目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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長期かつ予告なしの放置、すみませんでした。


冬の化身

「貴女の相手をしている暇はないの。そこ、退いてくれないかしら?」

 

 春雪異変の影響か、妖精どころか並の妖怪すら超える強さと化していた湖の氷精(チルノ)の相手を、リーシェお嬢様がしている間に先に進んでいた私は、道中でとある妖怪に行く手を塞がれていた。

 

 薄紫の髪に紫の瞳、 紫所々白色の全体的にゆったりとした装いと、服装に関しても特筆すべき点はないものの、発する冷気と妖気は強化されたチルノですら及ばない程に強力である。

 

 例えるなら冬と言う季節そのもの、もしくは氷や冷気が具現化した様な存在と捉えるべきであり、そこら辺の木っ端妖怪を相手取るつもりで挑めば、まず間違いなく痛い目を見るだろう。

 

 しかも、この妖怪が出現してから心なしか、周辺の天候がより厳しいものへと変化している。パチュリー様の魔法が施された防寒着があるとは言え、長期滞在は無駄な体力を消費する以上さっさと切り抜けたいところだ。

 

「まあまあ、そう焦らないで。ところで、人間にとってはこの寒さは相当厳しいはずなのだけど、暖かい家に閉じ籠ってなくて大丈夫なの?」

「生憎、この服装のお陰で問題ないわ。それに、レミリアお嬢様にこの()()()()()()の調査、あわよくば解決を命じられている。だから、ろくな成果も出せぬまま帰れないのよ」

「レミリアお嬢様……ああ、()()紅魔館の主ね。と言う事は、その装いと見た目に尋常じゃない威圧感からして、貴女は十六夜咲夜?」

「ええ。自己紹介が省けて助かるわ」

「あー……うん、やっぱりそうかぁ」

 

 だが、相手の様子からして、このままあっさり通してくれる可能性はないに等しい。

 勿論、私の時を操る能力を使えば、こんな問答をする必要すらなく切り抜けられるのだけど、お嬢様からの指示がある都合上滅多な事では使えない。

 

 そもそも、能力を使ってこの場から離れたとしても、異変解決まで1度も会わないで居られる保証はない。まず間違いなく見つかっては逃げ、見つかっては逃げる不毛なやり取りが繰り返される羽目になる。

 

 幻想郷の冬空を、異変解決の糸口を探すべく飛行している最中、この妖怪からの襲撃を警戒しながら進むのも正直面倒だし、身体・精神的疲労も余計に強くなってしまう。

 

 ともなれば、ここはスペルカードルールに則った決闘を申し込んだ上で、あの妖怪以外にも戦う相手が居る事を鑑みて、体力などを残した状態で勝利して切り抜けるしかない。

 

「こんなにも長く、それでいて厳しく楽しい冬は初めて。私にとっては理想の一時、もう少し楽しませてもらうわ」

「そう。なら、お嬢様のためにも弾幕ごっこで押し通らせてもらおうかしら」

「分かった、それも一興ね。ならスペルカードは3枚でどう?」

「勿論良いわよ。こちらとしても色々な意味で長引かせたくはないから」

 

 私が弾幕ごっこについて口に出した瞬間の雰囲気の変化と表情、更なる冷気や妖気の解放および発された言葉を聞くに、相手もやる気なのは火を見るよりも明らかなので、こちらもすぐさま戦闘モードへと入る。

 

「私はレティ・ホワイトロック。あなたは人間だけど、あなたとならこの(一時)を楽しめそう」

 

 そして、こちらの準備が完璧に整うと同時に、『レティ・ホワイトロック』と名乗った妖怪(彼女)は、青や白の如何にも冬や氷に合いそうな色の弾幕を放ってくる。

 

 密度は中程度で弾速は速め、比較的弱めなものの蒼白色に輝く冷気を纏っていて、無防備な状態で当たればそれなりのダメージを負いそうだ。

 

「全く……! こっちはやたらと寒いわ視界が良くないわで、殆んど楽しめてないのだけど?」

「ふふ。この周辺の領域は、強化された私の力でより厳しい環境と化しているわ。だから、大抵の人間にとってはそうかもね」

 

