目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話には、主人公以外のオリジナルスペカが1つ登場します


凍てつく冬空

 準備を怠れば、身体の芯まで凍てつきそうな寒さの今日、雪の降る中私は咲夜と幻想郷の空を低速で飛び回っていた。

 レミリア姉様に長過ぎる冬の原因を探ってくるか、あわよくば解決して欲しいとお願いされたからだ。

 

 確かに、今回の冬はやたらと長い上に雪の量もそれなりに多く、寒さも相当に厳しい。それ以外にも、前回の冬との違いが大きいが故に異変と考え、姉様が調査要員を送ろうとするのも理解は出来る。

 

「任せてって言ってきたけど、進展ないなぁ。どうしよう?」

「取り敢えず人里以外、幻想郷各地を回ってみるしかないかと。リーシェお嬢様の能力に、何かしら捉えたりしてませんか?」

「うん。解決の糸口になりそうな反応って意味なら、何も」

 

 ただし、お役立ち情報はおろか噂話すらないまっ更な状態で、私と咲夜は調査に送り出されているため、ある程度時が経った今でも全く進んでいない。

 

 霊夢さんと魔理沙、異変解決の二大巨頭も博麗神社から動いていないけど、恐らくまだ動いていないのだろう。なら、彼女たちとの情報共有も出来ないので、まだまだ時間がかかりそうだ。

 

「咲夜、寒くない? 耐えられる?」

「この程度であれば、対策でカバー可能なので問題ありません」

「そっか。なら良いけど」

 

 まあ、常に暴風雪状態だとか化け物が大暴れしているなどの、見て分かる差し迫った危機が現時点である訳でもないし、使える時間は結構多い。

 

 重要拠点の人里近辺で、慧音さんやルーミア、リグルやミスティアなどの妖怪組を筆頭とした多数の人々が、楽しみながら除雪作業にあたっている様子を見れば当然か。

 

(……わっ!?)

 

 そんなこんなで、魔法の森ではない森の上を通りがかった瞬間、尋常ではない冷気が私と咲夜が居るこの空域を包み込んでくる。

 すぐさま、衣服に施されたパチュリーの暖房魔法が冷気を感知、出力が最大になるものの、それすら完全には防ぎきれなくなる程だ。

 

 と同時に、下方からもはや妖精とは思えない程に妖力が強まった、チルノの反応が結構な速さで近づいてくると捉えてから数秒、目の前に立ち塞がる形で現れた。

 

「湖の氷精……ですよね? 感じる圧が、もはや妖怪の領域ですよ。これは」

「うん。反応がやたら強いけど、間違いなくチルノ」

 

 髪と瞳の色に僅かながら銀色が混じり、羽の透明度が増し、強力な冷気を伴う白銀色のオーラを纏っている。

 前回の冬はもとより最後に遊んだ6日前までは、理解出来る範疇で強くなってただけな分、衝撃は凄まじい。

 

 6日前から今までに何があったのかは知らないけど、もしかしたらこれは、長引く冬に関連する出来事……つまり、異変が既に始まっている可能性が高いのだ。

 

 なお、その後方から大妖精がチルノについてきていたものの、彼女に関してはほぼいつも通りの妖力量である。

 寒さについては、青いバリアの様なもので大部分が防がれているらしく、防寒具の装備のみで耐えられていると見受けられた。

 

「リーシェ、弾幕ごっこで勝負しろ! 今の『さいきょー』のあたいなら、負ける気がしないぞ!」

「えっと……リーシェちゃん、良ければ勝負してあげて。妖力が急に高まったせいかチルノちゃん、昂りが抑えきれてなくて……」

 

 で、現れるなりすぐさまチルノから弾幕ごっこを申し込まれ、大妖精からも頭を下げられながらお願いされた。

 

 これを断って原因調査を再開するのは簡単だけど、昂るチルノや困り果てた大妖精のお願いを見捨てるなんてある意味難しいし、何より原因究明に1歩近付きそうな気がしている。

 

「咲夜、本当にごめん。後で絶対に追い付くから、チルノと勝負してきても良い?」

「分かりました。蛇足でしょうけど、お気をつけて」

 

 なので、万が一のお供として来ておきながら、私はチルノと弾幕ごっこで勝負をすると決めた。幸いにも、咲夜本人は好意的に見てくれたのでホッとひと安心である。

 

