終わり見えぬ冬の謎
「今日も雪ね、咲夜」
「はい、そうですね。お嬢様」
とある日の午前10時頃、窓から見える雪景色を背景にして咲夜と紅茶を嗜みながら、ある事象について考えていた。幻想郷に来た去年と比べて、冬があまりにも長すぎると言う点である。
しかも、ただ長すぎるだけではなく、ここしばらくに至っては雪が止まずに降り続けているのもおかしかった。
パチェとリーシェ合作の結界、館全体を等しく快適な温度まで暖める暖房魔法、こうなる前に溜め込んだ大量の食料などがあるので、当面の生活には困らない。
何なら、完全な防寒対策を施したメイド妖精たちが毎日、私たち3姉妹も毎日ではないにせよ、防寒などの対策をした上で皆と仲良くはしゃいで遊んだりもするから、逆に楽しいとすら思う。
現に今も、メイド妖精たちに頼まれたと思われるリーシェが、各種対策の施されたいつもの服を着てニコニコしながら、雪合戦や雪だるま作りなどで遊んでいた。これを見れているだけでも、十分幸せを感じられる。
「流石にずっと雪、と言うか冬だと困るわ。パチェにも負担をかけ続ける事にもなりかねず、自給計画の後退もあり得るもの」
「作物が育たなくなりますものね。去年は普通なのを見るに明らかに『異変』ですし、この様子だと人里辺りも大分困ってると思いますので、遅かれ早かれ博麗の巫女が動くかと」
「異変ねぇ。さしずめ、春雪異変と言ったところかしら?」
「名付けるとしたら、そんな感じでしょう」
が、どう考えても何者かが起こした異変としか思えない今の状況が続くと、こちらとしても非常に都合が悪い。
霊夢にしろ魔理沙にしろ、この事態解決のためにせっせと動いているとは思うが、手がかりが全くないのか解決の兆しも見えていない以上、紅魔館独自で動き始めた方が良いかも知れない。
(うーん……)
ともなれば、館の中の誰を調査隊として送るかが問題だけど、今現在候補に挙がるのは私・フラン・リーシェ・咲夜・美鈴の5人である。
パチェにもお願いしようかとも思ったけど、既に結界維持をお願いしている上、喘息の持病持ちにフィールドワークをさせるのは鬼畜の所業なので、頼むのはやめておこう。
しかし、これを起こした黒幕は一体何の目的があったのだろうか。紅霧異変の時みたく紫が一枚噛んでいるか、無関係かつ真冬の環境が都合良しとする者の仕業か、はたまた単なる気分転換か、色々な可能性が考えられる。
「お嬢様。もし良ければ、私が色々と調べてきましょうか?」
「えっ?」
「大方誰かに手がかりを得てきて、あわよくば解決して欲しいとお願いするつもりかと、表情を見てそう思いましたので」
なんて考え事をしていると、心を覗き見たかの如く精度で私の考えを読んだのか、咲夜が頼む前に立候補してきた。そう言う事なら、こちらとしても非常にありがたい。
「そうね……なら、お願いするわ。今すぐ行ける?」
「少々準備に時間を頂ければ」
「言われずとも、その程度なら当然よ。後、出かける前に私に声をかけて。もしかしたら、リーシェも一緒になるかも知れないから」
「なるほど。それは実に頼もしいですね」
と言う訳で咲夜にお願いした後、私も外に出る準備を整えた。念のため、リーシェに咲夜のお供をして欲しいとお願いをするためである。
無論、咲夜の実力を信用していない訳ではない。万が一がないとも限らないし、館の守護の一旦を担うあの探知能力は、黒幕を見つけ出すのに凄まじい効力を発揮してくれると思ったからだ。
断られた場合はフランに、最悪留守は妹2人に任せて私が一緒に行くつもりだけど、戦闘ないし弾幕ごっこは対等かやや優勢にせよ、こと探知に関しては私を含む館の全員がリーシェに大きく劣る。可能なら、 聞いてくれると嬉しい。
「レミリア姉様! 遊びに来たの?」
「ううん、違うわ。リーシェにお願いをしに来たのよ。嫌なら断っても良いからね」
「お願いかぁ。取り敢えず、お話聞かせて」
準備を整え外に出て、私に気づきニコニコしながら駆け寄ってくるリーシェにグッと来ながらも、咲夜に説明したのとほぼ同じ内容の説明を行う。
大なり小なり無理をさせる事になるのは百も承知だから、目的達成の暁には確実に喜ぶであろう相応の報酬をいくつか与える事、普段改まって言わない褒め言葉など、その辺を付け加えるのも忘れない。
ただ、リーシェは1日ずっと私が側にいて構ってあげるだけで喜ぶし、極論元気な姿を見せるのみでも問題ない。そもそも、私の存在はあの子にとって、生きる原動力の1つとなっているのだ。