 言わずもがな、スペルですらない通常弾幕に易々と当たっていては、レミリアお嬢様の懐刀は務まらない。しっかりと弾道を見極め、上下左右に空中を飛行しながら回避行動を取る。

 

 当然、私も間を縫ってナイフ型の弾幕を多数生成、発射ないし手に持って投擲したりと色々仕掛けるも、空を優雅に泳ぐような感じで回避されてしまう。

 

 ただ、弾幕が避けられはすれどお嬢様方とのお遊びを兼ねた手合わせ、パチュリー様や美鈴との試合形式での手合わせ、紅霧異変時に霊夢が放ってきた通常弾幕と比べれば、いくばくかの余裕があった。

 

 とは言え、レティが弱いかと問われればそうではない。今まで、弾幕ごっこをどのような場合であれ行ってきた相手の強さが、私とほぼ同格か格上であればそうもなるだろう。

 

「むむ、埒が明かない。ならこれでどう? 寒符『リンガリングコールド』」

 

 そうして、背後から飛んできた弾幕をナイフ弾で撃ち落としたタイミングで、レティが1枚目のスペルを使用した。

 

 規則性がなく、1つないし複数が塊となった弾幕が周辺を飛び回り、こちらの動きを制限しつつ扇状に広がる水色弾幕が私を狙いにくる、中々に厄介な様相を呈したスペルである。

 

 弾速は水色弾幕の方が速いもののその差は小さく、こちらに関してはさほど脅威にはならないが、前述の要素がそれ(小さな欠点)を打ち消しているため、総合的には油断ならない。

 

 そもそも、弾幕ごっこ故に回避可能な仕様になっているとは言え、死角を含めた全方位から迫り来ると言う要素があるだけでも、普通は相当厄介なのだ。

 

 鋭敏な感覚に加えて能力を応用した未来予知が可能なレミリアお嬢様、そのお嬢様に「幻を相手してるかの様ね」と言わしめる程に、異次元の危機回避能力を持つリーシェお嬢様みたいな例外は居るけど。

 

「スペルでも状況が大して変わらない……紅白巫女(霊夢)白黒魔法使い(魔理沙)もそうだけど、人間はこれだから油断ならないわ」

「この位出来ないと、紅魔館のメイド長は務まらないから」

「メイドってそんな過酷だったっけ……? いや、上位の妖怪に仕える位だしそりゃ当然か。それにしても、忠誠心が凄まじいけど、過去に何かあったの?」

「ええ。私の人生を救ってくれて、日々に彩りと()()()()()を与えてくれた妖怪なのよ。何があろうと、死ぬまでお嬢様の側から離れるつもりはないわね」

 

 無論、先程までの通常弾幕に比べれば十分に厄介だったものの、これも手合わせないし異変時に、紅魔館の主力陣や異変解決組(霊夢と魔理沙)のスペルを体感してきた私であれば、ある程度余裕を持ちながらの回避は可能だ。

 

 しかし、今はそうでも長引かせるのは危険である。パチュリー様の暖房魔法ですら防ぎ切れない強力な冷気の領域内部に居る以上、長引かせてしまえば知らず知らずの内に動きが鈍り、敗北してしまう可能性が高まる。

 それだけでなく、全て終わった後に体調を崩してしまう可能性だって同じだろう。

 

 そう易々と体調を崩す位に柔な身体はしていないつもりだけど、眼前のレティやチルノのように氷や冷気に対する完全耐性を持たず、お嬢様方のように素で耐久力が高い訳ではない。

 

「失礼。ここから先は、お嬢様方や異変解決組を相手するつもりで行くわ……奇術『エターナルミーク』」

 

 なので、勝負を出来る限り早くつけようと決意、正真正銘の短期決戦へと持ち込む方向へ舵を切った。それに伴い、宣言するスペルもルール内で全力を出す際に使うものとしている。

 

 特段奇をてらったりはしていないが、全方位に高密度かつ高速の弾幕を放つシンプルなスペルながら、お嬢様方から「物量が厄介」との評価をもらった自信作だ。なお、勝負の決め手になった回数はかなり少ない。