 無論、咄嗟に召喚した使い魔の鳥さんと能力の二段構えで、弾幕ごっこ時も咲夜とその周囲を常時捕捉、苦戦ないし危機に陥った際は中断して駆けつける事をチルノと大妖精の2人には、しっかりと了承してもらった。

 

「さてと、準備は出来たからやるよ。チルノ」

「うん。強いからって油断してたら大間違い……リーシェ、行くぞ!」

 

 そうして咲夜がこの場を飛び去り、大妖精が巻き添えを食わない距離まで離れたのを確認した後、チルノが3枚のスペルカードの提示と共に膨大な量の氷弾をばらまいてきた事で、弾幕ごっこが始まった。

 

(確かにこれ、最強を自称するだけの力だなぁ)

 

 たかが低威力の氷弾とは言え、今までの彼女からしてみれば相当に威力は高いと、弾幕が纏う冷気を見て即理解した。

 

 その上、弾色や形で見分けやすくなってはいても速度のバラつきが大きく、他の弾同士で衝突し軌道が変わる時もあり、容易く避けさせてたまるかと意思表示をされているみたいである。

 

 勿論私も避けてばかりではなく、妖怪さんを相手取っているつもりで、通常弾や雷弾を適切なタイミングで放ってはいる。

 が、威力はともかく物量では上回られているためか、氷弾に弾かれるか相殺されて密度が低下、出来た隙間を縫う様に回避されて当たらない。

 

(顔の横を通っただけでこの冷気……回避に、もう少し余裕を持たせよう)

 

 こちらはまだ回避に余裕はあるものの、スペルカードルール上の決闘においては美鈴やパチュリーの6割、姉様2人や咲夜の5割とやり合っている感じにしか私は思えてならない。

 

 判断力や反射神経なども、通常より圧倒的に向上しているのは明らかであり、普通の妖怪さんを相手取るつもりで居ては危険だ。

 

「1発目を食らえ! 雹符『ヘイルストーム』!」

「ちょっ……わわっ!?」

 

 案の定、氷弾の密度が何とも嫌らしいレベルにまで達した瞬間、自分を中心に氷の竜巻を展開、それに乗せて周囲に凄まじい冷気と雹を放ってきた。

 

 並大抵の相手なら、氷弾と雹と冷気の嵐に成す術もなく巻き込まれ、姉様2人や館の主力陣と戦える実力者でさえ、決して油断は出来ない強力なコンビネーションだと断言しよう。

 

 荒れ狂う弾幕の軌道を見極めつつ空を泳ぐが如く上下左右に動いて回避、直撃コースに入ったと判断した弾は即座に雷弾で迎撃、攻撃と攻撃の僅かな隙間を狙って反撃、全力全開ではなくとも本気で勝つつもりで動く。

 

 しかし、意図してかそうではないかはともかく、チルノから放たれる冷気が動きを阻害してきている。そこへ更に、氷の竜巻により巻き上げられた多数の弾幕や降雪が襲いかかってくるものだから、厄介な事この上ない。

 

「凄いね。でも、私だって負けないから……護界『フェーズドアレイ』」

 

 だから、一定の時間スペルカードによる弾幕を避け続けた後、ここだと言うタイミングで私もスペルカードを宣言し、勝利を狙いに行った。

 

 防御寄りではあれど、紅霧異変時は勿論、姉様2人や館の皆との手合わせでも私を助けてくれたスペルの1つである。弾幕密度が高い時を想定しているから、かなり効果を発揮してくれるはず。

 

「ふっ。あたいの弾幕が掠りすらしないのは予想済み……だったら、これならどうだ! 凍符『パーフェクトフリーズ』!」

 

 結果、空間内の弾幕密度を大きく減らして終了までの回避を容易にしつつ、チルノに2枚目のスペルカードを切らせさせたものの、これが1枚目と同等以上に厄介な代物であると判明してしまう。

 

 放射状にばらまかれたカラフルな弾幕が、凍りついた水の様に空間内で静止、空中機動力をかなり削いでくる。

 と同時に、追加で放ってくる弾幕の密度もさる事ながら速度も速く、軌道を読み回避ないし迎撃する難易度が高い。

 