が、それに付け込んで物やお金などの有形報酬を与えないのは、事が事なだけに論外なので、しっかりと考えて用意しておくけども。
(本当、私は恵まれてるわ。感謝しなきゃ)
当然、咲夜に対しても同様である。労いや褒め言葉などは言わずもがな、ゆっくり出来る休日の増加や追加でお金をあげたり、他に私にやって欲しい事があれば、それも1つ叶えてあげるつもりだ。
「そっか。レミリア姉様が、私をそこまで頼りにしてくれるなら任せて。咲夜も一緒ならきっと、望む結果は得られると思う」
「ありがとう。成功報酬、楽しみにしててね」
「うん……えへへ」
すると、何かを期待した眼差しを私に向けつつも、考える事なく普通に了承してくれた。言われずとも、成功したら期待通り……いや、期待以上のものにしてみせよう。
なお、一緒に遊んでいたメイド妖精には楽しんでいる途中で申し訳ないと謝っておいたものの、特に気にしてはいなかったらしい。むしろ、嬉しそうに微笑んでいる風に見える。
強度は流石に劣れど、リーシェが私やフランを含めた館の皆に向ける様な感情を、リーシェに向ける位好いている妖精故だろうか。
(天性の妖精たらし、とでも言うべきかしら?)
常々思うけど、吸血鬼の立場でここまで妖精に好かれるのは、もはや天才的な
何なら、幻想郷で得た友人も約半分が妖精である上、魔理沙を除けば力の強くない妖怪ばかりである。
まあ、いつぞやの
その分、幻想郷の上位に位置する実力者や中堅層の妖怪とは、一部例外を除いて付き合いが少ないかしようとすらしない訳だけど、致し方ないだろう。
故に私は、
「咲夜。レミリア姉様にお願いされたから、私も一緒に行くよ」
「はい。リーシェお嬢様が一緒であれば、相当心強いです」
「ふふっ。じゃあ、行ってくるね。レミリア姉様」
「ええ、行ってらっしゃい。勿論無理せず、途中で休憩したり戻ってきても良いわよ」
咲夜が準備を終えて来て、リーシェと一緒に真っ白な空へ飛び立って見えなくなるまで見送った後、私はすぐさま報酬の用意に取りかかる。
細かな部分は不明瞭ではあっても、想定を超える物凄い早さで事態が解決へ向かっていく
ちょっとしたきっかけで未来が変わる事など多々あるし、下手をすれば『大異変』へ悪化しないとも限らない。
しかし、最も鮮明に見えた未来がこれなのだ。私のお願いを聞き入れ、疲れて帰ってくるであろう2人の望むもの位、すぐに用意する程度はしなければ。
「みゃっ!? 何これ冷た……ああ、なるほど」
思考の大半がその事に持ってかれながら廊下を歩いていると、不意に襲ってきた背中の冷たい感覚に、何だか恥ずかしい声を出してしまう。
後ろを振り向くと、雪玉を持ちながら爆笑しているフランが居たので、イタズラをされたのだとすぐに分かった。奇しくもこれは、紅霧異変後の宴会にて、リーシェにやられた時と似通っている。
「やっぱり、お姉様って不意打ちすると面白いね! 変な声とか仕草するんだもん!」
「全くもう。って、それを言うならフランの方こそ似たり寄ったりじゃないの? この間、メイド妖精に――」
「見てたの!?」
「最初からずっとね。何なら、仕組んだのは私だし……あっ」
「ふーん。なら、お姉様にお返ししなきゃ! リーシェにも協力してもらうもんね!」
「えっ、それはちょっと勘弁……」
で、笑われた恥ずかしさと少しばかりの悔しさのあまりに言い返した際、2週間前の秘密にしておくべき事柄をうっかり喋ったお陰で、フランと平和的なじゃれ合いが始まってしまう。
これから色々とやるべき仕事が増えたので、何とか上手く収めたいところではあるけど、この様子だと結構時間がかかりそうである。自分が巻いた種とは言え、出来る限り早く収めたい。
(仕方ないわ……)
結果、今日の私が食べる予定だったアップルパイとプリンをあげる切り札を切り、追加のとんでもないイタズラの回避と、じゃれ合いを早期に収める事に成功した。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?
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1人
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2人
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3人
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追加しない方が望ましい