 

「ちょっ……!? いきなりギアを上げて来たか! 怪符『テーブルターニング』!」

 

 結果、すぐに通常弾幕のみで乗り切れなくなったレティは2枚目のスペルを宣言、同じく物量にものを言わせた青い小弾と青白いレーザ様の弾幕を織り交ぜた攻撃で乗り切ろうとしてきた。

 

 当たり前だけど、本人に届く私のスペルによる弾幕の数はおおよそ半減し、回避難度を下げられてしまっている。

 ただ、弾速はこちらの方が速いからか時折相殺が間に合っておらず、見た感じ少し焦りが見えていた。このまま行けば、強制宣言まで持っていけるかも知れない。

 

 ちなみに、レティのスペルによる弾幕も私の方に向かってきてはいるが、密度は最初の通常弾幕とほぼ同等まで落ち込んでいるため、回避は容易である。

 

「ここまで持ちこたえるなんて流石ね。そこら辺の木っ端妖怪よりは、かなり強いと言って良いわ」

「そりゃあどうも。まあ、いつぞや霊夢に挑んだ時は瞬殺されたんだけどね~」

「……あれは例外よ。気にしない方が良いと思うけど」

 

 凍てつく冷気を含む風に吹かれながら回避ないし攻撃を続けていき、お互いの発動していたスペルが時間切れとなるまで粘り、こちら側が1枚優位に立つ……レティが宣言可能なスペルが、残り1枚になる状況に持っていけた。

 

 しかし、ある意味ではここからが本番だろう。相手の体力がまだまだ余裕かつ後がない分、文字通りルール内での全力全開を出してくるのは確実なのだから。

 

「それじゃあ、最後のスペル宣言行くよー……冬符『ノーザンウイナー』!」

 

 案の定、レティから発せられる冷気や妖気や威圧感が増したかと思えば、最後のスペルが宣言された。

 

 軌道上に『霧』を発生させる大玉弾を放ち、時間を置かずにその霧が冷気を纏う特殊かつ小さな青色系統へと変化、不規則な軌道を描きながら飛び回り始めるものらしい。しかも、そこそこ密度も弾の速度も高いし速い。

 

(くっ、肌に刺すような凄まじい冷気ね……おっと!)

 

 性質上、大玉弾が軌道上に発生させる霧付近や内部に居た場合、被弾からの強制宣言と言う流れがほぼ確定するため、見かけ以上に動きが制限される。

 

 加えて、容赦のない凍てつく冷気が私の集中力を削ぎ落としてくるからか、更に回避が難しくなっていってしまう。

 

 当然、先程までのように喋る余裕はない……と言うよりも、レティが一切喋らなくなっただけなのだが、そのため飛んで来る弾幕のみに集中していく。

 

「この冷気と弾幕が中々に鬱陶しいわ……メイド秘技『殺人ドール』」

 

 そんなこんなで避け続けていく最中、想定以上に周辺空域を弾幕に埋められてきてしまった故にこちらも2枚目のスペルを宣言、事態の打開を図った。

 

 私の時を操る能力を取り入れ、ナイフ弾の軌道や密度も避けにくくしてあるこれは、あのリーシェお嬢様すらをも唸らせた時があるものだ。最後のスペルを迎撃するためのスペルとしては、この上ないものだろう。

 

 ちなみに、本来なら懐に大量に保管してある本物のナイフを使用するスペルだが、今回は魔力などで再現したものを放っている。

 

 こんな視界不良かつ雪が積もっている中では、例え時間を止めて探したとしても見つからないだろうし、コスト面や体調面で見ても非常によろしくない。故に、これは当然の摂理と言えるはずだ。

 

「今の勝負、私の勝ちね」

「分かってるわ。まあ、相手が相手だからしょうがないかー」

 

 そうして、どの位の時間が経ったのかも分からなくなる様な状況下、遠目に僅かながらリーシェお嬢様が見えてきたタイミングでレティのスペルが時間切れとなる形で、この弾幕ごっこで勝利する事に成功した。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。

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