「ん? えっ、動くの!?」

「あっはっは! とくと味わうがいい!」

 

 しかも、嫌らしいタイミングで静止した弾幕が四方八方に動き始める、予想外も良いところな事態まで発生する。すんでのところで当たらずには済んだものの、目と鼻の先を黄色の弾が掠めていったのはヒヤッとした。

 

 当然の如く、2度3度と軌道や速度、静止状態から動くまでの間を微妙に変えつつ攻撃してくるものの、警戒していたお陰で当たらずには済む。

 

 ただし、途中で私のスペルが切れたお陰で防御迎撃率は低下したので、超至近距離を多種多様な弾幕が音を立てて過ぎ去っていく回数が大きく上昇してしまう。

 

(……)

 

 ふと思ったけど、常々「相手がどんな奴だろうと、あたいが大ちゃんを守ってみせる」と意気込んでいたチルノがもし、この力を自由自在に扱う事が出来たなら、敵にとってかなり脅威となるに違いない。

 

 氷属性に耐性を持つ存在が少ないのも相まって、各種制限がなければ推して知るべしと言える。無論、いつものチルノと弾幕ごっこをしたとしても、油断してたら足元を掬われるだろうけど。

 

「まだまだぁ! これがあたいの全力全開……超冷『コーリング&フルーウィ』」

 

 そして、2枚目のスペルを最後まで何とか全回避に持ち込んだ瞬間、チルノから放たれる冷気が更に強くなると同時に、3枚目のスペルが宣言された。

 

(むぅぅぅ……!?)

 

 これで最後かつ強化状態の全力全開と言うだけあって、当たり前だけど攻略難易度は1枚目や2枚目を凌駕している。

 

 高速氷弾を四方八方にばらまき、破裂すると綺麗な紋様を見せる大玉を放ってくる上、それらをとんでもない軌道で避けながら飛んでくるレーザーが、冗談抜きでキツい。

 

「全力全開……なら、こっちも最高クラスのスペルで迎え撃つ! 神矢『ウルの狩弓』!」

 

 私の方も2枚目のスペル、強者との弾幕ごっこを想定したものを宣言して対抗したのに、レーザーに関しては回避以外が通用しないためだ。()()()()()()()()()()()()()()、超軌道を見せて抜けてくるのだから。

 

 なお、誘導性はほぼなくレーザーの本数も極端に多くはないものの、それらをカバーする形で他の弾が飛んでくるため、気休めの時間などない。

 

 流石に、姉様2人はもとより館の主力陣の全力全開には一歩及ばないけど、妖精の身でここまで食い込めているのは凄過ぎる。例え、異変による一時的な強化があったとしてもだ。

 

「当たれぇぇぇーー!!」

「私は、負けないから。チルノ!」

 

 ただ、私も伊達にレミリア姉様やフラン姉様との手合わせを、続けてきた訳ではない。最終的に負けはしたものの、紅霧異変で文さんとアリスさん2人を相手取った経験もある。

 

「大ちゃん。あたい、負けたけど頑張ったよ」

「うん! 流石は『さいきょー』のチルノちゃんだね!」

 

 そうして、上手く見つけられた隙を突き、弾幕を連続で当ててスペルを解除させ、この戦いは私の勝利で終える事が出来た。

 今ので力を使い切ったせいか、妖力や容姿などのあらゆる要素がいつも通りに戻り、疲労から瞬間移動で来た大妖精にもたれかかるも、落ち込む様子は見られない。

 

 これなら、例え今の様な強化がなくとも沢山の時間を使って努力さえすれば、同じ動きが可能となるだろう。是非とも、チルノにはこのまま強くなっていってくれると、私としてもかなり嬉しい。

 

「リーシェ! 次こそは勝ってみせるから、油断しないで待ってろよー!」

「ふふっ。勿論、油断せずに待つに決まってるよ。チルノ」

「ありがとう、リーシェちゃん。忙しいところごめんね。咲夜さんには、後でお礼しに行くって伝えて欲しいな」

「分かった。ちゃんと伝えておくね」

 

 そう思いつつ、弾幕ごっこ終わりにチルノと大妖精の2人と軽く会話を交わした後、私は急いで咲夜の方向へと飛んで行った。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?

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