わり過ぎてない?」

「霊夢。そう言う奴だぜ、リーシェは」

「知ってるわよ。単に、変化の度合いが想定以上で驚いただけ」

「あー……霊夢さん、説明要ります?」

「別に、その辺の事情には興味ないから要らないわ」

「そうですか」

 

 このやり取りが済み、図ったかのようなタイミングで霊夢が戻ってきた後は、お皿に入れられた『金平糖』と新しい緑茶をお供に、再び楽しい一時が始まった。友達が増えたからか、先程よりもリーシェの一挙一動が大げさになり、騒がしさが増してきている。

 

 少しだけ、霊夢の面倒そうな表情も増している様な気がするものの、恐らくこれは一時的なものだと思うから、どうかこのまま見守っていて欲しい。

 騒がしくなったにしても元がそれ程酷くはないし、後々文句を言ってくる様な人間ではないとは思うけど、もし何か言ってきたとしたら、私宛なら受け付けよう。元はと言えば、私が押し掛けてきたのが原因な訳なのだから。

 

「ところで、3人共もうそろそろ帰ってくれる? これから夕飯の仕込みやら細かいところの掃除とか、色々やりたいし」

 

 そんなこんなで4人で相変わらず過ごしていると、大分長い時間が過ぎていたらしく、霊夢から帰って欲しいとお願いされた。

 

 もう少しだけ居たかった様な気もするが、ここの主は霊夢であり、彼女のお願いを無視してまで居座るのは何か違う。高揚した気分が落ち着いてきたリーシェも少し眠そうだし、帰る事としよう。

 

「了解。お邪魔したわね、霊夢」

「ありがとうございました。今度、美味しいお菓子とお茶のお礼をしに来ますね」

「見返りは別に求めてはいないけど、くれるのなら楽しみにしているわ」

 

 と言う事で、防寒対策の風属性結界をリーシェに張ってもらい、霊夢にお礼の一言をかけ、日傘を差してから博麗神社を飛んで後にした。




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